空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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邂逅、総本山より

「アレだ、確かここだった……筈……」

 

 

 一般人客が多くいる京都にも関わらず、仁はいつも通り上空を歩いている。彼は画面に地図が表示された携帯を右手に持ち何かを探している様子で、少し歩いては辺りを見渡すといったことを繰り返していた。

 

「関西呪術協会……なーで俺まで挨拶せにゃならねーだっての……しかも白ネギより先に…」

 

 

 どうやら彼は『関西呪術協会』という組織の本部を探しているらしい。いつも通りな気だるげな雰囲気のまま、彼は何かに気付いたように上げていた顔を少し下ろす。

 しばらく目だけで辺りを見回していたが、ため息をついた後に行動を再開した。

 

 

「あれか、関西呪術協会の総本山てのは……」

 

 

 やがて目的の場所を見つけたらしく、そこに向かってゆっくりと仁は歩き降りていく。仁の向かう先にはとてつもなく広大な敷地に建てられた大きな屋敷が幾つもあり、かなりの身分を持ったものが住んでいるのが一発でわかる様相をしていた。

 地面を削るような音と共に地面に降り立った仁は、総本山前の門に歩み寄る。

 と、足枷をつけた隈有りに白髪まじりの人物を流石に怪しいと思ったのか、衛兵らしき者が仁の前に立ちはだかった。

 

 

「待て。お前は何者か、そして要件は何かを教えてもらおう」

「……これを」

「コレ? ――――こ、この紋章、それにコレは……」

「多分、話は通ってると思いますが……取り敢えずでいい、お偉いさんに取り次いでください」

「……分かりました、少々お待ちください」

 

 

 最初は半信半疑だったようだが、じっくりと仁の出した紙に書いてあった文と紋章を読んで納得し、上に報告するため奥へと向かっていく。

 

 ……いくら事情があろうと、一人だけしかいない衛兵が門を空にするのは不味いのではないか、とお思いの方もいるだろうが、実はこの屋敷には結界が張られており、容易に立ち入ることはできない。

 その為、もし仁が何かしらの不正を行なって衛兵を騙したとしても、その隙に中へ入るのはまず無理なのだ。……本当に無理なのかどうかは定かではないが。

 

 暫く待っていると、衛兵が走って戻ってきた。そして、仁にこう告げる。

 

 

「長がお待ちです、中へどうぞ」

「……はい」

 

 表面上は取り繕おうと、やはり面倒臭い、さっさと終わらせたいという気持ちが強いのか。

 それとも……いやな予感でもするのか。

 ダルそうな雰囲気を隠そうともせず、コキコキと首を鳴らしながら仁は衛兵についていった。

 

 

 

 

 

 

 

 仁が案内された場所は大広間のような場所であり、先客―――もとい西の長である、近衛詠春が居た。詠春は仁に座るよう促し、仁がよっこいせと座るのを見計らって自分も腰を下ろした。

 

「初めまして、私が西の長である……近衛詠春です」

「……麻帆良学園より任務で来ました、仁です」

「君が、お義父さん……いえ、東の長であり麻帆良学園学園長でもある、近衛近右衛門からの任務を受けた者ですか」

「……半分は正解、半分は間違いですよ」

 

 

 流石の仁も、口調をわきまえる時とわきまえない時との区別は付けるようだ。

 

 

「ふむ、半分正解とは?」

「俺は隠密護衛役と、情報の前渡し役を兼ねてもいるんです」

「……なる程、つまり君は“新書護衛”と“新書を渡す役の者の到来を知らせる”役割を持っているというわけですか」

「後は、単純にあの爺さんが挨拶ぐらいはしておけと言っていたもので。俺の存在を伝えなければ誤解や厄介事を招くでしょうし、特性上良くも悪くもそこまで目立つのはいけません」

「君がここにいるという事は、新書を渡す者は既に近くまで来ていると解釈しても?」

「はい、その判断で――――」

 

 

 と、仁は不意に言葉を遮り、目を細めてとある方角を向き溜息を吐いた。突然の行動に訝しむ詠春だったが、こちらに向き直った仁が口にした言葉により表情を固くする。

 

「長、あんたの娘さんは近衛木乃香で間違いないですよね?」

「そうですが――――まさか!?」

「ちょっと行ってきます。アレだ、不味ぃ事になってる……かもしれねーんで」

 

 焦りからか若干口調が戻っているものの、しかし現状が現状だからか双方ともに咎めない。

 そして仁は、言うや否や返事も待たず飛び出していった。

 走っていくのかと彼の背を見つめる詠春。しかし、彼が魔力も気も使わずに飛んだのを見ると、驚きで声を漏らした。

 

 

「彼は……一体……?」

 

 

 そう呟くが答えるものはおらず、今は“仁”と名乗ったあの若者と、護衛として付いているはずの“刹那”を信じるばかりであった。

 

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