空はすっかり暗くなり、あたりを優しく、しかしシッカリと照らす世界樹を望みながら、麻帆良祭二日目も終わりに近づいていく。
そんな明かり要らずとも言えるほどの発光量を誇る世界樹を目にし、仁は今日の麻帆良祭のことを思い出しては溜息を吐いていた。
いくら屋根の上を走ろうがこっそり飛ぼうがまほらTV等の報道陣に見つかり、追い掛け回されたからだ。しかもその理由が優勝したクウネルや準優勝のネギが逃げ回るから来たとばっちりのようなものなので、仁としては面倒臭い事この上ない。
彼としては本当は、頭を小突くなりしたいところなのだが、した所で何も変わらない上にまた面倒臭い事になると、屋根の上に座ったまま仁は動かないでいた。
(・・・もうすぐエヴァン○リオ○と約束の時間か・・・めんどーせぇなぁ・・・)
彼は本来、本当に大事でなければ約束を律儀に守ったりはしないのだが、エヴァンジェリンはこの約束をすっぽかせば後々更に倍加して、しつこくしつこく迫って来るだろう。
そう考えると、今回は行っておいた方が得策だと考えられる。
(・・・にしても・・・メンドーセぇ目してたな・・・)
仁が言っている面倒くさい目、それはエヴァンジェリンの目の中に宿っていた『高揚感』とも、新たな目的を見つけた『満足感』とも言えるもので、その何方であろうと何方もであろうとも、何かを企んでいることに違いないのは見え見えだった。
が、うだうだやっていても仕方がない。
覚悟を決めると、仁は暗闇の空中へと静かに消えていった。
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流石に世界樹といえど麻帆良全体を照らす力は無いのか、エヴァンジェリンの指定場所に近づくと同時に、届く光量も弱まっている。
そんな薄暗い中で遠くに別荘が見え、そこが指定した場所だとわかると仁は、Gも落下の際の衝撃も考慮していないような、轟音を立てる着地を行った。
「うほぉ!?」
「む! 敵アルか!?」
「あうぇ!?」
「うおおっ!?」
と、その着地地点のそばから、少女の声がいくつか聞こえそちらを振り向くと、刀を持った女子一人、メガネをかけた女子二人、背の高い女子一人、目の隠れた女子一人、小さい女子一人、色黒の女子一人がいた。
「仁さん、ですか?」
「おや、仁殿ではござらぬか」
「・・・あ~、あんたらは・・・」
その内二人・・・桜咲刹那と長瀬楓が仁に対して緊張を解いて反応したのを見て、仁も周りの少女たちも構え(内4人はらしきもの)を解いた。
と、何故ここにいるのかと質問しようとしていた仁の耳に、大きな声が響く。
「あーっ!! 誰かと思えばネギ君と戦って、投票で負けたけど実質は大勝利だった、超馬鹿力の謎の少年じゃんか!!」
「・・・るせぇなぁ・・・」
「さっき空から来たよね!? ということは君も魔法を使えるの!?」
「・・・音量落とせや」
メガネを掛けた、触覚のような髪束が脳天から伸びている黒髪の少女が仁を指さし、興奮したようにまくし立てるのを見て、仁は早速面倒事に巻き込まれたと内心頭を抱えていた。
・・・地面を爆発させる勢いで着地した、自身の責任は棚に上げて。
「そういえば詳しく聞いていなかったですが・・・仁さんはネギ先生とどのような関係で?」
「あ、私も・・・ネギせんせーから詳しく聞いてなかったから・・・」
「仁さんは、ネギ先生を吸血鬼事件の時からずっと支え続けている、サポート役のような少年なんです」
「実質ネギ坊主は、仁殿の助けがあったればこそ抜けられた窮地も多かったようでござるからな」
「お嬢様奪還にも協力してくれましたし・・・依頼でとは言え、頼れる仲間の一人、といった感じですね」
「なるほど・・・わかりました」
少女たち三人は納得したように頷くと、仁のもとに近づきペコリとお辞儀をした。
「どうも、ネギ先生のクラスの生徒です、綾瀬夕映です」
「え、えっと・・・宮崎のどかです」
「私の名前は早乙女ハルナ! よろしくね!」
「・・・丁寧にどうも・・・」
一人お辞儀にはほど遠いものがいたが、真面目に突っ込むのが面倒くさいと仁は普通に応対する。
「オイ長瀬」
「なんでござるか? 長谷川殿」
「こんなこと口にするのは嫌なんだが・・・あのガキって正直どれだけ強えんだ?」
「ふむ、あくまで拙者の推測でござるが・・・今ここで刹那と古と拙者が全力でかかって行っても、劣勢に立たされるぐらいの強さ―――――」
「ありえねぇよ!? なんだよそれ! どこのトンデモファンタジーだ!」
「そういわれても、事実でござるしな」
一部でブンブンと頭を物理的に抱えて振っている者がいたが、仁はそれを無視し聞きたい事を聞くとにした。
「・・・お前らも・・・エ○ァン○リオンに呼ばれたのか・・・?」
「それは言っちゃまずいだろ!? ちゃんと本名で呼べよ!?」
「・・・あ~・・・直すのめんどーせェ」
「おいコラァ!?」
「まぁまぁ千雨さん・・・・それで、私達がエヴァンジェリンさんに呼ばれたかどうかという話ですが・・・私たちはどちらかと言うとネギ先生に呼ばれてここに来たのです」
刹那が千雨と呼ばれた少女をなだめながら答え、仁はそれに対して目を細めながら返す。
「ってこたぁ・・・白ネギの奴ぁこん中に・・・」
「し、白ネギ?」
「とにかく中に入りましょう。余り遅いとネギ先生も心配するでしょうし」
刹那にそう促された一同は、(千雨は半ば引っ張られながら)ログハウスへと入っていった。
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「ようこそいらっしゃいました早乙女さん! 長瀬さん! 千雨さん! 仁君もね!」
「な!?」
「おぉ」
「あがが・・・」
「・・・」
手すりのない橋、広い海、螺旋階段のある塔、驚愕のあまり4人は唖然として目の前の光景を見つめている。・・・ちなみに上から、ハルナ、楓、千雨、仁の順である。
彼らはログハウスに入ったあと、その地下室にてジオラマのように球体の前に行き、それに触れたと思ったらここに居たのである。驚くのも当然だろう。
「なんじゃこりゃぁ!!?? 凄っ、広っ! 超不思議空間じゃんか!!」
「ほー・・・これはまた、とんでもない代物でござるな」
「・・・・つーか、アチぃ」
(やっぱり、ついて来んじゃなかった・・・)
はしゃぐ少女達を尻目に千雨は回れ右をし、背を向けて歩き出す。
「どうしたんですか? 千雨さん?」
「私は帰らせてもらいます、こういう異常な事態に巻き込まれて、普通の日常が壊れるのは嫌なので」
「あの・・・ここは一旦入ると、二十四時間は出れませんよ?」
「な、何ぃ!!?? 学祭はどうすんだよ!?」
「いえ、ここでの二十四時間は外での一時間になるので・・・」
「・・・・差し詰め、浦島太郎の逆バージョン、か・・・」
「うん、大体その解釈で合ってるよ、仁君」
(とことん都合いい設定だなオイィ!?)
驚愕に次ぐ驚愕で体が震えている千雨に、ハルナが近づき徐に手を引っ張った。
「ほらほらほら!! 千雨ちゃんも行くよ! プールもあるんだってさ、はしゃぐ他ないっしょ!!」
「あ、ちょ、コラ引っ張んな!!?」
「あはは・・・皆元気だなぁ」
苦笑いしながら小走りで後覆うネギの背中を眺めながら、仁はゆっくり歩き出す。
(・・・・あいつの事だ。
首をゴキりと回し、顰めた顔そのままに嫌な予感をヒシヒシと感じながら。
エヴァンジェリンの目的とは?
・・・あと、ネギの呼び方が元に戻っちゃいましたw 仁が普通に名前を覚えているのは、紬と育ててくれた『爺さん』ぐらいで、後の人たちはロクに覚えてません。