それでは本編をどうぞ。
「・・・ほらよ、ここでいいか?」
「ああ、ご苦労様だ」
人気の無い、カフェテラスのような屋上で、仁はエヴァンジェリンを肩から降ろす。
エヴァンジェリンは数歩歩いたあと、仁の方に向き直って探るような目つきで睨めつけ、疑りの混じった声色で問いを投げかけた。
「仁、お前は前に行ったな。『無生物なら制限はないが、生物を飛ばすのには制限がある』と」
「・・・あぁよ」
「単刀直入に言うぞ――――――――あの話は
「・・・」
「もっと言うなら、確かに条件はついているのだろうな。だがそれはお前が人を飛ばす時にかかる、制限規定のような条件でだけはなく、
エヴァンジェリンが肩に乗っているのに、落とす事もバランスを崩すことも無く走り続けていた仁。
仁の足枷の独器・空轍に宿る
「・・・・・・・あぁ当たりだよ『エヴァンジェリン』。俺が飛ばすときにかかるって言った制限は、
「フ」
エヴァンジェリンは見抜いていた。
それは能力のことだけでなく、仁の考えている事も、である。
勿論、何でもかんでも解っている訳ではないし、彼の目の中にドス黒く静かに燃えている『それ』は、エヴァンジェリンにとって見抜くことの容易い代物ではなかったが。
(ダルそうな雰囲気で分かりづらかったが・・・この男には、ぼーやの些細な心何ぞ喰われてしまう程巨大な『復讐心』と『重い後悔』が渦巻いている。おまけに恩返しとか言っておいて『それは立ち止まるための建前でしかない』・・・強さといい心情といい、とんでもない男だな)
彼女としては、制限とは一体何なのかという事や、仁が
が、武力で聞き出そうにも逃げられるだろうし、そもそも、狭いところでは固形でないと威力が出ないうえ発生場所を固定しなければいけない[凍結系魔法]と、自由自在に空中を移動できて無生物なら無制限で自分の支配下における[飛]の力は相性が悪い。
話術が巧みであろうとも、この男はあっさり誘導されるほど愚かではないだろう。
むしろ、『面倒臭さ』が前面に出た、予想外のカウンターをかましてくる可能性すらありうる。
そこを踏まえて―――エヴァンジェリンは聞き出すのをやめたようだ。
それに、実はこの学園祭の後に聞き出すチャンスがもう一回あるからでもあるのだが、それを表情には出さない。
「ま、お前にはまだこの学園祭で苦労することがあるようだからな。今回は上等で済ませておく」
「・・・あ~・・・」
「やはり敏いな、ぼーやとは大違いだ。あ、あと―――――」
「あ?」
「夜中になったら後でここに来い。それじゃあな」
カードを投げて最後の一言を言い終えると、エヴァンジェリンは2つあるうちの左の扉から出て行った。
カードを受け取り確認した仁は、エヴァンジェリンとは反対方向の扉から出ていく。まだ神社から出てきていないのか、取材として待機している報道陣が少なく、屋根つたいに走っていけば悠々と抜けられた。
(・・・さて、これからどうすっかな・・・)
もう一度コーヒーでも飲むか、それとも屋台を巡るかどちらにしろ暇なことに変わりはない。
「あ! 仁選手だ、追えっ!!」
「仁選手! 何か、なにか一言!」
「あの馬鹿力は本当なんですか!? 仕掛けがあるんですか!?」
「コメントをーっ!!」
「・・・めんどーせェ・・・」
徐々に集まり始めた報道陣を撒きながら、仁は何時も通りの口癖を吐くのだった。
早いとこ、ネギまの世界での『仁』と『紬』の邂逅や、仁の過去についての詳しい話を書きたいのに、その話はだいぶ後の予定・・・ほんの少しジレンマ。