エヴァンジェリンの別荘である、外側に螺旋階段のある塔の中途半端な位置で、仁は壁面を床変わりにして横向きに、耳栓をしながら座って寝ていた。
どうやらハルナ達がキャアキャアとうるさいので、こんなトンデモない所で寝る事にしたようだ。・・・ちなみに、ここにやって来てすぐにエヴァンジェリンとあったのだが、どうやら用事は皆が寝静まってからになるらしく、その時まではまだまだ時間があるらしい。
仁は暇つぶしの方法など知らないので、時間つぶしの為寝ているのだ。
「―――――」
「・・・・チッ」
しかし、仁の寝付きの悪さと眠りの浅さは相当なものなのか、微かに聞こえる声だけで頻繁に目を覚ましてしまっているようだ。
しかも、仁は睡眠薬を使っても多少改善されるだけで眠りが浅いままらしく、一度薬を使ってから再度服用した事はほとんどない。
だからこそ目元の隈は消えないのだろうが。
どうせ出来なくとも、無理矢理にでも寝てしまおうと再び目を閉じる仁だが、それを邪魔する声が一つ。
「うお!? 仁の坊主なんてとこで寝てんだよ!」
「・・・・ぉれの勝手だろうが・・・」
「ま、まあそうだけどよ」
「・・・なんの用だ、それで」
「あ、そうだそうだ! 兄貴に仁の坊主を呼ぶように頼まれたんだよ。なんでも説明したいことがあるらしくてな」
「・・・・あぁょ」
微妙な返事を返し、階段に居たカモを肩に乗せると最上部のプールへ向かって上昇していく。
「悪いな、仁の坊主」
「・・・あぁ」
登り終えて見下ろすと、プールサイドにネギ達が集まっており、仁はそこにズダン! と音を立てて着地した。
「うおっ! じ、仁の坊主よぉ・・・着地をゆっくりする事ぐらい出来んだろ?」
「・・・・めんどーせぇ」
「いや、どんな理屈だよ!?」
しかし、その音でネギ達も気付いたのか、仁のいる方へ駆け寄ってくる。
「あ、仁君。ちょっといいかな、超さんについてなんだけど・・・」
「・・・格闘大会主催者がどうかしたんかよ・・・」
「うん、今アスナさん達にも説明するとこだよ」
そう言って、遅れて駆け寄ってきたアスナ達に、ネギは自分が知った超の秘密を語りだした。
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「超さんは未来人で火星人でネギ君の子孫!?」
「・・・え~と? このガキは私達生徒や、恩人の少年をからかっているのかしら~?」
「からこってまふぇんゆ~!!」
「確かに馬鹿げて聞こえるでしょうが、これは先ほど本人が直々に言った事なんです」
「ちょ、ちょっと待つアル。話長くて分からなかったヨ。初めから頼むネ」
ネギの頬からアスナが手を離すのを見計らって、刹那とネギは再び説明し始めた。
「簡単にまとめると・・・超さんは百年以上前の未来から来た火星に住んでいる火星人で、しかもネギ先生の子孫だと」
「目的はタイムマシンによる歴史の改変で、その為に魔法を全世界にバラそうとしていて・・・学園祭三日目に行動を移す、という事です」
そこで一拍置かれ、
「え~と? この子は? まだからかい足りないのかしら~?」
「だくらかるかってまふぇんてぶ~!」
「はっ、世迷い事だな」
「確かに、酔っ払いの戯れ言にも等しいですね」
「では、やはり嘘だと?」
「パルの何時もの謎情報とどっこいどっこいだしね~。やっぱりこのガキがからかって――――」
「・・・・・・お前ら馬鹿か? 馬鹿なんだな?」
と、ここまでずっと黙っていた仁が唐突に口を開いた。
罵倒付きのかなり酷い切り出しで。
恐らく、話が進まない事を面倒くさがり、咄嗟に出てしまった物なのだろうが・・・。
「ば、バカって何よバカって!」
「改めて言われるとカチンと来るあるヨ!」
「ちょ、ちょっと仁君!? いきなり何を・・・!?」
彼女らがそんな個人的すぎる考え、分かる訳もない。
当然、開口一番馬鹿にされて憤る彼女達に構わず、仁は静かに言葉を続ける。
「・・・青ネギの奴の子孫だとか、火星人てのは確かに戯言と言えーだろうがよ・・・未来人や歴史改変は、少なくとも戯言と決めるにゃ早ぇと思うがよ」
「理由は?」
「あるなら言ってみなさ――――――」
「・・・タイムマシンは本物で、この時代の科学力を大きく凌駕する・・・これだけでも、超ってのが未来から来た証拠には足ると、俺ァ思うけどよ・・・」
「うっ・・・」
「・・・仮に未来人が嘘だったとしても、現時点では完璧に否定できんだろうに・・・慎重に考えるぐらいしろっての・・・」
「仁君の言うとおりだね。もうちょっと慎重に考えてみましょうよ皆さん」
「・・・そうでござるな」
でも、とネギが仁の方を向き、目を若干釣り上げて早口でしゃべりだした。
「いきなり口を開いてバカとかいうのは、ちょっとどうかと思うよ?」
「なら、アンポンタン・・・」
「や、だから」
「・・・だらず」
「そうじゃなくて」
「fool」
「だから言い方の問題じゃないんだってば!?」
ちなみにどれも『馬鹿』という意味の罵倒語で、結局言っていることは変わらない。
最悪見下しているとも取れそうな発言だが、本人的には面倒くささが先だって、さっさと話しを進めたいからと端折り過ぎただけの様だ。
ニュアンス的には『こういうおかしな点があるから、少しは気が付いて欲しい』的なものだったかもしれない。
・・・それでも、かなり酷い言い草なのに変わりは無いが。
来てそうそう、ネギはドッと疲れたような顔をした。
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話を終えたネギ達は、次に新たに
「そんじゃいくよ、ゆえ吉!」
「は、はい」
「「
カードが光り、ハルナの方にはスケッチブックと羽ペンが、夕映の方にはいかにも魔法使い然とした帽子と分厚い本が現れた。
「・・・っていうかあんたらいつの間に・・・」
「ええ、ついさっき頂いちゃいました☆」
「すいませんです、すいませんです!」
「能力は後で確認するが・・・ともかく戦力が増えた上に、仁の坊主も本格的に手助けしてくれんだから、更に増し増しだぜ!」
何やら興奮するカモを尻目に、夕映がおずおずと話し出す。
「ネギ先生」
「なんですか?」
「先ほどの話ですが・・・もし仮に全てが本当だとしても、疑問が二つほど残るです。 一つ目は、なぜ魔法をバラすのが歴史の改変へとつながるのか? 二つ目は、そもそも何故超さんは未来から来てまでそんな事をしようと目論んでいるのか? という事です」
「え、ええ・・・それに関しては僕も―――――」
「・・・それに関してもアレだ、簡単なこったろ・・・」
と、そこでまたも仁が声を発した。
「じ、仁君分かるの!?」
「・・・まず一つ目だけどよ・・・魔法ってのぁこれまでクソ長い間ず~っと秘密にしてたんだろ?」
「え? う、うん」
「・・・そんなものを、科学が発達して無ぇと思われてたものを、実際に目ん前に晒して『魔法はある』と断言できる状況になったら・・・歴史の一つ二つ変わんだろーが」
「「あ!?」」
「・・・オイ」
確かに簡単なことだ。
長い間秘密にしてきていたことをバラせば、たとえそれが友人の些細なことであても多少の影響は出るというモノ。
それが世界規模ならどうなるかなど、言わずもがなである。
「じゃ、じゃあ二つ目は?」
「・・・これに関してぁ意見が分かれんだが・・・本当に未来から来たとしたら『未来で何か悲劇的な事件』が起きたか、『超自身にとって都合の悪い事』が起きたか、それを変えるために来たんだろ。
それもアレ、魔法をバラせば変わるような、な」
「・・・そう、だね」
仁の言った二つは憶測でしかないかもしれないが、現状ではそれ以上に正しい答えは出せず、ネギも夕映も頷く。
そこでネギが俯き、ポツリポツリと言葉を紡ぎ出した。
「それを踏まえても・・・ぼくは、超さんがやろうとしている事が、本当に悪い事だと断言できそうもなくて・・・」
恐らくネギは、超となにか話をしたのだろう。
だからこそ言える事なのだが・・・しかし何も知らない者は当然ながら、
「何言ってるのよ! 高畑先生を拉致監禁したのよ、もうめっちゃ悪人じゃない!!」
「そ、それはそうですけど」
「それにさ、話が嘘であれ何であれ、超が三日目に何かをやらかそうとしてんのは事実なんだぜ? 兄貴」
こうなる。
そこでアスナがアーティファクトであるハリセンを出現させ、前にグッと突きつけた。
「と・に・か・く! 何をやらかそうとこの剣でぶっとばしてやるんだから―――――って、あらら? ハリセンに戻ってる?」
「どうしたんだねーさん、いつでも出せるようになったんじゃなねーのか?」
「調子がいいと出るのになぁ~・・・」
頭をポリポリ掻くアスナに、カモは苦笑しながら告げる。
「ま、考えたって本当の答えは超の奴しか知らねぇわけだし、対応できるように準備しとこうぜ! みんな協力してくれるみたいだしな!」
(・・・俺は成り行きだがよ・・・)
(私は! 協力する気なんざ端からねーっての!!)
カモの発言を聞いた面倒くさがりと巻き込まれが、揃って口をへの字に曲げ不満を漏らす。
・・・が、当然心内なので察してすらもらえなかった。
「でも、仁君はともかく
「大丈夫ですよ」
「そうやで、ネギ君」
弱気なネギに、野太刀と小太刀を持った刹那が声をかける。
「怪我してもウチが治したるから、安心するえ♡」
「回復術師のお嬢様は、私が必ずお守りいたします」
中々にかっこいい立ち姿のセリフ・・・なのだが、スクール水着と猫耳のせいで台無しになっているのは言うまでもない。
「超の奴にゃ、ロボットの軍勢も控えてっからな。戦力は幾らあっても足りねえぐらいだ。おまけに茶々丸や龍宮隊長まで向こう側についちまったし・・・」
「その点は拙者らに任せるでござる」
カモの言葉に続くように楓が、そして何処が元気のない古菲が一歩前に出る。
「あの、大丈夫ですか?」
「! うむ・・・もし、もし超が悪い事をしようとしているならば・・・友として全力で止めるアル。大丈夫アルよ」
「くーふぇさん・・・」
「楓姉さんと古老師の助太刀は頼もしいぜ。でも、兄貴が前衛に回っちまったから後衛が不足気味で・・・」
どうすべきかと悩むカモに、このかが嬉しそうな声で助言をした。
「だいじょぶやてカモ君。だって仁君がいるえ?
「そうだ、そうじゃねえか! 仁の坊主が居たじゃねえか!! 新たに加わった3人が成長するまで頼むぜ、仁の坊主!!」
「・・・あぁょ」
何時も通りやる気のなさそうなダルそうな声で、しかしちゃんと返した仁は、緊張感無くアクビをした。
それでも口を手で隠しているあたり、(かなりギリギリだが)本人なりに空気を読んでいるのは理解できた。
「さっきも言った通りだ! のどか嬢ちゃんにゆえっち、ハルナねーさんはこれからを担う新たな後衛! 頑張ってくれよな!」
「ハ、ハイ」
「わかったです」
「OK、まかせなって!」
揃ったメンバーに満足そうに頷くカモ。
だがまだ何かが足りないと、考えながら首をひねる。
どうやら、回復術師のようなサポート役が少ないことに不安を覚えているようだ。
「仁の坊主は遠距離戦の火力をかなり補充できるし、後衛はこれで満足なんだけども・・・うーむ、特殊なサーポート役がいねえんだよなあ・・・と、なると」
そこでカモの視線は、少しずつ離れようとしていた千雨に向く。
「あ? なんだよ不思議生物」
「ちうっちも仮契約しようぜ!」
「誰がするか!?」
「いいじゃんしようよ~! 私たち仲間じゃ~ん!?」
「仲間じゃねえよ、勝手に決めんな!!」
嫌がる千雨だが、状況は彼女の意思とは裏腹にどんどん進んでいく。
「ふ~む、こうして見ると中々のもんじゃねぇか? どれどれまとめると―――――
name:ネギ・スプリングフィールド class:魔法拳士 ability:西洋魔術、中国拳法
name:神楽坂明日菜 class:破魔剣士 artifact:ハマノツルギ ability:咸卦法、魔法無効化、刹那直伝の剣術
name:近衛木乃香 class:見習い治癒術師 artifact:コチノヒオウギ、ハエノスエヒロ ability:西洋魔術
name:桜咲刹那 class:剣士 artifact:匕首・十六串呂 ability:神鳴流剣技・退魔術
name:古菲 class:拳士 ability:中国拳法
name:長瀬楓 class:忍者 ability:甲賀・楓忍法
name:仁 class:脚技使い ability:魔法・“気” 皆無の馬鹿力、飛行特化能力
name:宮崎のどか class:読心術師 artifact:いどのえにっき ability(?):気絶
name:綾瀬夕映 class:見習い魔法使い artifact:世界絵図 ability:西洋魔術
name:早乙女ハルナ class:召喚絵師 artifact:落書帝国 ability:噂拡大能力
name:長谷川千雨 class:未定 ability:ハッキング、画像改竄
―――ま、こんなところか。結構グッドなメンバーじゃねぇの!」
「フフフ、デコボコパーティとでも言うべきか?」
「いや待てこらオコジョ! なんで私が入ってんだよ!!」
声張り上げるも時既に遅し。
千雨の言い分はむなしく無視され、少女達は気分の高揚からか、もろ手を上げワッと盛り上がる。
ネギはどこか悩ましげな顔をし、それを見たエヴァンジェリンは突然軽く笑う。
「仁の奴がいるだけで十分だろうが。そもそも私は手を貸す気など毛頭ないぞ」
「はい・・・もちろんです、マスター」
「フ・・・(また悩んでいるのか、ぼーやは)」
心配事尽きぬといった感じのネギに、カモが再度苦笑して声をかけた。
「大丈夫だって兄貴。超の奴も命までは取らねえよ」
「・・・う、うん」
「問題は、超殿が使った謎の術でござる。あれを破れそうなのは現状で仁殿だけでござろうが・・・超殿も、それは可能性としていれているでござろうし、そうそう対策が立てられるとも思えないのだが」
「・・・それなら大丈夫です、仁君に頼らずとも何とかできると思います・・・いえ、僕が何とかしましょう」
「! ・・・ほう」
先程までの表情とは打って変わって確信じみた表情をするネギに楓は意味深につぶやき、仁は何故だか軽く眉を上げた。
後ろを向きがちだった彼が、自信ありげな発言をした為だろうか。
「よーしそれじゃ、パーティ内の役割も決まったことだし・・・!」
―――と、そんな真面目な話をしている後ろで、何やら話が盛り上がってきている。
どうやら話の内容は、第一次ネギパーティが出来た事だしパーティ名を決めよう、という事らしい。
「ユニット名! これは重要だよ、さてどんなのがあるか、思いついた奴らから上げていってよっ!」
「ほ、ほな 『ネギーズ』!!」
「却下!!」
「はうえ~」
余りにも直球過ぎた。
「『カモ☆ネギ♡ガールズ』でどうだ!!」
「アホかい!!」
「しかも仁君いるからその名前は無理だし!」
そもそも何故 “♡” を入れたのだろうか。
「『スプリングフィールド一家』はどうでござるか?」
「『ネギ一味』がいいアル!」
「なんですか、そのマフィアみたいな名前は」
少なくとも救う側には思えない。
「ネギの名前が入んなくてもいいじゃん! 『麻帆良自警団』とかさ!」
「『まほらガーディアンエンジェルス』がいい! アスナのは可愛くない!!」
「じゃ、じゃあ『まほらーず』!!」
「・・・ハッ」
「「仁君に鼻で笑われた!?」」
センスが悪かったのか、それともまたしても
「ならば『ネギとわけぎと』っ!!」
「なにその芸人みたいな名前!?」
「お前らにセンスがねぇのはよーくわかった! だから一旦黙れ!!」
遂には傍観を決め込んでいた千雨がガチギレる、唖然必死のトンデモネームまで発生する始末。
ロマンチックな夕日をバックに―――しかし、全く大人な雰囲気もない騒ぎ合いは続いていくのだった。
仁の所で、ability:『飛行特化能力』となっているのは、現時点のカモ(というかネギ達)は、仁の[独器]、