空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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書き直しもそうですが、最新話の更新も忘れずにしていこうと思います。

書き直した場合は活動報告欄に書きますので、よろしければご観覧の程を。



・・・仁て根本は面倒くさがりだし、ネギ達と関わる理由が無くて、近右衛門からの依頼が無くて、何の事件も無いと、殆ど接触することすらないと思うんですよね・・・。エヴァンジェリン等が介入すれば別なんでしょうが。


 それでは本編をどうぞ。


遠距離から見やる者

 坐禅のような座り方で極限まで集中しながら、仁は引き出した力を維持することに努めていた。

 

 

 最近順調に続いていたこの修行にも、雲がかかる。

 

 それは、あと一歩というところでどうにも上手くいかない、そんな感覚を仁は覚えていたことだった。

 引き出されている力の上限がメモリ式だとしたら、あと1、2ミリで止まっているような、そんな感覚を仁はどことなく感じている。

 

 それは一昨日あたり・・・修行開始から、現実世界で四週間近く、麻帆良中学校はもう夏休みに入っている時期に、上手くいかなくなったのだ。

 

 何かが足りないのか、それとも自身の壁を打ち破りきれていないのか。

 

 外との連絡役を受け持ってもらっている茶々丸からは、今のところ[偽器兵]や[紬]の情報は入っていないとのこと。近右衛門も、仁の情報を元に独自に探しているとのことらしいが、何も聞かないあたり芳しくないのだろう。

 

 

 ともかく焦る必要はないのだが、今までうまくいっていたことの反動か、仁の顔にはイライラが浮かび、どうも集中しずらくなっている。

 

 

 

「・・・・くそったれ」

 

 

 

 が、焦れていても仕方がない、と自分で自分を落ち着かせると、気分転換にでもと魔法級の外―――厳密には特別魔法球から出て、通常の魔法球の中―――へ出ることに決めたらしく、集中していた力を霧散させ、改めて封印の術式を自らにかける。

 

 

 仁の元々居た世界にある術は、自分に封印を施して実力を誤魔化したり、傷をある程度直したり、光を灯して照らしたりと、存在する術式すべてが戦闘に向いていないものばかりなのだが、こういう修行や手助けには役立つ力であり、その辺には仁も術式の生みの親に感謝していた。

 

 

 

 

「・・・・え~と、 “脱出”」

 

 

 

 指定位置で忍者のように指を立て、仁は簡単に言葉を発する。

 数秒と経たずに擬似太陽の光が降り注ぐ、滝の中にある城へと転移した。

 

 眼下にそれらを望み、静かに、だがしっかりと響く瀑布の音を聞きながら、静かに深呼吸を繰り返し、仁は多少心を落ち着かせる事が出来たようだった。

 

 

 “人の手が入っている”にも関わらず、まるで“人の手が入っていない”かのようにも感じる矛盾ある静けさの中。

 仁は一眠りしようと空中であぐらをかく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっひょー! ジャングルアル!」

「ヤッホーっ!! ぅいやっほーーーい!」

「ん~、これはまた凄いでござるなぁ」

「うわっ、これまた高っ!」

 

 

 だが失敗。

 頭を下げて目を閉じて、さあ寝ようとした瞬間に、謀ったかの様に聞き覚えのある声がいくつも響き、仁は溜息を吐いて目を開け下を見る。

 

 そこにはアスナを始め、学園祭の超鈴音の起こした事件で、企みを阻止しようと奮戦した者達の姿があった。

 彼らも修行をするために来たのだろう―――が、どちらかというと夏休みにリゾートを満喫しに来た中学生のテンションで、キャッキャキャッキャとはしゃぎまわっている。

 

 次に魔法陣へと飛び込み・・・やれ痛寒いだの、やれ溶けるほど暑いだの言いながら、出たり入ったりを繰り返し始めたのを見て、仁はなぜだか痛くなってきた頭を押さえて、軽く頭を振った。

 

 

(まぁ、一応気持ちは分かーけどよぉ・・・?)

 

 

 というか、なぜ仁は降りないのだろうか。

 別段彼女達と仁の間には距離感などないし、ましてやネギに初期から協力したり作戦阻止に一緒に貢献した仲であるから、今降りて行っても怪しまれはしないはず。

 

 降りたらまた五月蝿くて面倒臭い事に巻き込まれそうだからか、それとも今は大人バージョン―――といってもこっちが本当の姿―――である為、色々と弁解することがありそうで面倒臭そうだからか。

 ・・・どちらにしろ面倒くさいという理由が、絶対先にも後にもつくのはご愛嬌(?)である。

 

 

 

「ええい、うるさいぞお前ら!! はしゃぎ過ぎだ、少しは落ち着かんか!!」

 

 

 

 エヴァンジェリンの一括によりどうにかはしゃぐのをやめたアスナ達は、城への近道の魔法陣を使って転移していった。

 

 それを見計らって仁は地上に降り、さてどうしたものかと頭を掻きながら、彼女達の死角へ回るように空中を歩いていく。

 いずれ話さねばならないことだから今腹を割って話すか、それともある程度落ち着いてから話すか・・・どちらにしろ面倒臭い事この上ない。

 

 が、今は休息する時だと仁は頭を切り替え、エヴァンジェリンが数日前に教えた、普通の者ではたどり着けない空中テラスへと歩き出す。

 

 

 

 

 

 ・・・されどまた失敗。

 途中で飲み物や食べ物が無い事に気付き、怠い事この上ないといった表情をしながら、仁は城の裏側の出入り口へと足を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・はぐっ・・・・んごっ」

 

 

 

 左手にブラックコーヒーの入ったコップ、右手にマスタードたっぷりのホットドッグを持って、頬張ったホットドックをコーヒーで流し込む。

 大口を開けて食べる傍ら、仁は空中テラスから少々遠くに見える広場にて、やる気溢れるアスナと刹那の試合を見ていた。

 

 

 

 動き的にはアスナの方が素人だが、才能があるのかはたまた刹那がかなり手を抜いているのか、なかなか様になった打ち合いを繰り広げている。

 

 しかし、異邦人である仁から見れば、彼女達の戦闘は搦手が少なくて退屈なのか。

 いきなり足元を浮かび上がらせたり、岩盤を飛ばして挟みこんだりする絡め手だらけな者の戦闘と、彼女達の戦いは違いが大きすぎる為、単純に参考にならないからか。

 見始めてから三分弱ですぐに目を離してしまった。

 

 ―――否。もしかすると見るの事態、面倒くさくなった為かもしれないが。

 

 

 

「・・・・ん?」

 

 

 

 と、何故かメイド服で出てきたハルナ達がアスナと刹那に近づき、何やら盛り上がっているところに、メガネを掛けたエヴァンジェリンが割り込み、何かあったのか言い合いを始めた。

 そしていつの間にやらネギとアスナは向かい合い、戦闘一歩手前の状況へともつれ込んでしまっている。

 

 はてさて何があったのやら。

 見えてはいるが声は微妙にしか聞こえないので、仁が状況を計り知ることはできない。 しかしどうやらネギはともかくアスナは本気のようで、両手を合わせて光をまとい、お馴染みのハリセンを出現させて構える。

 それを見たネギも、渋々構えを取った。

 

 

 開始の合図らしき声が若干―――距離的な問題でそう聞こえるだけだろうが―――大きめに響いた次の瞬間・・・アスナはハリセンを落とされ腹に肘を添えられていた。

 

 

 

「・・・・おぉ」

 

 

 

 あまりに鮮やかな手並みに、思わず仁も声を漏らす。

 

 そこからはあまりに一方的で、ハリセンを振っても躱されて強かに打ち付けられ、突貫すれば投げ飛ばされて転がり、体勢を立て直しても既に目の前に詰め寄られる。

 経験の差もあるだろうが、アスナは手も足も出ない。

 

 

 結局規定時間内に攻撃を当てるどころか満足に受け流すこともできず、彼女はボロボロになって地面に倒れ伏せてしまった。

 

 

 その後、このかに治癒してもらったアスナは数分と経たずにすぐ飛び起き、何やら文句をエヴァンジェリンにぶつけている。おそらく、修行時間がどうのこうのという感じの事柄だろうが、それを受けたエヴァンジェリンは遠くからでも分かる程に不敵に笑う。

 その後でアスナがエヴァンジェリンをしっかり見つめて何かを叫んだかと思うと、引きずられるようにして城の中へと消え、数分後にまた現れたかと思うと、ネギや小太郎と共に鉱山行きの魔法陣に乗って転移していった。

 

 

 

(・・・・何するつもりだかな)

 

 

 

 雪山でサバイバルでもするつもりなのか、それとも何かしらトラップでも用意してあるのか。・・・魔法や気の知識の無い者が考えた所で分かる筈も無いが。

 

 

 仁は顎に手を当てたまま考え続ける。―――――といっても、別にアスナの事について考えているわけではない(実は割とどうでもイイとしか思っていなかったりする)。自身の修行、即ち力を引き出すことについて考えているのだ。

 

 

 

(・・・・そういやぁ、最初に比べて引き出しにくくなってきてたな・・・現時点にかかわらず)

 

 

 

 引き出しにくかった時に共通するものは何か? 答えは割とすぐに出た。

 

 

 

(そうだ・・・・煮詰まってーた時、だな)

 

 

 

 心身共に落ち着いている時は楽だったのだが、何かしらの焦りがあるときは上手くいかなかったのだ。それも、引き出せる力が大きくなって来たからではなく、である。

 

 元々この修行は奥底に眠っている、人間の身には余り過ぎて、お釣りが来てもまだ足りない力を引き出して御する修行なのだから、煮詰まっていたり心乱していては奥底の力を感じ取れず制御できないのもある意味当然と言える。

 寧ろ、万が一が起きないように自身の本能が制御していた可能性もありうる。

 

 

 

(・・・・少しの間は・・・ちぃとばかし落ち着いてみるか)

 

 

 

 焦って失敗し復讐を果たせないなど笑い話にもならない。そう考えるだけの冷静さを持っていた仁は、手に持ったホットドッグに齧り付きながら自分を納得させるように頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・後で、落ち着いている間に何をすべきかと面倒臭い思考にハマったのは、また別の話。

 

 

 

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