前回もいいましたが、ネギま成分は殆ど、否皆無と言っても過言ではないので、ご注意を。
では、本編をどうぞ。
建物が突然消える。
――――そんな陳腐にも程がある一言だが、実際にその光景を目にすれば言葉を失うは必至。
それが“山”……どころか山脈、大地規模なのだから、アリアドネーの女性達は間抜けな程に何もせず、皆一様に言葉すら発さず固まってしまっている。
また、不安定な体勢での一撃で拮抗させず弾き飛ばし、遠距離砲とて半端も半端なチャージでコレなのだから、パワーだけで言うなら間違いなく仁や紬を超えるだろう。
まして真正面からぶつかるなど以ての外だ。
仁は一旦呼吸を整え、ボーガス・ヴォルカーンをとにかく“移動させる方法”のみを、必死に考えた。そして、賭けに近いが方法を見つけ出す。
(頼むから下手に抵抗すんなよ……!)
仁はボーガス・ヴォルカーンの乗っている地面を周りごとくりぬくとそのまま斜めにして浮遊させ、超音速一歩手前のスピードでオスティアの外まで飛ばした。
飛ぶ力は持っていなかったのか、ボーガス・ヴォルカーンは大地乗ったまま運ばれていく。
『《ゴォォハァァ―――》』
「オイ、お前の相手ぁ俺だろうが」
『《!》』
運ばれるがままでは無いと跳び出そうとするボーガス・ヴォルカーンの後ろから、何時の間に回り込んだか仁が話しかけ、人さし指をボーガス・ヴォルカーンへ向ける。
更に招く様に二回曲げた……挑発だ。
『《ゴオオオッ!!》』
挑発に乗ったかは定かではないが、ボーガス・ヴォルカーンは叫んで飛び出して来た。 地面を粉々に砕く突貫だが、宙空でも自由の利く仁はヒラリと躱す。
『《カァァアッ!!!》』
「おわっ!? ……んなろう……!」
タダではめられるかと腕を振るい、出鱈目なパワーで爆風を起こしたが、仁を吹き飛ばのみにとどまらせた。
されど追撃もできず、ボーガス・ヴォルカーンはそのまま雲海へと落下していく。
(飛べねぇみてーだな……)
もしかしたら飛ぶ力を持っていたかもしれず、仁が言った通りこれは賭けであったのだが―――一応、上手くはいったようだ。
奴を追いかけるべく、仁も雲海へ突っ込む。
―――元から荒れ地となっている大地。
仁は着地はせずに数十cm上で止まり、ボーガス・ヴォルカーンは“着弾”という言葉がふさわしい着地をかました。
そして流れる、僅かばかりの間隙の
街の中では互いが互いに本気ではなかった事を示すように、膨大な圧力が両者から放出される。
『《……ツ、ブス!》』
「やってみな……!」
ソレはまさしく、本当の意味での“開戦の狼煙”に他ならないだろう。
内心では【喋るか喋らねーかどっちかにしろよねんどーせぇ】、と相変わらず思っていた仁。
だが、そんな意味無いグチの代わりに、挑発的な言葉で返し徐々に後ろに下がって行く。
『―――カッ!!』
それを追う様に突貫してきたボーガス・ヴォルカーンを避けて、また後ろに下がる。
ある程度そんなやり取りを終え、仁がオスティアからある程度離れたのを確認すると、速度を抑えてボーガス・ヴォルカーンへ向かって飛翔した。
『ア―――ガ?』
見え見えとばかりに迎撃しようとしたボーガス・ヴォルカーンだったが……いきなり地面が持ち上がった事でバランスを崩す。
直後に仁が神速を瞬時に叩きだして後ろへ回り込み、[飛の足場] を形成しそこを支点として蹴りを繰り出す。
フロントキックは見事に首へと命中し、反対側に造りだした[足場]にぶつける様に放った事で、挟み込む様な一撃となった。
「……ッ!」
『グギィ―――!』
流石に[足場]だからか持続時間はごく短く、蹴った方へと首は傾いたものの、いきなり回り込まれて『挟まれた』ボーガス・ヴォルカーンは、若干苦しそうな声を上げてうめく。
何も馬鹿正直に攻めずとも、弱所を狙ったり一点集中したり、幾らでも方法はある。
相手が怪力ならば、尚更の事。
「……『狭足』ってな。ちーとセコい戦法で行くぞ、オイ」
『《グホォッ……! ――――バアアアアッ!!》』
吠えるボーガス・ヴォルカーンへ地面を次々とくり抜いてはマシンガンの如く乱射し、仁本人は執拗に喉を蹴り叩いて挟み込む。
さすが化け物と言うべきか。
かなり頑丈ではあったが、ダメージが無い訳でも無く、衝撃の度に多少ふらつく。
このまま罅を入れてしまえるのだろうか?
……いや。現実は、そう上手くはいかない。
『《バグァッ………………グ、バアァァァアアアアアアァァァッ!!!!!》』
「うおぉっ!?」
しこたま首を叩かれながらも、ボーガス・ヴォルカーンは咆哮を高らかに上げ、ドーム状に広がる赤い衝撃波をぶっ放してきた。
仁はたまらず、思い切り吹き飛ばされる。
自分も後方へずれる事で威力を殺し、半ば無理矢理距離を取る。
そのまま上げた顔を勢いよく降ろし、口内から真っ赤な光球を発射してきた。
「……っ!」
飛ぶ事が出来る仁は吹っ飛んだ事も意に反さず、難なくこれを避ける。
仁は無事なものの……後ろにあった旧オスティア王都跡の元浮島一つを、その余りに小さな光球が『微塵に粉砕した』のを見て表情を険しくする。
(……あーなもん街中で撃たれたら、数秒でオスティア消えてたな、アレぁ)
『ギイィィイアアアァァ!!』
「! ……ちぃっ……」
ボーガス・ヴォルカーンが、次いで突進からの頭突きをかます。
力技での高速移動なので直線しか移動が出来ず地面がボロボロになり、その分初速も含めて恐ろしい速度を叩きだしている。
『《セキシ―――》』
「―――させるか」
『《……ギグィッ?》』
だが、仁がその突進の勢いに混ぜ[飛]の力で浮遊させて引き寄せ、『自分のみ利用できる』飛の足場の性質を利用。
自ら引き寄せている事、持続性が無い事、そしてあくまでも“足場”でしかない事で、威力を減衰させるにとどまる。
されど……確実に生まれる一瞬の間隙。
ソコを狙って打ち込まれたカウンターキックは、今まで以上の戦果を上げていた。
派手な音が上がった事からも弱所で無くともダメージを負っているのが分かる。
それでもダメージや衝撃そのものは、やはり少ない。
『《ガアアアァァッ!?》』
(……カウンターで行くか。力馬鹿相手に首ばっかじゃ時間がかかってめんどーせぇ)
しかし、尚有効なのも変わりないのだ。
先程のやり取りで新たな方法を思いついた様だ。確かに相手のパワーを逆に活かせるなら、ボーガス・ヴォルカーンにも効率よくダメージが与えられるだろう。
「
その発言と共に仁は、取るべき行動を変える。
ボーガス・ヴォルカーンの周囲を飛び回りながら、小刻みに蹴りを当てて行き、攻撃を誘発する立ち回りを優先し始めた。
鈍い音が次々響くが、やはり相手の傷は軽い。
ボーガス・ヴォルカーンにとっては牽制のジャブを利きもしないのに何度も当てられているのと同じ状況だ。
何度も何度もそれのみ執拗に繰り返されれば、我慢強くない限り必然的にイラついてくる。
『《ゴォォバアアアアァァッ!!》』
早々に我慢の限界が来たかブンブンと、矢鱈めったら腕を振りまわし始めた。
赤い光芒を引いている上、余波で地面が削れていく。駄々っ子の様な攻撃であれども一発喰らえば普通に危ない。
だが、その状況を挑発の為に逆手にとり、仁はあえてボーガス・ヴォルカーンの正面に制止する。
『《! セキシキィ……》』
(きやがれ……!)
待ってましたと拳が振りかぶられ―――が、敵はそれが“フェイク”だという事に気が付いていない。
『《コンゴ―――》』
「オ、ラァッ!!」
引き寄せて[足場]で威力を減衰させ、更なるカウンターで蹴りを打ち込む。
『《ウガ―――ガ、ァバアァァァッ!?》』
又も目論見は成功し、より一層派手な音を立てて、かっ飛ぶ拳へ引っ張られるようにボーガス・ヴォルカーンは飛んでいく。
脚部へビリビリと、逃がせなかった余剰分のパワーが伝わる。
仁も無傷ではない。押し負けた分のダメージで、脚よりか細く血が流れだす。
しかし赤い破片がいくつも舞い、それなりにダメージを与えたのは明白だ。
「まだだ……っての!!」
『……!!』
更に拳を押さえて一瞬間ばかり止まったその隙を見逃さず、仁は首へ蹴りと飛の足場の挟み撃ちを追い打ちで喰らわせる。
オマケだとばかりに『倒足』で打っ飛ばす。
受け身も取れずに、ボーガス・ヴォルカーンは次々岩に衝突して砕きながら、最後は地面に勢いよく転がった。
『コォハァァァアァ……』
(……ダメージはアレか、そこそこか……技も理解ぁしてきたしよ)
今の所ボーガス・ヴォルカ-ンが披露した技は、赤い力を纏う接近戦用の『セキシキコンゴウ(恐らく“赤色金剛”)』と、遠距用の赤色系グラデーションの光球、後はドーム状に展開した赤い衝撃波といった所。
近距離技の余波も誰も居ない更地なら気にする必要は無いし、遠距離用の技をオスティアなどにぶつけさせなければ、後は仁ならば回避するだけで対処が出来る。
―――尤も、これは単純に能力だけ見た場合。相手はもう詰んでいるかと言えばそうでは無く、一撃必殺の破壊力を持っている以上油断は禁物だ。
『アアアアァアア!!』
「!」
再度、戦闘が勃発。
ボーガス・ヴォルカーンが殴りかかってくれば仁はカウンターで弾く。
攻撃後の隙をついて跳びかかってくれば、仁は隙など無いと崩れた体勢のまま移動してカウンターで弾き飛ばす。
作業の様な一連のやり取りが何度も続き、このままいければと仁が再び挑発と誘発を繰り返そうと―――。
『《セキシキィ……ボウホウッ!!》』
「! ……チッ!」
それで上手く行くなら世話は無い。
相手は少なからず知能を備えた、最上級の偽器兵なのだから。
引っかかってなるかと走らずに上を向くと、たった数秒であの時溜めていた光球と同じ大きさの物を作り出し、緩慢な動作は何だったんだと言いたくなるぐらいの猛スピードで放ってきた。
その『赤色暴砲』の着弾地点にあった山脈、及び周辺の大地は当然とばかりに、影も形もなくなる。
どうも『声』、もしくは『息』へと限定的に力を注ぎ込んで光球を作り出しているらしく、不定形に弱い【飛】の力では着弾地点をずらす位しかできない。
加えて文字通り “力任せ” に進んでくる所為で、半端に力を注いでも意味がない為、より集中せねばならなかった。
『《セキシキボウホウ! ボウホウオォッ! ボオォォホオオォォォウッ!!》』
「グ、……こいつっ!」
『《ゴォバアアァ! ゴバァアアッ! バァァアアアッ! ボオオォォァァアア!!》』
運の悪い事に、その弱点をヴォルカーンは瞬時に理解してしまう。
好機と見るや否や、今度は溜め無しで赤色の光球を連発してくる戦法に切り替えてきた。
チャージの時間も徐々に短くなっていく。パワーの事もあり、それが必然的に今までの隙を打ち消す。
幸い、ビーム状にして薙ぎ払う攻撃は無い様だが、首から上のだけの動作は流石に速い。
また近寄ろうとしても…………
『《グバアァァァアアアアアアァァァッ!!!!!》』
「……んのやろう、またこれか!」
ドーム状の衝撃波を顔の向き関係無しに広げてくる為、攻撃出来ても回数が少なくなってしまう。
しかも相手はそれなりでは済まないほど固く、ささやかながら自己修復機能があるのか壊したときよりも負傷の程度は少し浅くなっていた。
元々がスピード特化な力が故に、脚力強化を使っても『焼け石に水でないだけマシ』な程度だ。
(だりぃ時だってのに、ネックが顔出してくんじゃねーって、めんどーせぇ……!)
光球の所為で風景の一部はボロボロどころか消え失せ、時折地面へ繰り出される拳の攻撃や腕を振り回した余波で、辺りは地面の残骸たる巨大な瓦礫だらけ。
これでは紬の時と、規模がマシだという点以外で何も変わらない。
……いや、冒頭の山脈消滅を入れれば、自然破壊の事を含めその規模すらも変わらない争いとなってしまっている。
距離が近い事もあって、時期に軍が来てしまうだろう。
何より、これ以上ヴォルカーンの調子が戻っては、地形の破壊すら止められない。
それどころか、この緊張状態が続けば予期せぬ事態をも招きかねない。
最初に考えていた以上の長丁場に対し、短期決戦を望む仁の心中へ焦りが募っていた。
迅速に終結させる方法がないか―――攻撃と回避を繰り返し、仁は考える。
『《ボウホオォォォッ!!》』
「くらうかよ……っての!」
止まった隙をついたか遠距離技を撃ってきたボーガス・ヴォルカーンへ、仁は脚力砲撃を放ちながら躱した。
続けて赤い光球を放射するつもりだったらしいその口へ……脚力砲撃『砲足』は見事に命中し口を閉じさせる。
『《ガボムッ!? …………クアアァァァッ!!》』
「おーおー……自分の攻撃が口ん中で、破裂したかよ」
上手い具合に内部で破裂した衝撃で、ヴォルカーンの顎が強制的に開く。
その様子に先までの焦りもあり、あえて意地悪く笑って見せる仁。
(…………や、まてよ?)
―――と、その光景を見た彼の脳裏に、ある提案が思い浮かぶ。
仁にしてみれば、今までの戦闘風景をちょっと思い返しただけなのだが、それが今の出来事と合わせて作戦を思いつく決め手になった様だ。
(……失敗だろーが成功だろが、自分も周りも危ねぇが……アレぁやってみる価値はあるか……?)
実際その提案を形にするには、自分の身は勿論下手をすればオスティアへ危険が及ぶ。
されどもそれに比例して、成功した時のリターンはこの上なく大きい物。
追い打ちをかけるならば、相手の勘が戻ってきている以上どの道『奥ノ手』を使っても不安しか残らないのだし、踏まえて『行使せざるを得ない』が正しいかもしれない。
決め手に欠け、己の蹴りが真っ当に通らないのならば、寧ろ選択肢は他に無いのだから。
しかして、数秒悩んだ仁は…………
「やってやる。“やるしか”ねぇ。めんどーせぇとか―――言ってられっかい……!」
豪快に空を蹴って、行動に出た。
「おらぁ!!」
真正面から顔面に一発蹴りを叩き込むと、凄まじい勢いでボーガス・ヴォルカーンから離れる。
『《ゴァ………コォォォォォオオ―――――!!!》』
最初は普通に仁の背を追いかけていたボーガス・ヴォルカーンは、追いつけないと見るやあっさり砲撃メインに意向。
しかし、距離が離れすぎている為、肝心の破壊力は余波すら役に立たない。
徐々に徐々に近づいて行くボーガス・ヴォルカーンを、バレない様に此方からも遠距離攻撃を混ぜながら、仁は更にオスティアから離れるよう誘導していく。
(ここらへんで……行くか!)
ある一定の距離までさしかかったのを見計らって、仁は恐るべきスピードで一気にボーガス・ヴォルカーンから遠ざかり、今度はある程度上空から相手が自分の姿を認識できるギリギリの速度で接近し始める。
『《コオオオォォォォォォォォォーー………………!!》』
それを見たボーガス・ヴォルカーンは鬱憤晴らしのつもりか、めり込むぐらいしっかり土地を踏みしめて上を向き、オスティアでも見せたパワーチャージを始めた。
カウンターを取られる接近攻撃よりも、遠距離の方がよいと考えたのだろう。
距離がある為にすぐには接近できず、真っ赤な光球は地響きと地鳴りを起こしながら見る間に大きくなっていく。
それは仁の眼にも映っている筈なのに、何故か速度で周りが見えないかのように仁は突っ込んでいくのみ。
「まだ……まだだ、まだ早ぇ……!」
やがて……元からデカいボーガス・ヴォルカーンの体長の数十倍はあろうかという、光の球というより力の塊という言葉が似合う砲弾が姿を現しても、仁は速度を緩める事も軌道を変える事もしない。
心なしか表情が険しくなったのと同時に、ボーガス・ヴォルカーンは一旦口を閉じて、巨大な破壊力の塊を呑み込むかのように消しさり……のけぞって後ろに傾けた体勢を前へと倒して、膨大な力を放ってくる。
『《ゴ……バアアァァ―――――》』
「!(今っ……!)……うおおぉぉぉおおっ!!」
刹那。
仁は足裏を相手に向ける体勢に変え、迷いなく―――突撃した。
空を飛び、足場を蹴って跳び、駆け抜ける。
雷にすらも追い付かん速度まで、一瞬うちに加速する。
それこそ、【飛】の力による特殊性が無ければ。そしてそれでも生じる衝撃波を抑える為“飛の足場”を周りに展開していなければ……何もかも吹き飛ばしてしまう程に。
それほどのスピードを初速無く、一瞬で叩き出した。
「ぁ……ああああぁぁぁっ!」
己の雄叫びすら追い越すその速度は、尚も天井知らずに加速し続ける。
周りの物がひどくゆっくりに見える視界の中、仁は今も含めこの戦闘で散々形成してきた“飛の足場”を、開き掛けとなっているボーガス・ヴォルカーンの顎の下に作り出す。
「ッ…………! くたばり―――やがらアァァッ!!!」
そして、脳天を超速度での突進蹴りでブッ叩き、同時に下に形成していた飛の足場にぶつけて挟み込んで、衝撃を緩和。
開いていた顎を強制的にガチン! と閉じさせる。
飛ぶ力はあくまで飛ぶだけであり、体の可動速度までは殆ど加速しない。
いくら超音速の蹴りを放てようとも、飛翔スピードより遅ければ必然、策が崩れてしまう。
仁が体勢を変えたのはこの為だったのだ。
自分以外の時間が、あたかもゆっくり流れていたような視界は蹴りの衝撃とともに消え失せ―――――
『《ゴブグブウウウゥゥゥゥウウウオオオオォォォ!!!!???》』
強引に砲撃を中断させられたボーガス・ヴォルカーンの口の中で、発射される直前で止まっていた力の塊は発射口がなくなった事で口の中で炸裂する。
……あとはもうお分かりだろう。
『《ゴボォオオオォォォアアギュゴアボアアァァァァァァァ―――――――!!!!!》』
「ぐぅおぉぁっ!!??」
口の中で盛大に爆発を起こし、その影響でボーガス・ヴォルカーンの頭はおろか、上半身の胸辺りまでもバラバラに砕け散り、肩がなくなったことで腕が勢いよくあらぬ方向にすっ飛んでいく。
未だ残っている胸から下は直立不動のままで、動いてはおらずとも不気味だ。
爆発の威力の大部分がボーガス・ヴォルカーンの破壊に使われたというのに、離れていなければ普通にオスティアまで届いたであろう大爆発。
それは瞬時に距離を取った筈の仁をも吹っ飛ばし、飽き足らず地形をさらに変えた。
「はぁ……はぁ……終わった……な」
無意識につぶやくと、仁は空中にいながら座り込む。勝者である彼の顔は、しかし厳しく晴れやかとは程遠い。
自分の力だけの勝利とはほど遠い、運任せの賭け。これでより硬い敵など出てきたなら、一体どうすればよいのか。
そして。
確かに勝ったことは勝ったのだが、オスティアへの被害は出てしまったし、加えてオスティア近くの荒野も大惨事。
元々の地形の原型などほぼ残ってはおらず、落下した旧オスティアが無事に見えるだけ、まだマシだった。
しかも自分の顔はボーガス・ヴォルカーン共々バッチリ見られてしまっている。
理由がどうあれ、政府から追われる立場になってしまったのだ。
問題はそれだけではない…………紬のこともある。
もしかせずとも、ボーガス・ヴォルカーンは彼女の持っている『原初の偽器』で操られ、送り込まれたもの。
送り込んできた理由は何か、もう準備が整ったのか―――――謎が謎を呼んでいた。
と、現時点でも謎だらけなのに、さらに謎を深める光景が姿を現す。
「なんだ……!? 影……!?」
その影がボーガス・ヴォルカーンを包み込み、何とズヌンと引きずり込んでしまったのだ。遠くからも同様の効果音が聞こえた当たり、腕も包んで引きこんだのであろう。
何も無くなった荒野に一人浮かぶ仁は、これ以上考えていても仕方ないと頭を振る。
思考するなら宿でもできるのだから。
ならば、今はこの場を離れるのが先決である。
(……せめて偵察ぐれーの理由で、あってくれよ……クッソめんどーせぇんだからよぉ……)
届くかもわからない―――否、恐らくは届かないであろう願い事を思いながら。
仁はひどく険しい顔のまま、その場を後にするのだった。
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「ハァ、ハァ……ク、“コノ体”、意外トシブトイネ……マダ、“彼女”ヲ押サエ込メナイカ……力ヲ使イキレテ、イナイネ……ハァ、ハァ……」
『《ギギ、ギ……》』
「ハァ……ウン、ソウダネ。オカゲデイイ“データ”ガ取レタヨ。デモ、『ボーガス・ヴォルカーン』ハ“死んではいないけど” 戦闘不能状態ニナッチャッタネ」
『《ギ、ギ、ギ》』
「アトモウ少し脆カッタラ、完璧ニ殺サレテ命マデgameoverダッタネ。……サテ、不安ニナルガイイヨ、仁……『[飛]の使い手』クン……ハァ……マダ、整ッテハイナイコトヲ、知ラナイママネ……フフフ」
何故死んでいないのか? それは次の話で明かされます。