空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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やっと(自分的には)ネギま要素を入れられた気がします。

それでは本編をどうぞ。


語られる事実

 

 あの後。

 街に戻り街中では騒ぎに巻き込まれるからとハルナの船へ乗った仁は、座って休んでいる所へ背中から声を掛けられた。

 

 

 

「よお、仁の兄ちゃん。何だか辛そうじゃねぇか?」

「・・・あんたか」

 

 

 声の主はラカンだった。ラカンは数歩程歩いて仁に近寄ると、彼の脚をじっと見る。 そして、何かを察したように眉を挙げると、静かに溜息を吐いた。

 

 

 

「足、痛めたか」

「・・・あぁよ。・・・っの野郎、何つー馬鹿力持ってんだっての・・・」

「俺もちょっと見たぜ。こっちでも敵の嬢ちゃん達と戦ったんだけどな、罠にはまる前にまず山々がぶっ飛んだのを見て、次にオスティアから少し離れた場所で滅茶苦茶デカイ真っ赤な爆発が起きたのも見たな」

「・・・まぁ、見えるわな」

「きっと今頃大騒ぎだぜぇ? 何せ、大破壊が起きたのに又も魔力反応皆無だからな・・・人ごとじゃねぇけどな」

 

 

 

 ぼりぼりと頭を掻きながらいうラカンは緊張感に欠けるが、今はその緊張感の無さが仁にとってはありがたかったかもしれない。

 彼のその余裕と如何にも言えない雰囲気のお陰で、仁は少しばかり肩の力が抜けた様だ。

 

 すると、背後から足音が聞こえてきた。人とは違う足音に二人が振り向くと、白オコジョのカモが不安げな顔で近づいてきている。

 

 

「回収されたとはいえよ、仁の旦那はそいつを倒してんだろ? しかもそいつが最上級だったってんなら不安材料が一つ消えた事に他ならねえじゃねえか。・・・何で深刻そうな顔してるんだ?」

「だな。兄ちゃんしかまともに相手出来る奴が居ないとはいえ、ずっと気ぃ張ってたら潰れるぞ?」

「・・・」

 

 

 

 仁は話すべきか黙っておくべきかをキッカリ十秒間考え、この二人に話しておこうと口を開いた。

 

 

 

「・・・・・いや、正確に言うなら、まだ二つ問題が残っている」

「それは?」

「一つは、まだあの偽器兵・・・ボーガス・ヴォルカーンは死んでねー。戦闘不能なだけだ」

「うそぉっ!? だ、だって旦那頭砕いたってさっき・・・!」

「偽器兵は生物であると同時に、一つの兵器でもある。生物的弱所と兵器的弱所の核を砕かねーと、死によーもねぇんだよ・・・まぁ、そっちは別に深刻じゃねぇが」

「え?」

 

 

 

 ぽかんとした表情になるカモだったが、ラカンは仁の言いたい事が分かったらしく頷いた。

 

 

 

「なるほど・・・つまり、再生に時間がかかるか、生きてはいるがもう動けないのどっちかって事だろ? 問題がどうこうって口ぶりからして、再生云々の方だろうけどな」

「あぁよ。紬の奴が何かしらの手段を持っていない限り、計画実行の際にあいつは出て来れない」

「な、なんでぃ・・・おどかすなよ」

 

 

 

 ホッと一息ついたカモは、しかしもう一つ問題が残っている事を思い出して表情をもどす。

 

 

 

「それで、もう一つの問題ってのは何なんでぃ?」

「・・・紬が、何故ボーガス・ヴォルカーンを送ってきたのか、だ。しかも俺の所じゃ無く、長ネギ達の所へ」

「言われてみりゃあ確かに変だな。普通なら、計画の一番の邪魔になる兄ちゃんを潰そうとする筈だ」

「・・・しかも、だ。操っている所為で本来の実力を出し切れていなかったのに、その奴の実力を殺したまま・・・何故か破壊行動をしやがった」

「偵察なら普通攻撃はしねえし、しても最小限だもんなぁ」

 

 

 

 今仁が言った通り、ボーガス・ヴォルカーンは操られて行動を制限されていたせいで、発揮できていた本来の実力は、彼の真骨頂であろう“絶大的な馬鹿力”のみだったのだ。

 他は知能と本能がかみ合わず、操り切れない所為かちぐはぐで、技も減ったくれもなかった程。

 

 途中、チャージが速くなったのは、ようやく慣れたからであろう。

 寧ろソレに鑑みれば、“本来の破壊力”であったかどうかも怪しい。

 

加えて学園祭の時とは違い、仁の身長は元のまま。

 且つ、力も封印の術式を説いた全開放状態で、しかも特訓により強化されていた為、相手の油断と合わせて優位に立つ事が出来たのだ。

 

 

 過程を見て言うならば、仁も相手の力を利用して破壊しただけなので、実際には実力で倒したと言い難いが・・・。

 

 

 

「問題はそこ、何故送り込んできやがったか・・・か」

「・・・偵察でも無ければ、俺を無力化する為でも無い。なら他を考えても思い当たらねー・・・謎だらけでめんどーせぇんだよ」

「ううむ・・・新・旧世界の女の事ならだれにも負けない自信があるが、俺っちも何も分かんねえなぁ」

 

 

 男三人で考えていても埒が明かないとみたか、ラカンは仁の背中を叩いて立ち上がらせる。

 

 

「それより、ほれ! ネギの奴が何か話があるみたいだからよ、もうすぐ手頃な浮遊岩のある地帯へはいるし、飛べるんなら移動できるだろ? まずは話を聞いてからにしようや兄ちゃん」

「そうだったそうだった! じゃ、兄貴に声かけてくるからよ!」

 

 

 

 そう言ってカモは走り出し船内へ消えていく。後を追う様に歩き出し、先言ってるぜと手を上げて告げたラカンに、仁は軽く手を上げて答える。

 

 

 確かに考えていても仕方ないかもしれない。なら、ネギには悪いが気分転換として、話を聞かせてもらおう。

 

 

 仁は一つ頷き、宙に浮いて船内へ入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 手頃な岩に接舷し、ネギま部・・・改め『白き翼』のメンバーを自分の前に集めたネギは、真剣そのものの表情で告げる。

 

 

 

「えー・・・僕達『白き翼』は、本日昼の戦闘を持って・・・世界滅亡を目的とする謎だらけの組織、『完全なる世界』、その残党の者たちとっ! た、戦う事になってしまいました・・・!」

 

 

 

 後半かなり失速し、肩まで落として結構落ち込んでいるネギだったが、何故か『白き翼』のメンバーのほとんどが喜んで拍手までしている。ネギの後ろの岩に腰掛けていたラカンは何処か笑っているように見え、横に浮いている仁はいつもどおり面倒くさそうな表情のまま目線のみ向けていた。

 

 

 

「何で喜んでるんですかーっ!? 喜ぶ事態じゃないんです、拍手できる事態じゃないんですよーっ!!」

「えー、別にいいじゃん! ノリって事で」

「ノリは大事アルよ、ネギ坊主!」

 

 

 

 あの後仁が簡単に聞いた説明によると、何でも仁がボーガス・ヴォルカーンを相手し遠ざかってから、再び簡易的だが交渉が行われ、それをアスナが蹴った事で結局フェイト一味と一戦交える事になってしまったらしい。

 フェイトとネギの戦闘の他に、彼の部下である少女たちともメンバーは戦い、のどかは心を読むアーティファクト『いどのえにっき』でフェイトの目的を少しだが暴きだすなど皆予想以上に善戦し、逃げられはしたものの有益な情報は得られたのだとか。

 

 

 が、同時にこれが元で、世界を滅ぼす事を最終目的とする『完全なる世界』という組織の残党と、本格的に敵対する事になってしまったのだ。

 

 

 眉をひそめて俯きぎみにメンバーの方を見て、ネギは申し訳なさそうに口を開いた。

 

 

 

「皆さん、及び仁さんには謝らないといけないと、僕はそう思います。何せ、相談も何もせず勝手に戦う事を決めてしまったのですから・・・本当に・・・本当に・・・ごめなぼっ!?」

 

 

 

 いきなり背後に現れた大男の、頭上から振ってきた拳の直撃を受け、ネギの謝罪は中途半端に終わる。その大男を出現させたらしいハルナが、スケッチブックをしまいながら呆れた様に苦笑いして返した。

 

 

 

「もう、だからそう言うのは良いんだって、とっくに決着付いた話でしょ? ネギ君。それに、二か月前の事件から、皆は何もせずただボーっとしていただけじゃあない。ちゃんと覚悟を決めてきてるんだからさ!」

「それに、交渉蹴ったのは神楽坂だしよ。先生が全部謝る事でも無いだろうに」

「あ、いや~・・・何かむかっと来ちゃってさぁ。あいつ何か回りくどく文句かイチャモンかを、ずっとネチネチネチネチ! じれったいのなんのって」

 

 

 

 思いだしてイラついているのか、明日菜は頬を膨らませて怒った様に眉を吊り上げ、でも早計過ぎたカモという思いはあるのか、次いで後頭部をごまかしの様に掻いていた。

 

 その後もネギは、手を出さないと誓えば全員無事に帰してやる、という事を言われた旨も伝えたが、テロリストの要求をそのまま受け取ってしまうのは有り得ないとメンバーが全否定。・・・刹那は、ネギ同様鵜呑みに仕掛けたらしくススス・・・と後ろに下がっていたが、ふと何かを思い出したらしく、スーツのポケットから魔導具を取り出した。

 

 なんでも、その鷹を模した天秤の様なオブジェは、契約した物の言葉を強制順守させるもので、もし要求を受け入れていればフェイト達と相対するどころか、自分の父であるナギをも追えなくなっていた可能性があるのだとか。

 

 

 その言葉を受けて一同の眼はアスナに向いた。

 

 

 

「じゃあ、アスナの判断て最善策だったって事じゃん!」

「おお! なんや、すげーやんアスナねえちゃん!」

「エラいアスナ! 株上がったアル!」

「今回に限っては天才的やな、アスナ!」

「い、いやぁ~、それ程でも」

 

 

 

 ワイワイと盛り上がる一同の後ろで、その様子を静かに眺めていたラカンと仁だったが、唐突にラカンは仁の方を向いて話し始める。

 

 

 

「ちょっといいか、仁の兄ちゃん。言い忘れていた事があったんでな」

「・・・言い忘れだ?」

「おう。この船が岩場に来る前に、偽器兵の話をちょこっとしてもらったろ? その事で思い出した事があってな」

「・・・思い出す?」

「まあ、参考にも何もならんかもしれんし、逆に謎を深めるかもしれないが・・・言わんで置くよりマシだな。俺もいい加減知りたくて仕方ないんだ」

「・・・それで、言い忘れたってーのは?」

「それは―――」

 

「ラカンさん、何か知りませんか?」

 

「ん?」

 

「しっかし、もし三番目ってのが番号付けやとして、あんなのが4,5人も居ったら・・・」

「ピンチに+大惨事ですね~・・・怖いぐらいに」

 

 

 

 思いだした事をラカンが話そうと少し仁に近付いたのと同時に、ネギの方から偶然だが遮る様な形で問いかけがかかってきた。

 

 見ると、空中に『テルティウム』と読むラテン語が書かれており、これは日本語に直すと三番目という意味になる言葉らしいと、小太郎とのどかの会話で分かる。

 

 ラカンは仁へちょっと待ってくれとジェスチャーで伝えてから、ネギの質問に対して不敵な笑みと共に返した。

 

 

 

「フ・・・それよりも、だ。もっと面しれえもんがあるんじゃあないか? なあ、のどか嬢ちゃん?」

「あ! そうでした! えっと・・・」

 

 

 

 ラカンの言葉を理解したのどかはリュックを探り、石化してはいるが内容はしっかり記されている『いどのえにっき』をだし、最初にもあげたフェイトの目的を僅かながら聞きだせた事を改めて話した。

 

 名前よりもそっちに気が行ったらしいネギ達はラカンから意識を外し、何やらえにっきの見た目だの内容がどうだので、またもや盛り上がっている。

 

 それを見ながらラカンは酒を飲み、仁へ言いかけていた言葉を口にした。

 

 

「待たせたな・・・で、偽器兵の件で思いだした事だが・・・」

「・・・」

「記憶が間違いじゃ無けりゃな、俺―――いや俺達『紅き翼』は、その偽器兵らしき化け物と“戦った事がある”」

「・・・何!?」

 

 

 

 驚愕に目を見開く仁に、笑みを消したラカンは酒を又一口啜って、仁が気を落ち着かせる為かコーヒーをのんだのを見てから、言葉をつづけた。

 

 

 

「勿論、これ以上ねぇってぐらいコテンパンにやられたがな。特にアイツの奴の悔しそうな表情と言ったら・・・『紅き翼』全員なら兎も角、ナギがマジでボロ負けしたのは、後にも先にもあの一回だけかもしれん」

「・・・よー生きて居られたもんだな」

「運が良かったんだろうなぁ、後から変な穴が開いてそいつを飲みこまなきゃ、マジでニ、三人は死んでたかもな。詠春の刀に罅入るわ、ガトウの無音拳弾き返してくるわ、アルの重力魔法でも動きが止まらねぇわ、挙句の果てには奴の千の雷も俺の拳も利かねぇわで・・・」

「・・・・・」

「詳細は後で伝える・・・それより今は、“この世界の”ネタバレをしとくべきかもな」

 

 

 

 横目でラカンが見やっている方を仁も向くと、石になったページを見て自身もその石の如く固まったネギが、他のメンバーに詰め寄られてページをくしゃくしゃにしながらも、追撃をかわして必死に隠しているという一幕が見えた。

 

 

 本日三度目の大騒ぎを起こす彼等の方へラカンは歩いて行く。

 

 

 

「うーっし、お前ら。『完全なる世界』と対峙して、しかもここまで来たからにゃ仕方ねぇ。俺様も少しネタバレしちまうことにするぜ」

 

 

 

 言いながら何かの機材を用意し始めるラカンと、それを手伝う『白き翼』のメンバーを見ながら、仁はラカンの話を頭の中で反芻するのであった。

 




 感想お待ちしています・・・といっても、こんな小説に入れようもないですが(泣


 
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