真・恋姫†無双 - 王の側にて香る花を慈しむ者   作:ぶるー

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第七十五話

 

 

 

建業の戦いを終えた曹操軍。

 

通常であれば建業の統治作業を始め、周辺の領地に対しても制圧すべく軍を進めなくてはならない。

だが、今回は孫呉一国が丸々曹操軍へと降伏したためにそういった制圧行動を取る必要がなく、直ぐ様次に向けた行動が取れる状況にあった。

 

赤壁、建業と戦が続いては居るものの、兵数で圧倒する曹操軍の損失は少ない。

また、大陸一の領地を誇る曹操軍の経済の力は凄まじく、様々な物資がこの建業に向けて運び込まれていた。

 

そうなると、あっという間に次戦に向けた準備が整っていき、夏侯惇などは既にその逸る気持ちを抑えられないようで、鍛錬にもそれが表れている様だった。

 

建業へ運び込まれているのは物資だけにとどまらない。

陳留から優秀な文官もこの建業へと呼び寄せており、江東内での統治作業の共有、引き継ぎなどを行っていく。

 

こうして、着々と江東での必要な作業が進められていった。

 

 

「………そろそろ、劉備軍に向けて軍を動かすべきね。冥琳、国境付近に拠点にできるような城はあるかしら?」

 

 

降伏してきた孫呉の主だった武将らも、早速取り立てているあたりは流石といったところ。

つい先日まで敵軍の筆頭軍師だった周瑜に対しても、別け隔てなく対劉備軍の作戦を練るための軍議などに参加させていた。

 

 

「ふむ………いくつか候補となる城はあるが、有力な候補足り得る城は、ここだろう。」

 

 

そう言って地図上に示された城を指し示す周瑜。

それを見た荀彧、賈駆、郭嘉、程昱らも考えを巡らせ、合意する。

 

 

「では、この建業での作業に区切りが付いた将たちからその城に向けて移動を開始なさい。準備が整い次第、益州に向けて侵攻を開始するわ!」

 

 

こうしていよいよ益州攻略へと取り掛かる。

 

 

 

 

──────────。

 

 

 

 

「桃香さま、曹操軍は建業の城から着々と国境付近の城へと兵士、物資ともに移動を開始している模様。整い次第、こちらに向けて兵を動かしてくるものと思われます。」

 

「そっか………いよいよ、なんだね。孫策さんたち、どうして私達のところにきてくれなかったんだろうなぁ………。」

 

「恐らく、孫策さんたちは江東の地の安堵を約束されたのでしょう。だとすれば、こちらに合流する理由もなくなったのではないかと………。」

 

「ふんっ、どうせ曹操の大軍に押し寄せられて日和ってしまったに違いない。そんな軟弱な軍のことなど、考えるだけ無駄だっ!」

 

「焔耶ちゃん………。」

 

「それよりも、だ。いよいよこちらに向けて軍を動かしてくるならば、こちらも迎撃の用意をするべきだろう。軍師殿には良い考えがあるのだろうな?」

 

「………はい。では策を申し上げます。」

 

「あぁ、無論裏工作などして勝手な行動は無いのだろうな? そんな事をしては、また桃香さまの大事な兵が無駄に死んでいくことになるんだ。事細かに説明して、しっかり納得させてくれよ? 諸葛亮殿。」

 

「………申し上げます。敵が拠点としていると思われる城が、国境付近に位置するこの城。ですのでこちらとしては………。」

 

 

益州の城にて。

劉備軍も曹操たちが軍を動かしている事を察知して、緊急の軍議が開かれていた。

 

その雰囲気は殺伐としており、同じ軍でありながら敵とも味方ともわからぬ雰囲気が漂っている。

軍議に際して、皆に茶を配ってまわる孫乾の姿もそこには見られており、困り顔の劉備、諸葛亮、鳳統らを見て心を痛めているのか、悲しげな表情を浮かべている。

 

これほどまでに内部が分裂しているのは、諸葛亮のとった策に対して結果が伴っていないこと、そしてそれが独断で行われていた事が原因ではある。

だが、それを過剰なまでに糾弾しているのは魏延。正義感の強い彼女だからこそ、物怖じせずに発言できるのは美点ではあるのだが、行き過ぎてしまっているのは気の所為ではないだろう。

 

これに対して、最初は馬岱らが反発しては居たものの、実際に作戦に失敗した時の人員だったこともあり、そこを突かれては強くも出られず。

徐々に聞き流すだけになっていってしまった。

 

 

「………以上です。皆さんご理解、ご納得頂けたでしょうか。」

 

「ふむ………いいだろう。これで桃香さまをお守りできるのであれば、言うことはない。」

 

 

こうして、諸葛亮、鳳統らが考えた作戦が事細かに伝えられた。

たった1人の武将に対してでも、作戦の理由、選択した経緯、行動の背景などを細かに説明していくその様は異様と言うほかないだろう。

 

どこの軍に、軍師の考えの全てを共有しなければならない軍があるというのか。

 

それ程までに今の劉備軍は狂っている状況の様だった………。

 

 

 

 

──────────。

 

 

 

 

 

「いよいよ、劉備たちとの決戦か………。」

 

「えぇそうよ、一刀。乱世の終着はまさに目の前にまで来ているわ。そのためにも、確実に劉備軍に打ち勝って、大陸の平和を手に入れてみせるわよ。………さて、春蘭。」

 

「はっ! これより劉備軍攻略に向けての軍議を開催する!」

 

 

夏侯惇の声が、国境付近の拠点として使っている城の玉座の間に響き渡る。

そこには主だった将の全てが並んでおり、呉の将たちも数名顔を見せていた。

 

夏侯惇の開催の宣言を以て、まずは筆頭軍師の荀彧から状況の説明がなされる。

 

 

「まずは我が軍の状況についてご説明します。先日の建業攻略で孫呉一帯がそのまま我が軍へと降ったことにより、一国分の領地がそのまま我が方の領地に。さらに、将兵らもそのまま我が軍に加わったため、こちらの国力、兵力ともに大幅な増強に成功したと言えるでしょう。陳留から再招集した兵数、今回参戦している雪蓮、冥琳、明命、亞莎の4部隊を加えて、総兵数はおよそ50万に上ると思われます。」

 

「50万ね………。敵の状況はどうかしら?」

 

「それについてはボクから報告するわ。敵の将に誰がいる、だとかはもう既に皆知ってるだろうし省略するわよ? それで、敵の内部状況なんだけど、どうやらここに来て内部分裂は更に激しくなってるみたいね。報告によれば、益州に劉備が入るくらいの辺りで加入した新参の魏延って将がいるんだけど、これがわりと………猪系の武将で、短慮で短気、しかも正義感が強いときて、まぁ面倒な将ね。定軍山の戦いで黄忠を捕らえたけれど、それ以降も何かと諸葛亮や馬岱とやりあってるって報告がきてるわね。それもあって、今回のボクたちへの防衛戦でもあまり重要な位置には配置されてないらしいのよね。」

 

「な、なぁ詠よ………。何故一度こちらをチラッと見たのだ? なぁ………。」

 

「………そう。敵の不和………ね。一致団結している敵よりも遥かに勝算は高いわね。」

 

「華琳さまぁ………。」

 

「そうね。雪蓮たちもこうしてこちらに降った事で、桂花の言った通り力量差は圧倒的。戦なんてしなくても、降伏させられるんじゃないかしら?」

 

「それは微妙なところです。その辺については私からご報告を。………敵の諸葛亮、鳳統らには最早降伏の選択肢はない状況にまで追いこまれているようです。ですのでこちらがどれだけの大軍勢で押しかけようとも、彼女たちに反対する魏延を始め、武に誇りを持っている将らがそれで折れてくれなければ難しいでしょう。その証拠に、直近行われたらしい軍議においても、諸葛亮らは武官たちの顔色を伺うように、事細かに作戦の説明をしなければならない様子だったと報告があります。まぁ正直な話、末端の将にまで懇切丁寧に説明をする作戦など最早作戦と呼べるものではないでしょう。我々にとってそれはただの予定表でしかありません。」

 

 

王蘭の口から、蜀の直近の状況が報告されていく。

また、その作戦の内容についても共有していき、曹魏の一同はそれを聞いて準備を進めていくことになった。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ華琳殿………。蒼慈殿、お主はいったい何者なのだ? どうしてそこまで蜀の内情が分かっているのだ?」

 

「そう言えば雪蓮や冥琳は蒼慈が何者なのか知らないんだったわね。いいわ、この際だからしっかり自己紹介なさい。」

 

「自己紹介………ですか。そうですね………この曹魏における斥候専門の部隊を率いております。」

 

「斥候専門………?」

 

「えぇ。思春殿、明命殿ならばよくご存知なのではないでしょうか………?」

 

「明命、そうなのか?」

 

「はい………確かに曹操軍からは数え切れない程の斥候兵が我が城に放たれているようでした。その多くは思春殿と協力して対処ができていましたが、その対応のために貴重な兵をその対策に回さないといけない事が多くて、苦労していました。」

 

「ふむ………そうだったか。だが、それにしても劉備軍の内情に詳しすぎるのではないか?」

 

「冥琳、別にいいじゃない。お陰でこっちは楽に戦を進められるってことでしょ?」

 

「雪蓮………確かにそうではあるが、私も軍師としてここに参加している以上、信用のある情報なのかどうかは確かめる必要があるだろう。」

 

「ふふっ、冥琳殿の仰る通りですね。………それはですね、劉備軍幹部に近い位置に我が軍の斥候兵を忍ばせる事に成功しているから、なんです。ちなみに………この場でその兵が誰なのかを知っているとすれば、私と秋蘭さんだけですね。」

 

「私か? ふむ、だとすると………やはりあれは我が軍の兵だったのか。なんとなく見覚えがある、くらいの状態だったので確信は持てていなかったが。」

 

「はい。ということで冥琳殿。情報の出処やその内容についてはほぼ間違いない情報として考えて頂いて構いません。これまで孫呉のみなさんには情報戦で苦しめられましたが、対劉備軍に於いてはその優勢を遺憾なく発揮できるものと思われます。」

 

「そ、そうか………。」

 

 

「全容はいずれ皆さんにもご報告しますが、まだその時ではありません。では続けましょう………。」

 

 

 

こうして既に劉備軍の動きを掴んでいる曹操軍。

それに対応するための作戦がその場で次々と決まっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




いよいよ劉備軍攻略へと移っていきます!
戦い前のシーンこそ王蘭さんの活躍の時!

そして、前の話投稿日間違ってて申し訳ないです…笑
ろくに確認もせずに投降しちゃいました( ゚д゚ )気をつけます!


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