空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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ここから更に、オリジナル要素が加わってまいります。

・・・こうでもしないと、仁がダラダラして終わるか、飛行船を[飛]の力で遠くまでヒューン、で終わってしまうので・・・。

 それに、この話で出てくるオリジナル要素は、今後の展開にも関わってくるものなので、入れました。


それではどうぞ。


模倣された機械兵士

 新型らしき大きめの多脚戦車を、しかしなんの苦もなく遠くまで放り投げた仁は、一旦飛び上がって辺りを見回し、もういないことを確認すると、心底嫌そうな顔をしてため息を吐いた。

 

 

 

「仁君!」

 

 

 

 地上から聞こえた声に反応して目線を向けると、準備を整えたらしいネギ達が、それぞれ武装して図書館前に立っていた。

 

 仁は地上に降り、ネギ達の前で首を鳴らす。

 

 

 

「・・・・周りぁ粗方片付けた。・・・ちーと見に来ただけだったっつうのに・・・」

「ま、結果的に負担は減ったし、ダイジョブアル」

「・・・・(減ーたのはお前らの負担だろうがい)」

 

 

 

 声を出す気がなかったのか若干ねめつけるだけにとどめた仁は、再びあたりを軽く見回してから、ネギに顔を向けた。

 

 

 

「・・・・取り敢えず、途中までぁついて行くからよ。・・・時が来たら先に飛ばせてもらう」

「うん! お願い!」

 

 

 

 そう言うと、ネギ達はなるべく建物の陰に隠れながら走り、時々あたりの様子を伺っては道を変えてさらに走った。

 

 

 理由はいくつかあるが、学園祭のライブ映像に人を飲み込み虚空の彼方に消え去らせた、謎の機能を持った弾を乱射するロボットが移り、何処かえ連れ去られては作戦もパァになってしまうので、警戒したほうがいいのではないか、というものが最大の理由である。

 

 

 

「詳細不明の特殊弾・・・厄介でござるな」

「狙撃手とかもそんなの使ってきたら、打つ手ないしね~・・・」

「迂闊に空を飛べませんから、情報を得る手段も限りなく少なくなるです」

「・・・・めんどーせェ」

「飛べれば、状況は好転しやすくなるのに・・・」

 

 

 

 話しながらもかけ続けるネギ達。 と、彼らの目に “超包子” と書かれた看板を付けている路面電車が入る。

 それが置いてあるのは比較的開けた場所で他に路地もないため、注意してそこを通らなければいけないようだ。

 

 ネギの合図でネギと夕映にのどかと古菲が先に、後から楓と仁とハルナが、それぞれ1号車と2号車の影に隠れながら、辺りの安全を確認して進んでいく。

 

 

 摺足で進んでいたネギが、列車の向かい側に何かの気配を感じたらしく、杖をギュッと構えて簡易魔法の準備をし始めた。そして、飛び出すと同時に杖を突きつけると・・・

 

 

 

「シャークティ先生!」

「ネギ先生でしたか、よかった!」

 

 

 

 それは同じ魔法先生である、シスターの格好をしたシャークティという女性だった。どうやら彼女も、ネギ達と同じように隠れて進んでいたようだ。

 

 多少の安堵を浮かべるシャークティは、しかしすぐに表情を引き締めてネギの見据える。

 

 

 

「大変な事になりました! こちら側の主力が次々と超鈴音の開発した特殊弾の餌食に!」

「!! そんな・・・!」

「奴の弾は障壁ごと周りの空間を飲み込んでしまう、厄介な特殊弾で―――――」

 

「そこから飛び退け!!」

 

 

 

 

 突如として仁が大声を上げ、それに驚いてネギ達は飛び退いたが、仁の事を知らないシャークティは一瞬判断が遅れ、

 

 

 

「しまっ――――!?」

「シャークティ先生!!」

「これは、狙撃でござるか!?」

 

 

 

 ガキュッ! という音と共に黒い球体に包まれて虚空に消えてしまった。

 

 

 

「・・・・チッ」

 

 

 

 仁はとある一方を睨みつけていたが、すぐに視線を外した。それと同時に、ネギ達は値激をかわすため、皆一様に列車の中に避難する。

 

 

 

「どうしたでござる?」

「・・・・感づかれたか、移動しやがった・・・転移符だな」

「それにしても、よく気付けたね仁君」

「・・・・弾の風切り音が聞こえたんだよ」

「耳良いでござるな」

 

 

 

 暫くそのまま列車の中に隠れるネギ達だったが、どういう訳か何時まで経っても弾が来ない。焦れたハルナが、楓の方に顔だけ向けた。

 

 

 

「も、もう行ってもいいんじゃない!? 撃って来ないみたいだし」

「いや、コチラが見えないから撃ってこないだけ、動けば撃たれるでござるよ」

「うっ」

「・・・・」

 

 

 

 1号車にいるネギ達も、同様に身を潜めることが精一杯のようだった。

 

 

 

「相手が銃では、対処しずらいアル」

「狙撃手に移動されたのは痛いな」

「楓さん! 仁さん! 打つ手はないのですか!」

「周囲一kmに狙撃手らしき者の気配は感じなかった! 恐らく、相手は真名でござる!」

「た、龍宮隊長が!?」

「厄介でござるよ・・・唯の人間なら対処しやすかったが、相手が真名では生半可な手など通用せんでござるからな、今動けば消されるでござる」

「・・・・弾撃ってくれりゃ、音で方向分かんだがよ」

 

 

 それを聞いたハルナが、一瞬遅れで目を見開いて驚く。

 

 

 

「じゃ、じゃあまだ狙われてるの!?」

(・・・・さっき言われたこともう忘れたのかよ・・・)

「スナイパーは何十時間、場合によっては数日感も息を潜めて獲物を待ち続けるらしいでござるからな」

 

「相手が別の人という可能性はないアルか?」

「それは少し楽観的すぎるです」

「このまま列車の中にいても、時間を浪費しちまうだけだ・・・そうなれば――――」

 

 

『君たちの負け、という事になるな。ネギ先生と協力者諸君』

 

 

 

 いきなり近くで声が聞こえ、驚いてネギ達が見回すと、1号車の戦闘にマイク型スピーカーがついているのが目に入った。そこから、声が出ているようだ。

 

 

 

「隊長っ!? な、何で超さんに協力しているんですか! やっぱり、お金ですか!?」

 

『その通りだ・・・と、言いたいところだが、君に対して嘘をつくのはやめにしておこう』

 

「え?」

 

『私は彼女の志に共感した。それで賛同し、協力しているのさ。・・・報酬もしっかりもらってはいるが、単に金のためだけではない。強いて言うならば、信念を持って行動している』

 

「・・・たい、ちょう・・・」

 

 

 

 真名の声に含まれた、どこか悲しい雰囲気にネギの表情が歪む。が、次に発せられた彼女の声には、もうそれは含まれていなかった。

 

 

 

『根比べを楽しむのもまた一興だろうが、それは通常の依頼であればの話。ほかに仕事もあるし時間がないんだ・・・・・・ネギ先生、君にはここで消えてもらう』

 

「いかん! ネギ坊主、列車を出ろ!」

 

 

 

 それと同時にスピーカーから、途切れる一瞬前に発砲音が僅かに聞こる。楓も声を上げて忠告するが、ネギ達はしゃがみこんでいた為対処が遅れ、特にのどかが立ち上がるのにもたついてしまった。

 

 もう、銃弾の餌食になるのは避けられないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――なのに、何時まで経っても特殊弾が着弾したような音は聞こえず、黒い球体も現れない。

 

 

 

 

「あり? ・・・外れたアルか?」

「いや、あの龍宮隊長に限ってそれは――――」

「えうっ!?」

「ってうおっ!? どうしたんだよのどか嬢ちゃん!?」

 

 

 いきなり妙な声を上げたのどかに1号車にいた者達は驚き、どうしたのかと彼女に近寄る。すると、のどかは声を上げずに震える指で一点を指さした。

 

 

 そこには・・・・・・・・・空中で止まっている(・・・・・・・・)特殊弾があった。

 

 

 

 

「うおおっ!? なんだこりゃ!」

「だ、大丈夫アルかこれ?」

「・・・何にせよ、迂闊に触れないほうが・・・」

 

『なるほどな・・・そこにいるもう一人の少年の仕業か』

 

「「「「え?」」」」

「・・・・あぁよ」

 

 

 

 

 またもスピーカーから聞こえた真名の声に、2号車にいた仁が答えた。仁は銃弾に目を向け、まるで敵のごとく特殊弾を睨んでいる。

 

 

 

『耳が良いというのは伊達ではないということか・・・風切り音で察知し、君の超能力で銃弾を命中前に止めるとはな』

 

「・・・・自分への対処で慣れてーから、それを見方に応用しただけだ」

 

 

 

 仁が手を軽く挙げると、空中で止まっていた銃弾が仁の方へ向かって行き、彼の手の中に収まった。

 

 

 

「・・・・一発限りだが、利用させてもらーか」

「すっごい! 仁君やるぅ!」

「今ので狙撃方向もわかった、転移符は高価な代物と聞くでござるし、そうそう簡単にも使えぬだろう」

 

『はは、まぁその通りだな。あそこで使わざるを得なくなったのは誤算だ』

 

「フフ」

 

 

 真名の、苦笑いが容易に想像できる声を聞き、楓は静かに笑って一歩前に出る。

 

 

 

「ここは拙者が受け持とう。ネギ坊主達は先へ行け」

「・・・楓さん」

「大丈夫でござるよ、それよりも早く行かねば、浪費した時間を取り戻せぬぞ」

「・・・分かりました! お願いします、楓さん!!」

 

 

 

 ネギ達はその言葉と共に走り出そうとして・・・・・何故だか夕映だけ足を止めて振り向いた。

 

 

 

「龍宮さん、一つだけ聞いても宜しいですか」

 

『ん? 何だ、綾瀬』

 

「超さんが変えようとしている未来とは・・・この世界の存亡に関わることなのですか?」

 

『・・・いや、否定する。彼女の動機はそんなSF大作じみたものじゃない、今もこの世界で起きているありふれた悲劇、それと同じものさ』

 

「・・・答えて頂き感謝するです」

 

 

 

 丁寧にお辞儀をしたあと、夕映も先に走り出していたメンバーに続く。それを確認したネギは、走るスピードを少し上げた。

 

 空を見上げると、列車のところでだいぶ時間を食ったのかもう暗くなっており、所々で気の早い花火すら上がっている。

 

 

 

「だいぶ日が落ちてきたわね!」

「いつ、大魔法発動させてもおかしくねぇぞ!」

「急ぐアルヨ!」

 

 

 

 そんな彼らを後ろから眺めていた仁は、一瞬止まると直様彼らを追い抜き、空中へと飛び出した。

 

 

 

「・・・・先に飛んで探してる。後から来い」

「おう! 頼むぜ仁の坊主!」

「・・・・あぁ――――――よ!!」

 

 

 

 頷くと同時に仁は数カ所に脚力砲撃を放ち、狙い撃ちしようとしていたであろうロボット達を吹き飛ばす。悪あがきで放たれた特殊弾も、[飛]の力で軒並み止められ、仁の懐へ入れられた。

 

 

 そこから急加速して上空に向かって飛び、祭りの影響でイルミネーションが豪華になっているのか、絶景とも取れる麻帆良学園都市を見下ろして、術者と思われる者を目を凝らして探す。

 

 カモが言うに、術者は媒体となる三十メートル四方の魔法陣の上にいるらしく、仁は魔法陣らしきものも一緒に探しているのだ。

 

 

 

「空域ニ侵入者アリ、直チニ排除シマス」

「・・・・チッ」

 

 

 

 だが、上空も安全圏ではないようで、銃を構えたターミネーターや女性型ロボットも、飛行ユニットをつけて滞空していた。

 

 

 最も機械である彼らにとって、[飛]の力を持つ仁は天敵。例に漏れず、彼らの大多数は団子状に固められて空の星となり、残ったロボットも自身のはなった特殊弾を返されて自滅していく。

 壊さなければいけないならば仁も蹴りだの加えるが、今回は飽くまで捕獲と阻止。無理に相手をする必要もない。

 

 

 

(・・・・さーて・・・何処に居るのやら・・・)

 

 

 

 後のことはネギに任せればいいし、自分は本当に危なくなった時だけ出ればいいよな~、とこんな時でも相変わらずの面倒くさがりっぷりを発揮し、敵がいなくなった空を上昇しながら見回し続ける。

 

 屋上などに魔法陣はなく、あるとすればそれよりも上の五つの飛行船のうちどれか。そう確信した仁は、ぼんやり光っている飛行船に目を付け、そこに向かって飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――刹那、『ピリッとした何か』が脳に走り、仁は弾かれた様に感覚を捉えた方向を向く。脳に走ったあの感触は紬ではなかった・・・が、しかし『ある意味紬よりも厄介な』代物の感触であり、仁は偶然出会った “それ” の恐ろしさを知っていた為か、有り得ないといった表情をしている。

 

 

 

(・・・・有り得ねぇ、文献がやってくる以上にありえねぇ・・・!)

 

 

 

 彼の向いている方向、そこには・・・まるで生物と機械の間のような、『超のロボ軍団の中には一台もいない』、言ってしまえば奇妙な造形の、亜人のような者がいた。

 

 

 仁は上昇を止めると、今度は急降下してその機械の化物へと向かう。近づくにつれ、人々の姿が見え、会話も聞こえてきた。

 

 

 

 

「ねえ、あれって火星ロボ軍団の新しいタイプ?」

「きっとそうだよ! 超りんめ、また新しいロボットを追加してくるとは!」

「ちょっと気持ちわるいけど、やってやるです!」

「いーや、やるのはあたし『ゆーな☆キッド』だよ! “敵を討て” っ!!」

 

 

 

 

 そう言って、サイドテールの少女のもつ銃から放たれた光線が当たるが、機械の化物はビクともせず、ゆっくり彼女たちのほうを向く。

 

 

 

 仁はありったけの空気を吸い込み、大音量で吠えた。

 

 

 

「走れっ!! 全力で飛べーっ!!!」

「「「へ?」」」

「あ、謎の少年!?」

 

 

 

 鬼気迫る声で言ったにも関わらず、祭りというカムフラージュのせいか迫真の演技としか見られない。

 その機械の化物は彼女たちに顔を向けて口を開け、口内に光を溜め始める。

 

 

 

「・・・・まに、あいやがれーっ!!」

〔ゴオオオッ!!〕

 

 

 仁はさらに速度を上げて機械の化物の懐に飛び込むと、思いっきり化物の顎を蹴っ飛ばした。チャージされていた光線は、あらぬ方向に低速で放たれる。

 

 

 

「おおっ! やるね、謎の少ね」

 

 

 

 何かを言おうとしたサイドテールの少女の言葉は―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 後方にあった鉄塔が、光線により爆砕された事で、強制的に止められた。

 

 

 

「・・・へ?」

「あうえ?」

「え・・・!?」

 

 

 

 そこに居た物達が全員漏れなく固まる中、仁は機械の化物を睨めつけ、頭を振る。

 

 

 

(何でこいつがいる!? 何で、何で――――――

 

 

 

 

 何で 『偽器兵』 が居るんだ!?)

 

 

 

〔グオオオァァ!!〕

 

 

 

 『偽器兵』。そう呼ばれた化物は、蹴られた事実に怒り、天に向かって咆哮した。

 

 

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