蹴り飛ばされた偽器兵はグルグルと回転しながら吹き飛び、その回転を鳥の足のような両手に炎を発生させ、打ち付けることによって起きた爆発で無理やり殺す。
仁に角のないドラゴンのような顔を向け、睨めつけて吠える。
〔オオオオオオオアアアアアアア!!!〕
「・・・うるせぇ!!」
咆哮に構わず彼は突貫し、偽器兵は待ってましたと言わんばかりに爪を振るう。
「当たるか、っての・・・!」
が、今までの加速がウソだったようにピタッと止まり、爪は見事にからぶる。
その一瞬を狙って仁は再び急加速して腹をトーキックで蹴り上げ。
蹴り上げた格好のまま
次いで横方向に飛びながら、[飛の足場]を作って地面の上にいるかのように体を支え、足を振り抜いて蹴り飛ばした。
〔ギ――――アアァアアァ!〕
しかし、最後の蹴りは偽器兵の腕に防がれてしまう。追加で、お返しと言わんばかりに口内から光線を放ってくる。
至近距離で放たれた光線に、されど仁は慌てなかった。
[飛]の力を用い、耐性そのまま斜線からズレる事で外したのだ。そして逆に首へと脚を強引に引っ掛け―――
「飛びやがれぇ!!」
足で投げ飛ばして[飛の足場]に思いっきりぶつける。
ソレそのもののダメージはさして無いが、しかし不自然かつ歪に勢いを止められ、偽器兵の体は捻じれて止まり四肢は強引に投げ出される。
その隙を逃さぬと爆速で即座に後ろへ回り、『倒足』を用いて蹴り入れた。
轟音が鳴り、外殻に大きな罅をきざんだ。
〔アアアアアア!!!〕
思うようにいかず、更に重いダメージがあったからか。
流石に余裕を捨ててキレたらしく、偽器兵は先程よりもより大きな咆哮を上げ、光線を乱射してくる。
仁が、あれだけ蹴って背中に罅を入れたのにも関わらず、そこまでダメージを負っているような様子はない。
奴が固いのか、それとも仁の火力が足りないのか・・・そして更に。
「くそったれが・・・!」
みると―――あの一瞬でどうやって入れたか、仁の体に切り傷がいくつもついている。
それを鬱陶しそうに撫でながらも、仁は偽器兵が再び放ってきた光線を避ける。
(アレぁ・・・光線じゃなく、炎を固めて光線状にしてるってーか・・・低速なのもうなずける)
光線の質を見抜いた仁だが、だからといって対処がしやすくなるわけではない。
しかし、何なのか知らないものが降ってくるよりは知っていたほうがマシであろう。
『物体が個体に近い』程、『決まった形がある』程、彼の力は効き易いのだから。
(だが元々焔だからこそ、そーは上手く曲げられねー・・・ってか)
偽器兵は狂ったように光線火炎を乱射し続けるが、逆に言えばその狂いっぷりのせいで迂闊に近づけない。
〔グガハァ!!〕
と、いきなり光線をやめたかと思うと、まるで煙幕のように火炎を大量に噴出させ、視界を覆う。
確かに仁の力・[飛]の弱点は “物理攻撃しかできない” ことと “不定形には弱い” ことだが、なにも仁は能力に頼り切った馬鹿ではない。
拙くとも対策はあるのだ。
「
ヘルマン戦の時とは比べ物にならないほどの鋭さと規模で放たれた鎌鼬が大炎を切り裂き、顎を開いた偽器兵が露見する。
だが向こうも馬鹿ではないらしく、二射目の斬撃を避けつつ次々と炎を噴出させては紛れ、徐々に彼へと近づいていく。
「熱いんだよ、クソったれ……!」
それ対して仁は、あえて炎を切り裂くことのみを続けた。
やがて大量の噴炎に紛れた偽器兵は、爪を一転に集中させて仁へと突きを繰り出す。それを仁は、ほんの僅かにズレて避けるに止めた。
〔ゲギャアアアッ!!〕
「痛ってぇ・・・けど!」
僅かでは避けきれるはずもなく腹にかするが、仁は思惑通りと口角を僅かに上げ、顔面を蹴っ飛ばして半回転させる。
と、間髪入れず罅の入った無防備な背中へと膝蹴りを打ち込む。
「まだだってーの・・!」
〔!?〕
二回、三回、四回五回、[飛]の力でインパクトの瞬間に引き寄せ、[飛の足場]で自身が反動により後ろへそれないようにし、六回、七回、八回と打ち込んでいく。
偽器兵の腕を掴んで押し付けるように九発目を打ち込んで、十発目の『倒足』―――――否。
「―――
〔オギョッゴオオオオオ!?〕
斬撃をを撃ち出すだけに留まらず同時に前に飛び、『後ろ回し蹴りと共に』それを打ち込む。
罅どころか大きな切り傷を付けられて派手に吹き飛ぶ偽器兵は、しかしやられてばかりではないと吹き飛び回転しながら光線を打ってきた。
あまりにむちゃくちゃな攻撃に、仁は流石に対処しきれず光線を幾つか掠らせ自身もぶっ飛ばされる。双方共に空中で体勢を整え、一瞬睨み獲った後再び動いた。
「―――ッ、オラオラオラオラオラァァッ!!」
〔オギョゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォ!!〕
今度は、お互いに連続で放ち続ける『
化物は口から出しているという利点を、仁は[飛]の力によりどんな体勢や状況でも飛べるという利点を利用して、目まぐるしく飛び回りながら撃ち落とし、命中させようと撃ち放っていく。
光線がかすり肩が焼け、砲撃がかすり破片が飛ぶ。
一進一退の射撃戦をやっていても埒が明かないと考えたのか、仁は思いっきり足を曲げる。
がその考えは相手も同じだったらしく、偽器兵もまた大きくのけぞって口内に膨大な熱を溜め始めた。
「ッ・・・・オオオオッ!!!」
〔ギョゴオオオオオオッ!!!〕
張り詰めたものが一瞬ゆるんだ―――瞬間、解放。
空気が破裂したような轟音と旧式大砲でもブッ放ったかのような爆音が響き、今までよりも大質量の砲撃と光線がぶつかり合って爆発する。
その爆発を物理的に切り裂き、仁のフロントキックが偽器兵の爪貫手を弾き飛ばし、再び蹴り出されたフロントキックで胸を打たれ、偽器兵は後ろに下がらされる・・・お決まりとなった光線での悪あがきも込で。
今度の光線は一点集中したものだったらしく、距離と猛烈な速度の所為で仁の右腕を打ち抜いた。
咄嗟に動いた事と光線ではなく炎だったことが功を奏したのか穴は開かずに焼かれるだけで済んだのだが、それでもダメージは負ったようだ。
〔ウオオオオオオオム!!!〕
「・・・・てめぇ・・・!」
偽器兵は次いで、仁の真似でもしているのか人の腕のような足で次々と蹴りを放ってきた。
仁のケリが強力なのは本人の脚力が桁外れだというのもあるが、一番は[飛の足場]により地上と同じように蹴れたり、前に飛びながら放てるため反動で後ろに動かないようにできるから、というのもある。
オマケにこの足場は本当にある代物だはないのだから、移動しながらでも利用でき、仁が説明しなければ見破るのは難しいとも言えるクセモノ。
「選択ミスだってーこったな―――そらよ!!」
当然の事ながら、劣化版の力しか持っていない偽器兵はそんな力など持っておらず、結果仁のミドルキックで簡単に足を跳ね上げられ、意趣返しだと右腕に蹴りを半回転して捻じ込む。
引き寄せながら当てられらたせいか、偽器兵の腕はあらぬ方向に捻じれ曲がっていた。
〔ア、ギ、ゴ・・・ガ、バ・・・!!〕
怒ったように偽器兵は左腕を突き出し、横に薙ぎ払い、仁の体を貫こうと再び爪を突き出して今度は回し蹴り。
仁は二回目の突きを[飛]の力を利用してギリギリの位置を保ちながら近づき、回し蹴りを自身の足で防御。トーキックで顎を打ち抜き、デタラメに振られたせいで交わしきれなかった爪での斬撃を受けながらも、ミドルキックをぶち込む。
火炎を纏っているからか、意外と深い傷を負わせてくる偽器兵は、押しているとは言えやはり侮れない相手だというべきだろう。体力が切れて、勝ったのに地上へ真っ逆さまなど目も当てられない。
「フゥー・・・・シッ!!」
〔!! ジャアアアア!〕
相手が立て押す前にと、仁が肉迫し打ってきたフロントキックと横上段蹴りを、偽器兵覚えてきたのか慣れてきたのか、見事な動作で受け止める。仁は防がれる事を頭に入れていたのか、[飛]の力で蹴った格好のまま上にずれ、真下に向かって一瞬加速しながら靴底で蹴る。
偽器兵の頭が潰れたようになり、頭に響いたのかテレフォンキックとでも呼んでもいいほどの大きく振りかぶられた蹴りを、受け止める素振りすら見せられず喰らう。
・・・だが、それは半分演技だった。
〔オオオオオム!!!〕
「! クソッ――――」
集中は荒いものの、それでも光線と呼べる火炎が口内から吹き出し、仁はそれに直撃する。お互いに体を揺らしてやっと止まった。
偽器兵の方が傷は深く多いが、仁も無傷ではない。そして、仁はこの戦いで本気を出しているのだが、相手は今まで手加減して蹴ってきた相手よりも長く持っている。更に、仁はこの戦闘は運がいいほうだ、と考えていた。
何故ならば、戦ってみてわかったのだがこの偽器兵、ここに来る前に戦いでもあったのか何者かによって
ふと下を見ると、飛行船の近くでネギが戦っているのが見える。単純な魔法の押収となっているあちらは、もうすぐで決着がつきそうだった。
(決めるか・・・次で)
そう思うが早いか、仁は偽器兵が初っ端で中腹を爆破した鉄塔の先端部分を[飛]の力で持ち上げ、相手に気付かれないように後ろまで持っていく。
構えるふりをしながら、彼はその時を待った。
〔ジェアアアアア!!!〕
その時は―――唐突に訪れる。
爆炎を左手に有りっ丈纏い、猛スピードで偽器兵が突進を開始。
仁は膝蹴りを打ち込んだ時と同じように、相手の攻撃を躱しもせずに真っ向から足で受け止めた。
腹に爪の先端が突き刺さり、音を立てて焼けるがそれ構わず、逆に腕を一旦掴むと思いっきり蹴っ飛ばして、待機させていた鉄塔の先端を射出し突き刺す。
〔オオオオオオオオオオ!!??〕
「・・・・もう、喚くんじゃぁ――――――」
上空へと回り[飛の足場]を蹴って飛び出し、落下速度+[飛]の加速+飛び出した際の初速を合わせて、仁は現時点で一番威力のある技
「ねぇよ!!」
〔ギョ――――ガアアアアアァァァァァ――――――〕
鉄塔ごと粉砕しながら、偽器兵を木っ端微塵に打ち砕く。
断末魔のような咆哮を響かせ、偽器兵は破片に紛れていたコアごと爆発を起こし、本当に消え去った。
「・・・・クッソめんどーせぇ・・・」
気持ちの悪かった見た目に反して、散っていく粒子は綺麗なもの。土産物にしてもいいのではないかほどの、正反対な美しさがそこにあった。
ダルそうに仁が辺りを見回すと、どうやら勝負の終わったらしいネギが空飛ぶ路面電車の上で、仲間たちと話っているのが見える。
一応離れとくかと、飛んでいこうとした仁の耳に届いたのは、まだ続いていたらしい朝倉の実況だった。
『子供先生 VS 超 鈴音の戦いもそうでしたが、謎の少年 VS 火星ロボの親玉の戦いも見事なものでした!! そしてその双方の戦いは、ヒーローユニットである少年ふたりが勝利を収めました!! ということは――――
我々学園防衛騎士団の、完・全・勝利です!!!』
その声が終わるのとほとんど同時に、ワアアアアアアアアッという完成が響き、世界樹から光が打ち上がってまるで流れ星のように振りまいた。
仁はそれを見ながら呟く。
「・・・てめーの役目、忘れてたか」
今更ながらに思い出した、この戦いが行われた本当の理由を。
まさか、戦闘描写だけで三千行くとは思っていませんでした・・・