真・恋姫†無双 - 王の側にて香る花を慈しむ者   作:ぶるー

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第六十四話

 

 

 

陳留の街中を歩く、男女の姿。

王蘭と夏侯淵である。

 

この日2人は、先の定軍山の戦いに於ける褒賞の一部として、同日に休暇を与えられていた。

 

この所、2人に対する褒賞はとりあえず一緒に休みを取らせておけば細かいことは後追いでいいだろう、と曹操に考えられていそうな気がしてならない様だが………。

 

休みが合わずとも、食事をともにしたり、休憩が合えば一緒に茶を飲んだりと上手く付き合えてはいるのだが、それを曹操は知らないが故だろう。

 

しかし実際のところ、休暇をともに過ごせるのはそれはそれでありがたいと思っているので、特に文句を言うわけもなく、ありがたく頂戴している。

 

 

さて、2人が街を歩く目的は食材の買い出し。

王蘭が夏侯淵の作ったご飯が食べたいと言うと、彼女はそれを快く了承。

 

その準備のための買い出しに来ているというわけだ。

 

 

「すごい人混みですね………。心なしか、以前より人が増えていませんか?」

 

「確かにこのところ増えてきているみたいだな。華琳さまのお膝元である陳留は、民の集まるところなのだろうさ。聞くところによると、既にこの光景も当たり前になってきているみたいだしな。………我々も頑張っている甲斐があるというものだ。」

 

「はい。いずれは大陸全土でこれを当たり前にできる日が来るのですね………。楽しみです。」

 

 

真面目な2人らしい会話をしながら、まずは肉屋へとたどり着く。

 

 

「へいらっしゃい! おや、夏侯妙才将軍に王徳仁将軍じゃありませんか! 今日も仲睦まじい様子で何よりでさぁ!」

 

 

威勢の良い店の親父が、2人を見るなり声を掛ける。

夏侯淵は普段からこの店を利用しているのだろう。顔なじみのようで、最近は王蘭も一緒に見かける事が多い事が伺い知れる。

 

 

「あぁ、仲良くやっているよ。店主のところも相変わらず仲が良さそうではないか? さて、今日は何か良い肉は入っているか?」

 

「うちのこたぁ、どうだっていいんですよ! なぁ?」

「えぇそうですよ。ところで、いつ頃お召し上がりになるので?」

 

「ふふっ、そうか。食べるのは今日の晩だな。」

 

「でしたら丁度牛肉が良い塩梅でさぁ! 如何でしょう?」

 

「ふむ………牛か。蒼慈、今日は青椒肉絲などどうだ?」

 

「おぉ、いいですねぇ………。夏の野菜もそろそろ採れなくなってきますし、是非そうしましょう。」

 

「うむ、承知した。では店主、牛肉を頂いていこう。」

 

「へいっ、ありがとうございやす!」

 

 

代金を払い、蒼慈は肉を受け取る。

店主たちに礼を言って店を出ると、次の食材を買い求めてまた街を歩き出す。

 

少し歩いたところで、夏侯淵が先程の2人を思い浮かべながら問いかけた。

 

 

「なぁ蒼慈、この間姉者と食事を共にした時のこと、覚えているか?」

 

 

 

 

──────────。

 

 

 

その日は珍しく、夕食を王蘭、夏侯淵、夏侯惇の3人でとっていたときのこと。

仕事の都合上、遅めの時間になってしまったため、外で食事をすることにしていた。

 

そこでお酒も多少入った3人は、素面でいるときよりもどうやら会話が盛り上がっていた様だ。

黒髪の彼女は”多少”では済まないみたいだが………。

 

 

「なぁ蒼慈ぃ! お前は秋蘭と付き合っれから、しばらく経つのれあろう? こーゆーことを血縁の私が言うのも何らと思うがな? 婚姻や子をなす事は考えんにょか?」

 

 

思わず酒を吹き出す王蘭。

 

 

「にょわっ!? 汚いのら!」

 

 

夏侯淵は、サッと布を王蘭に手渡し、自身も机の上を拭きはじめる。

王蘭は、机や自身の服についた酒を拭いながら、夏侯惇へ返す。

 

 

「も、申し訳ありません………。春蘭さま、急に何を仰るのですか………。」

 

「らって、そうであろう? 男女が恋仲になれば、そろ次は夫婦らろうがっ! であればだなぁ、子をなすのだって、自然の流れらろう?」

 

「姉者、少し飲みすぎだぞ? 大丈夫か?」

 

「飲み過ぎてなろ、ないろ! それにしれも、秋蘭の子かぁ………。きっとかぁいいのらろうなぁ………。」

 

 

にへぇ~っと顔を綻ばせながらそう言うと、ゆっくりと机に突っ伏していく夏侯惇。

王蘭と夏侯淵は軽くため息を突きながらも、憎めぬ彼女を優しく見守る。

 

しばらくすると、彼女からは寝息が聞こえてきた。

 

 

「姉者? ………寝てしまったようだな。蒼慈もすまない、姉者は酔うと絡みだす癖があってな。」

 

「いえ、お気になさらず。承知してますから。それに、こういうところも春蘭さまの魅力の1つですよ。」

 

「そう言ってもらえると、妹としては助かるよ。さて、そろそろ城に戻ろうか。悪いが、抱えてやってもらえるか?」

 

「はい。もちろんです。」

 

 

そう言って城へ戻る3人。

とんでもない問いかけをしたまま眠る夏侯惇を抱えて、夜の道をゆっくりと歩き出すのだった。

 

 

 

──────────。

 

 

 

「あぁ、春蘭さまが酔って寝ちゃったときですよね。覚えていますよ………。」

 

「あのときは姉者が変に絡んで悪かったな。」

 

「いえいえ、本当に気にしてないので。」

 

「その、なんだ。正直、まだその辺は今の状況では難しいところではある。………でもまぁ、そういう生活も、この乱世が落ち着けば考えないでもないのであろうなぁ、とも思うが、な?」

 

「………何としてでも、早く世を平和にしなければなりませんね。」

 

 

半ば冗談で試すように言葉をこぼした夏侯淵だが、王蘭のそれを聞いた彼女は、ほんのりと頬を赤らめる。

ある意味では求婚として取られてもおかしくはない返事。

 

わかってはいたとしても、改めてこうして言葉で意思を伝えられるのは恥ずかしいようで、少しの間視線を落として表情を見せないように歩く姿が、何ともいじらしい。

 

 

「そ、そうだな………。しかしこうして街を見ると、夫婦で運営している店も多くあるものだな。」

 

 

今は考えられない、と伝えているが故に、改めてその時が来たならばしっかりと言葉で伝えてくれるであろうことを今は期待して、話を変える。

 

 

「そうですねぇ。先程の肉屋もそうですし、それこそ春蘭さまと3人で行った食事処も確かそうでしたね。」

 

「あぁ、確かにそうだった。………よく夫婦喧嘩が厨房から聞こえてくる店だったな。味は良いのだがな。」

 

「そうですそうです。でもまぁ、喧嘩しつつも仲がよいのはわかりますから………先程の肉屋とも違って、色々な夫婦の形というものがあるのですね。」

 

「あぁ、それこそこの人が集う陳留の魅力の1つだろう。………ふふっ、お前はどんな夫婦像を思い描くのだ?」

 

「うぇっ!? そ、そうですね………。考えたことなかったですが、私は正直喧嘩ばかりする夫婦にはなり得ないと思いますね。」

 

「まぁ、そうだろうなぁ。」

 

「あとは………すみません、本当に考えたことがなくて、なんとお答えすれば良いのかわからないです………。」

 

 

突然の問いにしどろもどろの王蘭。

その様子をみて楽しんだのか、それとも先程照れさせられた事の溜飲を下げたのか。

はたまた、本当に王蘭の考えを探ろうとしたのかは定かではないが、夏侯淵は軽く笑っている。

 

 

現在この大陸にある大きな勢力は、曹操軍、孫策軍、劉備軍の3つのみとなり、まさに三国時代と呼ぶに相応しい状況になっている。

 

そして、どの国がこの大陸を制するのかの決着の時も、すぐそこにまで来ている。

この話もただの妄想ではなく、実現する日は近いのかも知れない。

 

 

 

 

2人は残りの食材を買い求め、陳留の街を歩いていくのだった──────────。

 

 

 

 

 

 

 

 




拠点フェーズでした。かなりデリケートな部分まで踏み込んでるシーンをば。
ちょっと2人に将来を意識させてみました。

タイムラインは、秋蘭さんが使者としての役目を果たした後の日常のつもりです。


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