速水さんとは気が合わない。   作:バナハロ

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ふみふみの奴、気が付いたら次で90話でした。読んでくださってる皆さんホントありがたいです。
奏さんのもそれくらい行くと良いですね。


初詣(2)

「か、カナ……ごめんって」

「うるさい」

「本当ごめんなさいって。もうしないから」

「黙って」

「な、なんならほら……しばらく飯とか奢るから」

「死んで」

 

 お参りを済ませてからも、私は優衣のまさかの野外プレイに思いっきり腹を立てていた。当たり前だ、あんな事を外でされて腹を立てない人間はいない。

 さっきからなんかペコペコと頭を下げてきているけど、何かしら? 鳥獣種のくちばし攻撃の練習かしら。

 

「か、カナ……」

「情けない声出さないで。気持ち悪い」

「……そ、そんなこと言われても……」

「いいからついてこないで」

 

 キッパリ言い放って、背中を向けてお守りを見て回った。せっかく来たし、お母さんや文香にお土産買って行こうかしら。

 完全にシカトを決め込んで、お守りを眺めた。色々と「無病息災」やら「商売繁盛」やら「家内安全」やらと様々な種類のお守りがある中、私は「暗殺成功」や「絶対謀殺」などといった四字熟語はないのね……。

 ……あ、このお守り綺麗な色してるわね。ピンクなんだけど、下品に濃いんじゃなくて、薄くて品のある感じ。

 手に取って内容を見てみると「縁結び」と書かれていた。私の縁は既に結ばれているので、無言で売り場に戻す。

 その直後だった。後ろから「コフッ」と喀血したような断末魔が聞こえた。

 何かと思って振り返ると、ユイが後ろで倒れていた。

 

「って、ユイ⁉︎ 何してるの⁉︎」

「……か、カナが……縁結びを……もう結ばれてるのに……俺、捨てられ……」

「捨てない、捨てないから落ち着きなさい! てかそんなつもりで手に取ったわけじゃないから!」

 

 慌てて弁解してユイの手首を掴んで引き起こそうとした。

 って、こいつ重い! 私の腕力じゃ、起き上がらない……! 体重いくつよこいつ……! 筋肉は脂肪より重いって本当だったのね……!

 

「……死んじゃおうかな……」

「ああもうっ……! わ、悪かったわよ! 私も少しムキになり過ぎたから! だから落ち着きなさい!」

 

 こ、こいつ……! なんで私関連になるとメンタルが弱くなるのよ……!

 

「……許してくれんの?」

「許すから手を焼かせないで!」

「……ふぅ、良かった。真剣にどうやったら死ねるか考えてた」

 

 まったく、バカなんだから……。

 ……実際、この人はどうやったら死ぬんだろう。川の上の橋から落としてもピンピンしてそう。

 って、バカな想像はやめましょう。彼に死なれたら私も困る。

 

「……でも、もう外でああいうのはしないって反省しなさいよ」

「分かったよ……ってか、外じゃなきゃして良いの?」

「……別にされるがままなのは嫌じゃないし」

 

 ま、まぁ……良い匂いって言われるのは別に嫌じゃないし……。むしろ、その……気持ち良……いや、優衣に甘えられてるみたいで少し嬉しいというか……。

 

「……カナってさ、割とそういうの嫌がらないタイプだよな」

「な、何よそういうのって⁉︎」

 

 なんかムッツリって言われてる気分なんですけど⁉︎

 

「それより、お詫びになんか買うよ。お守りとか」

「へ? い、いいわよ別に」

「買わせろって。いらないってわけじゃないだろ」

「……それはそうだけど……」

 

 まぁ、ここはお言葉に甘えましょうか。正直、お詫びをもらっても良いくらいだし。

 ……あ、良いこと思いついたかも。

 

「じゃあ、この交通安全と健康祈願にしましょう」

「なんで二つ……」

「片方はあなたの分に決まってるじゃない」

「え、お揃いじゃないの?」

「してどうするのよ。常に私とあなたは一緒にいるんだから、別々にした方が良いでしょう?」

 

 言うと、少し目を丸くして感動したような表情になった。

 ふふ、私とユイの特性を活かした、完璧な思考ね。正直、思いついた時は天才かと思ったわ。

 

「……なるほど。じゃ、両方だな」

「そうね。これで二人とも健康でいられるわね」

 

 微笑みながら、ユイがお守りを購入するのを後ろから見守った。

 購入を終えると、私は色が気に入ったので右手の交通安全を取ろうとした。すると、ユイは右手を引っ込める。

 

「……何?」

「いや、こっちが俺のだから」

「は? いやいや、私のだから」

「俺が買ってやったんだから俺の言うこと聞けよ」

「それお詫びでしょ? あ、それともお詫びの意味知らない? スマホがあるんだしググったらどう?」

「色くらいどっちでも良いだろ。それくらい譲れよ、小せぇ女だな」

「アイスラッガーなみのブーメラン投げるの好きね、あなた」

「……」

「……」

 

 ……これだからこの男と一緒にいるのは疲れるのよ。すぐ喧嘩に発展する。

 しかし、今回は譲らない。だってあくまでこっちが許す立場だもの。

 それは向こうも理解してるようで、すぐにため息をついて、右手の交通安全を手渡してきた。

 

「……おら」

「良い心がけね」

「バーカ、そんなんじゃねーよ。ただ、考えてみれば外に出る機会はカナの方が多いから、交通事故に遭う可能性も高いだろ。というか、俺は車は分からんけどバイクくらいなら撥ねられても効かないし」

「……撥ねられた事あるの?」

「何回か特攻されたけど蹴りで反射したよ」

「リアル一方通行!」

 

 チョーカーの電源を入れるんじゃなくて蹴りで跳ね返すとか頭おかしい。可能か、というよりも試そうとする精神が。

 まぁ、それなら確かに私が交通安全の方が良いわね。彼が持ってても意味ないし。

 

「……どうも。じゃあ、私がこっちね」

「ん」

「ね、おみくじ引かない?」

「良いね」

 

 おみくじを引きに行った。

 おみくじは賽銭箱の横の方、無人で購入出来る。神様の前だから、お金を入れずにおみくじを引く輩はいない。それくらいのモラルは常に待ち合わせて欲しいものよね。ま、最近の神社には監視カメラついてるからってのもあると思うけど。

 チャリンチャリンと二枚の百円玉を入れたユイは、おみくじを一枚引いた。

 

「ユイ、ここ一回百円よ?」

「お前の分もだよ」

「あら、良いの?」

「百円だからな」

 

 まぁ、そう言われるとそうね。

 私もありがたくおみくじを引いた。でも、正直、あんまり引く意味ないのよね……。

 いや、神様なんか信じてないとか、そんな高二病的なアレじゃなくて、さっきのお守りと似たような理由で意味ないのよ。

 

「あ、凶……」

「私も」

「うへぇ、恋愛のとこ、喧嘩両成敗だとよ……」

「私もよ……」

 

 ほら、全く同じ。多分、他のもそうだろう。どうやら、今年もほとんど一緒にいることになりそうだ。

 

「ま、喧嘩なんてあなたが悪いんだけどね。両成敗ではないわ」

「は? いやいや、悪いことが多いのはお前だろ」

「あら、さっきの話を覚えてないの?」

「テメェこの前、添い寝しようとして布団の中に入ってきたときに、人の指の上に膝乗せて体重かけてきたの忘れてるわけじゃねぇだろうな」

「あんただってお昼の時、私の醤油ラーメンにドレッシング掛けたでしょ⁉︎」

「お前こそ人のスマホの待ち受け自分のパンツの画面にしただろうが!」

「そっちだって人のお気に入りのブラに乳首描いたくせに!」

 

 そんな恥ずかしい口喧嘩をしてる時だ。頭の中に神様の声が響いた。

 

『神社で惚気るな、殺すぞ』

「……」

「……」

 

 ユイにも聞こえたようで二人して黙った。気が付けば、周りはみんな黙って私達の方を睨んでいる。

 ……もう無理ね、ここにいるのは。

 

「……帰るわよ」

「……おう」

 

 帰った。

 

 ×××

 

 一度、帰宅し、それからはのんびりすることにした。まぁ、私も着物してるし、出掛けるにしても着替えないと割とキツイから。

 で、今は私の部屋。ユイがベッドの上で壁の方に体を向けてボンヤリしてる間、その背中で私は晴れ着を脱いで下着姿になった。

 ……正直、見られてないとはいえ、彼氏の前で下着姿になるのは若干、興奮しなくもないけど、それを言えば変態認定されそうな気がしたので黙っておいた。

 私服に着替えを済ませると、ユイに声を掛けた。

 

「ユイ、着替え終わったわよ」

「……」

「ユイ?」

 

 珍しいわね、返事しないなんて。

 グイッとユイの身体に手を掛けて自分の方に引くと、眠っていた。前にもらったサーナイトのぬいぐるみを片手に抱いて。

 

「……」

 

 寝顔は無邪気なのね。こんな顔してて、喧嘩最強で私の彼氏なんだから。なんだかヤンチャな弟にも思えて来たわ。

 何となく可愛かったので頬を突いてると、ふと抱かれてるサーナイトが目に入った。

 ……気に入らない。ぬいぐるみに嫉妬してるわけじゃないけど、私以外の女の子がそこにいるのは何となく嫌だ。

 ぺいっとぬいぐるみを引き剥がし、隣に寝転がり、サーナイトを抱いてる手を私の上に乗せた。

 ……なんだか、とても恥ずかしいことしてる気がしてきたわね……。なんだか身体がマグマッグみたいに熱いし心臓はバクオングだし、やっぱり離れ……。

 

「っ⁉︎」

 

 ようとした所で、反対の手がジオングの如く伸びてきて私の身体を拘束した。

 恐る恐るユイの顔を見上げると、目が開いてた。

 

「やっぱり、そうするよね」

「あ、あんた謀ったわね⁉︎」

「家の中なら何しても良かったんだよな?」

「ーっ」

 

 こ、こいつ……まさか……⁉︎

 顔が赤くなった直後、ユイは私の額にキスをした。

 今のキスで熱を送られてきたかのように顔が熱くなった私は、慌ててユイから離れようと体を仰け反った。当然、後頭部を壁に激突させ、頭を抑えて丸くなってその場で転がった。

 とても痛い、これが刑事ドラマなら私は死んでる。

 そんな私を、ユイは後ろから抱き締めた。

 

「っ⁉︎ ちょっ、ゆ、ユイ……⁉︎ どうしたのよ……!」

「……いや、なんかさ。昨日は会えなかったじゃん?」

「え、ええ……」

「で、しかも今朝はナンパされてたじゃん?」

「そうね」

「……なんか万が一のことを考えたら、改めて奏を誰にも渡したくないなって思っただけだよ……」

「……」

 

 ……そっか。ユイは私と家族以外に友達も知り合いもいないものね。最近でこそ、周子とかいたけれど、そこまで深い関わりがあるわけでもない。

 まぁ、早い話が、私がいなくなったら、ユイはまた一人に戻るわけだ。それが嫌だってことかしら?

 

「……まぁ、それと今とは全く関係ないんだけれども」

「はっ?」

 

 え、か、関係ないの……?

 

「ただ、今は室内だからカナに何しても良いんだなって思ってるだけで」

「……えっ?」

「カナの身体柔らかいな」

「ちょっ、あ、あなたどこ触って……!」

「ん、腰」

「そこお尻よ!」

「似たようなもんだろ」

「違うわよ! あ、ば、バカぁ……やめっ……!」

 

 ……無理ね。私じゃこいつに敵わないし。

 それに、関係ないと言ってたが、関係なしに優衣がこうした行動に出るとは思えない。少しは不安になってるのだろう。

 バカね、私が今更、他の男のものになるわけがないのに。たまにはからかわずにこのまま甘えさせてあげましょう。

 そう決めて、頭を撫でてあげてると、ユイが私の胸に頭を埋め始めたので顎に膝蹴りを入れた。

 

 

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