ボーイ(僕はバイトが好きだ。みんながナワバリバトルだ、ガチマッチだと色々やっている中、僕は毎日バイトばかりしている)
ボーイ(あるとき、僕は僕たちが集めた金イクラがどこに運ばれ、何に使われているのかが気になった)
ボーイ(気になって仕方がなかった僕は、バイト中金イクラと一緒にコンテナの中に隠れ、バイトが終わるのを待った)
ボーイ(バイトを共にこなした同僚には、途中でいなくなって申し訳なかったけど、好奇心が抑えきれなかったんだ)
ボーイ(隠れてから誰にもバレることは無かった。全てが順調に進んだ)
ボーイ(遠くでバイト成功の音を耳にすると、いきなり目の前が真っ暗になった)
ーーーーーー
ボーイ(気が付くと、僕は地下の薄暗い工場にいた。金イクラと一緒にベルトコンベアの上を流れていた)
ボーイ「ここはいったい...?」
ボーイ(ベルトコンベアから降りて辺りを見渡す。明かりは小さなものしかなく、外界から完全に遮断されているみたいだ)
ボーイ(それまで自分が倒れていた場所を見返す。その奥には大量の金イクラが無造作に置かれていた。ここはバイト先から金イクラが集められる場所で間違いないようだ)
ボーイ(淀みなく機械的に金イクラが送られている。それらが流れ着く先には、注射器のような太さの先の鋭い針があった)
ボーイ(次々と針に刺された金イクラが中の液体を吸いとられていく。針はチャーブで巨大なタンクと繋がっており、そこへ液体が貯蔵されるようだ)
ボーイ(タンクの大きさもさることながら、その数も尋常ではなかった。なみなみと注がれた液体が怪しく金色に光っている)
??「キミは何が知りたいんだい?」
ボーイ(ぼんやりとその光景を眺めていた僕に、突然声がかかる。声の出所は壁に備え付けられたスピーカーからだった)
??「アポ無しの見学ということで、こちらも準備ができなくてね。手短に済ませたいのだが、構わないね?」
ボーイ(いつもバイトで聞く、あのクマの置物から聞こえる声とは違った声だった)
??「返事がないようだが、キミは何かを確かめたくてココに来たのではないのかね?」
ボーイ「ぼくは.......僕は全てを知りたい」
??「...わかった。限りなくワタシの知ることを教えてあげよう」
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「まず......どこから話したらいいのだろうか。あぁ、そうだ。そこにあるのはキミを手に取ったことがあるだろう、クマサン印のブキたちだ」
イカたちのバトルで使われたらまずゲームバランスが壊れると容易に想像できるほど、イカれた性能のブキがそこにあった。
手入れ中だろうか、様々な部品や工具が散らばっていた。
「あれらにも勿論金イクラが使われている。正確には金イクラに含まれる液体、ここでは『黄金エキス』とでも呼んでおこうか」
「『黄金エキス』は本当に有用な資源でね。ギアパワーなんかもこれから作られるのさ」
「簡単にその効果を言うと、生物にとっては身体能力を向上させ、ブキやギアなどの非生物に対しても性能を著しく向上させる力を秘めている」
「オオモノシャケなんかも金イクラがあるからこそ、その形態を維持できるのさ」
「ワタシタチは『黄金エキス』が欲しくてね。所謂ビジネスのためだが」
「だけど、ワタシタチも何も乱獲をしているわけではないのだよ。抽出部より先をごらん」
ベルトコンベアにはまだ先があり、終着点は水槽だった。
絞りカスのような金イクラがそこにボトボトと落とされる。
水槽の中を覗くと、そこには小さな生き物が蠢いていた。
「その水槽にいるのはシャケの幼体だ。本来ならまだタマゴの中にいて『黄金エキス』で成長する段階の、か弱い存在さ」
「ワタシタチは金イクラから『黄金エキス』だけを抽出して、シャケの幼体は海へ返している」
「クマサン商会のことをブラックだ何だという輩がいるが、ワタシタチも小さな命を奪いはしない」
「むしろ生態系に配慮した善良な商売さ」
「また赤ちゃんシャケを放流することで、シャケの数を一定に保っている」
「大人になって金イクラを産み、またここへ戻ってくるようにね」
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「キミが知りたいことにちゃんと答えられているかどうか分からないが、キミがアルバイトであるようにワタシも雇われの身分なのでね」
「ワタシの知らない情報もまだ多数存在する。存在するらしい」
「以外とセキュリティはしっかりしているだ。これでもね」
「じゃあ、ここからはシャケの生態について説明していこうかな」
「彼らが好んで食べるものは微生物だ。キミの身の回りにもたくさんいる微生物で、非常に役に立っているものだ」
「好奇心旺盛で理知的なキミなら分かるかな?インクを分解する微生物だ」
「キミたちがびちゃびちゃとインクを塗りたくっても、こいつらがいるおかけで掃除をする必要はない」
「この微生物を主食とする生き物はシャケだけじゃない。オオデンチナマズもだ。空気中の微生物のほとんどがヤツに食われる」
「ヤツもまたある意味でイカと共生してると言っていいだろう」
「シャケが陸を目指す原因の一つはこれだ。イカの近くには微生物がたくさん存在することを彼らは本能的に理解しているのだ」
「ところでキミたちは水の中で泳ぐことはできないだろう」
「それは浸透圧の関係なんだが、ある一定のインク濃度を超えていればキミも水中で泳げることは分かっているよね」
「シャケが現れる場所、危険海域に指定されている所は何故か海水中のインク濃度が高い。キミたちが泳げるほどではないが」
「インク濃度が高いということは、それだけインクをエサとする微生物が多く生息するということなんだが、ここである問題が発生する」
「『富栄養化』という言葉を知っているかい?」
「微生物が増えすぎるというのも問題で、増殖をし過ぎた彼らは自滅の一途を辿るのだ」
「そのため危険海域は微生物の死骸でひどく濁っている」
「ここは大人のシャケにとっては絶好のエサ場なんだが、生まれたばかりの赤ん坊にとってそうではない」
「よくあの海を思い返してみるといい。微生物の死骸が積もり積もって、海中には光がほとんど入ってこないことが分かる」
「とにかく脆弱な赤ちゃんシャケには耐えられないひどい環境であることに違いはない」
「したがって、イカの生活水圏まで到達するという本来の習性と、現在の劣悪な環境から逃れるために、彼らはサーモンランを行っているのだ」
「まぁ、彼らが凶暴化、自我を失ってしまったのはこの惑星の磁場、衛星との引力、海水温の上昇、その他もろもろが関係しているらしいが...詳しいことは最近の研究でもよく分かっていないようだ」
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??「お望みの情報は聞けたかな?」
??「...さて、多くを知ってしまったキミをタダで返すわけにはいかない」
??「キミにしかできない、キミだけのもの」
??「それを頂くよ」
??「そう、イカとタコにしかない『インクを生成する器官』だ」
??「シャケの赤ちゃんは食いしん坊でね。すぐに放流するとはいえ、エサ代もバカにならない」
??「キミの器官があればシャケのエサである微生物を培養することができる」
??「あぁ、心配しなくてもいい。ワタシに医学の知識はないが、コレがあるのでね」
工場の奥から小さなノズルとそれに繋がった機械が現れた)
これはミニチュアだが、あのスペシャルブキの...
??「キミもよく知っているだろう。...『ハイパープレッサー』だ。もちろんクマサン印の、ね」
??「こいつはなかなかの優れものでね」
??「威力は無いが、キミの体が溶ける前に高圧の水流がキミの体を皮膚を容易に切断する」
「安心したまえ。キミは社会に貢献できる」
その乾いた声の後、無情にもプレッサーの稼働する轟音が耳元でこだました
僕はいつの間にか機械のアームで体を押さえ付けられていてまったく身動きがとれない
僕が最後に聞いたのは、プレッサーが体を切り裂く音と、それをかき消すほどの自分の悲鳴だった