・・・短いですけどね。
それでは本編をどうぞ。
出自の話と暗がりの『闇』
自身の過去を思い出しながら、仁はネギ達に自分の出自や正体を明かした。
自分は何者なのか、どうやって麻帆良に来たのか、自分の中に何故魔力も気も感じられないか、今まで使っていた超能力の正体とは何か、二百数十km以上にわたって自然大破壊を起こした戦闘の大まかな内容、そして戦った者の事。
……その少女の目的も。
過去の事は、ここに来る前に重体を負った紬との一度目。
街で出会ったころを含めれば二度目の戦いの事のみを告げた。
仁の話を聞き終えたネギ達は暫しの間黙っていたが、一番後方に居たラカンが最初に口を開く。
「するってーと、つまり兄ちゃんは旧世界出身でも、魔法世界出身でも……ましてや魔界出身でも無い。魔法文化も何も無いマジモンの異世界人だと」
「……簡単に言っちまうなら、ソレだ。そーいう事だな」
ラカンの言葉が皮切りとなったか、今までためらっていたか理解が追いつかなかった者達も我に返ったように反応し、ハルナとカモが、仁に確認や質問を投げかけてきた。
「飛ぶときの最高速度って、どれぐらい出るの? 場違いかもしんないけど気になってさ」
「……必要ねーしめんどーせぇから試した事は無ねーが……音速なんざぁ普通に超えられるし、考え無しなら亜光速付近いけんじゃねーか? 飛ぶ事が力の真骨頂だしな」
「うっひょぉ…………」
「俺からも質問だ旦那。持ち上げられるものの重量限界はどれぐらいだ?」
「……アレだ、今の所は、ねーな」
「オイオイ……ねぇのかよ」
武術にも瞬動術や縮地法等があるものの、高速度を咄嗟に叩きだす為に見えなくなるのであって、実際に音速を出しているかと言うと微妙な所でもあったりする。
勿論、音速を叩きだせる者も居るし、本人の技量次第なので必ずしも音を超えられない訳ではないが、此方は飽くまで歩方術にすぎない。
しかし、仁は前後上下左右関係無しに、速度をずっと維持したまま飛べるのだから、魔法剣士からすれば反則もいいところだろう。おまけに、向こうからは敵の動きはばっちり見えているのだから。
また、相手を浮遊させる魔法もあるのだが、やはりと言うべきか仁よりもはるかに劣るし、大きなものを持ち上げるのならばそれなりの魔力と呪文が必要となる。
それに、仮に地面を持ち上げて発射しても、元々が移動用の技で、しかも持ち上げているのはただの地面なので威力が碌に出ない結果となってしまう。そんな事をするよりは、魔法の矢を放った方が手っ取り早い。
だが仁の場合、指定するだけでくり抜かれて飛んでくる上、その飛んでいる物体は強化されているのだから、攻撃としても十分だろう。
寧ろ、相手の意図しない場所からいきなり飛んで来たりする分、そこらの魔法よりもタチが悪い。
……ちなみに余談だが、浮遊させた物に対する制限は、無生物には特にないが生物にはあるらしい。
それが、時間関係無しにまき絵や祐奈が飛行に耐えきれないとして、彼女等をを連れて行けなかった要因の一つでもある。
仁がい世界の人間だと言う事と、独器の力を強大さは、大災害後の様にまるっきり変わってしまったこの旧王国跡を見たおかげもあり……信じるのに時間など要らなかったようで、皆有り得ないといった表情ながらも頷いていた。
ラカンは自分も反則的な力を持っている為か、流石に苦笑いでとどまっていたが。
続いて刹那が、神妙な顔つきで手を上げる。
「私からも一ついいでしょうか」
「……なんだ?」
「仮に……仮にです。私達がその紬という人物と戦ったら―――戦う事になったら、勝てる見込みはあるのでしょうか?」
「無い」
即答だった。
拍も置かず、悩む事も無く、質問が終わってから秒速と言うのもおこがましい早さで、ハッキリとした否定の言葉が仁の口から発せられた。
「……ステルス性の煙、爆発性の煙を組み合わせて、広範囲を爆破。これで大抵の奴ぁそいつ自身も気付かねー内に粉微塵と化す。運良く耐えられた所で爆発はやまねーし……アイツにはそれ以外の攻撃手段なんざ、腐るほどにある」
「そういや、独器やその模倣品じゃなけりゃ、肉体も精神も傷つけるのは困難。傷つけられるほどの出力を持っていても、殺すことは絶対に無理とか言ってたか。
……本人も強えから不意打ちも無理、アスナ嬢ちゃんのマジックキャンセラーも当然ダメとくりゃあ……は、ナギの奴と戦り合う以上に無理ゲーだな、こりゃ」
顎に手を当てて実に嫌そうな顔で告げるラカンに、仁は少しだけ顔を向けて頷く。
現に、この中でも倒せはせずとも撃退できそうなのは、ラカンとギリギリでネギだけであろう。
それ以外の者達は、敵だという以外に興味も示されずに木端微塵になりそうだ。
魔法や気の類でも無いから、アスナの魔法無効化能力も無意味。身体の強度を上げて耐えるか、圧倒的速度を持って逃げる以外に、生き延びる方法は無いとも言える。
「でも……だったらどうするのよ? その紬って人は、この世界を滅ぼそうとしているんでしょ? あのいけ好かないフェイトってガキと同様に」
「計画そのものぁ俺が止める。この件は俺にも……いや、俺自身に非があるからな」
「ううむ、何とか相手出来ぬ物なのカ。まかせっきりなのは歯痒いアル」
「何か、僕たちにも対抗できる方法はないんですか?」
ネギと古菲の言葉を受けて、仁は暫くの間黙りこむ。
紬そのものではなくとも、相手出来る方法―――というよりも、彼らでも戦える相手がいるにはいるのだが、苦戦必至で確実に不利。
悩んだ末……仁は話すだけ話す事にしたようで、一文字に閉じていた口を開いた。
「……さっき、独器の劣化模倣品、偽器があるのぁ話したよな?」
「はい。あと、生物兵器である、例えるなら茶々丸さんを更に生物らしく、そして戦闘特化させたような、偽器兵というのが居るのも聞きました」
「……実力次第なら……倒す事が出来るかもしれねー。所詮は模倣品だからな」
「ほ、ホントアルか!?」
「あぁよ……。だがアレだ劣化度が強い、最下級から中級までなら……だけどな」
「う、やっぱり一番強い奴は無理なのね」
ともかく自分達でも相手出来る敵が居ると聞いて、咄嗟の事態にも対処は出来るかもしれないと、一同は気を取り直す。
そして、仁から最下級から中級までの偽器兵の特徴を伝えた。
偽器兵は階級関係無くほぼ全て造型が滅茶苦茶。
だが、本来なら大部分は“色が薄いか、付いていないと感じる”奴等の体に、それでも色がどれだけ付いているか、どれだけ色が鮮やかかで、おおよその強さが分かるのだ。
最上級はほぼ一色で塗られ、別箇所も確りと色があり、『色無き色』が存在しないことも……また言うまでもない。
能力イメージ―――だが、これはさすがに、戦いながらでなければ分からないだろう。
……と、仁がレクチャーし終えると同時、ラカンが何かに感づいた様に、オスティアのある方角を見た。
「オイオイ、やっとこさ登場かよ」
「どうしたん? ラカンのおっちゃん?」
「軍の登場だよ。メガロの連中にヘラスの連中、アリアドネーも来てやがるな」
騒ぎを聞きつけた、というよりは騒ぎを起こしていた仁と紬の『死を直に感じさせる圧力』が消えたから、漸く行動に移したといったところだろう。
それまではもしかすると、震えているだけだったかもしれない。
「お前ら、余計な面倒事が増える前にいまんとこは逃げとくぞ! 早く船に乗れよ!」
「そうじゃん、やばいじゃん!? ほれみんな! グレートパル様号に早く乗る!」
「旦那はどうすんだ?」
「……俺ぁ、自分で飛んでオスティアに戻るわ……先行っとけ」
そう言うと、少し遠くに見える戦艦の方に仁は目を向け、[|飛トバシ]の力を使って戦艦の速度を遅くした。今頃艦内は慌ただしくなっているに違いない。
その間に迂回して離れて行くグレートパル様号を見送ってから、力を解除して仁も音速を超えて飛び去る。
艦隊が着いた頃にはもう誰もおらず、盛大に破壊された自然風景が広がっているのみだったのは、言うまでも無い事だろう。
その後、不可解な破壊跡があった為に、上層部では会議が行われた。
オスティア終戦記念祭の延期の声も上がったが、原因不明だらけでまともな報道にならないうえ、もう既に準備は整ってしまっているので、話し合いは警備を強化するという方向に落ち着き、その場は解散となる。
終戦二十年となるオスティア終戦記念祭は、『予定通り』明日より開催される事となった。
『《コ――――ハァァァァ・・・》』
『《・・・シュルルルゥ》』
『《クフ、フフクフフ》』
『《ギ――ギ――ギギギギ》』
『《グルルル・・・オォォォオ》』
人ならざる不気味な影を、暗闇へと忍ばせたまま。
次回、原作のあの場面に、思わぬ乱入者が・・・?