真・恋姫†無双 - 王の側にて香る花を慈しむ者   作:ぶるー

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第六十六話

 

 

 

軍議で決定が出たとは言え、実際に璃々を引き渡すためには詳細を詰めねばならない。

期日までの残りの日数を使って、劉備軍、特に鳳統はその対応に当たることになっていた。

 

 

そして、益州の街中にある小さな建物の一室にて。

 

 

「………という結果になったよ、朱里ちゃん。」

 

「うん。ありがとう、雛里ちゃん。………そっか。桃香さまは璃々ちゃんを引き渡すことにしたんだね。これで、考慮しないといけない事が色々と増えちゃったね………。」

 

「うん………。でも、桃香さまならきっとそう言うと思ってたから。もしもあの時、桃香さまが仮に断ってたらきっとそれは私たちがお慕いした桃香さまはもう居なくなっちゃったってことになっちゃうと思うから。だから良かったって思ってる私もいるよ。」

 

「………そうだね。桃香さまの理想を叶えるためにも、もっと頑張らなくっちゃ!」

 

 

鳳統と諸葛亮が昨日の事の顛末を共有していた。

流石に謹慎されている状態とは言え、重要な内容は共有しておかねばならないと、劉備より許可を得て来ている。

 

 

「朱里ちゃん。いよいよ桃香さまの夢の実現、この国を存続を掛けた大きな戦いを覚悟しないと行けない段階に来てる………よね?」

 

「………うん。残された機会はもう1度か、あって2度。そのためにもしっかり策を練らなくちゃ!」

 

 

この人の少ない小屋で軍師が2人。

ただの共有で終わるはずもなく、決戦の日に向けて策を練り始めるのであった。

 

 

 

──────────。

 

 

 

 

所変わって、益州劉備軍本拠の客室。

 

用意された部屋でゆっくりと過ごす程昱と夏侯淵。

彼女たちにすれば、初日の劉備との会合で蒔かなければいけない種は既に蒔き終わっていた。

 

実際のその後の軍議の様子を見られているわけではないが、彼女の受けた感覚では既に軍師と武将とに隔たりが生まれており、その成果は得られたも同然。

曹操軍の軍師たち、特に程昱は次の大戦が劉備軍との決着になると確信していた。

 

 

「さてさてー。秋蘭さまは何かこちらでしたいことはありますかー?」

 

「ん? いや、私の任務は風の護衛だからな。お前が行きたい場所があるなら共にするだけだ。」

 

「そうですかー。風はせっかく滅多に来ない地に訪れたので、街を見て回りたいのですよー。」

 

「そうか。確か、稟と一緒に大陸中を回って居たのだったな。であれば、当時との差を見ておくのも面白いかもしれんな。」

 

「ですー。あと星ちゃん、劉備軍の趙子龍さんも一緒に旅をした仲間なので、交友できるならしたいところですねー。」

 

「そうか、では早速行くか?」

 

「はいー。まずは外出の為に劉備さんのところへ行って報告しましょー。」

 

 

そう行って2人は身支度を済ませて劉備の元へ。

外部の客がいきなりその国の王の部屋に入るわけにも行かないので、侍女に取り次いでもらう。

すると、すぐに面会の許可が得られた2人は劉備に外出したい旨を告げる。

 

 

「街にですか? もちろん、良いですよ! 5日もじっと待っていただくのも心苦しいと思ってたので、是非この街の素晴らしさを体験していってくださいね!」

 

「ありがとなのですー。あ、差し支えなければ趙子龍さんに案内頂けると助かるのですがー?」

 

「星ちゃん、ですか………? 多分大丈夫だと思うけど、どうして?」

 

「以前、見聞を広めるためにこの大陸を旅して回ったのですが、その時のお友達なのですよー。」

 

「あっ、なるほど! 昨日はお仕事の話で終わっちゃったもんね。じゃあ今日はゆっくり仲を深めてください!」

 

 

全力の笑顔で外出と趙雲の案内を許可した劉備に程昱と夏侯淵は礼を言って部屋を出る。

早速趙雲の部屋の前まで侍女に案内をしてもらい、部屋の扉を叩く。

 

 

「む………? 扉など叩いてどうしたのだ? 鍵なら空いているぞ。」

 

「おぉ! この風習は種馬おにーさんの国のものだったのをすっかり忘れていたのですよー。星ちゃん、失礼しますねー。」

 

 

ついつい自国では当たり前になった風習を、癖でやってしまった程昱は、気にした様子もなく部屋にするりと入っていく。

それをみて、クスリと笑った夏侯淵も一言断りを入れて部屋へと入る。

 

 

「おぉ、風ではないか。それに夏侯妙才殿も。今日はどうしたのだ?」

 

「星ちゃん、お久しぶりですねー。昨日はお話ができなかったので、今日は劉備さんに許可をもらって会いに来たのですよー。」

 

「ふむ、そうか。確かに昨日は公の場であったから致し方ない。妙才殿、しばし昔の友との再会を喜んでもよろしいか?」

 

「あぁ、私に気にせず話すといいさ。座らせてもらっても構わないか?」

 

「おっと、これは失礼。客人を立たせたままだったな。今茶を淹れる故、しばし待たれよ。」

 

 

そう言って茶を入れ始める趙雲。

程昱と夏侯淵は椅子に腰掛けてそれを待つ。

 

 

「待たせたな。普段は誰かに淹れてもらうばかりでな。味の保障はできんが許せ。」

 

「はいはいー。頂きますねー。」

 

 

そう言って2人はズッとお茶を啜る。

 

 

「おー、やはり土地が変わればお茶の味も変わりますねー。」

 

「あぁ、そうだな。この地でも茶はやはり流行しているのか?」

 

「む? まぁそうだとは思うが。風よ、お主そんなに茶にうるさかったか?」

 

「ふふふー。我が軍には茶の名手がいるのですよー。風の我儘で良く淹れてもらうので、舌は肥えてるかもしれませんねー。ねー、秋蘭さま?」

 

「ふふっ、そうかもしれんな。」

 

「むぅ………?」

 

 

首をかしげる趙雲に、誰かを思い浮かべて笑い合う程昱と夏侯淵。

それからしばらく、程昱と趙雲は別れてからの話や、近況について報告をし合う。

 

反董卓連合の時代くらいから軍務をしていた趙雲は、そのあたりを遡りながら面白おかしく話を進める。

流石の話術で、程昱も夏侯淵もその話に聞き入ってしまっていた。

 

 

「おぉ、そう言えば先程の反董卓連合で思い出した。王徳仁殿だったかな、彼は御壮健か?」

 

 

ニヤッと夏侯淵の方を一瞬見た程昱が答える。

 

 

「はいー、お元気ですよー。何を隠そう、彼がその茶の名手なのですー。機会があれば星ちゃんにも是非飲んで欲しいのですよー。」

 

「ほう、それは良いことを聞いた。次会うときにメンマでも手土産に持っていけば、馳走頂けるかな?」

 

「相変わらずメンマなんですねー。お優しいのできっと大丈夫ですよー。………さてさて、近況についてはよくわかったので、そろそろ風たちは街へと出たいのですよ。」

 

「街へか? 案内はどうするのだ?」

 

「おぉっ! すっかり忘れていました。劉備さんに、星ちゃんの案内の許可ももらってきたので、是非案内してくださいー。」

 

「そうか、承知したぞ。では早速参ろうか。」

 

 

 

そう言って出かける事にした3人。

街の様子から、何を探ろうとしているのか、はたまたただの観光なのか。

 

 

いつも眠たげな目をしている彼女にしかそれはわからないが、益州の街を練り歩く。

 

 

 

 

「あ、そうだ。お茶屋さんは寄ってくださいー。お茶っ葉は先の茶の名手さんへのお土産にするのですよー。ねー秋蘭さま?」

 

「だな。案内よろしく頼むよ。」

 

 

 

 

 

 




伏竜鳳雛が人に隠れて作戦を練り練りし始めましたねぇ………。

風ちゃんと秋蘭さんのまるで拠点かのようなゆるゆるした日常でした笑


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