真・恋姫†無双 - 王の側にて香る花を慈しむ者   作:ぶるー

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第七十四話

 

 

孫策軍と曹操軍の戦いの火蓋が切られた。

 

 

だが、そもそも赤壁で劉備軍と合同で初めて曹操軍の兵数と互角に渡り合える状況だったのだ。

それが孫策軍単独となると、その戦い方や結果も自ずと見えてくるもので………。

 

 

「くっ………やはり兵数の差は大きいわね………。建業への退路も塞がれてしまっている………か。」

 

 

戦場を自陣から見る周瑜が、堪らずにそう零してしまう。

兵数もさることながら、それをまとめる将の数も多いのが曹操軍の強みでもある。

 

船での戦いとは打って変わって、水を得た魚のように生き生きと戦場を駆け回る将たちの姿は、味方であれば頼もしく、敵であれば脅威に見えているのだろう。

周瑜が事前に用意した策も、4人の軍師がそれぞれの持場で打ち破っていくさまはまさに痛快。

 

赤壁の戦いから間もなくということもあって、大掛かりな策をうてなかったのも孫策軍にとっては手痛いものだった。

 

曹操軍は孫策の猛勇、周瑜の神算を前にしても決して慌てる事なく、それこそいつも通り、自らが自ららしく戦いを進めていった。

そして、いよいよ………。

 

 

「これが曹操軍の実力って奴ね………赤壁はこちらの策の裏をかかれた所が大きいと思っていたけど、力でもこうも圧倒的とはね。」

 

「雪蓮………。」

 

 

周瑜に合流した孫策が、ポツリとこぼす。

戦場のどこを切り取っても劣勢であり、例えまだ続けられたとしても、このまま長引けば誰の目にも結果は明らかとなってくるだろう。

 

特に周瑜は頭が切れるが故に、痛いほどにその現実を突きつけられており、その表情は決して喜ばしいものではなかった。

 

 

「も、申し上げます! て、敵軍より使者が………。」

 

「は………? ね、ねぇ冥琳。戦いって、まだ終わってない………わよね? むしろ今も剣戟の音聞こえてる………わよね? これってその使者斬って良いのかしら?」

 

「………い、いや、どうだろうか………。この状況で曹操軍の使者を斬り捨ててしまえば、あの曹操の逆鱗に触れてしまうだろうし、やめておく方が良いのだろうが………。」

 

「そう………じゃ、良いわよ、呼んじゃって。」

 

 

こうして、戦時中でありながらも孫策軍は曹操からの使者を受け入れたのだった。

 

 

「失礼するのですよー。」

「失礼致します。」

 

 

こうして孫策の元を訪れたのは、程昱と王蘭。

何時も通りの伸びた声と、物静かな声で挨拶をする。

 

 

「あっ………。」

 

「む、どうした明命? あの使者のことを知っているのか?」

 

「あ、いえ。何でもありません………。」

 

 

甘寧から聞かれるも、今の主題とは異なるだろうと飲み込んだ周泰。

王蘭も周泰の姿を認めており、やはり互いの軍の将だったか、と納得する。

 

 

「お目通り叶いましてありがとうございますー。風は程仲徳と申しますー。」

 

「我が名は王徳仁。程仲徳の護衛として参りました。」

 

「我が名は孫策。………で? こんな状況で使者を送ってくるだなんて、曹操はどういうつもりなのかしら? あなた達も斬られたいの?」

 

「いえいえー。風はまだまだ死ぬつもりはありませんのでー。風はですね、皆様方に降伏勧告に来たのですよー。」

 

「降伏………だと?」

 

「はいー。すでにこの戦の大勢は決まっており、これ以上の戦いは無用な血を流すだけになります。であれば、まだ理性的に物事の判断がつく今のうちに、降伏のための交渉を持ったほうが良いだろうと言うことなのですよー。」

 

「そう。………残念だけれど、戦前の舌戦でも言ったけれど、命惜しさにこの江東を差し出すわけにはいかないの。」

 

「はいー、それは承知しているのですよー。ですが降伏して頂けるのであれば、ある程度そちらの条件を飲む用意はありますよー?」

 

「へぇ………じゃあこの江東一帯を丸々見逃してくれって言ったらどうなるのかしら?」

 

「孫呉の皆さんが江東を条件にこちらに降って頂けるのであれば、検討の余地はありますよー。」

 

「………何だと?」

 

「華琳さまはこの大陸の覇を唱えているのであって、抵抗する勢力や敵が憎いわけではありません。こちらの考えに従えぬ、という相手に対してのみ剣を取り、弓を取るのです。武威を示し、それによってこちらの考えに従うと態度を改めて頂けるのであれば、何も最期まで戦う必要は無いのですよー? ちなみに、武威を示すための戦い。それが先の赤壁や、今回の戦になりますねー。そして、これが最後通告ととっていただいても構いませんよー。」

 

「では、曹操に歯向かわない限り、この江東の地はこれまで通り孫家が治めても構わない、というのかしら?」

 

「はいー。黄蓋さんが降伏して来た時、孫策さんたちを打ち破ったあとの江東を治める気は無いかしら? なんて言ってましたし、それでも構わないと考えているのではー?」

 

「雪蓮………少し冷静になって考えてみても良いのかも知れんぞ、これは。………程昱殿、こちらが折れるための条件を飲む用意があることは理解した。逆に、そちらの条件もあるのだろう?」

 

「はいーもちろんです。まず絶対条件として、華琳さまの大陸制覇に従って頂くこと。その後も大陸に平和をもたらすために、原理原則の部分で華琳さまの考えに従って頂くこと。」

 

「原理原則、ねぇ。やけにボヤけた言い方にするのね? 後出しでそれはダメ、あれはダメとか言ってくるんじゃないでしょうね?」

 

「待て、雪蓮。逆に考えることも出来る。曹操に歯向かわず、基本的な考えにさえ従っていれば、統治手法などは好きにしても良い、とな。」

 

「冥琳………それってどういうこと?」

 

「原理原則とは事細かに決められているものではないだろう。根本的な部分が曹操の考えに反していない限りは、この江東独自の法の整備も認める、ということになる。………つまり、例えばこれまでの孫呉の考えが、曹操の認める原理原則と反する部分がもしなければ、これまでとなんら変わらぬままでも良いということさ。」

 

「風のお役目は、まずはお二人に交渉の机まで来てもらうことなので、ここでいたずらに発言することはないのですが、主と従はよーくご理解くださいねー? さて、孫伯符殿、周公瑾殿。まずは交渉の場を持って頂けますかー?」

 

 

周瑜は頭を回転させ、孫策に向かって頷いてみせる。

 

 

「いいでしょう。交渉の機会を持つことを受け入れます。皆も、それでいいわね?」

 

 

 

 

こうして交渉の機会を持つことで合意した孫策と曹操。

すぐさま戦を停止し、翌日早速その場を持つこととなったのだった。

 

 

 

 

──────────。

 

 

 

 

交渉は驚くほどあっさり終了。

事前に条件として程昱が概要を説明していたこともあり、江東の地は孫家が継続して統治することが許された。

 

しかもそれだけでなく。

孫策たちは降伏する側であることから、主要な江東のみを対象として考えていたのだが、曹操は更に江南の地も任せると言い出し、それは孫策たちを驚かせたものだった。

その驚きやら呆れやらの表情は、どれも曹操を大いに楽しませたのだとか。

 

代わりに、孫策軍は内政の勉強という名目で、孫権を陳留へ長期派遣することを決定。

名目は勉強のため、としているが誰の目から見ても人質であるのは明らか。

だがこれまで袁術のもとで耐えてきた事を考えると、同じ人質であっても破格の対応となるだろう。

実際、年に数度であれば江東へ戻る事も許可されている。

 

 

 

その他にもいくつかの確認が行われ、双方が合意。

こうして、建業での戦いは曹操軍の勝利で以て閉幕されることとなった。

 

 

 

残すはいよいよ、劉備軍のみとなった曹操軍。

 

大陸をその手に収める時が目前に迫っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ついに孫策軍攻略完了!


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