ここで、“独器” の説明を簡単にしたものと、仁の “独器” の説明文を載せたいと思います。
・ “独器” について
独器は仁が元々いた世界にある、強大な力を秘めた武器、防具、道具であり、それらには大昔に仁の元居た世界を荒らしまわった、自然災害級の力を持つ “化物” が封印されている。
力が何かかは、封じられている化物で決まる。
成長には段階があり、一つ目は力を使うこと、二つ目は力を独器に纏付けること(奥ノ手)、三つ目は独器に眠る力を引き出すこと、最後は最大限に引き出した力を取り込み、一体化する事である。
現時点で分かっている(仁が知っている)独器は、氷結系の力であろう
・ “飛” の独器、足枷・『
一対の足枷の独器で、かなり暗い群青色をした、もはや脚鎧のような足枷。
文字通りに本人が飛ぶことができる他、他人や他の物を飛ばせる事も可能。しかし、無生物の場合は制限など殆ど無いが、生物の場合はたとえ木だろうとも微生物だろうとも制限がある。
その他にも二つほど技能があるらしい。作中には、飛ぶだけでなく逆さまに立ったり、空中なのにまるで地面の上かのように走ったりといった様子があるので、もしかするとそれに関係があるかもしれない。
……以上が、説明になります。
それでは本編をどうぞ。
ある晴れた日の午後。
仁はいつもより2割増しな面倒臭さと、3割増の仏頂面をしていた。
この前の文献のことを引き摺っているのだろうか? 確かにあれは、簡単に忘れられるものではないし、そうもそも忘れてはいけないモノでもある。
彼のダルそうな表情の理由は、彼のそばを歩く者―――否、
「……手ぇ離せ…俺は出ねぇ……!」
「何言うとるんや! お前みたいな強い奴と戦うんが、俺の楽しみなんやから、それ奪われてたまるかい!」
「……玉ネギの奴がいるだろーが……!」
「お前とは戦ってないからな! 一度戦ってみたいんや!」
「……いいから離せっての……!」
彼のパーカーのフード部分を掴んで、物理的に引きずる者……小太郎であった。
仁摩の状況を簡潔に説明すると、彼は仁を見つけるや否や格闘大会に出ようと言いより、仁が否定する前にフードを掴んでネギを探しに引きずっている……という事なのだ。
体格的には、年齢詐称薬の所為で彼より若干高いといった感じになっている上、体勢が崩れたままの仁は、なすすべなく引きずられる。
焦っているのか “飛” の力を使うということも忘れて、喉が締まらないよう必死にフードの前部分を掴んで講義しているので、抜け出すこともできないのである。
「お、居た居た! ネギィ!!」
「あ! 小太郎君、仁君!」
「何でジンの坊主は引き摺られてんだ?」
幸運(仁にとっては不幸)にもネギ達はすぐ見つかり、小太郎は嬉しそうにネギへと格闘大会へ誘う。
「格闘大会の締切もう少しやて! 早よ行こうや!」
「ええッ!? ぼ、僕そんなのでないよ」
「何言うとるんや! 勝負できるチャンスやろがい!」
「おお、賞金十万円か」
「体術勝負じゃ僕に勝ち目ないし、それに予定だってこんなに詰まってるのに……」
「……なんでもいいが、掴んでる手ぇ離せ……!」
仁の講義は悲しくも受け入れられず、会話はどんどん進んでいく。カモが目を輝かせながら、跳ね回りながら言った。
「スケジュールならなんとかなるってアニキ! 出ちまえよ!」
「そうや、出てなんぼや! ……けど、ちょいと問題があってなぁ」
「問題?」
「……とにかく離せ、手を……!」
「実は十二歳以下だと否応なしに『子供の部』になってしまうんや。仁ならギリギリ通るかもしれへんけど、俺やネギやとまず無理。それに、俺らが子供を相手にしたら、単なる弱いもんイジメやろ?だから正直困っとってなぁ」
「……ふむ……ならいい手があるぜ! 来なよ、コタローにジンの坊主!」
「……離せっつーの……!」
仁は健闘すらできずに再び引き摺られ、抗う間もなく一個の飴玉を口に含ませられる。途端にネギも小太郎も仁も、十五歳ほどの中学生へと変貌を遂げた。
いつの間にか用意してあったらしい服を着(仁は着させられ)て格闘大会の受付に行き、エントリー済ませ(られ)て、仁はようやく諦めたように抵抗を止めた。
(当日逃げりゃいい。ソレがいい、そうしとくか)
いや、どうやらまだ抵抗する気らしい。
「全く、二人とも強引なんだから」
「すまんすまん。でも、この薬すごいな!」
「その分高ぇけどな」
「……俺帰るわ……」
「あ、じゃぁね仁君! また!」
「絶対来いよ! 仁!」
(……絶対行かねぇ……)
心の中で愚痴りながら、仁はトボトボと去っていくのだった。
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帰路の途中、ポケットに入っていた携帯が鳴り、仁は着信の相手が近右衛門だと確認したあとに通話ボタンを押した。
「……なんだ、爺」
『もしもしも無しかい……いや、お主には先に伝えておこうと思っての』
「先に伝える?」
『うむ。……お主、 “世界樹” は知っておるな?』
「……あぁ、あの無駄にでっかい樹だろ」
『お主一々、一言多いの……まあ何時もの事か。話を戻すが、あの樹は魔法の樹なんじゃよ』
「……なるほど。だからか、でけぇの…」
『そして、樹の中には膨大な魔力を秘めていての、二十二年の一度の周期で魔力量は頂点へと達し、外へ溢れ出してしまうのじゃ。これは世界樹からだけでなく、世界樹を中心とした計六箇所にも、強力な力が溢れ出して魔力溜りを作ってしまう……ま、外見上ではほとんど変わりはないんじゃがの』
「……で、その魔力がどうやばいんだ?」
『実はの、この魔力が人の心に強力に作用するんじゃ。勇気、やる気、嫉妬、恋心、挙げればキリがないが、今回お主にしてもらいたいのは、 “生徒間の告白の阻止”じゃ。お主なら、何故阻止しなければ行かんかわかるじゃろ?』
「……要するに、好きです付き合ってくださいとその場所で言うと、相手はその告白した奴を否応無しに好きになっちまう。好きでもない奴と付き合わせたら、片一方は良くても、もう一方は青春が台無し。だから阻止しろ……って事だろ」
『その通りじゃ。お主は時間と場所の制限無し、その場で見かけたらすぐ阻止してくれい。報酬ははずむが、くれぐれも他の物たちと安易に接触せんようにな。ネギ君一人を言いくるめるだけでも大変だったんじゃから……あ、嘘は言うでないぞ!』
「……あいよ、わーってるって」
『ではの』
それを最後に通話は途絶え、地味に高い音を鳴らして切れたことを伝える携帯を、仁はポケットに押し込み、ため息をついた。