それでは本編をどうぞ。
機材準備が終え日が暮れた頃、用意された機材の一つから光が出て、暗闇を利用して空中に映像を映し出した。
ラカンが用意した映画の様なフィルムの内容、それはネギの父親で魔法世界の英雄でもある男・ナギとその仲間達『紅き翼』の、言わば大戦中の実話そのものの冒険譚だ。
・・・ちなみにタイトルは『紅の翼戦記(アラルブラサーガ)~旅立ちのラカン~』。そして、ネギの知らないナギの過去に迫る話の筈なのに、何故だかタイトルもセンターもラカンだった。
「おっさんが主役かよ!?」
「ネギ君のおとーさんもっと見せてよー」
「でかすぎだっての、うぜぇ」
「黙って見んかーい!」
「・・・めんどーせ」
かなりひどい話になるが、仁は紅の翼や彼らの過去にはあまり興味が無い。それは、偽器兵の話を聞いたからというのもあるが、単純に元から気にもなっていない、という理由もあったからだ。
ネギ達を助けてくれと近衛右門から依頼されてはいるが、だからといってそのネギが興味を持っている物を一緒に見る道理も義理もなく、何処で買ったか本を読みながら、話半分に聞く様に時々横目で見ている。
内容はまず、ラカンとナギ達の出会いから。
森林の中の巨岩近くにキャンプを張ったナギ、詠春、現・クウネルことアルビレオ、そして少年の様な人物ゼクトは、夕食にと鍋を用意し肉を野菜を醤油につけて食べていた。そこに、鍋を跳ね上げて大剣が命中する。
これを放ったのは当然ラカンで、彼等を無力化して欲しいとの依頼でナギ達と接触したラカンは勝負をしようと崖の上から堂々言い放ち・・・直後にひっくり返った鍋が直撃+食べ物を粗末にされた事で怒った詠春がラカンの剣をバラバラに。
その後、流れる様でいて激しくもある、神鳴流剣術でラカンと渡り合うものの、何処で仕入れたかラカンがカプセルを投げ、魔法具か何かかそれが四人の女性に変化したのだ・・・一人、保険の為か子供の様な女性が混ざっていたが、とにかく作戦ははまったらしく詠春は顔を真っ赤にし目に見えて動揺。
そこにガツン! と一撃喰らわされて哀れにも倒れた。
にやりと笑って勝利の一言をラカンが口にした・・・その瞬間、ラカンの居た地点に雷が炸裂する。
雷を放った男・ナギは、手を出すなとアルビレオとゼクトに言い放つと、ラカンとの一対一の勝負を開始した。
戦いは十三時間続けられ、規模や状況こそ仁と紬には及ばぬものの、それでも充分・・・どころか度を越してかなりハタ迷惑な程に環境破壊しながら、結果は引き分けで終わる。
そこでいったん映像は途切れた。
「・・・とまぁ、この後何だ噛んだあって俺も『紅き翼』に入り、戦争も終わってめでたしめでたし・・・ハイ! 過去話終了だ!」
「早っ!? 早過ぎやおっちゃん!」
「ガバッとはしょりすぎだ! もっと段階踏めよオイ!?」
「せめて大戦時エピソードの一部を話すとかさぁ!」
「いやさ? やっぱり長ぇしハズいし止めにしようぜ」
「何も明らかになってねーのにか!?」
ナギや詠春の実力に感心したり(呆れられてもいたが)、文句垂れ流しでガヤガヤもめた挙句、そこから先は早送りで過去を紹介する事になった。
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場面は変わり約二十年前の大戦当時。
小さな
オスティアと呼ばれる地の奪還が主な目的らしいヘラス帝国は、二度の攻撃を仕掛けた後、連合の隙をついてワープ攻撃を仕掛け、グレート=ブリッジと呼ばれる橋型の巨大要塞を陥落させてしまった。
しかし、此処で登場するのがナギ達『紅き翼』。一度は追い遣られていた彼等だが連合の危機に再び戦場へ復帰し、小競り合いからグレート=ブリッジの奪還まで大活躍。
連合は遂に帝国を押し返すことに成功する。又その時の士気そのままに攻め戻し、帝国領内まで進行した。
ガトウやタカミチといった新たな仲間も得て、ナギ達も連合もさらに勢いづく。・・・しかし、まだ問題は残っていた。それは魔法世界が、 “戦を納めようとしてもまた復活させてられしまう” 状況にあったからだ。まるで、何者かが世界を滅ぼそうとしているかのように。
主な目的や正体は分からず、謀略を繰り広げる名前しか知らぬ組織『完全なる世界』。そんな改善困難な状況の中で、ナギ達は連合の本国、メガロメセンブリアにてさらなる協力者を得る。
元老院議員の一人に初回されたその人物は、帝国と連合に挟まれて存在する国・ウェスペルティア王国の姫、アリカ王女であった。彼女もまた戦争そのものを終わらせようとしたが、力及ばす失敗しナギ達に協力を求めてきたらしい。
その後、必死の調査やナギの下部組織潰しの際の証拠品漁りの甲斐あって、メガロメセンブリアの№2すら『完全なる世界』の手先であることを突き止めた。
早速元老院議員の一人・マクギルに連絡し、弾劾手続きを送る為ナギと証拠品を持ってくるように言われ、夜間を狙って言われた通りにナギを連れ証拠品を持って、ラカンとガトウも加えてマクギルの元へ向かう。
・・・が、何故かマクギルは言動が連絡時とはちぐはぐで、妙な違和感を残す言動を取った。
ガトウが首を傾げ、再び発言しようと一歩前に出た。すると、ナギが何の脈絡も無く手を前に出し、直後マクギルの頭に火炎弾を放ったのだ。勿論、ガトウはおろかラカンも慌てたが・・・燃え残った後から現れた者を見て、ナギの行動の理由を知る。
下から現れたのは、老齢のマグギルとは似ても似つかぬ若い青年。彼は自らを『完全なる世界』の幹部と明かし、何とマクギルの声をまねてナギ達が裏切り者だという嘘の連絡を伝えてしまった。そして現れた同じく幹部らしい二人の男と共に魔法を放つ。
ナギ達は何とか対抗して退け逃げ出したが、お尋ね者として追われる身となってしまい、これまで通り動けなくなった今、まずはヘラス第三皇女と接触しに行ったアリカ王女を救出する為、夜の迷宮へ向かう事に決めた・・・といった所で又映像は途切れ、一旦トイレ休憩だと皆に促した。
「おいおい、何か興味なさそうだな、仁の兄ちゃん」
「・・・俺とぁ関係かんけーねーからな。この話」
「みんなお前みたいに興味持ってなけりゃ、こっぱずかしい話をせずとも済むんだがなぁ・・・ま、もういいか。それよりも・・・お前さんも興味ある話はあるから、映画全部終わっても残っててくれや」
「・・・あぁよ」
何時の間に用意していたかコーヒーを啜り、仁がそれを半分まで飲み終えた辺りでネギたち全員のトイレ休憩が終わり、映画鑑賞は再開される。
迷宮に辿り着いたナギ達は敵兵たちを容易に蹴散らし、捕縛されていたアリカ王女と、同じく捕らえられていたヘラス第三皇女であるテオドラを救出し、再び戦いの地へと赴く事になった。
流石に世界全部が敵だからぶっ飛ばしてしまおうという訳にもいかず、本当の敵である『完全なる世界』を特定して潰したり、理解者と味方を増やして外堀を埋めていく作業をしばらくの間『紅き翼』の面々は続ける。正確には、アリカやテオドラにアルビレオといった頭脳労働担当が特定や理解を担当し、ナギ達は敵だと分かった者達を全力で排除する。
六ヶ月間の各国との和解と『完全なる世界』との死闘の後、ついに敵対組織のアジトを突き止めた『紅き翼』、及び帝国と連合そしてアリアドネーの混成部隊は、不気味なほど静かのその地 “墓守の宮殿”へ総攻撃を掛けるべく一斉突入。
ナギ達が追われる事となった原因を作った青年と残りの幹部達が『紅き翼』の面々と対峙し、混成部隊の雑魚散らしの後押しもあって、皆全力で幹部達と激突し、結果見事に打ち破った。
・・・が、まだ終わらない。
『完全なる世界』のトップであり、幹部達からは“造物主”、或いは“始まりの魔法使い”と呼ばれる、黒幕中の黒幕が不意打ちで現れ、本気バトルにより万全では無かった『紅き翼』メンバーの内、ラカンと詠春を戦闘不能に、残りメンバーにも決して軽くは無いダメージを負わせたのだ。
そんなメンバー全員が満身創痍な状況の中。
アルビレオの全魔力で傷をほんの少し直して貰ったナギと、一番傷の浅かったゼクトが立ち上がり、ラカン達が止めるもここで踏ん張らねば世界がほろぶと反発。
結果、そのまま二人で飛び出していき、“始まりの魔法使い”へ挑んでいった。
勝気は薄いその戦いに・・・何とナギは『勝利』してしまった。
勿論無傷とはいかず、彼をかばった為かゼクトの死を持っての勝利ではあったが・・・とにかく勝ちを得たのだ。
その後、儀式により膨れ上がった世界を滅ぼす光球を世界中人々の力で止め、泥沼の大戦と『完全なる世界』との戦いは幕を下ろす。
・・・こうして、ナギは世界に知らぬ物が居ない程の英雄となり、彼の仲間たる『紅き翼』の名も、世界全土に轟く事になった・・・世界は、平和を取り戻したのであった。
「・・・とまあ、こういう訳で・・・めでたしめでたしって事だな」
「「「おおぉーーーっ!!!」」」
映画を見終えた『白き翼』のメンバー達から、歓声や拍手、口笛まで上がる。
「マジで世界救ってるし!」
「すっげぇっ! すっげえやん! おっちゃん達!!」
「ホント、マジもんの英雄だったね!」
「絶対に無理と言われたラスボスに勝つとは・・・」
「ナギさんめちゃチートアル!」
「というかー・・・コレどうやって作ったんですかー?」
「こっちの世界にゃな、人の記憶から映画作る機械があるんだよ」
「嘘!マジ!? めっちゃ欲しい!!」
興奮冷めやらぬどころか、一部さらなる興奮を呼んでいるまでの騒ぎになり、船の上は正しくどんちゃん騒ぎになっている。
そんな中で鼻息荒く、このかとハルナと和美がラカンに詰め寄る。
「映画にアリカ姫っておったよなおっちゃん!」
「ナギさんとアリカ姫ってデキてたの!? ね、如何なのおっちゃん!?」
「ひーみつーぅ」
「えー? いいじゃんそれぐらいさぁ!」
ラカンのからかいにもめげず更に詰め寄る三人や、映画の感想を言い合っている小太郎達を見ながら、アスナが呆れの溜息を吐きながらも、感心したといった感じで頷いた。
「ネギ、あんたのお父さん本当に英雄だった――――」
「ぐすっ・・・ずずっ」
「ってうおっ? だ、大丈夫ネギ? ってか何で泣いてるの?」
「いえ、なんか感動しちゃって・・・お父さんは、本当に『立派な魔法使い』だったんだなって・・・こうやって、世界を救ったんだって」
「おうよ、ネギ。ま、奴が活躍するのはその後十年間だけどな」
「でもさ! ハッピーエンドで終わったじゃん!」
そんなお祭り騒ぎで気分上々なムードの中、ハルナがハッピーエンドで終わったじゃん! と口にした瞬間、仁がふいに振り向いて口を開いた。
「・・・ハッピーエンド? アレだろ、んな訳あるかって・・・」
「へっ? ハッピーエンドちゃうん?」
首を傾げるこのかに対し、千雨は不敵に笑って同意した。
「だな。ハッピーエンドだったら私達が今こんなに苦労してないっつーの。結構はしょってるしな」
「おっ、さすがチサメ嬢ちゃんだな。仁の兄ちゃんも、中々察しいいぜ?」
「え? えっと? どういうと事なの?」
楓や和美、小太郎等は察したようだが、ハルナやのどか達はまだ分かっていない様子。彼女達の為に、千雨が簡単に説明する。
「実際は戦争後にも問題が残ってたって訳だ。ゲームじゃあるまいし、悪の親玉倒してすぐ世界平和って訳にはならねえよ。その問題を解決する為に、行方不明になるまで『立派な魔法使い』であるナギは世界をめぐったって訳だ。オスティアの事も全部切られてたしな」
「なら・・・つまり、最後の残った問題が・・・」
「そう、『完全なる世界』残党・・・あいつらって訳だ、ネギ」
簡単に終わらない根深い問題。
それを実感した皆はただ黙り、自分達が直面している問題の大きさを改めて実感するのであった。
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機材を片付け終わった後、何やら用があるらしく貨物室まで、ネギ達『白き翼』メンバーは向かった。
一気に静かになった甲板の上で、二人だけ残った仁とラカンは、ラカンが新たに用意した小さな機材を前に、会話している。
「さて、今からもう一つ映像を映すが・・・まあ、ネギの坊主や嬢ちゃん達には見せ辛いものでな。仁の兄ちゃんなら、内容は分かっていると思うが」
「・・・偽器兵との戦闘の記憶を、映画になおしたってか」
「その通り」
口で語る前に見せた方が早いと、ラカンはこの分も映画を作っていたようだ。・・・作成代として幾らかドラクマを取られたが、仁以外には見せても意味が無いのか、意外と値段が安かったのは余談である。
「その紬って奴の計画でコイツが出てくる可能性もあるから対策にもなるし、映像から謎だけじゃ無くて謎解明の答えも出るかも知れねぇし、見といて損は無い筈だぜ」
「・・・あぁよ」
『紅き翼戦記(アラルブラサーガ)』とは違い、単なる黒一色の場面から始まって、派手なBGMも無い。恐らく、記憶をそのまま抜き出し早送りも何もせず、編集も行っていないのだろう。
やがて黒一色の画面が切り替わり、スクリーンに映し出される事となった・・・『紅き翼』と“偽器兵”の戦い、その全容が。
次回、魔法世界の最強集団『紅き翼』 VS 独器世界からの異邦獣[偽器兵]です。