まぁいいか、ラカンさんとかいるし(オイ
あと、飛ぶときにGがかからなかったり、体勢崩しても落ちずに普通に飛べたりする仁が、少し羨ましかったり・・・・・だから何だってもんですが。
それでは本編をどうぞ。
お茶会の前
学園祭も終わり、それから二日ほどたった日の午前。
仁はお茶会の招待状と、そこまでの地図を頼りに、クウネル・サンダースの住居へと足を進めていた。
場所は図書館島の深部にあるらしく、三度図書館島を訪れることになろうとは思っていなかった仁は、若干ながらダルそうに・・・・・いや、元からだからかなりダルそうにと言った方がいいのかもしれないが、とにかく面倒臭いといった雰囲気を隠しもせずに歩いている。
飛んでいってもいいのだが図書館島は何分迷路のような場所なので、1度間違えると後で戻ったり確認したりしなければならず厄介なので、余計に面倒なことになるよりはと、仁は徒歩で向かっているのだ。
「(・・・・そこを二回曲がって・・・よく分からん七方向につながる道は苔だらけの場所を進んで・・・赤い本が大量に――――)あー、めんどーせぇ・・・!」
道を知らなければ、仁でなくとも面倒くさいと言ってしまうだろう。彼も、叫ばなかっただけいいほうだ。
本人ですら何回面倒くさいと言ったかわからなくなってきた頃、やっとこさ門のような場所の前までたどり着く。だが、門の上には巨大な竜が居り、仁が門の前に歩み寄るや否や涎を撒き散らして勢いよく飛び降りてきた。
仁は面倒くさそうにクウネルから渡されたカードを指に挟んだまま見せると、竜は敵意が削がれたかのように顔を逸らし、また門の上へと舞い戻っていく。溜息一つ吐いた後に、仁は門をくぐった。
意外と長い階段を登り再び門を開けると、地下だというのに暖かい光が降り注ぎ、大樹と滝のある光景の中に、いかにも魔法使いの住居と言わんばかりの建物が、中央に鎮座していた。
大して感想の言葉も口にせず、仁は建物に向かって歩き続ける。中には本棚と本が大量にあったがそれすらも目に入れずに仁は階段を更に登り、最後に見えた扉を開けた。
「ようこそ。お持ちしていました」
「ん・・・早いな、仁」
相変わらず内の分かりにくい笑みを浮かべるクウネルの横で、エヴァンジェリンは何やら球体のようなものに座って本を読んでいる。
遠くに見えていた滝が間近に迫り、木々から鳥の声も聞こえる絶景が広がるが、それを何でもないかのように目線すらそらさず、仁はエヴァンジェリンに返す。
「・・・・何が早いなだ。早くこいっつったの、アンタだろーがい・・・」
「予想よりも早かったということだ、気にするな」
「・・・・そうかいよ」
言いながら、先に歩き出していたクウネルとエヴァンジェリンの後に、仁はついて行く。ソファー近くまで来て仁の目の前にコーヒーを差し出すと、クウネルも紅茶を手に持ち、一口飲んだのを見計らってから切り出した。
「早く呼んだのは他でもありません・・・・・・貴方に聞きたいことが幾つかあるのです」
「・・・・聞きたいこと、か」
「貴方の能力や仕組み自体はキティから聞きました。ですが、まだまだ聞きたい事はあるのです。・・・キティも知りたがっているようですしね」
「これだけの強さを持つものなのだぞ? 興味があるのは当然だろう・・・・・と言うかアル――――じゃなくクウネル!! キティと呼ぶなと言ったはずだぞ!」
「いいじゃありませんか、可愛くて」
「そいうことではないっ!!」
「それよりも、まずは仁さんに質問をするのが先でしょう?」
「ぬ・・・後で覚えておけよ」
一旦気持ちを落ち着けたエヴァンジェリンは、改めて仁のほうに体ごと向く。
「聞きたいことは三つ。・・・一つ目は『 “紬” の力について』、二つ目は『あの機械兵についてもっと詳しく』、三つ目は『強すぎるお前が何故まだ特訓をしなければならないか』、の三点だ」
仁はその問に数十秒ほどの間黙り込んだあと、コーヒーを一口すすって口を開いた。
「・・・・一つ目の紬の力の事だが・・・アイツの力は
「それは前に言っていた、名前がわかっている独器だったか。確か――――」
「
「[煙]、ということは、その力は煙に関係するものだと?」
「・・・・おう」
「詳細を教えてもらってもよろしいでしょうか?」
再び悩むような素振りを見せる仁。彼は一度西の長・近衛詠春に聞かれた時に拒否したのだから、ここでも話すべきかどうか迷っているのだ。
大体全部話したところで、彼らに何ができるのか? という疑問もある。
恐らく、敵となり得る者の力ぐらいは知っておきたいのだろうが、仁にとっては寧ろ彼らは紬が狙いを定めてくるであろう『仁を深く知る者』となり、結果的に戦闘の邪魔となるので、教えておくのは正直ためらわれるのだ。
だが・・・長の時に押し黙ったのは “紬は生きている” という悪夢の可能性から逃げたかったから、まだ確証が持てていなかったからでもある。
それに、彼らは戦闘に加わるとは一言も言っていないし、そうさせなければいいだけでもある。
やがて、仁はゆっくりと口を開いた。
「・・・・あいつの主な攻撃は銃弾撃ったり、煙に着火して爆発を起こす事だ。爆発の威力は常時でも校舎どころか麻帆良の半分を、一瞬で瓦礫にするなんざ―――訳無ぇ」
「考えるまでもなく・・・一般人なら即死、ですか」
「【煙】に基づく力ってのぁ他にもある。『ガスの類』から毒性の煙、相手の五感やらを狂わせる煙、『雲に抱くイメージ』で物質を掴める煙、単なる霧を噴出させんのも可能だ」
「オイオイ、何でもありか?」
呆れたような表情で言われたエヴァンジェリンの言葉を、仁はすぐさま否定する。
「あいつは一度に二種類の煙しか出せねぇ。それに毒の煙に関しては『毒方面に特化した力がある』故に、死ぬほどの毒じゃねーよ。・・・戦場じゃ、致命的になる程動きを鈍らせるけどな」
「・・・相手を掴む煙で掴んで爆破とか、気配を狂わせてその間に体調不良に陥らせる、といった芸当も可能そうですね」
「中々に厄介だな」
「・・・・今言えるのはこれぐらい・・・っつーか、俺もこれ以上は知らねぇ。本人に聞きゃわかるだろうがよ」
「それは死ねと言っているのと同義に聞こえるがな」
「それには同意しましょう」
渋い顔で頷くエヴァンジェリンと、飽くまで端正な顔立ちは崩さないクウネル。そんな彼らに、仁は二つ目の質問、『機械兵の詳細』について語り始める。
「あの機械兵・・・正式名称は『偽器兵』っつーんだが、あいつは独器を元に作られた劣化版の武具の、生物型に相当する半獣半機だ」
「生まれた経緯などで、何か知っていることは?」
「・・・・俺もそっちはあまり調べなかったから多くは知らねぇんだが・・・一番最初に生み出した化学者は、自分の持っている独器が気に入らなくて、模倣品に走ったらしい」
「で、その結果は?」
「・・・・独器は化物の体の一部から作られた、言わば細胞の集まり。化物を中に秘めているとは言え、そこから滲み出る力以上に能力を使えるってー事は、まだ生きてることに他ならねぇ。つまり―――――」
「喰い殺された、か」
「・・・・あぁよ」
その後で、仁は自身の知っている『偽器』の事を語り始める。
このことに関しては仁も思入れは無い為スラスラと話し、エヴァンジェリンは人の欲の深さと醜さに呆れ、クウネルですら苦笑いしているようだった。
「ここからが重要だが・・・俺もよくは知らねーが、どうやら『独器は独器でしか相手できない』らしい。それはアレ、模倣品であるアイツらも同様なんだと」
「独器は独器でしか相手できない? どういう事だ?」
「戦う事はできるしダメージも与えられる、けれど倒す殺すとなると無理、らしい。文献に載ってた事だから、脚色されたのか本当かは―――アレだ分からないけどもよ」
「・・・重要と言いましたが、まさかあの偽器兵は独器使い、もしくは偽器使い以外が息の根を止められた試しはないと?」
「・・・ああ。例外としてなら、既存のほぼ偽器じゃねー兵器使いまくって辺り数㎞一帯をボロボロにして、やっと一体追い返せたってのは聞いたけどな。何しろアイツ等は全身兵器に等しい・・・」
「お前の世界は色々と凄まじいな」
ここまでで仁は二つの疑問に答え終え、カップに入った冷めかけているコーヒーを半分ほど飲む。いつの間に手にしていたのかエヴァンジェリンも紅茶を口に運び、クウネルは飲み終えて中身のないカップをテーブルに置く。
「さて、最後の質問だが」
「・・・・“現時点でもおかしい程強いのに、なぜまだ鍛えるのか” だったな」
「細胞が生きていて力を使えるのはわかった。だが元の世界ならまだしも、現時点でこれ以上引き出す必要など無いと思うのだがな。紬が力を引き出していたとしても、その時点で奥の手を使われてやっとこさ引き分けだったのだから、別段深く捉える意味もないと思うが?」
仁は一瞬、本当に一瞬だけ目を鋭く光らせると、エヴァンジェリンのセリフに答えた。
「答えはシンプル・・・『紬の奴を絶対に殺すため』だ。あいつを必ず殺すために、俺は力を引き出して、 “奥ノ手の先” に行かなきゃならねぇ」
「仁さん、奥の手の先、とはどんな物なのですか?」
「・・・・引き出した力を取り込んで一体化する―――――つまり、化け物そのものになる、ってことだ」
「なに!?」
「なんと・・・!」
「俺は、
化物そのものになる、確かに人間のまま力を使うよりは、力の根本と同化したほうがより効率よく、より強力に行使できるだろう。
だが、それには相応のリスクがまとわりつくのも、容易に想像できる。
「仁、それは一体―――――」
エヴァンジェリンがそれを口にしようとしたとき、クウネルが不意に手を挙げてエヴァンジェリンを止めた。
「今回はここまでにしましょう」
「なに? ・・・・・ああ、ぼーや達が来たのか」
「ええ。ネギ君達に、より重い荷を背負わせるわけにはいきませんからね」
「・・・・」
「・・・ハ、荷が重すぎるわ」
その言葉を言い終えると、クウネルとエヴァンジェリンは扉の方へと向かっていった。と、その途上で、クウネルが仁の方を向き、こう言った。
「そうだ、仁さん。お茶会が終わっても少し残っていてください。あなたに渡すものがありますから」
「・・・・あぁよ」
いつもの調子で仁が答えるのと、入口からこのからしき少女の声が聞こえるのは、同時だった。