空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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開始数刻前

「うわあああああっ!!?」

「な、なんで空の上なのよーっ!?」

「そんなの知るかぁっ!」

「お、おち、落ちる落ちるうぅ!!」

「あうえーーーっ!?」

 

 

 ネギ達は今、麻帆良学園の超上空にいた。

 

 何故こんな事になったのか? 

 

 

 彼らは超の罠にはまり、一週間後に飛ばされてしまっていた。しかし、そこで諦める彼女たちではない。

 

 魔法先生や、魔法生徒たちの妨害をくぐり抜け、タカミチのさり気無い援護設けて、世界樹とネギの魔力を利用して、やっとこさ麻帆良祭三日目に戻ってきた―――――――かと思った矢先、座標でも狂ったのかこんな空の上に放り出されてしまったのだ。

 

 

「クシャっと逝くと治せねーんだろ、近衛!!」

「こ、こっ、これは無理や! 流石にっ!」

「不吉なこと言わないでよあんた達ぃ!?」

「でも事実でござる!」

「そういう答えも期待してなーい!!」

 

 

 せっかく戻ったのに、万事休すか・・・・・桜咲とネギが、それでもどうにかしようと構えた。

 

 まさにその瞬間――――――

 

 

 

 

 

「う・・・あ!?」

「はら?」

「ふぇぇ・・・?」

「むぅ」

「うおっ!」

「のわ」

「・・・ん!」

「わわっ!」

「うひゃ?」

「とととっ!」

「あらら・・・?」

 

 

 彼女達の体が空中でピタッと止まったのだ(・・・・・・・)。そして徐々に徐々に、下にあるカフェテラスへと降りていく。

 

 

「あ、兄貴・・・これって」

「・・・うん、多分」

 

 

 ネギとカモが確信を持って下を見ると、そこにはこちらを向いて目を細めている仁の姿が映った。

 

 

「あ! 仁君や!」

「そうか、確か仁殿は罠には巻き込まれずに・・・」

「・・・そうなると、仁さんにはかなり迷惑を掛けてしまったかもしれませんね」

「まーねー・・・私達からすりゃ大冒険だったけど、謎少年から見れば勝手に消えて勝手に現れたわけだし」

 

 

 もう助かると知るやいなや雑談が飛び出す彼女達。それは、仁を信頼しているからなのか、それとも呑気なだけかわからないが。

 

 ともかく、ネギ達は仁の[飛](トバシ)の力により、無事に着地することができた。

 

 

「サンキューな、仁の坊主!」

「・・・取り敢えず、お前らは罠にハマって数日後に飛んで、そこから抜け出してきた・・・って解釈でいいな?」

「おう、それでいい! 詳しい事はあとで話すからよ」

「あの・・・仁君が居て、この話をしたってことは・・・」

「ああ、間違いなく麻帆良祭最終日ってことだ・・・合ってるよな?」

「・・・あぁよ、ついでに、今は午前八時だ・・・」

 

 

 仁は静かに頷き、アスナ達はワッと歓声を上げる。時間跳躍は成功し、超の計画を阻止できるかもしれない日にちまで戻れたのだから、それは嬉しいだろう。

 

 

 ・・・しかし、ドサッという誰かが倒れる音で、歓声は強制的に中断させられる。

 

 

「ネギ先生!?」

「兄貴!」

「ネギ!? どうしたのよ!」

 

 

 ネギの呼吸は荒く、とても大丈夫には見えない。アスナ達は慌てて駆け寄り、ネギを抱え起こす。そんな中で、仁が呟く様に言った。

 

 

 

「・・・取り敢えず、休息も兼ねて人気のない場所に移動すんぞ・・・」

「そ、そうだな・・・つっても、この祭りの中で人の居ない場所ってのはそうそう――――」

 

 

 悩み始めるカモに、のどかがおずおずと手を挙げる。皆の視線が集まったことで少し引くが、すぐに提案した。

 

 

 

「私、知ってますー・・・学園祭で、人気のない場所を」

「ホントか嬢ちゃん!」

「は、はい・・・付いてきてください」

 

 

 

 そう宣言したのどかの後に、アスナ達はついていく。・・・ちなみにネギを抱えているのは仁で、顔にはアリアリと「なんで俺が」という感情が浮かび上がっていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 のどかが皆を連れてきた場所。そこは、図書館であった。

 

 図書館系の部は、学園祭中は皆全て図書館時まで活動を行うため、いつもは人がそれなりにいる図書室も、今はがらんとして彼女ら以外の者達は居なかった。

 

 

 

「あのー・・・ネギせんせー、大丈夫なんですか?」

 

 

 

 念のためと鍵を閉めながら、のどかがカモに問う。

 

 

 

「大丈夫、七日近い時間を移動したせいで魔力を使い果たしちまっただけだ。半日寝てりゃ回復する」

「・・・そーですか」

「す、みません、こんな、大事な時、にっ」

「そんなのいいから、大人しく休んでなさいよ」

「超さんが動くのは夕方からですし、十分に休めます」

 

 

 アスナがネギに布団をかけ、彼を大人しく寝かしつけた。

 

 

「本当なら休みを挟みながら跳躍するつもりだったんだが・・・なんでこうなったか」

「世界樹の中心部の魔力、それを使ったせいではないでしょうか?」

「・・・にしたって、最終日に飛ぶなんてなんとも都合のいい―――――まさか、超の奴はこれもよそうしてるんじゃないだろうな?」

「いや、流石に・・・・無いとも言い切れねぇけど」

 

 

 そう思わせる程の天才である超鈴音だが、今彼女に畏怖していてもしょうがないので、カモは机の上に移動し、確認のために改めて超の計画を話し出す。

 

 

「いいか? 超は2500体にも及ぶロボ軍団を使役して、計六箇所の魔力溜りを制圧。そのうえで巨大な魔法陣を作り、全世界に対して強制認識魔法を発動させる、って魂胆だ」

「に、2500・・・!?」

「多い・・・ですね」

「大丈夫なの? あのロボット見かけ通り結構強いわよ?」

「確かにきつい。だが、この作戦にも裏がある」

「つまりアレか・・・六ヶ所の内、一箇所でも取り損ねーと発動できねぇ、か」

「その通りだ。けどこれは守りの作戦だし、いつまでも持つわけじゃない・・・ゆえっち」

 

 

 呼ばれた夕映が、一歩前に出てアーティファクト《世界絵図》を開き、映像と共に説明を始めた。

 

 

「この全世界に影響を及ぼす強制認識魔法ですが・・・儀式魔法の特性上、数十分に及ぶ複雑な儀式の上、術者自身の詠唱も必要不可欠です。巨大魔法という部分にも制約があるです。それは、術者は天井等がないある程度開けた場所で儀式を行わなければいけないです。・・・修学旅行の際のこのかさんの時と同じと考えてもらえばよろしいかと」

「・・・つまり術者は発動前に屋外に出てくる、というわけですか」

「はい。術者・・・恐らく超さんは発動数十分前に、この直径三キロの魔法陣上のどこかに姿を現す筈です」

 

 

 夕映の説明を聞いた後、皆各々に理解し(できていないものが3名程居たが)、確認し終えたあとで、カモが作戦をまとめ始める。

 

 

「簡単にまとめると・・・俺たちが魔力溜り六ヶ所のうち一箇所を全力で死守し、その間に別働隊が超の奴を捕らえる! これが俺たちの勝利だ」

「・・・それしかないでしょうね、現状は」

「直径三キロから探し出せるか、という不安もあるでござるが・・・」

「・・・俺がやる。高高度で飛んで探しゃ、流石に見つかんだろ」

「おう、頼むぜ仁の坊主!」

 

 

 作戦も纏まり、後は開始時刻を待つのみ―――――――――と、その時、

 

 

 

「待って、カモ、君」

 

 

 別方向・・・ソファーから声が上がった。その声の主は・・・ネギだった。

 

 

「今の作戦は確かにいいけど・・・まだ、だめだよ」

「兄貴? ダメってどう言う――――」

「僕に提案があるん、だ。皆、聞いてください・・・」

 

 

 半ば無理やり体を起こし、ネギは自分の提案を語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネギが自分のプランを語り終えると、一瞬の沈黙の後、

 

 

 

 

「「「「「「ええ~~~っ!?」」」」」」

「ほう」

「・・・」

 

 

 一同は差があれども驚き、早乙女はなぜかヨダレまで垂らしている。

 

 

「しょ、正気かよ!?」

「いいの!? いいのネギ君!? そんな大変で面白そうなこと実行しちゃって!?」

「・・・だがよ、その作戦なら、アレだ他の奴らも自由に動けーな」

「うん」

「大胆な作戦ですが・・・可能なのですか?」

「刹那さん忘れてませんか? 今年の大会の主催者は、例年通り『雪広』コンツェルンなんですよ?」

「何と・・・確かにそれならば・・・」

 

 

 『雪広』コンツェルン――――それは即ち、ネギの受け持つのクラスの委員長『雪広あやか』の親が経営している親会社が、この大会を受け持っているというとにほかならない。それがあってこそネギのプランは成り立つのだ。

 

 その作戦とは・・・・・・

 

 

「『祭り事に見せかけて麻帆良の皆に協力を依頼する』。確かに、大会の行事変更が出来る人が身内にいないと厳しかった作戦です」

「あんたの口から、こんな大胆な作戦が出てくるとはね」

「軽蔑、しますか? 一般人もいいんちょさんも巻き込んでしまう作戦になってしまいますが・・・」

「大丈夫よネギ、軽蔑なんてしないって」

「寧ろ! みんなノリノリで参加するよ! お祭り大好きだからね麻帆良の人間は!!」

「いいんちょも、ネギ君のためなら協力してくれるえ♡」

 

 

 大きく頷き、自身の提案が良いものだということを認識すると、ネギはアスナの方を改めて向く。

 

 

「ではアスナさんと古老師は、いいんちょさんの方をお願いしますね」

「うっ・・・・わ、わかったわ」

「わかたアル」

「このかさん、カモ君、刹那さんは学園長の方を」

「わかったえ」

「ガッテンだ兄貴!」

「了解しました」

「ハルナさん、夕映さん、のどかさんは告知の為の広告をお願いします」

「オッケー! 任せなってネギ君!」

「は、はい」

「承りましたです」

「楓さんと仁君は、別働隊準備と念の為のどかさん達の護衛に付いてください」

「承知した」

「・・・あぁょ」

 

 

 そこで少々申し訳なさそうな顔をしたあと、ネギは千雨の方を向いた。

 

 

「あの・・・ちうさんには、ネットをお願いしたいんですが・・・」

「ぬ・・・あー、わかった。やってやるよ。私の平穏の危機だしな」

「・・・はい」

 

 

 皆の顔をぐるりと見回し、ネギはぐっと拳を握る。そして、改めてお礼の言葉を口にする。

 

 

「よろしくおねがいしますね。・・・・この作戦には、みんなの未来がかかっていますから」

「「はいっ!」」

「任せなさい!」

「やったるかぁっ!!」

 

 

 が、そこで遂に限界が来たのか、ネギはソファーへと倒れこんでしまった。慌ててアスナとのどかが駆け寄り、布団をかけなおす。

 

 

「もー・・・寝て話せば良かったのに、無理するからよ」

「すいま、せ――――」

「いちいち謝らない! と・に・か・く! 後のことは私たちがやっとくから、あんたはちゃんと休息してなさいよ!」

「・・・はい」

 

 

 その言葉の後にアスナと古菲、このかとカモと刹那が出て行き、残るは広告組と護衛組、ネット担当となった。

 

 

「さーて、張り切って広告作っちゃうよ!」

「・・・あまりこったのにしないように気をつけるですよ、ハルナ」

「あ、パソコン持ってきますー・・・」

 

 

 それぞれの準備が、始まった。

 

 

 

 

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