真・恋姫†無双 - 王の側にて香る花を慈しむ者   作:ぶるー

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第五十四話

 

 

 

陳留では西涼への進軍に向けて慌ただしく戦の用意が進められていた。

 

その準備も凡その目処がたったこともあり、曹操は夏侯惇を使者として馬騰の元へ遣ることに。

数日が経ち彼女が戻ってくるが、やはり色よい返事は貰えなかったようである。

 

であれば攻めるまで、と、これまでの戦の準備が進められ、いよいよ出陣の日となった。

 

 

「これより我らは西涼の地へと赴き、馬騰と刃を交える! この一戦、我らの覇道における重要な戦いとなるであろう! みな、心してかかるように!」

 

「全軍、前進!!!!」

 

 

曹操、夏侯惇の号令が響き渡る。

軍が進み始める中、それを見送る王蘭と程昱の2人。

 

 

「蒼慈、風。陳留の守りと情報の収集、頼んだわよ。」

 

「はいはいー。華琳さまもお気をつけていってらっしゃいませー。」

 

「ご武運を。馬騰は病に伏せているとの報告もあります。あまり過大な期待は持たれませんよう。」

 

「そう………噂には聞いていたけれど。でも、どちらでも構わないわ。馬騰と戦うことができるのが最も望ましいけれど、この戦は飽く迄過程だもの。では、行ってくるわ。」

 

 

歩兵隊、騎馬隊がそれぞれ動き始め、曹操自身が動き出すまでの僅かな時間で見送りの言葉を掛ける王蘭たち。

彼らは彼らで、ここから大切な役割が待っている。

 

 

 

………。

 

 

 

曹操たちがある程度進むまで見送った王蘭と程昱。

 

 

「さてさてー、華琳さまたち行ってしまいましたねー。風たちもお仕事しましょうかー。」

 

「はい。よろしくお願いしますね。」

 

「蒼慈さんは風たちは何をすべきだと考えますかー?」

 

「そうですねぇ………。一旦城の中に入って状況の整理からしてみましょうか。こういうのはすべき内容を見直して見るのが一番ですよ。」

 

「はいはいー。噂に名高い美味しいお茶を楽しみにしてますねー。」

 

「ふふっ、承知しました。」

 

 

そう言って、城の中でこれからの事について詳細に詰めていくため話し合いが行われることになった。

機会があれば誰でも構わずお茶を振る舞っている王蘭だが、程昱にはそうした機会がなかなかなかった様だ。

 

 

2人は程昱の執務室へと移動し、お茶をすすりながら話を進める。

 

 

「はふぅー。蒼慈さんのお茶は本当に美味しいですねー。これが軍内で噂の王蘭印のお茶ですかー。風もなかなか自信を持っていましたが、これには負けてしまいますよぅ。」

 

「そうなんですね。今度是非ごちそうしてください。最近私、他の方が淹れるお茶って飲んでないんですよね………。」

 

「それはまた今度ですねー。風はいま蒼慈さんのお茶を飲むので忙しいのですよー。」

 

「えぇ、その日を楽しみにしています。さて………お茶を飲みながらでも話を進めましょうか。馬騰攻略、いえ、涼州攻略と言ったほうがいいですか。そちらは大きな問題が発生しない限りは我が軍の勝利で終わるでしょう。いくら騎馬民族との戦い方が特殊だとは言え、あの大軍団で向かわれた華琳さまたちが負ける確率はかなり低いと見てます。」

 

「そうですねー。戦は数、とはまさしく。風も同意するのですよー。」

 

「では………その次に我らが向かうのは?」

 

「劉備さんか孫策さんの所でしょうねー。」

 

「風さんのお考えとしては?」

 

「………風個人の意見としては、孫策さんのところが気にはなりますが、華琳さまの性格を鑑みるに、どちらでもないのではないかとー。」

 

「そうですか………私も華琳さまならそういう展開になると予想しています。ちなみに孫策が気になる、というのは?」

 

「やっぱり情報が入りにくい相手というのは、曹操軍の軍師としてはやはり不気味ですねー。諜報がうまく行かないのであれば、兵数や定石から判断することも多くなって、不確定要素が増えてきちゃいます。風はそれが嫌だなーと思うのですよー。まぁ他の軍だとそれが普通なのでしょうけど、慣れというのは怖いですねー。」

 

「なかなか難しくて………ご不便をおかけしてます。」

 

「いえいえー。むしろいつも助かっているのですよ。」

 

「ありがとうございます。………華琳さま的に、降伏してきた相手に元の領地をそのまま任せるって選択肢はあるんですかね?」

 

「それはまぁあると思いますが、今回検討しているどちらの方も、一戦も交えずに降伏を選択することは無いのではないでしょうかー。」

 

「ふぅむ………孫策さんの所、あれだけ仲間意識の強い軍なら、現状の国土を安堵するとかの条件提示って意外と効果あるのかも、と思ってみたんですが。」

 

「んーどうでしょう? そういう交渉の机についてもらうための戦はどこかで必要とは思いますが、それも案外ありなのかも知れませんねー。でもそれを確実かどうか判断するために、蒼慈さんにはなるべく頑張って欲しいのですよぅ。」

 

「はい………すみません。」

 

「蒼慈さんを責めてるつもりはないので、誤解しないでくださいねー?」

 

「はい、わかりました。………風さんは、私はこれからどう動くべきだと思いますか?」

 

「………ぐぅ。」

 

「風さん、起きてくださいー。起きて助けてくれるなら、きっと良いことありますよー?」

 

「おぉっ!? これまでにない斬新な起こし方ですねー。やっぱり蒼慈さんと一緒にいると飽きなくていいですねー。」

 

「その評価は嬉しいですが、北郷さんに聞かれたら怒られるんじゃないですか?」

 

「別に風はおにーさんにお熱なわけじゃないですよー?」

 

「あれ? そうなんですか?」

 

「はいー。おにーさんに処女を散らした女性たちばかりみたいですが、風は今のところその予定はないですねー。」

 

「おや? そうなのですか。てっきり、曹操軍の女性の皆さんは彼に夢中なのかと。」

 

「まぁ種馬おにーさんですからねー。何か惹きつけられる魔力をお持ちなのは間違いないのですよー。」

 

「ふむ………北郷さん絡みでお手伝いできるかと思って良いこと、と言ったのですが。でもまぁそうならばそれとは別に何か考えるので、風さんのお力を貸してください。」

 

「むー仕方ないですねぇ。………片方ずつ片付けられるならば確実ではあるかも知れませんが、華琳さまの軍と孫策さん、劉備さんの軍を足した戦力差的にはそれを許さないのですよー。華琳さまがお許しになるとは思えませんが、ちょこちょこと相手の戦力を削っていく作戦もあるにはあると思います。ですが、恐らく実行許可はおりませんしねー。………これは困りましたねぇ。」

 

「軍師殿としてはどうすればよろしいとお考えですか?」

 

「こちらがちょこちょこ作戦を実施できないだけで、敵さんはそういう縛りは特にありませんよー? 戦力で劣っているのですから、向こうはなりふり構っていられるはずがないですねー。」

 

「あー………なるほど。風さんもなかなかに容赦ないですね。いや、やはり軍師というのはそうでなくてはならないのかも知れませんが。」

 

「会話の途中で風の考えを読んじゃう蒼慈さんも蒼慈さんですけどねー。」

 

「私の思考もだんだん嫌な感じになってきてますかね………。要は向こうからちょっかい出してくる情報を如何に早く掴むか、ですね。」

 

「ですです。それなら華琳さまとしても、向こうから攻めてきたのを叩きのめしたまでよ! って胸張って言えますからねー。」

 

「ならば、割と軍部機密に近いところまで潜り込まないといけないですね。………突発的なものでもある程度はつかめる程に。」

 

「最も望ましいのは、諸葛亮ちゃんと周瑜さんの近くまで、ですねー。」

 

「諸葛亮については正直に申しまして、既に潜り込み済みですので問題ありません。先の戦いでも、虚偽混じりの地図を置いておけるくらいには。」

 

「おぉっ! そういえばそうでしたー。相変わらずお手の早いことで。いやはや。」

 

「兄ちゃんの下半身と一緒だなぁ!」

 

「これ宝譿。それは種馬の二つ名を持つ北郷さんの方ですよ。蒼慈さんは今の所一途を貫いているのですよー。」

 

「いや、今の所って………。」

 

「秋蘭さまとっても幸せそうですもんねー。いやー風も早くそんな男性と巡り会いたいものですよ。さてさて、蒼慈さん。風はお茶がなくなったのですよー。」

 

「おや、了解です。お待ちくださいね。」

 

 

2人は波長が合うのか、気づけばかなり長い時間話し込んでしまっていた。

王蘭はお茶を淹れなおしながら、今の会話をざっと振り返る。

 

蜀については早い段階から手を出せて居たため、諜報に問題はないと確信しているが、問題はやはり孫策軍。

 

 

果たしてどうすべきか………と考えながら、お湯を汲むのだった。

 

 

 

 

 

 




2人の会話はまだまだ途中ですが、一旦これでぶっち切ります!
風との絡みはなぜか会話が長くなっちゃう…笑
やっぱりあの大戦に向けての内容は長くなっちゃうかもですね。


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