空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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捜索開始

 

 

 状況は最悪だった。

 

 

 

 

 まず第一。

 

 ゲートポート事件での濡れ衣を着せられた為に、ネギ達はあらぬ疑いをかけられ、ネギま部(仮)の面々が全員賞金首となってしまったのだ。

 ネギ程ではないものの十分に高いその賞金は、賞金稼ぎ達を生ゴミに集る蠅のごとく呼び寄せてしまうだろう。

 

 幸い・・・と言っていいのか、仁に賞金は掛けられていない。

 ゲートポート事件の渦中にはおらず、別の場所に行っていたので当たり前なのだが。

 

 

 

 

 そして第二。

 

 街で噂されている事には、“賞金首たちは転移魔法を使って散り散りに逃げた” と言われている。

 ―――しかし彼らを知る者ならば、“ネギ達は強制転移魔法で散り散りにさせられた” と見るべきだろう。

 それはつまり、三分の一弱とはいえ未だ広大なこの世界に彼等をばら蒔かれてしまったという事。

 戦闘系の人物ならまだしもサポート系の人物は魔物に襲われた時の対処がうまくできず、最悪の場合食われてしまうこともありえるという事なのだ。

 

 

 

 

 最後に第三。

 

 これは仁本人に関係するものだが・・・・・・ゲートが閉じてしまったということは麻帆良学園のある “現実世界” には今直ぐに帰れないという事。

 即ち、“偽器兵が現れても、押さえ込むしか対処できない” ことに他ならず、もしこのタイミングで麻帆良に現れようものなら、死人が幾人出るか分かったものではない。

 コレばっかりは祈るしかなく、手の出ない問題のため仁は歯噛みしている。

 

 

 

 

 

「・・・・めんどーせぇが、そうも言ってられねぇ・・・シラミつぶしに探すしかねぇな」

 

 

 

 情報収集のため数時間を要し、一脳の仮眠休憩の為にまた1時間ほど取ったので、既に時刻は翌日の朝となってしまっている。

 

 

 

 ・・・流石にこれ以上時間を掛ける事はできないだろう。

 

 

 メガロメセンブリアから二度目の出国を果たした仁は、空気を切り裂くかの如き速度で飛翔し、まずは生存者がいる場合生命の危険にさらされる確率が高いであろう場所から探すことにした。

 

 

 

 そうなると、灼熱と寒冷を繰り返す砂漠か、冷気吹き付ける高山か、それとも害虫害獣オンパレードな密林か。

 

 

 

 飛行を一旦やめ、十秒ほど考えた後、答えを出す。

 

 

 

(・・・・一番近い砂漠から行くか)

 

 

 

 

 はじかれたように一瞬で先程まで出していた速度に戻ると、強烈な風切り音とともに砂漠へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、今の人・・・杖なしで飛んでったよね?」

「きっと才能があるかすごい魔力の持ち主なんだろ。・・・それよりもほら、またやってるぜ」

「ん? どれどれ」

 

『次のニュースです。一昨日メガロメセンブリア政府直属の捜索隊が、これで5回目となる巨大クレーターを発見しました。今までのモノと同じように証拠品は残っておらず、魔力も残留していない為未だ手がかりは掴めていません』

 

「魔力なしでこれだけのクレーターを残すって・・・旧世界の爆弾でも持ってきたのかな」

「ゲートポート事件といいコレといい、何か物騒になってきてるよなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 砂漠にたどり着いた仁は飛ぶ高度と速度を落とし、辺りを見回しながら人探しをしていた。

 

 

 戦闘系の人間なら打撃音だので気付けるだろうし、支援系の人間もサバイバル訓練は受けているはずなので、すぐにはくたばらない筈だ。

 

 

 勿論猶予があるかと言われればそうでもないのだが、ただの人間が砂漠に放り出されるよりは幾分かマシであろう。

 

 

 

(・・・・あの、ザ・魔法使いローブを着てりゃ発見しやすいが・・・無理だわな、こんなクソ暑い中じゃ)

 

 

 

 やれやれと首を振って顔を右に向けた・・・・・・その時。

 

 

「・・・?」

 

 

 遠くで何かが僅かに動くのを、仁は見逃さなかった。

 

 魔物か人間か二つに一つ、どちらにしても先ずは近寄るべきだと、仁は速度を上げて物体へ近づいていく。

 

 

 そこに居たのは――――――

 

 

 

「う、うう・・っ」

「助、け・・・」

「・・・・こいつらは学園祭の・・・!」

 

 

 桃色の髪を持った少女・佐々木まき絵と、黒髪サイドテールの少女・明石裕奈だったのだ。

 手元に空のペットボトルと栄養補給ブロッククッキーの空箱が散らばっているのを見るに、倒れたのはどうやら今から少し前らしい。

 

 

「まさか・・・? いや、(ちげ)ーか・・・」

 

 彼女たちも関係者だったのかと仁は思ったが・・・ネギが担任としているクラスの生徒達のノリに、ネギ好きを公言していたまき絵の存在、そして彼女たちもイギリスへ来ていたこと改めて思い返す。

 

 この世界に来てから開発した、 “察知” の術式をを応用した、残留魔力の探知にも引っかからない。

 

 

 この事柄から出てくる、彼女達の境遇は一つ。

 

 

 

(着いてくんなと言われたのに、興味本位で限界ギリギリまで近づいて、“魔法世界” への転移に巻き込まれて・・・そんでゲートポート事件と強制転移にも巻き込まれて放り出された、と)

 

 

 

 不幸にも程があるが、念を押されたであろうはずなのに着いてきた彼女達の自業自得でもあるため、仁は曖昧な気分で溜息を吐く。

 

 

 取り敢えず彼女達に水を飲ませると担ぎ上げ、方位磁針と地図を出す。

 

 

 が、またもや問題が発生した。

 

 

 

「・・・・チッ、方位磁針が効ぃてねぇ」

 

 

 

 針は北と南を刺そうとせず、グルグルと高速で回り続けるのみ。

 おそらくここら一帯に磁力を持った岩石でも埋まっているのだろうが、仁一人の時ならまだしも高速飛行に耐え切れない彼女たちを連れた状態では少々きつい。

 

 

 きついと言っても、体力の問題ではなく、かといって食料の問題でもない。

 

 

 仁は言わずもがな、抱えている彼女たちもまだ危険なほど体力が減っている様子は見えない。

 

 食料ならば無くなる心配はない程持ってきたし、彼女達二人が起きたならば移動もよりスムーズになるだろう。

 

 

 だが、それはあくまで彼女達二人を助けるという行動に限定すればの話。きついのは次に上げる可能性のためだ。

 

 まき絵や裕奈が来ているという事は、同じく好奇心を持ってやって来てしまった、半ば自業自得な少女達が他にも居る可能性があるという事でもあり、それを踏まえるとまき絵達ばかりに構ってもいられない。

 この可能性が、きついと思わせる理由である。

 

 

 

 

 立ち止まっていても仕方がないと砂漠を兵空飛行していると、申し訳程度に置かれた道しるべが目に入った。

 幸運だとばかりに近寄ってみると・・・予想通りどの方向に向かえば店や町があるかが指し示されている。

 

 

 と、再び飛行しようと身体を傾けた、その時。

 

 

 

 

「おーい!! どうしたんだそこの兄ちゃん!!」

 

「・・・・ん?」

 

 

 

 上からの声に顔を上げると、マンタのような乗り物から顔を出す、糸目の中年男性の姿が見えた。

これ幸いとばかりに、仁も声を上げる。

 

 

 

「行き倒れが二人いんだ! 近くのオアシスまで連れて行ってやーてくれ!」

 

「なに!? 行き倒れだぁ!?」

 

 

 

 マンタを近くに降ろし、自ら飛び出してきた男性は、まき絵と裕奈を見て驚愕の表情を浮かべた。

 仁は彼をよく観察していたが―――どうやら普通の運び屋で、怪しい商人ではないようである。

 

 

 

「女の子じゃねぇか! 何でまたこんな砂漠に・・・」

「・・・・俺も詳しくは知らねぇ。砂漠を歩いていたらぶっ倒れてたからな」

「何かの事件にでも巻き込まれたのか? ・・・しゃーねぇ、オアシスまで連れてっといてやるよ」

「・・・・すまねぇな」

 

 

 

 まき絵と裕奈を渡され、抱えたままマンタに乗り込んだ男性は、仁にも再び声をかける。

 

 

 

「本当にいいのか? 兄ちゃんは乗ってかなくて」

「・・・・大丈夫じゃなけりゃ、自分から乗せてくれってー言うだろ?」

「そうかい・・・気ぃつけてな!!」

 

 

 

 人の良い男なのだろう、最後まで仁を心配している顔のまま、彼はマンタの中に体を引っ込めた。

 

 最後にもう一度、気ぃつけてな!、と叫んだ後、マンタのエンジンを可動させ、数十秒後に発進し空の彼方へ消えた。

 

 

 

 

「・・・・次だ」

 

 

 

 道しるべから方角を割り出した仁は、マンタとは別方向・・・雪の降り積もる高山へと体を向け、再び高速で飛んでいく。

 

 

 不幸なことに、ここで年中雪の降り積もる山は二つ有り、残りの山は特殊な環境により温度が平均的だったり、活火山のため雪が積もらないらしいが、幾つもの山を転々とするといった、面倒臭いうえ時間が足りなくなる事をしなければいけない事に変わりはない。

 

 

 ・・・仁の元居た世界の『独の傷跡』並とは流石に言わずとも、しかしそれでも何でもアリな世界感の魔法世界だ。

 が、できれば雪山は一つであって欲しかったと、仁はこの時思わざるを得なかったという。

 

 

 

 

 

 砂漠から飛び立ち、わずか数分で雪山についた仁は、耐寒の術式をかけると低空飛行で探していく。

 

 岩と礫の世界である砂漠よりも探しにくい雪山は、慎重に目を凝らしていかなければ見逃してしまうだろうことが容易に考えられる。

 途中で寝てしまい、雪に埋もれて見えなくなったり、雪崩に巻き込まれていた場合は最悪だが、雪崩程度なら仁の力で掘り出すことはできる。

 

 紬のいない世界だからこそ、仁も全力が出せるのだ。

 

 

 いくら全力が出せようとも、芳しくない状況に変わりはないのだが。

 

 

 

(・・・・ここでも時間はかけてられねぇ・・・すんなり見つかってくれよ)

 

 

 

 祈るような気持ちで散策し始めるが、1時間経っても未だ人影どころか魔物の影すら見当たらないという有様だった。

 

 仁はまだまだ余裕など有り余っているが、自分自身に余裕があっても今の状況では余りいい気分になれるものではない。

 

 

 

 もう一つの山にも向かわねばならないのに、時間を潰していられるのか・・・眉間に皺が寄る仁。

 

 

 

「―――――」

「・・・・ん?」

 

 

 

 そんな彼の耳に、何やら妙な音が入ってきた。

 

 

 

 

「あぁ・・・天使か、オレにも天使が舞い降りたか・・・出来ればかわいこちゃんが良かったなぁ・・・」

 

 

 その音は、この状況で何呑気な事を言っているのか、そう言われても仕方のない戯言だった。しかし戯言だとしても、誰かが居るのは事実。

 

 仁は必死に辺りを見回し・・・その声の主を見つけた。

 

 

 見つけた瞬間、今まで見つからなくて当たり前だと、仁はまた溜息を吐く。

 

 

 

「ああ・・・俺を天国へ連れてい――――ギュム!!」

「・・・・黙ってろ」

 

 

 

 それは、ネギの相棒である通称・エロオコジョ、アルベール・カモミールだったのだ。サイズが小さいため、この辺を通った時にも見つけにくかったのだろう。

 

 

 

 戯言を言わせない為に握った後カバンの中に放り込んで、仁は捜索を続ける。だが結局の所、これ以上人を見つけることは叶わなかった。“着色” の術式を使って目印をつけながら進んでいるので、同じ場所い何回通ったかもわかるのだ。

 

 

 

 

「・・・・クソ」

「あり? 何かあったかいな? もしかして俺、生きてる!?」

 

 

 

 背中側から妙に元気な声を浴びながら、仁は一先ず近くのロッジへ向かうのだった。

 

 

 




 仁が使う “術式” ですが、色々と便利な反面戦闘自体には使えないし、仁自身が術式に疎いので、今まで出る機会が余りなかったという、不遇な一面をもつモノなのです。


 今までに出てきたもので、

 名称されていませんが、京都編でこのかの危機を察した時に出てきた“探知”

 独器使い特有の術式で、独器使いを見つけるための術式“独の探知”

 だいぶ間が空いてから出てきた “耐熱” と “耐寒”

 範囲は狭いが偽器の力を捉えられる、本編ではアレンジバージョンの出てきた “察知”

 忍者の使った五色米のように、目印として使う “着色”


 以上六つが、今のところ存在します。


 しつこいようですが、戦闘そのものには全くと言っていいほど使えません。
 なので、これからの登場は少なくなると思いますが、この術式が無いと仁は、気配以外で察知できなかったり、弱ったり倒れたりは無くとも雪山や砂漠で余計な体力を使ったり、同じ場所をぐるぐる回ることになるので、結構重要な役割を持つものなのです。



 それではまた、次回にて。
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