お返事中々出来てませんが、しっかりすべて読ませて頂いています。
残りわずか、誠心誠意書き上げておりますので、最後まで是非お付き合いくださいませ。
「どけっ、夏侯惇! 私は今すぐに桃香さまの元へと向かわねばならんのだ!」
「そう簡単に行かせてたまるかっ! 華琳さまより、貴様をここに留めておくように言われているのだからなぁ!」
「くっ………ならば、押し通るまでっ!」
「来い! 関羽っ!」
「でぇやぁぁああああ!!」
関羽の青龍偃月刀と、夏侯惇の七星餓狼がぶつかり合う。
互いの力量はほぼ同じ。通常であればしばらくの間はその状態で硬直しあうのだろう。
………だが、青龍偃月刀が直ぐ様弾き返されてしまう。
「何だその太刀筋は! これが貴様の実力だとでも言うのか!!」
「ぐっ、くそ………全く、面倒な奴め。さっさとそこを退け! 桃香さまが………!!」
「………もう良い、見損なった。先程まで貴様程度をこの場に留まらせることに手こずっていた事実が恥ずかしくてならん。我が恥を雪ぐためにも、さっさとこの場で切り捨ててくれる。さぁ早く武器を取れ、関羽。丸腰の将を切った所でなんの意味もなさんからな。」
「好き勝手に言ってくれる………!」
再び武器を構える両名。
魏武の大剣として戦場に立つ以上、彼女の双肩には愛すべき主の曹操の名誉、名声が掛かっているのだ。
一太刀一太刀が、その重みを持って相手を攻め上げる。その太刀筋が軽いはずがない。
それに対して自らの主人の危機に、心ここにあらずの状態で相対する関羽。
そんな状態では、簡単にあしらわれるのも無理はない。
魏武の大剣、夏侯惇は甘くはないのだ。
そして、2人が踏み出そうとしたその時。
「おーい、しゅんらーん。華琳が劉備と一騎打ち始めたから、もう足止めせんでえぇってさー。」
2人の元に聞こえてきた声は張遼のもの。
「む、霞。それは真か?」
「おう。うちんとこに報告来たから、ついでに春蘭にも伝えにきたっちゅーわけや。」
「ふん………関羽、よかったな。ここで無様な死に様を晒さなくてよくなったぞ。もう好きにしろ、どこへでも行けば良い。」
「貴様ぁ………! この勝負預けておく! 次会った時には決着をつけてやる!」
「ふん、貴様なぞもうどうでも良いわ。さっさと消えろ。」
そう言って関羽は部隊をまとめて劉備の元へと駆けていく。
「さて………我らも華琳さまのところへ向かうとしようか。華琳さまが動いたのならば、もはや最後の局面だ。」
「応よっ!」
──────────。
ガキィィィイン!!
武器のぶつかり合う音が響き渡る。
「きゃああっ!」
「………もうおしまい?」
「はぁ、はぁ、はぁ………まだまだぁ………っ!」
劉備の様子から、既に何合も何合も打ち合っている事がわかる。
曹操は流石という所、全く息を切らす様子もなく、劉備の攻撃に付き合ってあげている様子。
そこに、戦場から劉備軍の将、曹操軍の将達が続々と集まってきており、今しがた到着した関羽が慌てて駆け寄ってくる。
「桃香さまっ!!」
「はぁ、はぁ、あ、愛紗ちゃん………。」
「そんなにボロボロになって………くっ、おのれ………曹操っ!」
「………何かしら?」
「桃香さま、私にお任せください! この様な輩、我が偃月刀で………!」
「はぁ………全く、舌戦に割り込まない様だったから、多少は成長したものだと思っていたのだけれど………とんだ見当違いだったわね。見る目がないと言われている様で、自分が恥ずかしいわ………。」
「な、なんだと………!」
曹操と関羽が話している隙を狙い、劉備が曹操へと攻撃を仕掛ける。
「えぇぇぇええええいっ!」
「突くならもっと腰を落としてかかってきなさい!」
「ひゃあっ!」
あっさりとその攻撃を弾かれ、再び尻餅をつく劉備。
「桃香さまっ! やはり、私がっ!!」
「ダメだよ………愛紗ちゃん。曹操さんは、私に勝負しろって言ったの………。愛紗ちゃんでも、鈴々ちゃんでもなくて………この私に!」
「そう。だからあなたのすべてを賭けて、この私に挑みなさい。それが王としての務め。………それとも、もうお終いかしら?」
「………まだ、負けてませんっ! えぇぇぇぇええいっ!」
「さっきよりは良くなったわね。でも、まだ気迫が足りないわ。」
「きゃあっ!」
「どうした劉備。剣を取りなさい。剣をとって構えなさい。足で踏ん張り、腰を入れて………あなたの想いを剣に籠めて、私を打ち倒してみせなさい。………さぁ、かかってきなさい。」
「はぁ、はぁ、はぁ………。私は………私は、あなたや孫策さんがうらやましかったのかもしれない。」
「………それで?」
「強くて、優しくて、何でも出来て………っ! 私………何も出来ないから………っ!」
「何も出来ないという言葉は、自分が無能だという言い訳にしか聞こえないわね。剣も取らず、かと言って文官を統べるわけでもなく………あなたは一体何をしてきた? 何がしたかった?」
「それは………! みんなの………王として!」
「そして、皆仲良く、と声高に叫ぶだけ?」
「そう………だよっ! わたしは、みんなが仲良くしてくれれば………それで良かった!」
「………良い攻撃ね。」
「晴れた日は、愛紗ちゃんと畑を耕して………雨が降ったら、朱里ちゃんや雛里ちゃんと、みんなで鈴々ちゃんに勉強を教えて………っ!」
「それで?」
「みんなで笑って、仲良く過ごせれば良かった!」
「なら、なぜ剣をとった? ………この乱世に立つという覚悟を決めたのはなぜ?」
「私たちだけが笑って過ごせる世界なんて、無理だって知ったから! この世界は、私が知っているよりももっともっと広いって、気付いたから! 星ちゃんが旅をして、翠ちゃんとたんぽぽちゃんが草原を駆け抜けて………! けど、みんながそうして笑っていたい世界には、黄巾党もいて、盗賊や山賊もたくさんいて………朝廷だって、悪い人がたくさんいて! だから………だから私は作りたいって思ったの! みんなが笑って暮らせる………優しい国を!」
「それで?」
「そんなの甘いって、幻想だって分かってる! けど、幻想を幻想って笑ってるだけじゃ、ダメだって! だから私は立ち上がれた! 願うだけで何も出来なかった自分を変える事が出来た!」
「それで?」
「私は………変われたと思ってる! 1人じゃ何も出来ないけど、愛紗ちゃんや鈴々ちゃん、朱里ちゃんや雛里ちゃん………みんなが居れば、私一人じゃ出来ない、もっともっと大きな事だって出来るから! だから曹操さん………。それをさせまいとするあなたが………許せないの! 邪魔なの! この泣いてる大陸を笑顔にするためには………曹操さんのやり方じゃ、ダメなのっ!」
「じゃあ、邪魔な私をどうしたい? 罠にかける? それとも、関羽をけしかけて首級を挙げる?」
「そんなことしない! 私は蜀の王………私自身の力で、あなたを………!」
「はぁ………甘いわね。甘ったるくて吐き気がしそうよ! 私はあなたの、そんな理想だらけの考えが気に入らない! 王のくせに! その背中に多くの人々の命を背負っているくせに! 王と言うなら、もっと現実を見据えなさい!」
「現実なんか、朱里ちゃんや雛里ちゃんがいくらでも見てくれる! なら、上に立つものはもっと遠くを見るべきでしょう!? そうしないと、いつまでたっても世界は良くなったりしない! 幸せなんかなれない!」
「北斗の彼方を望んだところで、辿り着けるものではないでしょう! 桃源を望んで足元をすくわれては元も子もない! 幻想を抱くのは勝手だけれど、せめて泰山の上あたりでも見ていなさいっ!」
「そんなに近い所ばっかり見てちゃ、皆が夢を見られないから! 実現したいって思える世界を、目指せないから!」
「そう………では、夢を見続けているあなたの街にはどれだけの笑顔が溢れているのかしら? 今もこうして戦を続けているけれど、兵たちの妻や親、子は笑顔で送り出しているのかしら?」
「そ、それは………。だけど、戦の無い日々を送っている間は笑顔がちゃんと溢れてる!」
「それはどこも同じでしょう。もちろん、我が領地の陳留でも同じこと。むしろ、成都よりも人口が多い分、溢れる笑顔の数もこちらの方が多いのではないかしら?」
「それはそうかも知れないけど………。でも、陳留ではそれだけ悲しんでる人の数も多いじゃないですか!」
「それは益州でも同じでしょう? 兵を集めればそれだけ悲しむ人が増える。当たり前の事でしょう。だからこそ、私は一刻も早くこの大陸をまとめあげなければならないのよ。」
「それは私だって同じだもん! 早く戦のない世の中にして、紫苑さんや璃々ちゃんみたいな親子が武器なんか手に取らなくていい世の中にするんだもん! ………紫苑さんたち早く返してよぉ!」
「いい加減になさい劉備! いつまで甘えた事を言っているの! 黄忠が兵を挙げないと行けない状況にしたのはあなたの責任でもあるのでしょう! 自ら何も出来ないと抜かしたあなたが、まだそれを言うのかしら? それに彼女たちは陳留で、それこそ戦のない日常を噛み締めてたった今も穏やかに過ごしているわよ。」
「わ、私だって………私だって出来るようになりたいの! 紫苑さんみたいに大人な女の人になって………曹操さんみたいにいろんな仕事が出来るようになって………。孫策さんみたいに強くて、皆から愛される人にだってなりたいよ! 愛紗ちゃんや、朱里ちゃんの仕事のお手伝い、したいんだよ………。桃香さま、なんて言われなくていい! 桃香がいてくれて助かったって、言って欲しいだけなんだよ………! だから………王様なんて………っ!」
「王になんて、なりたくなかった………?」
「………曹操、さん。」
「あなたは元々そう思っていたのでしょうね………。だけど、それを今まで付いてきた部下たちの前で、この状況で言ってしまって良かったのかしら? あなたに魂を預け、支えてきた彼女たちの気持ちはどうなるの! それが人の上に立つものの責任でしょう! しっかりなさい!!」
「………でも、だったらどうすればいいんですかっ!」
「あなたの言葉で、あなた自身が伝える他ないでしょう! 関羽っ! 諸葛亮っ! あなた達もあなた達だわ! 劉備が本当に望んでいる事をしっかりと理解できていたのかしら! むしろ、あなた達の理想を逆に劉備にばかり押し付けていたのではなくてっ!?」
「なっ、そんなはずがあるわけ………っ!」
「そうですっ! あなたに私たちの何がわかるというんですかっ! あなたさえ、あなたさえ居なければ私たちは確実に理想を叶えられたのに………っ!」
「よくもまぁこの状況でそんな事が言えたものね………。今の彼女を見て、あなた達は何も感じないのかしら? 全く、主も主なら、部下も部下ね………。そんなだからあなた達はいつまで経っても私たちには勝てないのよ。………いい? あなた達の敗因は兵数の差でも訓練の差でも、国力の差でも無い。国を支えるべき信念の差よ。」
「信念………。」
「そう。理想や夢を語るだけではない、正しいと信じ、ブレずに貫き通すこと。時には味方を切り捨ててでも真っ直ぐ歩み続ける道こそ、信念。私の歩む、覇道! ………劉備、あなたは優しすぎるのよ。その理想はとても尊いものかもしれないけれど、それを胸に押し込めて、うち貫く厳しさを持てない。眼の前に居る人を、仲間を捨てきれない………それが私とあなたの差。王としての覚悟の差よ。あなたは………あなたは王になるべきではなかったのよ………。」
曹操は静かに絶を構え、振り下ろした。
王の一騎打ち、決着。
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