空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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影術使い VS 脚技使い

 龍宮神社に設けられた臨時救護室では、古菲が骨折のため検査を受けていた。その様子を後ろからネギ達が見守る。

 

 

「う~ん……これじゃあ、次の試合に出るのは無理ね。戦うなんて以ての外よ」

「マ、マジアルか? ほ、骨なんて唾つけとけば気合でく付くアルヨーっ!」

「こらこら古菲、無茶言わないの!」

「必ず病院へ行って、本格的な検査を受けてきなさい。勿論、さっきも言ったとおり試合に出るのは絶対ダメよ」

「なんやー……部長さんもう棄権かいなぁ……」

 

 

 悔しそうな表情で納得いかないと唸る古菲だったが、やがて表情を苦笑に変え、ため息をついた。

 

 

「仕方ないね。真名とも戦えたし、ソレで良しとするアル……ネギ坊主」

「は、はい! 何でしょうか古老師!」

「次はお主の出番アルよ、優勝するため気張て行くアル!」

「ゆ、優勝は無理かと……タカミチに勝てるかもわからないし……もし勝てたとしても仁君がいるし……」

「無理無理て、やる前から諦めるでナイヨ! 修行の成果を存分に見せ、修行時の経験を活かせば活路は見いだせる! 気合入れていくヨロシ!」

 

 

 戸惑うネギだったが、彼女自身もまた実力差のある相手に向かって行って、諦めずに勝利をもぎ取ったことを思い出し、気合を込めるためか拳を握る。

 

 

「……はい! 古老師!」

 

 

 そこで、今まで黙っていた刹那がすっと手を挙げた。

 

 

「ん? どないしたんや、刹那姉ちゃん」

「あの~……仁さんの試合がもうすぐ始まるのですが、見に行かなくてもいいのですか?」

「「「あ!?」」」

「あちゃ~……皆ジンのこと忘れてたアルね~…」

「い、急がんと! もしかしたら試合が速攻で終わってしまうかもしれん!」

「すっごく失礼な話になるけど……私もそう思う!」

「は、早く行かないと! 待ってますからね古老師!」

「うむ、先に行てるヨロシ」

 

 

 ネギ達は古菲の言葉を受けると、ドタドタと騒がしく臨時救護室から出て、一斉に試合会場へと駆け出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お~、ネギ坊主とコタロー、それにアスナに刹那」

「楓さん! じ、仁君の試合は!?」

「大丈夫、もうすぐ始まるところでござるよ」

「よかった~……間に合ったみたいやな」

「まったくもう、みんなして忘れるなんて……」

「まぁ、彼が来た時は第4試合が終わったところでしたからね。しょうがないとも言えますよ」

 

 

 なんとか試合に間に合ったらしく、ネギ達は舞台へ目を向ける。舞台の上には、魔法生徒の一人である高音・Dグッドマンと、ネギ達を幾度と無く助けてきた砲撃の人・仁が、向かい合っていた。

 

 

『数週間ほど前から噂になっていた謎の少年、仁選手! 予選では倍近い体格差の相手をまとめて数人蹴り飛ばしていたり、麻帆良大学工学部制作のロボット、鋼鉄の塊である愛称“田中さん” を軽々吹っ飛ばすなど、馬鹿力はかなりのもの! 一方の聖ウルスラ女子高等学校2年の高音・D・グッドマン選手も、あのハイレベルな予選を勝ち上がってきたことから、その実力が伺えます!!』

「おねーさまーっ! 油断しないでーっ!!」

 

 

 客席の愛衣の声援のあと、高音は一旦目を閉じ、微かに震えるような声で紡ぎ出す。

 

 

「フフフ……ついに私の実力を見せる時がやってきました……ネギ先生!!!」

「ひゃ、ひゃいっ!?」

「私の実力を見て慌てないように、気を引き締めておくことですね!!」

「へ、はえ!?」

「この力を持って、あなたのたるんだ職務態度に愛のムチを入れて差し上げます!!!」

「えええっ!!?」

 

 

 慌てるネギだが、横から呆れたような表情で小太郎が呟いた。

 

 

「あのねーちゃんの実力じゃ、仁の足元にすら及んどらんと思うけどな」

「そうですね……残念ですが、高音さんではまず相手にならないかと」

「まあ、そりゃあ……あんな砲撃を素の力で撃ってこれるような人だしね~……」

「あうう――――お姉様、戦う前から負けが決定しているみたいな雰囲気にぃ……」

 

 

 そんな負けムードの雰囲気を受けているのに、高音は自信たっぷりの表情で仁を見据える。

 

 

「私は相手を侮って加減するほど愚かな性格ではありません! 本当に手加減なしでいかせてもらいますよ!」

 

 

 

 高音は手を前に軽くだし、何やら準備をしている様子。仁は一応構えておくかと重心を落とした。

 

 

『第5試合…………fight!!!』

 

 

 

 そして、試合が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ラアッ!!!」

「えぼっ!? ってあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――……」

 

 

 と同時に終わった。

 

 

『たっ高音選手が!? 高音選手が猛烈な勢いで蹴っ飛ばされて虚しくお空の星になったぁ!? こ、この勝負、仁選手の勝利だあっ!!』

『い、今のはなんだったのでしょうか? 解説の豪徳寺さん』

『……どうやら蹴っ飛ばしたのではなく脚を鎌のように引っ掛けることで、馬鹿力を活かし投げ飛ばしたようです。言うのは簡単ですが、あれ程綺麗に飛ばすには猛烈な力と技術が必要なので……あの少年の力量がどれほどのものかわかりますね』

『なるほど』

「早っ!? っていうか早すぎっ!?」

「やっぱ相手にならんかったな!」

「魔法障壁を簡単に貫いて、脚で遠くへ投げ飛ばすとは……!」

「すごいけど……で、でも高音さんがぁ~っ!?」

「お、おにぇ、おにぇ、おねぇさまあ~~~~っ!!!???」

 

 

 選手席も盛り上がっているが、観客席の盛り上がりも中々のものだった。

 

 

「ふわ~……じ、仁君凄すぎますー……!」

「ええ、一回戦のコタローさんもそうでしたが、彼のはさらに常識を飛び越えてるです」

「人が本当にお空の星になるところなんて初めて見たよ!」

「だ、大丈夫なのかな~、あの人?」

「すっげぇな! あの少年!」

「さすが “謎” を関する少年でもあるぜ!!」

「スゲェ足技だ……! 弟子にしてもらいてぇ!!」

(おかしいだろおい!? 一回戦の奴の垂直12メートルもそうだが、あのガキはそれをふっつうに超えてやがんだぞ!? 放物線欠かずに一直線に飛んでったんだぞ! 馬鹿力にも程があるだろ!?つーかウルスラの女、本気で大丈夫なのか!?)

 

 

 一部ツッコミを入れているものがいたが、盛り上がる周りとは裏腹に仁はというと――――

 

 

「……ダルぃ…」

 

 

 

 割と何時も通りなのであった。

 

 




高音さんの “脱げ女化” は阻止できましたが、代わりに何か別のあだ名がつきそうです……
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