空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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子供先生 VS 謎の少年 終

 試合開始から十一分。

 

 

 

 攻める側と守る側の変わらなかった展開は、ここに来て異なる動きを見せていた。

 

「はっ!」

「! チッ」

 

 

 ネギは、魔法の射手(サギタ・マギカ)を時に仁へ向けて、時に有らぬ方向へと放ち、[飛](トバシ)の力による仁の不可思議な動きになんとか対応していたのだ。

 

 

(解放!!)(エーミッタム)―――やぁっ!!」

「んなろ・・・!」

 

 

 遅延呪文を混ぜた狙いもめちゃくちゃな攻撃に、流石の仁もなかなか近付けずにいた。

 達人の目から見れば仁の挙動が少し不自然であることには気づくのだが、しかし近づけていないことに変わりは無い。

 

 が、仁とて魔法の射手の応酬という “接近戦を封じる” 手段に、いつまでも付き合うはずがない。

 

 

「避けてみな、玉ネギ・・・!」

「はぁっ! ――――って、えっ?」

 

 

 少し競り気味に放たれた、魔法の射手三本を蹴り一発で弾くと、仁は一旦飛び上がって足を折り曲げ、

 

 

「・・・砲足(リクムス)!!」

 

 

 見えないはずなのに見えると錯覚さえ、確かにそこにあると感じさせるほどの“蹴圧”を・・・何時もは超遠距離から放ってきていた『ソレ』を、中距離地点でぶっ放ってきた。

 

 

「(アレは脚力砲撃!?)フ、風花・風障壁(フランス・バリエース・アエリアーレス)!!」

 

 

 咄嗟に張った風障壁により防ぐこと自体は出来たものの、受けきれなかった威力によりネギを中心として巨大な足型ができ、ネギ自身もダメージにより前かがみになってしまう。

 

 いつもは遠くから、そして味方として援護のため放ってくれた砲撃はここまでの威力なのかと驚愕し、敵はこんなものを雨霰に受けて戦っていたかと考え、ネギの背筋にゾッとしたモノが走る。

 

 

「うげっ!? 相変わらずなんつー威力・・・!!」

「タカミチ同様防ぐことはできたようだが、肝心の貫通力と範囲は仁の方が上だったようだな」

「というか、破壊力も物凄いし!?」

 

 

 仁の攻撃は尚も止まらない。 かがんだ時にできた一瞬の隙をつき、懐へと潜り込んできた。

 

 

連足(トゥーリート)!!」

 

「うわわわっ! 魔法の射手! から・・・まだ、まだだっ!」

 

「チィ・・・」

 

 

 そして放たれる多方向からの連続蹴りを、しかしネギは叉も遅延呪文や瞬動を駆使して躱し、なんとか試合の流れを仁の方向ばかりへ流させない。

 

 

「難しい遅延呪文をここまで駆使できるとは・・・流石ネギ先生、ですね」

「強敵との戦いは、何週間の修行にも勝るアル! 試合の中でネギ坊主も成長してるアルネ!」

 

 

 知能派系 “柔” のネギと、異色な力 “剛” の仁。ネギが追いついてきたところから両者の試合が更にヒートアップし、観客の盛り上がりもとどまるところを知らない。

 

 が、ついに限界が来てしまう。

 

 とはいっても、それはネギの体力的限界ではない。かといって仁の限界ということは有り得ない。

 近づいて来る限界とは、これは公共的な試合である事から、絶対に逃れられない―――――『制限時間』である。

 

 

『最初は防戦一方だったネギ選手だが、段々と仁選手の勢いに食らいついている! だが仁選手も黙っていない! さらに力を入れたのか、ネギ選手に着実にダメージを与えているっ! しかし、規定時間である十五分はもう間近! 一体勝負を決めるのはどちらなのか!?』

 

 

 歓声が上がり実況の声も響く中、ネギと仁はお互いにとある事を考えていた。

 

 

(仁君は・・・まだ余力を残してる。このまま続けてもジリ貧だ・・・『次で、次で決める』!)

 

(・・・めんどーせぇと思ってたんだがなぁ・・・やっぱ俺も男か、『負けたくなくなってきた』)

 

 

 彼らはお互いに顔を見合わせ、ネギはにっと笑い、仁もほんの僅かに口角を上げた。

 

 

「・・・ああ、同じ事考えてたかよ、白ネギ」

「まぁね」

「・・・やっぱお前も男・・・って事か」

「当たり前、だよ!」

 

 

 言い終えた彼らの顔から―――――――笑みが消え、同じ言葉を言い放つ。

 

 

「次で決めるよ!」

「・・・次で終わりだ・・・!」

 

 

 

 そう言うとネギは拳を構え、会話しながら溜め込んでいた魔法の射手を解放、計18本の矢を作り出す。それに対して仁は、いつも通りに腰を落とした。

 

 緊迫した空気を感じ取ったか、観客席も選手席も完成の音量が若干落ちる。

 

 

 溜め終わったネギが駆け出したその途端、仁はいきなり後方に飛び、観客席の屋根に飛び乗った。

 

 

「ちょ!? 決めるとか言っておいてネギと打ち合わないとか・・・!」

「ふん、あいつは決めるとは言っていたが打ち合うとは言ってないだろう」

「そりゃそうだけど~っ!?」

「・・・だがな神楽坂明日菜。奴は別にお前の今考えている事(・・・・・)を実行しようとしているわけではなさそうだぞ?」

「へ?」

 

 

 そうエヴァンジェリンが不敵に笑ったのとほぼ同時に、仁は垂直に飛び降り柱に足をつける。そして――――――

 

 

 

 

 

「・・・オオッ!!」

 

 

 

 爆ぜ飛ぶほどの勢いで蹴り、仁は猛烈な速度で飛び出す。それに答えるかのようにネギも走り続け、

 

 

「最大っ・・・桜花崩拳!!!」

 

倒足(ガルヴカーギ)!!」

 

 

 能舞台の中央で、飛び込んで放たれた光の矢を纏った拳と、空中で放たれた横振りの蹴りが衝突する。その中心部から、水面を爆発させるほどの強烈な衝撃波を発生させた。

 

 

「どわーっ!!??」

「ひゃーー!?」

「ひぇぇぇえっ!?」

 

『うわーっぷ!? ・・・・き、客席には特殊な防護措置がとられています! なのでご安心を! ・・・っていうか、仁君が飛び出した時点で気づいて!』

 

 

 水煙が立ち込め、辺りが見えなくなる。その為どちらが勝ったのかが判別できない。

 

 

「どう、なったアルか?」

「いえ・・・まだわかりません」

「あ、兄貴・・・!」

「・・・ネギ」

(さて、どちらが勝ったか)

 

 

 

 水煙が晴れたとき、能舞台に立っていたのは――――――何と、両方だった。

 

 しかし、仁は普通に立っているものの、ネギは片膝をついており、これ以上続ければ負けてしまうこのは見え見えだった。・・・が、

 

 

『おーっと、ここでタイムアップっ!! これにより、勝者は観客の皆様のメール投票にて行われることになります!』

 

「!! 皆さんの意見で、決まる・・・」

「・・・」

 

『皆様、お手元にある超包子特性投票スイッチにて、投票したい選手の名前にタッチしてください!!』

 

 

 観客席がザワめき、次々と投票されていく。

 

 投票開始から二分弱で、投票は終わり、集計に入ったようだ。朝倉がコホンと一つ咳払いをし、一枠置くと、緊張した声で告げる。

 

 

『集計が終わったようです! ・・・栄えある勝利を手にするのは一体どちらなのか!? では、投票の結果を見てみましょう――――――こちらです!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[仁:449票]

 

[ネギ・スプリングフィールド:501票]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ・・・!」

 

『僅かな差! だが、ネギ・スプリングフィールド選手の勝利だーっ!!』

 

 

 

 その声と同時に、わっと歓声が上がる。見ると、選手席からも声が上がっていた。

 

 

「あ、兄貴が勝った!? 勝っちまったぜ!」

「投票ですけどね・・・」

「運も実力のうちって言うでしょ!」

「とにかくオメデトアル! ネギ坊主!」

 

 

「あ・・・僕が、勝っ、た?」

「・・・みてぇだな」

 

 

 仁は苦笑いで告げ、ネギに背を向けると手をひらひら降って、「おめでとうさん」と言いながら去っていこうとする。

 それをネギは何故か止めようとして、その思いを感じ取ったか、仁が顔だけ振り向き言い放った。

 

 

 

「実力で勝てたわけじゃねぇのが悔しいならよ・・・努力しな。気が向いたら、相手ぐらいするからよ」

「・・・」

「強くなりな、『ネギ』」

「! ・・・うん!!」

 

 

 ネギは大きく頷くと、大きく仁に向かって手を振る。

 

 

「ありがとう! 仁君!」

 

「・・・おう」

 

 

 これだけのやり取りを交わし、仁は試合会場から去っていった。

 

 

 

 

 

 

「これでよかったんですか?」

 

「うむ。ネギ坊主には勝てもらわねば、この後が楽しく無くなてしまうネ」

 

「・・・それにしても、あの仁っていう子には悪いことしちゃいましたね~・・・」

 

「まぁそうネ。投票では仁少年の勝ちだたアルからね・・・それにしても、あの少年は一体何者カ」

 

「学園長と頻繁に接触しているようですが、肝心の魔力や気を感知できないとなると、ご友人のお孫さんか、それとも “子供に姿を変えて” いる学園長お抱えの傭兵か」

 

「考えられるのはそこぐらいネ」

「何しろ情報が少ないですからね~・・・」

 

「何にせよ、何者にせよ、私の計画は狂わせないヨ」

 

 

 

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