今回デートするにあたって。実はデートプランは考えてきていない。通常時であれば簡単なデートプランだけ考えて、あとはその場の相手の気分などを加味して適宜調整していくのだが、今回は突発的なデート、
では改めてデートの方針を定めるとしてどうするか。最初に相手に行きたい場所を確認する、というのはよくない。今回は今井さんに自分が湊さんに見合う男である、とアピールするためのデートだ。仮に湊さんがデート相手だと想定した場合、間違いなく音楽関係の店にしか行かずデートも即終了だろう。それは自分も今井さんも理解しているところであり、だからこそ相手の行きたい場所に合わせるというのはアピールという観点から間違った選択肢になってくる。
「つーわけで、時間があるわけでもないからとりあえずショッピングモールで。個人的には服とかも見たいし……。そっちは何か見たいものある?」
「うーん、アクセサリとか見たいかなぁ……」
「じゃ、ウインドウショッピングって感じかな」
簡単なデートの方向性を提示し、そこで相手の意見も取り入れてこちらがデートプランを定める。これならまぁ、湊さん相手でも問題ないデートプランの立て方である……と信じたい。正直女性によってデートでの対応など変わるし、そもそも今まで付き合ってきた相手を好きだったことなどないため、本気でデートプランを考えるなどこれが初めてである。内心、結構ビクビクしてたりするのだ、これでも。もちろん、そんなこと表には一切ださないわけだが。
「いやー……しかしまさかこんないきなり人生初めてのデートをすることになるなんてねぇ」
「え、初めてなん?今井さんモテそうだし彼氏いたことあると思ってたんだけど……」
「あはは、よく言われる。うち女子校だからさ、あんまり出会いがないんだよねー。バイト先にいる人も彼女持ちだったりするし」
なんというか今井リサという少女は知れば知るほどその見た目とのギャップを感じる少女であった。その今どきの女子高生らしい容姿とは裏腹に、家庭的、気遣いが上手い、そして未だ彼氏無しだ。人を見た目で判断してはいけない、とはよく言ったものだと思う。まぁ人間どうあがいても第一印象はその見た目に依存するので不可能な話ではあるのだが。
「でもナンパとかはされない?」
「されるけど……知らない相手にいきなり言い寄られても、ねぇ?」
まぁそりゃそうか、とは思う。自分だっていきなり女性に声をかけらたとしても、どれだけ美人であっても何も知らない相手では気乗りしないだろうと容易に想像できた。まぁそこらへん、翔馬はほいほいついていくのであろうが。
「あ、そういえばさ、一つ聞きたいことがあったんだった」
「ん?なんだ?」
先ほど話していたファミレスからショッピングモールはさほど離れているわけではない。しかしそれでも歩いていくとなると多少時間はかかるため、話のタネになるのであれば質問も歓迎であった。
「ちょっとアレな質問なんだけど……悠一さんって、普通にアタシとか友希那は敬語なくなってるし、年下に何かを教わったりって抵抗とかなかったの?」
それは言ってしまえば、年上としてのプライドはないのか、という話だった。確かに彼女の言う通り、アレな質問というか場合によっては喧嘩を売ってるととられても仕方ない質問であった。とはいえ、彼女がそんなことを考えるタイプではないことは理解しているし、単純に疑問だったのだろうとも思う。まぁあとは少しばかり、ファミレスでの話の通り、彼女なりにこちらが湊さんに見合うのかどうか人格面において判断する要素にしよう、というのもあるのだろうということは理解した。
しかしそれを理解したところで答えが変わるわけでもない。正直に、思っていることを答えることにする。
「まぁぶっちゃけ、年上年下とかくだらねぇ、って考えてる」
「くだらない……?」
「おうさ。相手とどんな関係性だろうが、目的のためなら教わる必要があるなら教わるし、何よりその道の先輩で尊敬できるなら年下だろうが敬語も使うさ」
まぁ年下相手にあんまり使い過ぎると相手が気にするからある程度したら外すけどな、と付け加える。
年上としての矜持やプライドといったものがないわけではない。だから年下の前では格好つけたりもする。しかしそれはそれとして、相手が自分より何か上手いものがあるのならどんな相手であれ尊敬するのは自分にとっては当たり前だった。何故なら過去熱中できるものがなかった頃は、他人が何かに夢中になれているというだけで羨ましく、尊敬すべき事実に思えたからだった。
「まぁあとは、最終的には追い抜くから今は下でもいいや、みたいなところはある。最後に上回りゃいいんだよ」
「あははー、Roseliaはそう簡単に追い抜かせないからねー。……それはそれとしてその顔やめた方がいいよ。獰猛、っていうか凄い悪い顔になってる」
「えっ」
真顔で突っ込まれた事実にショックを受けたりしながら歩いていればショッピングモールへと辿り着く。中に入れば適度な冷房が効いており、外を歩いたあとだと実に快適な空間であった。
「んじゃまずは一番近いアクセサリ店を目指しつつ、道中の店を冷やかしますかね」
「言い方」
今井さんからのツッコミにはっはっはっは、と笑い声だけで返す。少なくとも、冷やかしであるのは事実なのだし、ウインドウショッピングなんて言い方を誤魔化す必要性を感じなかった。そんなこちらに呆れたのか溜息を吐きながら、歩き出したこちらに今井さんがついてくる。
「なんていうか、今日でだいぶ悠一さんのイメージ変わったなー」
「おん?」
「最初に会ったのが友希那を説得する時だったし、それ以降も会う時は練習で真面目に取り組んでる姿しか見てなかったから……なんていうか、意外と遊びがある?って言ったらいいのかな、そういう感じで実は結構びっくりしてる」
あー、と言われてみれば確かに、今井さんがいる場においての自分は、真面目な姿であったように思う。休憩中なんかは多少違っただろうが、それでも頭の中には練習のことがあったため、今日ほどはっちゃけてはいなかった。
実際のところ、こちらの方が自分の素であった。何かを全力で楽しむことができない、ならばせめてやることを少しでも楽しくしようと割と遊びが多くしてきたのが、今までの人生を通して形成された自分の素だった。
「ちなみに今までの俺のイメージはどんな感じだった?」
「うーん……友希那二号?」
「なんだそりゃ」
「音楽に対して真剣なところとか、休憩時間も二人だけにすると練習内容とかばっか話してたし」
なるほどなぁ、と納得する。かつて湊さんには今隣にいる今井さんに似ている、と称されておりどうにも不思議な気分であった。あとそれはそれとして、好きな人に似ている、と言われてどうしようもなく嬉しくなってしまってもいた。実にチョロい男であった。
「あーあ、友希那も悠一さんぐらい余裕を持ってくれたらなぁ」
「ならやはり見本として俺を湊さんの恋人に」
「残念、それはまだ許さない」
勢いでいけるかと思ったが、そんなことはなかった。今井さんに軽くあしらわれ、ちぇー、と軽く拗ねていればそんなこちらを見た今井さんに笑われてしまう。どうにも、年下に遊ばれている感じは悔しかった。
「それにしても、アタシの趣味に合わせたデートでいいの?友希那に見合う男かどうかを見せてくれるんでしょ?アタシはてっきり、友希那の趣味に合わせたデートができるかとかそういうのを判定するんだと思ってたんだけど……」
それは確かに、自分も一度考えたデートプランではあった。目的は自分が湊さんに見合う男であることの証明だ。ならば短い付き合いでも湊さんが楽しめそうなデートプランを考案できるというのはアピールの一つではあると思っていた。しかし、である。
「今デートしてるのは今井さんだろ?だったらその今井さんが楽しめるデートじゃなきゃダメだろう」
他の女性のことを考えて、今共にいる女性を蔑ろにするなど男が廃るだろう、という簡単な理由を以って湊さん向けのデートをするという案は却下されていた。まぁアピールだ云々ばかり考えて他のことにまで目が向かないのは余裕がなさ過ぎて格好悪い、という話である。
「……不覚にもちょっとドキッとしてしまった……」
「んあ、なんつった?」
「い、いやいやなんでも!さ、アクセサリ店着いたから入ろ!」
まぁ実際はしっかり聞き取っているのだが。顔が赤くなっているのもあって察するのは容易かった。自分は鈍感系主人公ではないのだ。というかあいつら現実にいたら人としてヤバくない、と心配になるレベルであるので、そんなのと一緒にはなりたくなかった。
一先ずは今井さんの方が聞かれたくなさそうだったので今はスルーしておき、あとで有効なタイミングでネタにしてやろうと考え、今井さんに続いてアクセサリ店へと入る。
アクセサリ店の女性向けエリアなど、まず男一人では来ないし、過去彼女と来た時も興味がなかったため大してじっくりと見たことはなかった。しかし、こうして改めて見てみると煌びやかで中々面白いものであった。
「ほー……こうして見ると男向けとはやっぱデザイン違うもんなんだなぁ……」
「あれ、悠一さん、意外とアクセサリに興味ある?」
「実はあったりするんだなぁ、これが」
基本的に、自分の服装は爽やか系というか、シンプルなものにまとめている。それは目つきや髪型からどちらかと言うと厳つい印象を相手に与えるためそれを緩和する意図があった。そのためあまりアクセサリの類はつけないのだが、興味が全くないというわけでもなかった。
「今井さんなんかは……こういうの、合いそうだよね」
「どれどれ……わっ、かわいー」
今井さんに提示するのはパッと見は金属パーツの連なったシンプルなイヤリング。けれどよく見るとウサギの意匠が彫り込まれている。それはスレンダーな体型からスマートな格好いい衣服が似合いそうな彼女に合いつつも可愛らしさもある、そんなアクセサリだと思った。
「今井さん、ウサギっぽいデザインのアクセサリ付けてることあるし、好きなのかなーって」
「よく見てるね……うん、結構好きなんだ。だからこれも欲しいけど……うーん、ちょーっと高いかなぁ……」
悩んでいる今井さんを尻目に、他にも今井さん似合いそうなものを探していく。個人的にはこういう店においては互いに似合うものを探したりして議論を楽しむものだと思っている。
ちなみに、今井さんにアクセサリを買ってあげるという選択肢はない。相手にもよるが、少なくとも今井さんにおいては下手に高いものを買ってあげてしまえば負い目などを気にしてしまうタイプだと思っている。だから基本的に軽食を奢るとか、その程度の小さなことしかしないと判断していた。
「よし、今日は買わない!またバイト代出てから考える!」
「あ、終わった?じゃあ次これも似合うと思うんだけど……」
「わー、これもいいデザイン……って待って!買いたくなっちゃうからやめて!」
どうやら無事自分は今井さんのセンスにあったものを持ってくることができているらしく、毎度持ってくるものに目を輝かせてくれる。どうにもそれが楽しくて次から次へとアクセサリを見繕って今井さんに買うかどうか悩ませる遊びが始まっていた。
「―――ああもう!今日は何も買わない!決定!ほらほら悠一さん、次のお店行くよ!」
「え、終わり?またいいの見つけたんだけどなぁ……」
いいから、と背中を押され店の外へと連れ出される。まぁ湊さんに似合う男であると証明するまでは、またデートする機会はある。その時にまたおすすめして遊ぼうと決めて大人しく連れ出されるまま、店の外へと出る。
「そしたら次は悠一さんの服を見よっか。今度はアタシがいいの見繕ってあげる」
「そいつは楽しみだ」
今井さんと二人、他愛のない会話をしながたショッピングモール内を歩く。たったそれだけのことなのに、どうにもそれが無性に楽しかった。過去、恋人とこうして歩いた時は何も感じなかったのに……いや、結局は心の持ちようなのだろう。それに気づけていれば何か違っていたのかもしれない、なんて今更な話であった。
「あ、この服可愛くない?」
「うむ、男の俺でも着れるタイプの可愛さ。しかし俺のイメージ的には合わないか……?」
店に着いた途端、今井さんが手に取ったのは淡いピンク色に、謎のキャラクターがプリントされたパーカー。どうやらこの店はそういった少し癖のあるデザインをしたものが多いらしく、見れば同じキャラクターが別の構図でプリントされたものもある。
「別に今のイメージに合わなくてもいいんじゃない?ほら、新規開拓ってやつ」
「いや……うーん、趣味に合う……アリ……よし、アリだな。買うか」
「えっ、そんなあっさり?」
結局、今の爽やか系のイメージは強面の緩和が目的なのだ。ならば可愛い系の服装も緩和の仕事ができるだろうと判断し、購入を決めれば勧めてきたくせに今井さんが驚いた顔をした。まぁ確かに、衣服というものは存外高い。しかしである。
「過去大学生活の暇な時間を全てバイトにつぎ込んだバイト戦士の財力を舐めるなよ……!」
「うーん、誇っていい内容なのか……」
呆れた様子の今井さんを連れて店内を物色する。彼女が言ったように新規開拓であるため、ピンク系統のパーカーに合わせるためのズボン系や靴も持っていない。そこらへんも含めて選ばなければならなくなったので、そのまま今井さんを連れて何件か店を梯子する。
―――結局、その日は遅い時間まで買い物に費やし、外で夕食も済ませることになった。帰り道では勢いのままに買ったために、大量の荷物を抱えて歩くはめになったのだった。
次回、またちょっと時間が飛んで少しあとのお話。
なおRoseliaイベント30連したが来たのは何故か星四沙綾。
それはそれとしてついにリサ姉の声差し替えられたねー。なんというか、少し大人っぽいというか落ち着いたイメージ?そんで時々可愛らしく、って感じ。
まだ違和感覚えるけど、これはこれで良いので早く慣れたいところ。