記念すべき50話目!
これも偏に読んでいただいているみなさまあってのこと。
感想や誤植のご報告など、この作品に携わって頂いた皆様に感謝します。
この日、珍しく王蘭の私室には夏侯姉妹の2人が訪れていた。
「それで、今日は春蘭さまはどうなされたのですか………?」
「別に………だな、その。そ、そうだ! お前と秋蘭が付き合ってることでだな、我が夏侯家の名を穢すような事はしていないかを………だな、確認しにきてやったのだ!」
「姉者………もう少し繕うにしてもマシな言い分があっただろうに………はぁ。蒼慈、姉者はな、お前と親睦を深めようとしてくれているのだよ。」
「私と親睦を………ですか?」
「うむ。我らの交際を認めてもらうために蒼慈は姉者と戦っただろう? あれからというもの、仕事での付き合いを除いてはギクシャクしていたように私には見えていてな。昨日姉者にポロッと話をしてみたらこうしてお前のもとにやってきてくれたわけだ。妹思いのいい姉だろう?」
「しゅ、しゅうらぁ~ん………。」
「ふふっ、私としてはこうして姉者と蒼慈の仲がよくなってくれるのは大変望ましい限りだ。だから、今日はできれば3人で余暇を過ごそうと思ってな。」
「なるほど………そういうことでしたか。春蘭さま、ありがとうございます。」
「う、うるさいっ! 秋蘭がどうしてもと言うから来てやっただけだっ。ふんっ。」
頬を僅かに赤く染め、照れた様にそっぽを向く夏侯惇。
それを見た夏侯淵と王蘭の2人はくすくすと笑い合った。
「ふふっ、是非是非3人で過ごしましょう。………さて、では何をしましょうか?」
「お前たちは普段、2人で何をして過ごしているのだ?」
「そうですね………。2人揃ってまる1日休みを取れることはあまり無いので、仕事終わりなんかだとお茶を淹れてゆっくり過ごしたり、まとまった時間がとれる時は、お茶に加えて秋蘭さんがお菓子を作ってくれたりしてますね。あとは………休みがとれた場合は街を出歩いたり、といった感じでしょうか。こうして並べてみると、これといって特別な事はあまりしていませんね。秋蘭さん、すみません。」
「いや、大概はそんなものさ。休みのたびに何か特別な事をしていては身も休まらんさ。ただまぁ、休みだからといってダラダラせずに、こうして何かを共に作ったりと何かしらはしているな。」
それを聞いた夏侯惇は、少し考える素振りを見せるとパッと案を出す。
「ふむ………そうか。であれば、いつも通り2人で過ごすところに私も交ざるだけで良いのではないか? 私がいるからといって、特に気をはらずにいつもどおり過ごすのがいいだろう。」
「なるほど、確かに春蘭さまの仰る通りかも知れませんね。秋蘭さん、如何ですか?」
「私も構わんよ。では姉者の言うようにしてみようか。」
「そうですね。では………今日は何作りましょうか? 秋蘭さん何かご希望はありますか?」
「私か? そうだな………いや、今日は私よりもせっかくなのだ、姉者に聞くことにしよう。姉者は何か食べたいお菓子や甘味はあるか?」
「む? 急に言われると困るな………秋蘭が作ったものならなんでも美味い!!」
「そこについては激しく同意しますが、今日は春蘭さまもお作りになるんですよ?」
「む、そうか………。でも、正直な話私は料理なんぞ全くできんぞ?」
「姉者、良い機会ではないか。ここでしっかりと覚えて、北郷に振る舞ってやったら良いさ。きっと泣いて喜ぶぞ?」
「なっ!? しゅ、ほ、な………なんでそこで北郷の名前が出てくるっ!?」
「あぁ、それは良いですね。是非そうしましょう。では、簡単なところから挑戦してみるのが良いですね。秋蘭さん、何か良い品目はありますか?」
「ふむ………では、杏仁豆腐などどうだろうか?」
「いいですね。この暑い日にピッタリです。ひんやり甘くて美味しいですからね、北郷さんも喜ぶこと間違いなしです。」
「では早速材料の買い出しに行こうか。………姉者、姉者も一緒に行くのだぞ?」
「ちょっと待て! 何がどうなってそうなった!?」
──────────。
街で杏仁豆腐に必要な材料を用意した3人は早速それらを抱えて城の厨房に立つ。
「なぁ秋蘭。材料は別に城の厨房に揃っていたのではないのか………?」
街で一つひとつを夏侯惇自身が購入し抱えてきたのだ。
思ったよりも簡単な材料ばかりを揃えていたことから、そう疑問に思ったのだろう。
「姉者、確かに厨房には既に材料はあったかも知れぬ。だがな、こういうのは自分で実際に見て、買って揃えるからこそ覚えていくものなのだ。自分の手で材料を揃え、それを自分の手でうまく作る。その一つひとつが料理を上達させるコツなのだよ。」
「む、むぅ………そういうものか?」
「そういうものだ。戦闘だって、普段の鍛錬の一つひとつに意味があるだろう?」
「なるほど………確かに。」
「では早速作り始めましょうか! 秋蘭さんは基本的に私たちに手順を教えていただくだけで、手は出しません。春蘭さまにすれば不安かも知れませんが、私も横で一緒に作ってみますので、一緒に頑張りましょう。」
「う、うむ………。ちなみに、蒼慈は料理はできるのか………?」
「い、生きていくのに困らない程度には、というところです………。」
「そうか! そうかっ!! ならば、私も頑張れるな。秋蘭、よろしく頼むぞ!」
そう言って2人は前掛けを身に着けて、調理台の前に立つ。
夏侯淵は2人に杏仁豆腐の作成手順を教えながら、上手くいかないところが無いか目を光らせていた。
………途中、夏侯惇が何かもわからぬような物体、物質を隠し味として入れようとすることが”しばしば”起こったが、夏侯淵と王蘭が必至にそれを阻止。
なんとか無事に作成を完了させたのだった。
そして、早速3人で実食することに。
「お、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 私が作ってもちゃんと杏仁豆腐になっているではないか………!!」
「うむ、姉者の作ったこの杏仁豆腐、しっかり美味しいぞ。自信を持っていい。これならば安心して北郷に持っていける。あやつも喜んでくれるはずだ。」
「そうですね。春蘭さまのお作りになった杏仁豆腐、美味しくできていますね。もし春蘭さまさえよろしければ、この出来上がった杏仁豆腐を早速北郷さんにお持ちなさっては如何ですか?」
自分の手に抱えられた杏仁豆腐と、夏侯淵、王蘭2人の顔を見比べて思案している様子の夏侯惇。
何度か視線をやりとりしたあとに、ようやく決心したようだ。
「そ、そうだなっ! 確かにやつには日頃から世話になっているしな………。うむ! 秋蘭、蒼慈、私はちょっと今日やらねばならぬ用事を思い出してしまったのでな、ちょっと行ってくる事にしよう!」
「そうですか。ご用事ならば仕方ありません。こんなにも美味しく出来ているのですから、もし仮にどなたかが召し上がったとしても、きっとお喜びになるでしょうね。」
「あぁ、きっとそうだな。是非このまま誰かのもとに持っていってやると良いさ。姉者、この辺の片付けは特に気にせずとも良い。その大切な用事、しっかりと済ませてくるといい。」
そう言葉を漏らした2人は、足音が遠く離れていく事を確認してから目を合わせて笑い出す。
北郷のもとにはきっと美味しい杏仁豆腐が届けられたのだろう。
悲鳴ではなく、喜びの声が夏侯惇に届くことを思うと喜ばずにはいられらない2人なのだった。
記念すべき50話目。
春蘭さんと、私的な絡みを描いてみました。
世はお盆ですね。実家の付き合いもあると思います。
そんな流れでちょっと書いてみました( ゚д゚ )
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