「東京競馬場、芝2400メートル……ダービーと同じ。あの時私は9着だった。けど……今回は」
スズカの脚のダメージは検査の結果、大した物ではない事が判明した。念のため、ウイニングライブを欠席し2週間の休養を入れ経過を見て当初の予定通りジャパンカップを次走に選んだ。
他の有力ウマ娘で出走を決めているのは、スズカに三度目の挑戦をするエルコンドルパサー、宝塚記念のリベンジを誓うエアグルーヴなどもいるが、最も注目されているのは当年のダービーを同着で勝利し、セイウンスカイが世界レコードで逃げ切った菊花賞でも二着に入って、尚且つスズカと初対決であり、ルームメイトでチームメイトでもあるスペシャルウィークだった。
「スズカさん! いよいよ一緒のレースですね!」
入場前の地下道にてスぺとスズカ、勝負服に身を包んだ二人で話していた。
「そうね、スぺちゃん。それと今日のレースは1年半前の私との勝負でもあるから」
「1年半前……ダービーですね?」
スぺ自身のダービー前にスズカは自身のダービーの事を話していた。実力はあったものの、まだ完成しきっていなかった彼女の走りとレース巧者だった同期の皐月賞ウマ娘の逃げの前に負けたのだった。
「あの時出来なかった事を今、最高の舞台でしたいと思うわ。その上で勝つ」
「簡単には勝たせません! 春以上の走りでスズカさんに勝ちます!」
『さあ、今年も様々なドラマを生み出してきた東京レース場! 最後の大舞台は世界のトップウマ娘達も参加する国際G1ジャパンカップ! 選ばれた18人のウマ娘、たった一つの栄光を掴むのは誰なのか!? 日本が世界に送る至高の2分30秒、スタートです!』
抜群のスタートを決めて、先頭に飛び出したスズカ。二番手以下はメートルほど後方で控える。スぺは最後方にいる。
『先頭はサイレンススズカ、持ち前の快足を活かし、後続との差をどんどんと放していく! 続いてエルコンドルパサー、エアグルーヴと続きます! スペシャルウィークは最後方からのレースですが届くのでしょうか!?』
一月前のレースを見るかのような大逃げを見せるスズカ。
『今、1000メートルを通過! タイムは57秒5! とんでもないタイムを見せてくれます、サイレンススズカ! 後方集団とは15~20メートルほどの差を付け独走!』
差を維持しながらバックストレートの坂を上り、スズカが第3コーナーに差し掛かったところで後方集団に異変が起こる。
『おおっと!? 最後方に控えていたスペシャルウィーク、第3コーナーに入った所で進出を開始! 少しずつ順位を上げていく! 4番手、3番手、2番手まで行った! しかし、先頭のサイレンススズカまでまだ15メートルほど!』
本来瞬発力を活かし、最後の直線での爆発的な加速での『差し』の戦法を得意とするスぺが超ロングスパートの『捲り』を見せたのだ。これには観客からもどよめきの声が上がる。
『さあ、真っ向勝負の最後の直線! 先頭にはサイレンススズカ! 2番手はスペシャルウィーク! 差は15メートルほどに縮まっている! 3番手以降との差は少しある! 実質2頭の勝負か!? 差が縮まりながら坂を上る!』
逃げるスズカ、じりじりと差を詰めていくスぺ。高低差2メートルの坂を駆け上がる。
『坂を登り切った! サイレンススズカ、ここで再び伸びる! なんというウマ娘だ! しかし、スペシャルウィークの末脚も凄い! 差が縮まる! ついに逃亡者の影を捉えた!』
並んだ二人。そしてその並んだ地点が
『ゴール! 二人並んでのゴール! 勝者はどっちだ!』
電光掲示板の順位発表の1着と2着の所は未だに発表されていない。しかし、会場には驚きの声が上がっている。
『タイムは2分22秒! 2分22秒丁度! 世界レコードです! レースの結果は写真判定ですが、サイレンススズカとスペシャルウィークが叩き出したタイムは芝2400メートルの世界記録! ジャパンカップ史上に残る激走でした!』
「お疲れ様でした、スズカさん!」
「お疲れ、スぺちゃん」
レース場から控室に戻る地下道で二人は並んで歩いている。
「それにしてもスズカさん、今日は途中でペース落としてませんでした?」
「気付いてたの、スぺちゃん? 少しね」
スぺの指摘に驚きながら答えるスズカ。
「……東京の2400って完敗だったダービーしか走った事が無かったから、久しぶりに自分のダービーを見直したの。そうしたら、綺麗な逃げ切りをされてたから、参考にしたの。他の皆は私が好きに走ってペースがかなり早くなるって分かってたから、ちょっと緩めたのよ」
「後ろの私達は一番前のスズカさんを基準にペースを見ますからね。スズカさんが普段よりゆっくりになったら少し離れた後ろの私達はスローペースのレース展開になってスズカさん有利になりましたね」
「でもスぺちゃん、どうして私がペースを落としたのを気付いたの?」
「それはいつもスズカさんの事、いつも見ていましたから!」
「ふふ、ありがとう」
このレースがサイレンススズカとスペシャルウィークの最初で最後のレースになるかどうか、今は誰にも分からない。
「とりあえず、一年お疲れ様スぺちゃん」
「お疲れさまでした!」
タイムはやり過ぎました。
サイレンススズカの距離適性の可能性
僕自身はサイレンススズカは2400こなせたと思います。現実でスズカが2400を走ったのはダービーのみ。それも能力を発揮できない中での9着なので、考えないものとしました。
スズカは2200の宝塚を勝っています。夏より秋冬のJCの方が消耗は少ないと思うので行けると思います。
血統構成の面からの考察
サンデーサイレンスは成績的に中距離の種牡馬と思われていると思います。確かに一番長いベルモントSの2400は二着ですが8馬身差の惨敗でした。
しかし、この年は歴代2位(1位はぶっちぎりのUMAなので気にしない)で平均的なタイムなら勝っていた可能性が高いです。
母親はスプリンターだったそうですが、母父のミスワキは産駒に凱旋門賞馬もいる名種牡馬で母父ミスワキの馬と言えば今をときめくガリレオ、シーザスターズの兄弟をはじめ中長距離の活躍馬が沢山いますし、サンデー系×ミスワキで菊花賞馬のザッツザプレンディという例もあります。まあ、能力の全てが分かっていないので想像の域を出ませんが、あくまで一意見という事で。
次は何処を書きましょうかねえ。