空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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頼み事再び

「ふむ、英国文化研究クラブ、とな」

「はい。えっと、あの・・・」

 

 

 

 まだまだ新学期も遠く、夏休み真っ盛りのある日の昼頃。部長就任テストで放り出された雪山から、どうにか無事に帰還したらしいアスナと、その付き添いとしてきたらしいこのかと刹那が、学園長室にて近右衛門に何やら催促をしているようだった。

 

 

 

「探究心のあるのは良いことじゃ・・・・・じゃが、どうも研究するのは英国文化だけではすまなそうじゃのぉ?」

「う・・・」

「あの・・・学園長」

 

 

 

 悩むように顎鬚をさすり、数秒間を置いたあと、近右衛門は書類を置きハンコを手に取る。

 

 

 

「可愛い子には旅をさせよ、か。・・・よかろう、認可するぞい」

「あ――――」

「「ありがとうございます!」」

「ありがとう、おじーちゃん」

 

 

 

 喜び勇んで、学園長室から彼女たちが出て行き、校舎から出て行ったのを見計らって、近右衛門は階段の陰に視線を向けた。

 

 

 

「そういう事じゃ・・・これも “お願い” になると思うが、どうじゃろう、聞いてくれんじゃろうか?」

「・・・・わーってるよ、爺。着いてけってーだろ?」

「うむ。もし何かあった場合はすぐに連絡して呼び戻す。特殊な魔法符も持たせるから、お主関連のことも心配するな。それに、お主が教えてくれた対処方もある事じゃしの」

「・・・・あぁよ」

 

 

 

 物陰にいた人物、仁は近右衛門の言い分に何時も通りの表情のままで頷くと、部屋を出ていこうとドアへ歩み寄る。

 そんな彼を、近右衛門がもう一度呼び止めた。

 

 

 

「ちょっと待っとくれい、仁。もう一つ頼みがある」

「・・・・なんだ?」

「わしの古い知り合いに手紙を届けてくれい。本 国(メガロメセンブリア)から少し離れた特殊な場所におるでな、お主でないとたどり着けんし、父を探すネギ君に余計なものを与えたくないんじゃ」

「・・・・あぁよ」

「中身は元気かどうか確認するだけの質素なものじゃけど、何かとせわになった人物だから、放っておけんのじゃよ」

 

 

 

 近右衛門が差し出した手紙を[飛]の力で自分の元まで引き寄せて掴み、懐に入れると今度こそと扉を開けて、仁は出ていく。

 

 

 彼が去ったあとで、近右衛門はある資料を見て眉をひそめ、真剣そのものの声色でつぶやいた。

 

 

 

「魔法世界に一人神隠しにあったものが侵入し、以前行方知れずか。・・・仁と関係のあるものでなければよいのじゃが・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 人気のない屋上・・・いや、訂正。ここにいる十数人以外は人気のない屋上で、エヴァンジェリんが軽く手を上げる。

 

 

 

「あの爺の承認を持って、お前らネギま部(仮)は正式にクラブとして活動する事となった。つまり情報収集なども容易くなるし、国内・海外での活動もしやすくなるということだ」

「結構大きいアドバンテージですね」

「情報ってのは、大事なもんやからな」

「麻帆良以外でも行動しやすくなるのも利点よね」

 

 

 

 屋上には、ネギ・スプリングフィールドや神楽坂明日菜を始め、近衛木乃香・桜咲刹那・宮崎のどか・綾瀬夕映・早乙女ハルナ・古菲・長瀬楓・犬上小太郎・朝倉和美・相坂さよ、そして後方に絡繰茶々丸と長谷川千雨が居た。

 

 彼らはネギの父であるナギ・スプリングフィールドを探すためのクラブを立ち上げ、今ここに正式に認可されたため、今一度改めて集まったのである。

 

 

 何が楽しいのかはしゃぎ回る彼女たちをよそに、エヴァンジェリンはネギの方へ顔を向けた。

 

 

 

「ぼーや、英国への出発はいつなんだ?」

「えっと・・・八月十二日ぐらいには」

「そうか、ならまだ数ヶ月分の修行は出来そうだな」

「え・・・!?」

 

 

 まだやるの? と言わんばかりに後ずさるネギを見てニヤニヤ笑ったエヴァンジェリンは、しかしすぐに詰まらなそうな表情へと変わる。

 

 

 

「だが魔法世界に行くといっても、本国を訪れたり、観光地を巡るだけなんだろう?」

「あ、はい。この夏休みで父さんの行方が分かるなんてまずありえませんし・・・本国から遠出するのは危ないですしね」

「やれやれ、折角の修行が無駄になりそうだとは・・・まあ、危険がないのにこしたことはないがな」

 

 

 

 生真面目で人を巻き込みたくないと考えているネギが、いつも以上に落ち着いているのはおそらくそういう理由だろう。

 

 観光でも楽しんで来いと言い終えたエヴァンジェリンは、そう言えば、と思い出したように付け加えた。

 

 

 

「どうやら仁の奴も用事があるらしくてな、あいつも魔法世界へ行くらしいぞ」

「え!?」

「もしかしたら合うとこもあるかもしれんな? 尤も、お前たちのクラブに入ってくれるかどうかは別物だが、会うことさえできれば危険度は更にぐっと低くなるだろうしな」

「・・・そうですね」

 

 

 

 肩の荷が降りに降りたような、そんな清々しい少年とは思えない顔をしているネギ。そんな彼の眼前では、アスナ達が未だはしゃぎまわり、

 

 

 

「よーし!! イギリスへ絶対いくぞーっ!!」

「「「「「「おーーーーーっ!!!」」」」」

「夢の国観光するぞーっ!!」

「「「「「「おーーーーっ!!!!」」」」」

 

 

 

 

 気合を入れるためなのか、手を突き上げて飛び回っていた。

 

 

 

 

(うるせー・・・ってかテンション高けーな、アイツ等)

(・・・・なんで、あいつが俺も行くこと知ってーだよ・・・)

 

 

 

 

 千雨の離れたとこから向けられる呆れた視線と、上空から逆さま状態で見ていた仁の納得いかないような視線に気がつかないまま。

 

 

 





あと少しで魔法世界へ突入です。


そして・・・近右衛門が言っていた『神隠しにあった人物』とは、はたして一体?
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