真・恋姫†無双 - 王の側にて香る花を慈しむ者   作:ぶるー

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皆様お久しぶりです。
お待たせをいたしました。本日より投稿を再開致します。

原作もそうでしたが、ここから一気に話が進んでいくと思います。
良ければ、是非最後までお付き合いくださいませ。


第五十七話

 

日が高く昇り、陳留の街並みをジリジリと太陽が照らす。

 

街は人々の活気に溢れ、この大陸で戦が行われていることなど嘘に思えるほど。

曹操の治める陳留は、それほどまでに民の生活を潤しているのだった。

 

 

この日、王蘭の部屋には諜報に放っていた兵士の姿があった。

 

 

「なるほど………。ご苦労さまです。しばらくはこの陳留でゆっくりと体を休めてください。」

 

「はっ、失礼いたします。」

 

 

丁度その報告が終わり、王蘭は内容をまとめ始める。

街の人々に見られた輝かしい笑顔とは違い、険しい表情を浮かべる王蘭。

 

彼のもとに届けられたのは、益州にいる劉備に関する情報。

 

 

「少し軍師の皆さんとお話しますか………。」

 

 

そうポツリとこぼすと、今の報告をまとめ上げた書簡を持って、席を立つ。

ついでに、と、もう何本かの竹簡も手に取り部屋を出る。

 

軍師たちが普段使用している部屋の前に立つと、扉を3度軽く叩く。

 

 

「はいー? 開いていますよー?」

 

 

少し間の伸びたような、可愛らしい声が帰ってくる。

扉を開けてゆっくりと中を除くと、そこには4人の姿が。

 

 

「失礼します。丁度皆さんお揃いで良かった………。少し相談したいことが。」

 

「おやおやー、蒼慈さん。いらっしゃいませー。」

「蒼慈さん、お疲れ様です。」

「お疲れ様。なんかあったの?」

「………ふんっ。」

 

 

軍師たちがそれぞれの反応を返す。

王蘭はそれを特に気にするでもなく、部屋の中央に置かれた机に抱えていた竹簡、書類を置く。

 

また、それを見た軍師たちも特に誰が何を言うわけでもなく、自分たちが手を付けていた仕事に区切りがつくと、誰からともなく机に集まってくる。

王蘭は勝手知ったる様に部屋に備えられている道具を使って、5人分の茶を淹れる。

 

全員が椅子に座り、お茶を一口啜る。

すると、王蘭が話を始める。

 

 

「今しがた、劉備陣営、孫策陣営それぞれに放っていた斥候兵より報告がありました。華琳さまにご報告する前に皆さんのご意見をいただきたく。よろしくお願いします。」

 

「はふぅ。相変わらず結構なお点前でー。何か動きがありましたかー?」

 

「はい。………劉備軍が国境付近へ我々をおびき寄せようと、部隊の編成を始める様です。」

 

「どういうことよ?」

 

「くれぐれも内密に願います。この部屋は特にネズミ取りも強くしているので、他の場所で議論するよりは安全ですが、念の為軍内でも内密に願います。」

 

 

軍師たちの顔を見渡して頷くのを確認する。

 

 

「諸葛亮の独断に近いです。劉備軍が国境付近に軍を進めることにより、我々曹操軍の誰かを偵察としておびき寄せ、あわよくば討ち取るという考えの様です。現在候補に上がっている将は黄忠、馬超、馬岱、厳顔。新参の将ばかりです。」

 

「偵察にやってきたボクたちの将をそこで狙い撃つ、か。新参の将に軍内での実績を積ませたいのかしら………。」

 

「その狙いもあるのかも知れませんね。既存の将と同等として扱うためにも目に見える手柄、実績は不可欠。我々としては逆にこの機を利用して、向こうの将を一人でも削る事ができれば………。大きな戦果となるでしょう。」

 

「確かに。劉備軍には優秀な将が多数いるのが厄介ですからね。蒼慈さんは、その候補ではどの将を狙うべきだと?」

 

「………私としては、特に狙うべきは黄忠、厳顔のどちらかと考えます。理由としては2つ。まず今回の出陣候補に上がっていない新参者に、魏延という将がいるのですが、短慮で短気な性格のようで、既に諸葛亮、馬岱らと仲が良くないとの報告が上がっています。その不和を更に助長させるためにも、魏延を上手く丸め込めるような、同じ立場の老兵が居ない方がこちらに良い結果をもたらすでしょう。」

 

「あんたも大概ね………。」

 

「桂花さんにそう言われると、私も少しは軍師の方々の思考に近づけているんですかね? それからもう一つ。やはり大陸全土で見ても、弓兵の将はどこでも貴重な存在です。我が軍にも弓を扱える将の方は居ても、それを主な得物としている人は秋蘭さんのみ。その事からも、遠隔攻撃を得意とする敵将は少しでも減らしておくほうが良いかと。」

 

「そうですねー。今後は何かと奇襲だったりで弓兵さんは入り用になることが増えそうですし。今のうちに対処できるならそれが1番ですねー。」

 

 

そこで一旦話を区切る。

 

 

「検討すべき内容ですが、まずはどの様にしてこの情報を元に敵軍の将を打ち倒すのか。次に、その作戦実行の部隊をどうするかの2つです。」

 

「………そうね。敵はこちらを釣る事を目的とするならば、ある程度まではそれに乗ってあげる必要があるわ。敵に露見することなく包囲するのは正直厳しいわね。」

 

「そうですねー。細かな戦術は後で検討するとして、戦略としてはある程度は敵の誘いに乗ってあげて、そこから逃げる我々に攻撃を仕掛けてくる頃合いをみて、別働隊の襲撃部隊が横から突撃を入れる感じでしょうかー。」

 

「単純だけれど、単純が故に効果的………ね。今回に於いては私もそれで良いと思うわね。」

 

「ではその作戦を基本戦略としましょう。細かな戦術はこの後、皆さんにお任せ致します。次に部隊編成ですね。偵察部隊として出向く隊はどの隊にするのか、そしてこちらが逆に敵を襲撃する部隊はどの隊にするのか、それぞれの選定が必要です。また、この作戦については情報共有する人数は少ない方がいいでしょうから、最低限の人員に留めた選定が必要になります。」

 

「そうですねー。まず候補に上がってくるのは秋蘭さんじゃないでしょうかー?」

 

「ボクは霞を推すわね。襲撃部隊として神速の名を持つ彼女が適任じゃないかしら。」

 

「あんたたち、せめてどっちの役割について話してるかを言いなさいよ、まったく。………まず、私としても偵察部隊には秋蘭を推すわ。あれは頭も切れるし、武もある。万が一の事があっても、ある程度対処できるわ。」

 

「私も桂花や風と同様、偵察には秋蘭さまを推しますね。」

 

「ふむ………。皆さまは秋蘭さんを推されますか………。」

 

「おやおやー? 蒼慈さんは誰か別の人がいいとー?」

 

「はい。ずばり、私ですね。」

 

「………はぁ? っていうか、あんた指揮とれんの?」

 

「一応これでも斥候部隊の隊長ですし、秋蘭さんの部隊の副隊長も務めてましたからね。と言うか、桂花さんはその時から一緒に仕事してたじゃないですか………。下手に秋蘭さんみたいな重臣が出向くよりも、私の方が自然な感じも出せます。それに、何より我々は無事に生き、情報を持ち帰る事が大事な部隊。森や山の中であっても、他の部隊よりは生存率も高いでしょう。」

 

「………言われてみれば、確かに。正直な話、蒼慈さんの隊が軍の部隊であることをすっかり失念していました。」

 

 

郭嘉がメガネの位置をくいっと正しながら、小声でこぼした。頬にほんのり赤みが刺している。

自軍の部隊のことなのに、忘れていた事が恥ずかしいのだろう。

周りの軍師達の顔を見ても、目線を明後日の方向に向け、同じ様な表情を浮かべている。

 

 

「改めて、如何でしょうか?」

 

「………そうね。偵察についてはボクもあんたの部隊がいいと思うわ。これで秋蘭を襲撃の方に回すこともできるし。」

 

「私も同意見です。………言葉はあまりよくありませんが、蒼慈さんの部隊が出向くに丁度良いかと。」

 

「はいー。風も否はありませんー。」

 

「私もそれでいいわ。じゃあ、あんた行ってきなさい。それよりも襲撃部隊の選定の方が難しいわよ………。春蘭みたいな猪連れて行くわけにも行かないでしょう。」

 

「候補としては………秋蘭さま、流琉、凪、真桜、沙和、霞の6名でしょうか。」

 

「確かに難しいですねー。先程の敵将の中で、馬超さんは武勇で大陸に名を馳せている方ですし、ある程度こちらも戦力を整えなければ負けてしまいますー。最悪を想定するなら霞ちゃんは外せませんねー。」

 

「さっきも言ったけど、ボクも霞を推すわ。あの子沸点越えると猪化しちゃうけど、普段は頭も切れるし用兵も上手い。今回の作戦に適任じゃないかしら。しかも相手が錦馬超だった場合、騎馬戦になるわよ。」

 

「では霞さんと………。もう数名、将が欲しいところですね。」

 

「なら秋蘭と流琉の2人を連れていきなさい。その3人なら特に大きな問題をおこさずに隠密行動も取れるでしょ。」

 

「わかりました。では華琳さまに報告してきます。軍議では劉備軍が国境付近にて発見された報告と、私が出陣することのみお伝えします。霞さん、秋蘭さん、流琉さんの3名については、他の皆にもばれぬ様に出陣いただき、仮に問われた場合には孫策の方の国境偵察に行った、とでもしておきましょうか。」

 

 

蒼慈がそう締めくくって軍師達の顔を見渡すと、それぞれが頷いて答える。

ふと、賈駆が王蘭に問う。

 

 

 

 

「そう言えば、劉備たちはどこに軍を出すつもりなの?」

 

 

 

「これもまだ確定では無いようですが、漢中近くの山で、定軍山だとか。」

 

 

 

 

 

 




さて、いよいよ定軍山のシーンが始まってきます。
既にその情報は掴んで対策を練る曹操軍。
ここから少しずつ原作との相違が出てきます。

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