真・恋姫†無双 - 王の側にて香る花を慈しむ者   作:ぶるー

72 / 86
第七十二話

 

 

 

「………皆! 祭の死を無駄にはしないわよ!」

 

「はっ! 総員突撃用意! 祭さまの仇討ちだっ!」

 

「祭殿の死に様に倣え! 我らが身、我らが血、我らが魂魄! 孫呉の誇りの全てを賭けて、曹操どもをこの江東から叩き出してやれ!」

 

 

黄蓋が射られるまでの一通りを目の前で見せられた孫策軍が、曹操軍へと突撃の用意を始める。

皆が皆、宿将への想いを胸に士気を高ぶらせている。

そこに………。

 

 

「く………っ! 遅かったか………。」

 

「関羽! 我らに力を! 祭の弔い合戦だ!」

 

「そんな………桃香さまっ!」

 

「うん! 皆、攻撃の準備を!」

 

 

劉備軍がようやく孫策軍に追いつき、船を並べる。

呉の士気につられ、劉備軍もすぐさま戦闘用意を整え始めた。

 

 

 

 

………。

 

 

 

 

「………華琳さま、お叱りは如何様にも。」

 

「武人の恥を雪いだこと、どう叱れというの?」

 

「はっ………。」

 

「いよいよこの戦いも決着がつく時よ。存分にその力、私のもとで発揮なさい。」

 

「御意。」

 

 

 

 

「聞けっ! 魏武の精兵たちよ! 敵将の誇りある死を心に刻め! その誇りに倣い、我らも自らの誇りを天に向かって貫き通す! 己を信じよ。己を信じる戦友を信じよ。そして、覇王たるこの私を信じよ! その誇りと共に、進め! 魏武の兵たちよ!」

 

 

 

 

いよいよ、この赤壁の戦いの決着が迫る。

 

 

 

 

 

──────────。

 

 

 

 

 

「せいっ!」

 

「はああっ!」

 

 

戦の大勢は曹操軍の勝利として決まりつつある。

 

元々は火計によって被害を大きくさせ、そこに一撃を入れる算段だった孫策軍。

そこに劉備軍の諸葛亮、鳳統の作戦による連環の計も合わさって、その威力は計り知れないものになるはずだった。

 

だが、事前にそれを見破った………いや、その作戦を事前に知った王蘭の活躍により、曹操軍はその作戦を見事打ち破る。

上手く行かなかった場合も想定はしていたのだろうが、そこにきて黄蓋のあの場面を見せられた孫策軍。

 

士気はこれ以上ない程に上昇を見せたが、それ故に劉備軍との足並みが揃わず、結果的に無茶な突撃を繰り返してしまう事になった。

 

そうなっては曹操軍の独擅場。

荀彧、賈駆、程昱、郭嘉の4名の軍師たちが、それぞれの戦場でその才を発揮する。

 

策を打ち破り、力でも凌駕する。

これぞ覇王たる戦い方をまざまざと見せつけられる形となった孫策軍と劉備軍。

 

そしていよいよ撤退をせねばならない所まで来るも、孫策と夏侯惇の戦いは未だ決着がつかずにいた。

 

 

「………くっ、本当に容赦ないわね。」

 

「当たり前だ! 貴様への借りは、官渡のあの時に全て返したと言ったはずだ!」

 

「………確かにね。」

 

 

そこに、夏侯淵がやってくる。

 

 

「姉者、無事かっ!」

 

「夏侯淵………っ! ちょうど良い。祭の仇、討たせてもらうわよっ!」

 

「はっ! この私を差し置いて秋蘭に剣を向けるのか! 今のお前の様な濁った眼で我らに勝てると思うなよ! はあああっっ!!」

 

「………くっ!」

 

「もらったぞ、孫策………!」

 

 

夏侯惇の愛刀、七星餓狼が孫策の首を狙い振り下ろされる。

 

 

だが………。

孫策の首にそれは届かずに、突如現れた戦斧に弾かれる。

 

 

「ふぅ………間に合ったか。おい孫策、貴様まだ死んではおらんだろうな?」

 

「な、なんであんたがこんな所に………。」

 

「何でも何も、軍師殿の命令だからだ。まったく………断れんことを良いことに、この私に孫策を助けろなどと………。面倒な事を言ってくれるものだ。」

 

 

急な衝撃に仰け反ってしまった夏侯惇。

体勢を整えて、自らの一撃を弾き返したその人を見る。

 

 

「貴様………華雄!!」

 

 

突如として現れ、孫策の身を守ったのは華雄だった。

孫策自身も、相手が相手故に、咄嗟に身を構えて華雄に対峙する。

 

 

「そんな事してる暇があったらさっさと逃げろ馬鹿者が。周りも見られておらんとは、貴様にこそ”猪”の二つ名が相応しいかもしれんなぁ………? まったく、貴様のところの将は皆撤退を進めていると言うのに。………それにだ。良いか! 孫堅にやられた借りは最早貴様にぶつける他にないのだ! 妹の孫権や孫尚香では話にならん! こんなくだらん所で死ぬよりも、私に殺されろ!」

 

「ぐっ………。」

 

「丁度貴様の軍師も迎えに来たようだな………ここは私が引き受けてやるからさっさと退け。」

 

「雪蓮! 一度ここは退くわよ!」

 

「冥琳! でも………祭の仇も討てないままで………!」

 

「ここであなたまで討たれたら、祭殿の想いはどうなる! 情に流されることも時には必要だ。しかし引き時を見誤れば、致命的な失策となる。」

 

「そんなゴタゴタはあとでやってくれ。敵は夏侯惇だけではないのだ。私も貴様を逃したあとは撤退せねばならんのだから、さっさとしてくれ。」

 

「そう簡単に逃がすはずなどないだろうっ! でええええええいっ!」

 

「ふんっ! ………夏侯惇よ。汜水関に虎牢関と………貴様らの軍には反董卓連合の時、世話になったなぁ?」

 

 

夏侯惇の攻撃を受け止め、ニヤリとしてみせる華雄。

 

 

「ぬっ! 貴様っ………! まるであの時とは別人の様ではないか。」

 

「私が今日までただ無為に過ごしていたと思うなよ? 劉備軍………あそこには多数の武に優れた将が居るのだ。呂布は元より、関羽に張飛、趙雲に魏延、それから馬超………毎日戦う相手に困らんのだ。これで武が鍛えられない訳がないだろう?」

 

 

そのまま武器を弾き返し、夏侯惇と華雄の戦いが始まった。

 

数合を打ち合えば、互いの実力が見えてくるというもの。

 

だがそれは拮抗しているらしく、形勢は中々に傾かないでいる。

そこに、撤退の殿を務めるべく関羽がやってくる。

 

 

「華雄! まだ撤退できんのか!」

 

「くっ………関羽もここに加わるのかっ!」

 

「孫策たちが無事に撤退を開始すれば、こちらも下がれる。」

 

「孫策殿! 周瑜殿! お早くっ!」

 

「雪蓮っ!」

 

「………わかったわ。撤退するわよ!」

 

 

 

 

──────────。

 

 

 

 

こうして孫策軍は無事撤退を完了させ、自軍の城である建業へと戻っていった。

そして殿を務めた関羽と華雄も、夏侯惇と夏侯淵の攻撃をなんとか掻い潜り、劉備軍本陣へと合流。

劉備軍も益州成都へと戻ることに。

 

赤壁での戦いは曹操軍の勝利として結末を迎える事になった。

 

 

そして、船団の火事が収まったのは結局夜が更けてから。

その間に簡易的な軍議を開き、今後の進路については兵や将たちから強く希望があり陸路で進む事になった曹操軍。

 

 

 

 

こうして、次の戦いの舞台は建業へと移される。

 

 

 

 

 

 






前の話の末尾、あとがきは書きませんでした。

祭さんのあのシーンを見て感じる気持ちを邪魔したくなかったので。
何度見ても、あそこのシーンは涙が出ます。結果、結末わかってんのにね…。

そんな私の自己満足!

さて、ようやくかゆうまさんご登場。
存命確認だけされてましたが、覚醒しての登場となりました。

シリアスが抜けちゃうので、書いてたのに削除しちゃったシーンここで書かせてください………。

──────────

華雄「劉備軍………あそこには多数の武に優れた将が居るのだ。呂布は元より、関羽に張飛、趙雲に魏延、それから馬超………毎日戦う相手に困らんのだ。しかも諸葛亮と鳳統が私の書類仕事を勝手に片付けてくれるのだ! これほど私にピッタリの軍があるか!?」

春蘭「む…いいなぁ…。」

秋蘭「姉者…。」

──────────

そりゃー日がな一日劉備軍の猛者たちと戦いに明け暮れてたら嫌でも強くなりますわな。
という、独自設定でした。
また活躍して頂く機会が訪れると良いですが、さてはて…。


Twitterやってます。気軽にフォローしてくださいまし。
@blue_greeeeeen

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。