空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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それは唐突に

 脈絡もなく突如くり抜かれて、立っていた地面が引っ繰り返ったというその現象に、“黒い猟犬” の面々は驚きを隠せない。

 

 

 浮遊させる魔法などもあるが、超上位クラスでもあまり大きなものは浮かせられず、人でも数人浮かせるのがやっと。

 なのに目の前の男は魔力を放出することもなく、攻撃もせずに地面をくり抜いたのだから、魔法世界の人々から見れば常識はずれもいいところだった。

 

 

 だが、彼のとる行動はそれだけでは終わらない。

 

 

 

「・・・・挟足(ディダクティスカイス)

 

「うげふ!?」

「うごっ!」

「ぬぐえ!!」

『ピギエェェエエ!!』

 

 

 地面が完全に逆さまになったとほぼ同時、いきなり真っ二つに折れたかと思うと、“黒い猟犬” と砂蟲達を挟み込んでしまったのだ。

 

 彼らを挟んで止めている間に、仁はのどかやクレイグ達を[飛](トバシ)の力込みで一旦別の場所まで運んでいく。

 

 

 

「あ、あの・・・仁君、なんだよねー・・・?」

「・・・・あぁよ」

「助けに来て、くれたの・・・?」

「・・・・正確に言や、俺は『前座』だ。前座」

「前座?」

 

 

 

 仁の言った事がわからなかったのか、のどかは首をかしげてオウム返しのように呟く。

 その言葉に仁はわずかに頷いた。

 

 

 

「・・・・あんたらの “担任” が来んだよ」

「! まさか・・・!?」

 

 

 

 彼の言葉で、のどかは “ある人物” を思い浮かべる。

 確かのことなのかと再び聞こうとしたとき、仁は手を軽く上げてのどかの言葉を静止させた。

 

 

 

「・・・・まだ前座ぁ終わってねぇよ、ちょっと待ってな」

 

 

 

 運ばれていたため気がつかなかったが、どうやらかなり離れた位置にいたらしく、未だ岩に挟まれたままの “黒い猟犬” が、遠くに見える。

 

「―――っ!」

「わ・・・!?」

 

 そこまであっという間にたどり着いた仁は、より一層力を込めて挟み込む力で岩を砕いた。

 強烈な衝撃音の割に “黒い猟犬” の面々はあまりダメージを負ってはいない。

 しかし、その代わりにクッションとなったらしい砂蟲は、もう戦うことは愚か立てる状態でもなかった。

 

 

 

「なんだこの男は!?」

「魔力も何も感じないヨ・・・奇妙ネ」

「ちょっと冗談言ったからバチ当たったのかな・・・?」

「あ~、オイ、モルボルグラン。口調が素になってんぞしっかりしろ」

「あ、ゴメン・・・!」

 

 

 

 見た目の割に優しい口調らしかった骨の魔族はともかく、皆大なり小なり仁に驚いている。

 魔力が微塵も感じられないのに先ほどの芸当が起こったのだから、それは当然のことだろう。

 

 

 だが流石プロといったところか、驚愕を打ちけして構え直す四人を見たあと、仁は一回首を回してさて戦闘を・・・・・・と行こうとしたところで、すぐに別の方向を見てため息をついた。

 

 

 

「・・・・前座終わりだな」

「何?」

「・・・・そんじゃ、さいなら」

 

 

 

 そう言って動作に似合わぬ速度で下がったのと入れ替わりに―――――

 

 

 

「!? な、いつの間に!」

「なんだお前は!?」

「ムムム?」

「!!」

 

 

 いつもの穏やかな雰囲気の消え去った、黒い靄を纏う『ネギ』が現れた。

 

 

「僕の生徒に、これ以上手は出させません・・・!」

 

 

 そこからの戦いはまさに一方的。

 魔法を中心に使うの小太り人物は、魔法の矢を放つ暇もなく『闇の魔法』による『術式兵装』を会得したネギに二撃で倒され。

 トカゲ男は予想以上のタフさを見せるもネギ流魔法の矢装填パンチ “桜花崩拳” により吹き飛ばされ。

 リーダー格のスキンヘッドの男は白き雷のゼロ距離と、追い打ちの雷の暴風によりノックダウン。

 骨魔族は最大限の魔力を込めた雷の槍、 “雷の投擲” により地面に縫い付けられて、戦闘不能となった。

 

 

 

 わずか数分と経たずに、戦闘は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいませんでした!! 本当にすいませんでした仁さん!!!」

「・・・・」

 

 

 

 猛烈な勢いで、綺麗で完璧な最敬礼をネギは決めていた。

 

 

 戦闘が終わってから数秒後、仁を見つけたと思ったネギが、いきなりとった行動がこれだ。

 ・・・ハルナの飛空船で行われた会話の内容その通りの行動を、ネギは本当にとったのである。

 

 

 

「・・・・あのよ。外見ぁまごう事なく餓鬼だったんだし、俺は何も言ってねぇし、しょうがねーだろ、謝んな」

「でも・・・」

「・・・・お前、成長しろよ・・・神楽坂に怒られるぞ、ウジウジすーなて」

「う・・・」

「・・・・俺が怒ってーなら兎も角こっちのミスもある。アレだ、気にすんな」

 

 

 

 元気よくとは言えないが、一応の納得と共にネギは頷いた。

 今までだとまだまだ納得いかないと押し問答が続いていたのだろうが、ちゃんと頷いたのだ。ちゃんと成長しているのだろう。

 ・・・成長と呼べるのかどうか、状況が状況だけに少し疑問な所だが。

 

 珍妙なやり取りが終わったあと、ようやく来たらしい飛空船から、ハルナや古菲、途中で合流したらしい明日菜やこのか達も降りてきた。

 

 

 

「ちょっとネギ、さっきの何よ!?」

「え!? さっきって一体―――」

「船の上から見たのよ! 白状してもらうわよ!!」

 

 

 

 会って早々何やらもめている明日菜達の脇を抜け、仁はこのかへ歩み寄る。

 

 

 

「ひゃ~・・・仁君て元の姿やと楓よりおーきいんやなぁ」

「お、お嬢様!? 本当は年上だったのですから “君” 付けはいくらなんでも・・・!」

「あ! そやった、ごめんな仁さん」

「・・・・どうでもいいから、怪我人直してやーてくれ」

「あいあいさ~っ、ウチに任せるえ♥」

 

 

 

 杖を振って答えたこのかは、言い合いが終わったらしいネギ達へ挨拶をしているクレイグ立ちへ近づき、アーティファクトを使って彼らの傷を癒す。

 

 完璧に治ってはいないものの、もう擦り傷程度しか残っていない。何やらのどかとネギをからかったあとで、クレイグ達は仁にも近づいてきた。

 

 

 

「よ、兄ちゃん。あんたもサンキューな。助かったぜ」

「・・・・知り合いの知り合いだからな、それ見捨てるほど冷血じゃねぇ」

「それにしてもあんた魔法以外の・・・謂わば超能力みたいなもんでも持ってんのか?」

「そうそう気になってたのよ! あんな芸当を魔力無しでやっちゃうなんて、人間業じゃないわ!」

(・・・・意識あったんかい)

 

 

 

 どうやらギリギリで気絶はしていなかったらしい。仁はその質問に、ネギ達の時と同じように超能力であっていると説明した。

 

 独器などといってもチンプンカンプンだろうし、この例えは便利である。

 

 

 

 そして、全員への再会の挨拶が終わったらしいネギが、嬉しそうに笑いながら声を張り上げた。

 

 

 

「皆さん! 全員集結まであと少しです!」

「そうだね、明日からお祭りも本格開催、いよいよってとこだね」

「そんじゃ、“白き翼” のリーダー・ネギくん! 気合入れのための言葉をお願い!」

「え? あ、えっと・・・では皆さん! 現実への帰還へ向けて・・・ネギま部! ファイト―――」

「「「「「「オーーーーーッ!!!」」」」」

 

「・・・・」

 

 

 

 ちなみに仁がネギに答えなかったのは、考え事をしていた訳でもなく、何かを感じ取っていたわけえもなく・・・

 

 

 

(・・・・いや、俺は違ぇよ・・・白き翼じゃねぇよ)

 

 

 

 とことん下らない理由だったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、その呆れ顔は―――――

 

 

 

「? ・・・ッ!?」

 

 

 

 突如として切羽詰まった表情に塗り替えられる。

 

 

 

「あれ? 仁さん何処へ行くんですか?」

「・・・・気晴らしの空中散歩だ」

 

 

 

 ネギの返答は聞かず、直ぐに仁は空中へ飛び出していく。

 

 

 のどか達の所へ駆けつけた時とは比べ物にならないスピードで、仁は “ある場所” に降り立った。

 

 

 

 仁が睨みつけた先、そこにいたのは――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久シブリ♥ カナ?」

「お・・・前・・・」

 

 

 

 忘れられない、忘れもしない、脳裏に焼きついて離れない――――

 

 

 

「ア~イタカッタンダヨォ?」

「・・・・」

 

 

 

 

 

 淡い桃色の髪を持つ、黒衣を纏う少女・・・[煙](ケブタシ)の独器使い・・・ “紬” だった。

 

 

 

「ネ~ェ、仁♥」

「紬・・・・!」

 

 

 

 




ついに邂逅・・・ついに再開。
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