空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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実力の片鱗

 エヴァンジェリンは以前こう評価した、『仁の実力はあのアホ二人に匹敵する』と。そして彼女のその考え、それ自体は間違いではなかった。

 だが・・・エヴァンジェリンにも誤算があった。

 

 

 

 それは、魔力でも気でも無い『独器使い』の放つ圧力がどれほどのものか、どのような感覚を持たせるのか、それを『魔力』や『気』を基準に考えていた事だった。

 

 

 しかし、いざ目の前にした圧力を感じれば、それはとことん希望的観測であった事を知ることになる。

 

 

 迫るのは圧迫感というチャチなものではなく、『死』という純粋すぎる原始的な恐怖。追い詰められた時でもそうそう感じることのない恐怖を、未だ余力だ十分すぎるほど残っているのに、強く深く感じているのである。

 

 

 

「あ・・・かはっ・・・(な・・・んだこ、れはっ・・・!?)」

 

 

 

 あまりの恐怖からか、エヴァンジェリンは掠れた声しか出せない。・・・いや、エヴァンジェリンを驚愕させているのはそれだけではなかった。

 

 仁から感じる『封印を解いた今の力量』、その差が『封印されていた際に内包されていた力量』よりも上なのだ。

 

 

 つまり―――

 

 

 

(私は・・・封印しきれずにじみ出ていた(・・・・・・・・)力を感じ取ったに過ぎないとでも言うのか・・・!?)

 

 

 

 

 勿論、この世界でそんな力量を持っているものが二人もいたら、それはトンデモない騒ぎになるだろう。

 しかし、彼や紬は『異世界』の出身。即ち、強さの基準が違う(・・・・・・・)としても、何ら不思議はないのだ。

 

 

 

 

「・・・こっからアンタのお望み通りにやんぞ・・・」

「! ぐっ!?」

 

 

 

 身構えるエヴァンジェリン――――――

 

 

 

 が、次の瞬間に蹴っ飛ばされる。 

 

 

 

「があっ!?」

 

 

 

 恐らくは[飛](トバシ)の力を使って全速力で飛んできたのだろうが、それにしたって桁違いの速度にも程があった。

 

 

 

「この・・・っ!!」

 

 

 

 『術式兵装・氷の女王』の効果により、中級までの凍結系呪文なら無詠唱で撃ち放題だという反則スレスレな効果を利用し、エヴァンジェリンは再び弾幕を張る。

 

 

 だが、その弾幕は『出現させたと同時に』自分の方を向き、一斉にぶつかってきたのだ。

 

 

 

「うあああっ!?」

 

 

 

 これも仁がしたのだろうが、制度と威力と操る数(・・・・・・・・・・)が解除前と段違い。流石に不定形のものは飛ばせないのかそのまま仁に向かっていったが、それも蹴りのひと振りで散らされる。

 

 自身の氷剣や氷槍で常時展開式の障壁を容易く破られ、エヴァンジェリンはきりもみ回転して吹き飛んだ。

 

 

 すぐさま浮遊術を応用してきりもみ回転を止めようとして・・・・・・体が言うことを聞かないことに、彼女は気づく。

 

 

 

「ま・・・さか!?」

 

 

 

 気付いても時すでに遅し。仁はもうすでに足技の射程距離に入っており、足を振りかぶっていた。

 

 

 

倒足(ガルヴカーギ)!!」

「おごぉっ!!」

 

 

 

 咄嗟に張った障壁など焼け石に水。

 魔力強化をしていないのかと本人に錯覚させるほどの威力の蹴りが、エヴァンジェリンの腹部に決まり、彼女は地に叩きつけられた。

 

 

 

「ぐは・・・かはっ!?」

 

 

 

 何とか立ち上がったエヴァンジェリンに、仁は空中から声をかけた。

 

 

 

「・・・もう面倒くせぇからよ。詮索される前に、お前が知りたがってる《隠された技能》のこと喋っとく」

「・・・なぁ・・・?」

「・・・まず一つ目が――――――」

 

 

 

 

 

 そう言いながら、仁は真下のエヴァンジェリンに向かって急降下する。大人しく喰らうものかとエヴァンジェリンは横に移動するが、仁は真下に急降下しながら(・・・・・・・・・)横を向き、まるでそこに『壁でもあるかのように』蹴って軌道を変え、エヴァンジェリンめがけて再び落下した。

 

 

 

「・・・(虚空瞬動!? いや、違う・・・虚空瞬動は下に移動しながら蹴ったりできるものでは・・・クソっ!)リク・ラク・ラ・ラック・ライ―――」

 

 

 

 ならば空中だとエヴァンジェリンは飛び上がり、呪文を唱えようとして・・・口が止まる。

 

 何故ならば、まだ空中に居るはずの仁が『まるでそこに地面があるかのように』踏みしめて膝を曲げ、『こちらに向かって飛びながら』見えない地面を蹴って猛スピードで突貫してきたのだ。

 

 

 

「【倒足】!!」

「うああっ!?」

 

 

 

 いよいよ分からなくなってきたエヴァンジェリンの耳に、仁の声が届いた。

 

 

 

「・・・・これが隠してる内一つ・・・『地面に自分のみ利用できる足場』を作るって事だ。・・・厳密に言や、実際にそこにあるわけじゃねぇ(・・・・・・・・)、だから移動しながらでも蹴ってスピードアップすんのか可能なんだよ・・・地上と同じように蹴ることもできるし、更に」

 

 

 

 体勢を立て直そうと、彼女が仁の方を向こうとしたとき・・・何もないはずなのに『壁にぶつかり』、立て直し損ねる。

 

 

 

「・・・自分のみ利用できるってぇこたぁ、こうやって『自分が蹴っ飛ばした勢いに混ぜて相手を飛ばせば』、足場にぶつけんのも可能だ」

「つぅっ・・・!」

 

 状況は一応限定されるし、持続性皆無だし、威力そのものは低いけどよ。

 ―――そう付け加える仁だが、そんなもの何の関係があるのかと、エヴァンジェリンは盛大の突っ込みを入れたい気分だった。

 

 余りと言えば余りに反則なその性能。

 大地を滅ぼし、星をも乗っ取りかけた化物の力は伊達ではなく、[独器]が恐れられるのも当たり前と言えた。

 

 しかし、これ以外にももう一つある。最後の一つとは一体何なのだろうか。

 

 

 

「・・・最後の一つ・・・は、何だ・・・」

 

 

 

 一般人なら一発受ければ即死どころかバラバラになる蹴りを受けて、まだ立っていられる所はさすが吸血鬼の真祖と言えるが、回復能力があるはずのエヴァンジェリンにしては傷が深い。

 

 もしかすると[独器]にはまだ秘密があるのかもしれないが、それを聞けるほどエヴァンジェリンに余裕はない。

 

 

 

「・・・誤魔化さずに言う―――――『空中での足技の威力強化』だ」

「はぁ・・・!?」

 

 

 

 

 今のままでも十分すぎるほど強いのに、その上さらに強化できるというその発言に、エヴァンジェリンは開いた口がふさがらなくなった。

 

 

 

「・・・強化段階の幅がデカイから、一段階強化するだけでもえらいことになっちまう。・・・だからアレだ、白髪少年にもヘルメンとかいうおっさんにも、青ネギの奴にも使わなかった・・・。

 考え無しに使えば『問答無用で力がたれ流れて』おびき寄せちまう・・・。本当なら 封印状態の “奥ノ手” だってギリギリなんだけどな・・・」

 

「! リ、リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!!」

 

 

 

 始動キーを唱えるエヴァンジェリン・・・しかし、彼女はもうわかっていた、『何を放っても悪あがきにしかならない、そもそも間に合わない』と。

 

 

 

 

 

砲足(リクムス)!!」

 

 

 

 

 そして放たれた、微かに群青色を纏う砲撃が、当たり前のように魔法障壁を破り、エヴァンジェリンを空の彼方へ吹き飛ばし、魔法球の内面壁にぶつかった。

 

 

 

 そのまま、もう立ち上がっては来なかった。

 

 

 




ネギまの世界基準でいえば、『仁』と『紬』の強さは異常な値に入ります。


しかし、仁は紬を呼び寄せないように封印をし続けているし、紬は紬で仁以外に興味がなく、寧ろ別の人に寄って集られると迷惑なので、双方ともに全力をだすのは『お互いが殺意を持ってぶつかった時』・・・つまり物語終盤のみです。


 なので、仁が本来の力を振りかざして無双するのはこの1話と終盤の1話だけになります。

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