空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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砲撃手視点と其の他

仁は、星と月の明かりが頼りとなった暗い夜の上空で何かを待っていた。逆さまではなく普通に立っているところをみると、今回は真面目にやらなければならない事のようだ。

 

(…めんどーせぇ……でも仕事だしな…)

 

いつも通り面倒くさいと心で呟く仁。

 

そして、その時は訪れた。

 

「………!?」

 

(でかい猿か? あれ)

 

ネギの驚く声が聞こえ、何やら着ぐるみのような大きい猿が少女を抱えて何かかえら逃げていた。ちなみにかなり上空にいるため、ネギの声は聞こえても内容は聞き取れない。

 

ネギは呪文を唱えようとしたようだが、小さい猿に邪魔されて不発に終わっていた。その隙に着ぐるみ猿は飛び去ってしまう。

 

後からかなり慌てた様子で明日菜と刹那も来た。刹那が刀を持っているということは、やはりあの猿が抱えていたのは護衛対象の一人らしい。仁は特に慌てもせず、しかしそのダルそうな雰囲気には似つかわしくないほどの速度で空中を走りだした。

 

(届くか……つーか十分すぎるか…)

 

移動を”走り”から”飛び”に切り替え、膝を曲げ足の裏を猿に向ける。まるで踏みつぶそうとしているかのようだ。だが、この距離ではいくら蹴りの威力が強かろうとも届きはしないはず―――――が、予想をぶち壊す出来事が起きる。

 

「らあっ!」

 

仁は虚空に空気を切り裂く―――いや破壊するほどの轟音を響かせ、蹴りを繰り出す。そして……次の瞬間、着ぐるみ猿に一瞬大きな足形が移り、ダンプカーでもぶつかったんじゃないかと思わせるほどの勢いで吹っ飛んだ。いや、打っ飛んだ(・・・・・)

その余りの威力ゆえか、式神であった着ぐるみ猿は呆気なく送り返される。

 

眼下では、敵の女性やネギ達ですらも茫然としているようだった。

 

(まだ威力あげられーが……中の奴、死ぬかもしれねぇしな…)

 

思考したのはほんの数秒……再び足を振り上げ、先ほどよりは弱い―――しかし、比べ物にならない数の”砲弾”をネギ達を極力避け、乱射する。

 

下では空爆が来たのかと言わんばかりの轟音が響き、砲撃が降り注ぐ。ネギ達は助っ人の登場で攻勢に出ていた。

 

(なーか、もたもたしてーなぁ…)

 

が、一端砲撃を止めてネギ達にまかせようとすると、敵の方へと状況が傾く。いくら相手の式神が強力だとはいえ、チームプレイがあまり成り立っていない彼らでは少し分が悪かったようだ。おまけに敵の女性は仁の砲撃のせいで本気を出してしまっているようだ。

 

(早よーせいや…)

 

そんなこと言うなら自分がやれよと思われるだろうが、今回の仁の役目は実は”極力姿を晒さず、ネギ達を援護する”ということなので、仁がしゃしゃり出て行くわけにもいかないのだ。だが、流石にまずい状況か……と、考える仁の視界にこの場には不釣り合いな、―――着ぐるみ猿達や、明日菜が先ほど出したハリセンなども十分不釣り合いだが―――つばの広い帽子とヒラヒラのドレスを着たどこか間の抜けた少女の姿が映った。

 

一見観光客かと思うような格好だが、こんな時間に出歩く人間は少ないし、両手に握っている刀が一般人ではないと教えていた。

 

「(…撃っとくか)…っハッ!」

 

その少女に向けて仁は砲撃を放つ。予想外の出来事だったのか、少女は受け身すらとれず吹き飛び転がる。

 

そのまま三対二の戦闘が開始される。更に劣勢になるかと思いきや、どうやら女性のほうは符や”気”が少なくなって来たらしく、確実に当てられる隙を作るため大きな攻撃は控えているようだった。

 

乱戦の中―――ついに女性に隙が出来、そこに向けてネギは魔法の射手(サギタ・マギカ)を放った。幾本もの風の矢が女性に迫る…………!

 

「………―――!?」

 

――と、ネギの声が微かに大きくなり、何故か矢は本来の軌道から逸れ、見当違いの場所に着弾した。

 

(…護衛対象を盾にしたのか……そりゃ攻撃するわけにもいかんな…)

 

と思いつつ、

 

「おらぁ!」

 

仁は『割としっかり』攻撃した。

護衛対象ごとを攻撃してしまった………のかと思いきや、その攻撃は針の穴に糸を通すかのような正確さで、なんと女性のみに当たった。

追加でドレスの少女に数発の“軽い”砲撃を浴びせかけ、近くの藪まで吹き飛ばす。

 

 

結果、数十分続いた戦闘が……余りにもあっけなく終わってしまった。

 

(仕事終わり…めんどーせぇ)

 

いまだ唖然とするネギ達をよそに、仁は睡眠をとるべくさっさとその場を去るのだった。

 

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