空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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いよいよ、過去編最終話です。・・・ここまで来るのに長かった。


 それでは、ネギま世界へとつながる最後の過去話をどうぞ。


過去話・一つ目の終わり

仁の旅初めからは6年、紬と言う道連れを得てから5年たった。

 

 

 仁は身長が190cmを超えており、年齢がまだ19歳で20代ではないのが分からない程。紬は仁よりも二つ年下であったらしく、当時12歳であった彼女は現在17歳。体付きもあの時とくらべればより一層、女性らしく成長している。

 

 ・・・しかし、仁が紬の町の事件にあったのが当時14で、紬は12だったと考えると、よくもまぁ子供が大人を追い詰める事が出来たのだと感心してしまう。

 独器には、精神的成長を著しくさせる効果でもあるかのようだ。

 実際は異能頼りで、根回しが足らなかったところを突いた、その功績が大きいだけなのだろうが……。

 

 

 閑話休題。

彼等は旅の中で様々な事を見て聞いて、知らなかった事も漠然と捕らえていた事も学んできた。

 

 

 

 偽器誕生の秘密。

 全ての独器にはそれぞれ小さいながらも代償―――変化をもたらす《何か》がある事。

 仁と紬の独器のさらなる能力に応用法の発覚。

 小人の様な一族の村の様な国。

 偽器兵が作った駆け込み寺。

 独器使い同士の死闘の後、砂漠にある極寒氷河の『独の傷跡』、そこに住み付いていた“最上級”の偽器兵との更なる闘争。

 

 個人間の事で言うならば、真剣になったり血が上ると仁の“独器を持つ前の性格”が出てくる事―――紬曰く「そっちの性格の方がいい」―――や、めんどく臭いという感情と時期が災いして紬に笙狼老人への届け者の剣を伝えていない事。

 ・・・共に冒険を過ごしていく内に、紬が彼に恋心を抱く様になった事も。

 

 

 

 実力に関して言うならば、彼等はこの世界でも上位には食い込むほどにまでなっただろう。

 だが、上で記した“最上級”の偽器兵には力及ばず偶然逃げられた様な物であり、現在は倒せるには倒せるだろうが継承では済まない事必死でもある。

 他の独器使いや達人級の偽器使い、下級ながらも発達した頭脳を持つ偽器兵の存在もあり、その為彼等が敵なしかと言われると実際は違うのだ。

 

 

 仁には『相手の体内の物質を飛ばす』という反則技もあるが―――実の所あまり役に立っていない。

 容易に使えるものでないのもそうだが、一番は彼の経験不足による自信過剰な部分があった事だ。

 ……幾ら構造が解っていようが、複雑な人の体内など容易に狙いが定まるものではなかったのだから。

 

 それに独器使い等特殊な武具の使い手達は、同類以外に対する肉体的・精神的攻撃二対する防御力が跳ね上がっている。

 が、それを抜いた本人自体の防御力が上がっていないと言う訳でも無く、加えて使い手同士の干渉力問題や高い集中力を必要とする為、ニ重の意味で容易には使えない。

 ―――身も蓋もない事を言ってしまえば『普通に蹴った方が強いし早い』のである。

 

 

 ともかく二人とも“強い”と言われる部類ではあるが最強でも無敵でもないので、相も変わらず鍛錬は続けている。

 

 

 

 そして、彼らの間にもう一つ、ちょっとした変化をも気起こす出来事が起こった。

 

 

 

 それは、『技の名前』の事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・は?」

「ダカら、技名とか付けた方がイイノかなっテ」

「・・・なんでそんなめんどーせぇ・・・」

 

 

 

  茶屋で休んでいた仁は、紬が発した一言に呆れ顔で答え、次は何も言わずに顎に手を当てる。

 

 

 

 技名がどうのこうのと言いだした理由、それは間違いなくあれだと仁は見当を付け、更に溜息を吐いて黙りこんだ。

 

 何故悩む必要があるのかと言うと、一つ目は今しがた言っていた様に面倒くささがある為。そして二つ目は、その技名を付けようと発言したきっかけであろう人物が、かなりアレなネーミングセンスを持っていた為、付けるならば違う趣向の名前を付ければいいのだとは分かってはいるものの、どうしても頭からマイナスイメージ離れないためだ。

 

 

 

「仁? ドウカしたノ?」

「・・・どうもしてねぇ・・・」

「フ~ン? 別ニイイケド」

「・・・・・・あんま詮索するんじゃーねーよ・・・紬」

 

 

 

 現実的に言うならば、技名で自分の技能に区別を付けたり、感情を乗せたりといったプラス効果もあるが、名前で勘づかれたるという大きなデメリットを持つので、タイムラグを発生させない為にも(そして面倒臭くさせない為にも)、仁としては付けるのは少しばかりご遠慮願いたかった。

 

 

 

 だが・・・お隣の人物は待ってくれないようだ。

 

 

 

「実はネ、実ハね、もウ自分の分だけ考えてアルんだ。ワタシの好キナ単語にちょット言葉遊びを加えタの」

「・・・へー・・・」

「ああ、ワタシがよく使ウ爆発ネ! アレは・・・・・爆ぜる愛憎(スモーク・デトネイション)って付けタヨ!」

「待てコラ」

 

 

 

いきなり愛憎と言うかなり怖い言葉が出てきたので、流石に仁も紬の方を向いて突っ込みを入れた。愛憎が溜まりに溜まって爆ぜてしまうという表現から来ているのだろうが、それにしたって言葉が―――ついでに実際の威力も―――怖すぎる。

 

 

 

「・・・他に良ーの思いつかなかったのか・・・?」

「ウン」

「・・・・・・・」

 

 

 

 即答された為、仁は何も言えなくなった。彼にはお構いなしに、紬は次々と自分の考案した技をつらつら言い出してゆく。

 

 

 

「他にモね届かない愛(ミスト・プロテクト)トカ、恋心への狙い撃ち(フューム・シュート)トカぁ・・・アト、貴方の愛情は盲目(スモーキー・ハイド)とかも作ッタヨ!」

「・・・あ~・・・そーかい・・・」

 

 

 

 後に出てきた物は別段恐ろしくもなかったが、一番最初に抱いたイメージとは結構引きずるもので、それらさえもどこか恐ろしいものだとしか、仁には認知できなくなっていた。

 

 

 その後で、名前と技の構想を聞いた(聞かされた)が、技の名前を付けてもいいぐらいに差別化された力であると、そしてやっぱり自分の力に付けるには無理だなと、仁はそう思ったという。

 

 ・・・仁が技名を付けない三つ目の理由が、まさにコレ・・・『バリエーションが少ない』為だ。

 

 

 

 ただ飛ぶだけの行為に名前を付けるのはおかしいし、フロントキック、二ーキック、トーキック、踵落としに回し蹴り・・・単に空飛んで行っているだけで違いが他にないそれらの技に、態々名前を付けるのは如何かと、次いでのそんなことしたら面倒くさいだろうなと考えているのだ。

 

 

 しかし名前を付けられる物が無い訳でもない。他の蹴りとは別種と分けられる、蹴りによる投げや脚力砲撃に脚力斬撃、急降下キックやもう回転の踵落としorオーバーヘッド、そこらの物を飛ばしてぶつける技等がある。

 反則技としてならば、相手をバラバラにしたり、圧縮したり、体内を崩壊させる技もあるが、掟の事もあり付けたくはない。

 

 

 だが、隣の紬は「自分も言ったんだから、仁も考えてよね!」 的なオーラを、それこそ子犬の様にキラキラした、希望に満ちた瞳を向けてくるうえ、勝手に語って聞かせた件から勝手に決められる可能性もあり、何も言わなければがっかりするどころかしつこく言われるだろうと、仁は諦めてテキトーに口にした。

 

 

 

「急降下で踏み付ける技にゃ 踏脚(とうきゃく)とか、脚力砲撃には砲足(ほうそく)とか・・・後は、斬撃には切脚(せっきゃく)、他の物をぶつける技は弾足(だんそく)で―――――」

 

「ノンノンノンだヨ!!」

 

「・・・え~・・・?」

「デモ、仁の意思は大切にシタイから、ワタシが原形をトドメテ直すネ!」

「・・・例えば・・・どんなふーに?」

 

「踏脚は、ソレの同音異義語を使っテ “ヴィエナードサーヌ” トかね!!」

「オイコラ」

 

 

 

 結局技名の件は紬に押し切られてしまい、始めは決める気はなかったただの蹴りや連続蹴りにも、名前が付く事になってしまった・・・せめてもの足掻きで、ただの蹴りは一纏めにしてもらった様だが。

 

 

 色々と不満がありつつも、彼等はこの旅と道連れとの会話を楽しんでいた。心の底からと言えるかどうかは、彼等がどう思ってどう感じているかに委ねられるが・・・それでも傍目から見れば、彼等はとても楽しそうに見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 しかし・・・・・・この幸福な時間は、唐突に終わりを告げる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・もーそろそろか・・・あぁ、あったあった」

 

 

 

 久しぶりに笙狼老人の村に帰って来た仁は、老人が住んでいる村から離れた家へ向かっていた。ちなみに紬は、個人でやりたい事があるらしく、一旦別行動を取っている為ここにはいない。通信手段である[術式]もあるので、仁の[飛]の力を持ってすればあっという間に合流は可能。

 

 

 そうでなくても、仁は時たまここに来る事があるので、その時は紬に教えてから笙狼老人の村へ向かっている。ちなみに、紬も共にここに来た事があるが、全て飛びながらのショートカットであったので、本来の地理は覚えていないらしい。

 

 

 この村にはそこまでしょっちゅうは行かず精々半年に一回程であるが、方角と地理を仁は毎回確認しているので、彼自身に限って言えば迷う事は無い。

 

 

 

 仁は広い村の端の、崖の上にある荒屋の前に降り立ち、その中途半端に古い家の戸を叩く。

 

 

 

「爺さーん、生きてっかー?」

「生きとるわい、いい加減その挨拶をやめんか」

「・・・あぁよ」

「信用ならんのぉ・・・まぁええか。それよりも――――」

「あー、今月分買ってきた」

「いつもすまんの、こんな老いぼれ相手に」

「・・・めんどーせぇけどよ……でも、あんたにゃ世話んなってーし、こんなトコに来れる余裕を持ってる奴、俺ぐれーだろうに」

「確かになぁ。・・・ところで」

「んぁ?」

「その間を伸ばしたような喋り方をやめんか。気が抜けるんじゃ」

「・・・めんどーせぇ」

「はっは! じゃろうな、言うてみただけじゃ」

 

 

 

 しばらく他愛のない、しかし懐かしくもあたたかい会話をした後、仁は止まりに戻ると老人に手を振りその場を去った。

 

 

 続いて仁は村の方へ飛び、自分の家らしき、これまた中途半端に最新の文明が混ざったような家の中に入ろうとする。と、そんな彼を呼び止めるものが一人。

 

 

「おう、仁の坊主じゃねぇか! 久しぶりに帰ってきたんだなあ!」

「……よー、おっちゃん」

 

 

 

 見覚えのある髭ずらに相変わらずの恰幅の良さ、間違い無く肉屋のおっちゃんであった。仁は彼にも挨拶し、またもや懐かしい人物との会話を楽しむ。

 

 

 

「本当に物好きだなぁ坊主も。確かに恩はあるんだろうが、何もそこまでしなくたっていいだろうに」

「まだ恩は返しきれてねーよ。だから止めるつもりもねー」

「あの爺さんは頑固な時は頑固なだけで、別に変人て訳じゃねぇしな・・・ま、頑張れや!」

「何をだよ・・・」

「さあな! わっはっは!!」

「・・・ダル・・・」

 

 

 『仁が』楽しんでいるかは、正直なところ微妙であったが。其れから仁の帰宅に気づいた知り合い達が挨拶に来たので、彼はいつもどおり適当に返し、村人たちに苦笑され・・・何時も通りに老人の家に戻り、懐かしい部屋に寝っ転がった。

 

 

 

 

 

 

 その日の夜。

 

 

 

 もう山ぐらいは浮かさせられる様になった仁だが、それは力任せにくり抜けばいいだけなので、力を制御しているとは言い難い。

 

 だからこそ今、巨岩を四つ浮遊させて操りながら、修行を続けていると言う訳である。

 

 

 

(まだまだ行けーか?)

 

 

 

 自身の能力の事を考えながらも、そういえば紬に俺自身の事で話していないのがあるなー・・・と、相棒との中についても考えていたりもする。

 

 

 彼女の過去も知っている訳だし、自分の過去を今まで話したモノを含めて全部話してもいいかもしれない。そう考えて、再び鍛錬の為に力を発動させようとした。

 

 

 

「! こいつぁ……!?」

 

 

 しかしそれは、脳にピリッと走る何か・・・を仁が察知した事で中断させられた。察知した何かもそうだったが、仁にとってはそれよりも驚愕すべきことがあった。

 

 

「この方角ぁ……爺さんの村の!?」

 

 

 仁はいつものダルそうな表情をある程度打ち消し、空中を走り飛んで村の方角へと向かう。嫌な空気が邪魔をしているのか、感覚的にはやっと村についたと行った感触を仁は覚える。そんな、不安を抱えた彼の目に入ったのは―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アハハハッ! ハハハハハハハハッ!! ハハッアハハハハハハハハハハッアハハァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 建物は原型など留めておらず、地面は隆起し燃え上がる、人の気配すら二つしか感じない・・・・・・文字通り崩壊した村の姿だったのだ。仁の表情は真剣で、それだけで射殺せそうなほど鋭いをしていた。

 中央で笑っている何処か見覚えのある(・・・・・・・)黒衣の人物に今すぐにでも駆け寄り、蹴撃一発首をもいでやりたい衝動にかられたが、今は生存者を優先せねばと残っている気配の方向へ向かう。

 

 

 その気配の残る場に居たのは・・・恩人である老人、笙狼だった。体中に傷があり火傷を負い、もはや虫の息で呼吸はとぎれとぎれだ。

 

 

 

「爺さん! おい爺さん! しっかりしろ!」

「・・・仁、か」

「何があった!?」

「・・・黒衣の女が・・・お前を探しに、来たとゴホッ!! ・・・いって現れ、たらしい・・・。最初の、目撃者が知らんと言った途端に、不気味に笑い、出して・・・ゴホ! 襲ってきたらしい。さっき、力尽きた門番に、聞いた・・・ワシから見れ、ば・・・グフッ! 気がついたらこうなっておったん、じゃ・・・」

「!! 俺の・・・」

「なぁに、心配するな。この村、に嫌われようとも、わしはぬし、の味方じゃから・・・の」

「・・・喋らせてすまん・・・安静にしててくれ」

「・・・フ、気負う、なよ・・・」

 

 

 

 笙狼老人を一先ず安全な場所へ運んだ仁は、一体誰が襲撃してきたのかと確認する為に、村の中央へ飛翔していく。

 言い表せない不吉な予感を抱えたまま、仁は未だ笑い続ける人物へ近づき・・・その正体に、心の底から驚愕した。

 

 

 

 

 

「つむ・・・ぎ、か?」

「ア! ジ~ン、遅ッソ~イ♥ 今カ今カッテ待ッテタノニィ♥」

 

 

 

それは彼もよく知っている人物で、そしてどこか《純粋に》狂ってはいたものの、コレだけの事を起こす人物には見えなかった・・・否、これだけの事件を起こす理由もない筈の、同じ『独器使い』の女・・・相棒である少女・紬がいた。

 

 仁は驚き困惑したものの、何とか聞かなければいけないと言う考えと、村の者達を殺された憤怒が先に立ったのか、並の者なら気絶してもおかしくない程の殺気をまといながら、彼女に聞く。

 

 

 

「何で・・・何でこんな事を・・・」

「? 決マッテルジャン?」

 

 

 

 何故喋り方が少し違うのか、何故彼女は自分を待っているのか、そんな疑問が消える程、飛び出しそうなほど殺気を湛えていた仁だったが・・・次の言葉で、一瞬殺気が止まった。

 

 

 

「仁トォ、相思相愛ニナリタイカラァ・・・オ邪魔虫ニ退場シテ貰ッチャッタノ!」

「・・・」

 

 

 お前は何を言っている? 何が起こっているんだ? 仁の中にはその疑問が渦を巻いた。

 

 

 相思相愛になる・・・その言葉からは想像できない程残虐な現場、ほんの一週間前に別れたばかりなのに、まるで別人のようになっている相棒。故郷での出来事と目的を、全て台無しにしてしまう行動。

 

 その全てに仁は困惑し、同時に理解しきれない感情がわき上がったからか、怒りが更に増長してくる。

 

 

 

「コレデェ――――仁ト私ハ、理解シ合ウ者ガオ互イノミ。ツマリィ、フ・タ・リ・キ・リ☆ ・・・キャッ♥」

「お前・・・そんな事の、為に・・・!!」

 

 

 

 

 

「ゴミ虫ナンテ、コノ世カラ居ナクナッタッテ大事無インダカラ、ソレ悲シム人ナンテ痛イヨォ?」

 

 

 

 その言葉で困惑が消えさり、憤激が感情の限界点を超えた。

 

 

 

「紬ぃぃぃぃい!!!!!」

「アハッ♥ ジーーィィイインクゥウウン!!」

 

 

 

 

 遣る瀬無い思いも抱えたまま、仁は怒りを携え紬へ向かっていく。

 

 

 

 何でも無い、技もない・・・しかし人知を超えた速度で叩きつけられた突進蹴りで、紬は遠くへ吹っ飛んだ。

 

 

 

「ホゴオオッ!?」

「ぜああーっっ!!!」

「ダッ! ゴボッ! ブハッ!?」

 

 

 

 高速移動によるソニックブームと、死角からの蹴りで、紬は対応できずにあっという間に追い詰められていく。

 普段彼は、飛の足場を自分の周りに造り、それを利用して音速を超えた飛行の際に出る衝撃波を押さえているのだが、それを使わずに移動すれば攻撃にも余裕で転用できるのだ。

 

 

 しかし・・・余りにも必死だからか、仁は紬の独器の扱いが “初めて持ったかのように” 稚拙すぎる事に気が付いていない。

 

 

 だが、だからこそ碌に使いこなせない紬を、使いこなしている仁はどんどん追い詰めて行った。

 

 

 

 『倒足(ガルヴカーギ)』で蹴り飛ばして『砲足(リクムス)』で追撃をかまし、体勢を立て直させる前に地面をくりぬ居て飛ばす『弾足(ブルレタートルムス)』で攻撃と体勢崩しを両立。

 『弾足』中も仁がそのまま立ち止まっている訳もなく、素早く頭上に移動しまたもやその余波で起きるソニックブームで切りもみ回転させる。

 

 

 

「『踏脚(ヴィエナードサーヌ)』ゥッ!!!」

「ゴッ―――」

「終わらせねぇ・・・『潰脚(アトベールトカーユ)』!!」

「ガハアアッ!!」

 

 

 

 急降下キックを打ち込んで飛の足場にぶつかってバウンドした所を狙い、再び猛スピードで上昇していたらしい仁が、空中回転踵落としを思いっきりぶち込み、紬は地面に盛大な轟音を立ててぶつかった。

 

 狂っていても状況判断は普通に出来るらしく、紬の顔からは笑顔が消えて冷や汗が流れている。

 

 

 

「グッ、ハアァッ・・・!」

 

 

 

 紬の目の前に降り立った仁は、未だ怒りの燃える目で彼女を睨みつけ、疑問を吐きだした。

 

 

 

「何故だ・・・何故こんな事をした!!」

「ウ~・・・ウ~・・・」

「・・・お前はこんな事を―――」

 

 

 

 

「見ィィィツケタンダヨオオッ!!!」

「!?」

 

 

 

 疑問に答えず下を向いていた紬は、何の脈絡もなく突如として頭を上げた。そしてそのまま、彼女が本来しないであろうじゃ悪にも程がある笑みを、ニタァァァ・・・と浮かべる。

 

 

 

「見ツケタ! 見ツカッタ! 流石独器ダ! コンナ物ガアルノカ!! シカモ彼女ノ力ハ・・・ポテンシャルハ・・・・今ノ彼女ト、自分ノ力ガアルナラ、辿リツケル! ウヒヒヒィ・・・ウハハァァハハハハァー!!!!」

「何を・・・!?」

 

 

 

 仁の疑問に答える代わりか――――――――紬はパームピストルを眼前に突き出し、声高らかに叫んだ。

 

 

 

「[(ケブタシ)]の『禁ジ手』ェ・・・・『恋と愛を伝える煙鏡神(テスカトリポカ)』ァァァァアーーー!!」

 

「禁ジ手・・・だと!?」

 

 

 

 力を自分に纏う『奥ノ手』の事は仁も知っていたが、『禁ジ手』など聞いたことも無い。そんな彼の驚愕には構わず、おぞましいほど大量に吐き出された煙が、紬を覆って見えなくなり・・・煙がはれた時には・・・

 

 

 

 

『アハハハッハハハハ!! ドウ!? コノ力ハ!? ネェ、仁!』

「なんじゃ、ありゃ・・・・!!」

 

 

 

 下半身は幾つもの脚を持ち、獣の様に四つん這いに近いフォルムをしていて、人の造形をとっている上半身に当たる部分には、額と胸に鏡を埋め込み、幾つもの目玉模様が浮かび上がっている――――いびつな女性のケンタウロスの様な、煙をまとった化け物がそこに居た。

 

 姿もさることながら、その大きさが規格外すぎる。

 

 

 飛んでいたからこそ、辛うじて目の前に巨人の如き女体が見えているが、山々に囲まれたこの当たり一帯でも目立ちそうな・・・それこそ並みの山など越えてしまっている巨体は、一体煙の中にどうやって隠れていたんだと言える程だ。

 

 

 そして、化け物から発せられる威圧感は、正しく『死の概念』そのもので、今までこの独器使い特有の威圧感をぶつけられた相手の気持ちが、今になって骨身にしみる程仁には理解出来た。

 

 

 

 驚愕と戦慄のあまり何も言えなくなる仁に・・・巨体なる怪物と化した紬は、嬉しそうでおかしそうで楽しそうな声を掛けてくる。

 

 

 

『コレデェ、勝負ハ分カラナイヨォ? インヤァ・・・ワタシノ勝チダネェ!!』

「・・・・!」

『コノ状態デ技ヲ出シタラサァ、凄イコトニナルヨネ?』

「しまっ・・・!?」

 

 

 

 仁が瞬時に超音速に達し、なりふり構わず逃走しようとするも――――時すでに遅し。

 

 

 

女神の愛憎(ゴッデス・デトネーション)ォォン!!』

 

 

 紬は掌にある目玉を勢いよく閉じさせ、それをトリガーとして・・・元々荒れ地になってしまっていた大地を、クレーターと化す程の爆発で消し飛ばす。

 その際に鳴り響いた耳を壊さんばかりの大轟音は、例えこの村の見えぬ遠方に居ようとも耳を劈きそうなもので、当然爆発の規模も威力もそれに見合うものであった。

 

 元より『数十㎞規模』の大爆発など、傷負いの身体で一体どう対処しろというのか。

 

 

「ぐ・・・がはぁっ・・・!?」

 

 

 仁は、大火傷と衝撃波による打撲傷に近い傷を負わされ、飛ぶ事も出来ず情けなく地面に激突する。

 立った一発、されど一発、その圧倒的な力で吹き飛ばされ、所々から流血し、爆破によって骨も折って内臓もボロボロにされてしまい、十数分前の笙狼老人の如く、息も絶え絶えで地面に横たわっている。

 

 

 

『立場、逆転ダネェ』

「く、あがはっ!!」

 

 

 

 反論も出来ず、それでも何とか逃げようとする仁。フラフラと蝶々の様に頼りない飛行で逃げようとする彼に、紬は又も邪悪な笑みを浮かべて、不気味なほど滑らかな腕を伸ばして捕まえようとする。

 

 

 

 

 もう、成す術が無い・・・・・そう思った、正にその瞬間。

 

 

 

 

「あ」

 

「・・・?」

 

「アガエタおrは負い無いおフェア終え案@いファfmあえにふぁいえ@ふぁにガエアベオアアア!?」

 

「な・・・何が・・・?」

 

 

 

 

 文章でも音でも表現できない奇声を上げて悶え苦しみ始めた紬は、体から煙を蒸気機関もかくやという勢いで吐きだして無散させ、アレほどの威圧感と巨体を誇っていた化け物は、夢か幻の如く消えて行ってしまったのだ。

 

 

 後には紬の姿は無く、周りを見渡せど『女神の愛憎』の所為でクレーターとなった地には、本当に何も残っていない。

 数十km以上先の大地も、周りにあった山も、流れていた川も・・・いっそ笑えてしまう程に、もう何も無い。

 

 

 

「・・・爺・・・さん・・・!」

 

 

 

 紬が狂った理由の一片すら分からなかった事、村が消えてしまった事、無関係な動物―――もしかしたら居たかも知れない旅人達まで巻き込んでしまった事、自身の恩師を助けられなかった事・・・・恩師の最後すら見届けられなかった事。

 

 

 

「ク、ソぉ・・・っ・・・・」

 

 

 

 全ての後悔が彼の体に染み渡り、仁はとうとう限界を迎えて、地面に落下ししてしまう。

 

 

 抗いようも無く瞼が重くなり、体そのものが鉛になったかのように動かなくなり、その絶望感に支配されたまま、最後の抵抗としてあげていた顔が地に伏せられ――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・? こ、こは?」

 

 

 

 

 

 木の根が張り巡らされ、太陽とは少しだけ違う明かりがさし、陸地のみならず樹の上や砂地や水の中にすら幾つもの本棚がある・・・奇妙な場所で目を覚ました。

 

 

 

 ここから、仁のもう一つの物語の歯車が、音を立てて動き出す。

 

 

 




 次回より、ようやくネギま本編の時間軸まで戻ります。過去話に付きあってくださって、ありがとうございました。

 これからの仁の活躍も、如何か見てもらえるよう、お願いいたします。
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