空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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肩の荷は降りない

 

捜索再開から一週間以上経った。

 

 

 危険地帯を音速もかくや―――どころかそれすら超えているのではという、呆れた速度で飛び回る仁。

 だがしかし、知り合いの姿は影も見つけられない。

 見知らぬ他人の姿を目に映すのみであった。

 

 危険地帯にはいないのかと比較的安全性の確保されている場所にも行ったが、やはり影も形もない。

 

 

 

(・・・・クソッ―――――ん?)

 

 

 

 毒付いて眉をひそめる仁は、一旦カモのいる拠点に帰ろうと体の向きを変えた。が、そこで不可解なものが目に飛び込んでくる。

 

 

 

「・・・・クレーター、か?」

 

 

 

 それは、直径が中型のドラゴンほどありそうなクレーターだった。

 

 焦りから見落していたであろうそれに、曖昧な既視感を抱いた仁は、一層眉をひそめて近づいて行く。

 

 

 

「・・・・」

 

 

 

 木々がないため木の葉も揺れず、不気味なほど静まり返っているクレーターの中心に降り立ち、わずかに見回す。

 

 

 

(まさか・・・な)

 

 

 

 仁の頭の中に、今一番ありえない選択肢が二つ浮かぶが、それは首を振って否定した。

 それでも完璧には否定できず、心の中に鉛を残す結果となってしまっている。

 

 

 

「・・・・今できるのは、最善策をとることと、祈ることか」

 

 

 

 彼はもう一度頭を振ると、空へ駆け出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――不自然に食いちぎられた魔物の残骸と、

 

 

 

 

『《シュルル・・・グルルル》』

 

 

 

 

 

 “人の物ではない” 声に終ぞ気づかず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雪山の麓の村―――名前を仁は覚えていない―――に約一週間ぶりに戻り、先ずカモのいる宿へと足を運ぼうとして・・・待ち合わせをしていたことを思い出し、向きを変えて再び歩き出す。

 

 

 腹減った、と当たり前すぎて萎えることを考えながら、待ち合わせの場所としていたレストランの扉を開けると、もう既に注文はとっていたのかスープ二つと、ホットドッグにサンドイッチが置かれていた。

 

 

 

「おう旦那、おつかれさん。成果はどうだ?」

「・・・・何も。ダリー程何もねぇ」

「そうか・・・なら、次からは街方面に変えた方がいいか?」

「・・・・だろうな」

 

 

 

 いただきますも言わずにそれぞれの食事に手をつけた・・・正に、その時だった。

 

 

 

 

『まきえさん、ゆうなさん、見ていますか! 僕ですナギです!』

 

「なぬぅ!?」

「・・・・!」

 

 

 

 二人とも声に驚き反応して、宙に浮いた立体映像のようなテレビ画面を見やると・・・・・そこには、年齢詐称薬を飲んで成長したであろう、ネギの姿が映っていた。

 

 

 

『一ヶ月後、オスティアで開かれる大会で会いましょう! 勿論、運動部の二人も夏美さんも来ますから、安心してくださいねー!』

 

 

 

 律儀な齧った分のサンドイッチを飲み込んだらしいカモが、ひと呼吸おいて目を輝かせながら仁の方を向く。

 

 

 

「だ、旦那!! これ、これ!!」

「・・・・わーってる。ったく、面倒(めんどー)を消しやがって・・・これまでが無駄みてぇじゃねェか」

 

 

 

 そういう仁の顔にも僅かに笑みが浮かんでおり、カモは嬉しそうにピョンピョンはねながら、あとは気を見てオスティアに行くだけだぜー! と騒ぎ回っていた。

 

 そんなカモに、いつの間にやら笑みを消した仁が呆れたような声をかける。

 

 

 

「機ぃ見てオスティアに行く、・・・・それだけが別に出来ることじゃねぇ」

「は? 何かあるのか? でも、注意しねぇと賞金稼ぎに―――」

 

 

 

 訝しむオコジョの目の前へと、仁は無言で手配書を突きつける。

 そこにはネギま部(仮)の面々は乗っているものの、カモや仁は名前すら載っていない。

 

 

 

「え~・・・? 俺っちそんな扱い?」

「・・・・幸運だと思いやがれ、こーなとこで見栄張ってどうする」

「そうだけどよ・・・まぁつまりは、俺っちら名義で手紙を出そうってことか」

「・・・・あぁよ」

 

 

 

 この魔法世界ではラテン語やギリシャ語が中心、つまり漢字など滅多に使わないため、仁名義で手紙を出せば一発でわかるのだ。

 

 

 

「兄貴達喜ぶぜ~! なにせ強力にも程がある助っ人だからな!」

「・・・・随分な評価だなオイ」

「そういうとなんか俺っちが酷評してるみてぇなんだけど」

「・・・・ニュアンスの問題だ、ニュアンスの」

「ニュアンスねぇ」

 

 自分が大したことない、とまでは思っておらずとも、イマイチ他社の評価をつかみ損ねている節があるからそんなニュアンスになったようだ。

 

 ともかく、今はネギたちへの連絡が大事。

 仁はホットドッグをさっさと食べ終え、どこで買ってきたのかシンプルな便箋を取り出して、日本語で手紙を書き始めた。

 

 内容はいたって簡単で、“俺は今カモミールと一緒にいる、一ヶ月後に会おう” と言う二言のみ。

 ・・・それだけではあんまりだとカモが発言したために、まき絵と裕奈のことも付け加えたが。

 

 

 その手紙をこの世界でいうポストへとカモに届けに行ってもらい―――この世界のポストは、仁のもといた世界とも、麻帆良とも違うので仁には分からない―――その後また再び追加で注文して、とりあえずは祝杯だ! と温度差はあれど喜んだ。

 

 

 

「何が良いって、一番は戦闘力の皆無の五人がちゃんと兄貴の傍に居るってとこだ。肩の荷は降りたぜ」

「・・・・だが、俺は明日も一通り探索してみようと思ってる」

「ああそれがいいと思うぜ。サポートタイプの人間がサバイバル以外の困難に会ってねえとも限らないからな」

「・・・・・・」

 

 

 

 その言葉を受けて仁は黙る。

 

 

 勿論カモが言ったとおり、サポートタイプの人間を探す事も目的には入っているが、一番の目的は朝方見かけた “クレーター” のことについて調べる為である。

 

 

 旧世界と呼ばれている現実世界の爆弾を持ってきた上、妙な所で爆発させたか身を守るために投げた、という可能性も浮かんだのだが、仁はすぐに否定した。

 そもそもあんなクレーターを作るのに、爆弾一個で足りるはずがないし、例え巨大な一個やミサイルを持ち込んだとしても、あんな辺境へ放つ理由もない。

 

 

 それに・・・学園祭では演出等のごまかしで済んだものの、本当は殺戮が行われていたかもしれない。その危機を間近に迫らせた “偽器兵” の存在と、今は悩みの渦中にある “紬” の存在。これがある限り、どう頑張っても否定しきれないので、仁は万が一のために飛び続けようと思ったのだ。

 

 

 

(・・・・もしどちらかが来ていたならば・・・どっちにしろ惨事だな。俺にとっても周りにとっても)

 

 

 

 酒が入ってハイになるカモを余所に、仁は追加注文したホットドッグにも手をつけず、わずかに歯ぎしりした後ため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・彼ら(ネギ達)とはまた別の戦い、異世界の兵器とのぶつかり合いと、仁の過去への決着は、刻一刻と近づいている。

 

 

 

 

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