空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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 ナギやラカンがマジでボロボロになるので、ラカンチートやナギ最強を信じて疑わない人はご注意を。


個人的な事ですが、偽器兵のような半獣半機という設定は、かなり大好きだったりします。そう言った者が敵であれ味方であれ登場する漫画は、結構持っていたりします。



 それでは本編をどうぞ。




“青” の圧倒

 とある遺跡跡。

 そこに『紅き翼』のメンバー達は居た。ガトウにタカミチ、アリカやテオドラも居る事から、状況は『完全なる世界』により連合と帝国を敵に回された後だと分かる。

 

 

 

 大勢の人間の叫びが聞こえ、炎に水に氷に風にと様々な効果音が瞬間、 雷鳴が轟いて全てを掻き消してしまった。

 数えるのも億劫なぐらいの『完全なる世界』構成員達を前に、しかしナギは怯む事もせず堂々と立っている。

 

 

「へへっ、如何したお前らぁ!? 威勢良くかかってきたわりには弱ぇじゃねぇか!!」

「……何を言うとるか、お主が強いのだ」

「あったり前よ!! 何そ俺は最強無敵の魔法使い! ナギ・スプリングフィールド様だぜぇっ!」

「はぁ…………やれやれ」

 

 

 杖を片手に叫ぶナギへアリカが突っ込みを入れるも、ナギは更に増長して超えたかだかに最強を叫ぶのみ。

 

 

 

「全くあのバカは。こいつ等が雑魚だから調子に乗っていられるんだと何回言えば」

「まあ良いではないですか、楽勝出来るに越した事はありません」

「そうじゃの」

「だが、やっぱりバカってのは拭えないぞ……アイツも大概だが」

 

 

 詠春とアルビレオ、ゼクトの会話に入ってきたガトウは、迫ってきた一団を拳の居合い抜きにより拳圧を飛ばす『居合い拳』により無力化して、ある一方向を指差した。

 

 

「オラオラオラオラ!! もっとかかってこいやぁ!!」

「ひ、ひぃぃぃいい!?」

「ナギといいラカンと言い、化け物揃いじゃねぇかあっ!!」

 

 

 そこには、ドデカい大剣を放り投げた挙句、気の弾丸を力任せに放つラカンの姿があった。

 

 

「お、やるじゃねぇかジャック、俺も行くぜ! ……えーと、計約に従い我に従え高殿の王、来たれ巨神を滅ぼす燃ゆる立つ雷霆、百重千重と重なりて走れよ雷――――オラ行くぜっ『千の雷』!!」

「ぐぎゃああああぁぁっ!!」

 

 

 続いてナギが、電撃最大規模の古代語呪文で彼の特異な魔法、千の雷を放って辺り一帯の地面ごと『完全なる世界』の構成員らしき者達をふっ飛ばした。

 

 

「神鳴流奥義……雷鳴剣!!」

 

 

 詠春の刀で鎧ごと斬られ武器もバラバラ、止めとばかりに雷の如き斬げきを喰らわされ、

 

 

「一人も逃がしませんよ」

「そぉら! 喰らうがいい!!」

 

 

 アルビレオの重力魔法で動きが取れず潰され、ゼクトの有り得ない量の“魔法の射手”でまたもや吹っ飛ばされ、状況は完全に『紅き翼』の独壇場となっていた。

 

 

 実を言うと相手方もそこそこ強い者達が集まっているのだが、ナギ達の前ではその程度の強さをもっていても雑魚同前。

 

 次々と宙を舞い、地面にたたき伏せられ、逃げ惑う彼等が、ちょこっと可哀そうになってくるぐらいだ。

 世界の破滅をたくらむ彼等に同情などしては行けないと分かっていても、ある意味で同情せざるを得ない程に。

 

 

 

 数十分とかからず半分以上撃退され、残るは後半分以下となった。

 圧倒的な実力差を見せつけられた為か、剣や杖を構えるも弱々しい構えからして、逃げ腰になっているのは明白である。

 相手方にも戦艦らしき兵器は存在していたが、今は一つしか存在せずしかも半壊状態。

 

 人数差のみあげれば『紅き翼』は負けているが、そんなもの『完全なる世界』にとっても負け惜しみにすらなりはしない。

 

 

 既に先の結果など見えたこの戦いは、勿論の事『紅き翼』が余裕で勝利し、『完全なる世界』の勢力をまた一つ消し去り、力をそぐことに成功して終わったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『《シュルルルルゥゥ―――ルルルゥ……》』

 

「ん?」

「…………ぬ?」

 

 

 

 ―――――否、成功して終わる『筈だった』。

 

 

 ふと聞こえた奇妙な鳴き声に、ナギや『紅き翼』メンバー、他気付いたらしい人間が振り向くと、そこには途轍もなく奇妙(・・・・・・・)な生物が居た。

 

「なんだ、ありゃ? ゴリラ?」

「いや、頭が鮫とかいう生物に似ておる様に、童には見えるが……?」

「何かよお、旧世界のジェットエンジンとか、排気口みてぇなもんが付いてねえか?」

「何とも奇妙な生物ですね、生物と機械の中間の様な……」

「色も真っ青じゃの。一応、白い部分があるぐらいか?」

「ああ。寧ろ、青色以外が何処にもないと言って良いかもな」

「魔法世界に、あんな生き物が居たのか?」

 

 

 ナギの言うとおり、体は筋肉の量を数倍増しにしたゴリラの様な体で、しかし頭はアリカ姫が呟いたように鮫の様な形をしている。

 

 ジェットエンジンやターボチャージャー、更には排気口の様な近未来的な加速装置とも言える機械。

 それらが、それこそラカンが首を傾げるほど大量に、体中に埋め込まれたり付けられたりしており、アルビレオの呟きは正に的を射ている。

 

 生物には有り得ない造形と、生物でも有り得ない程の青系統で造られた体は、ガトウや豊富な知識を持っているゼクトの眉でも、大いにしかめさせる。

 どの生物とも違う特徴を持ったそれは、日頃より落ち着きのある詠春にすら、戸惑いの言葉を溢させるに十分であった。

 

 

 そんな謎の生物が戦の最中にいきなり登場すれば、誰だって動きを止めてしまうだろう。

 

 

 

「な、何だコイツは……新兵器か?」

「でも聞いたこと無いぞ」

「末端には聞かされてないってのか?」

「……何か不気味な奴だ」

 

 

 『完全なる世界』構成員達もこの生物についてはサッパリらしく、皆口をそろえて知らないと呟きあっている。

 一体いつ現れたか、何が目的か、謎だらけな生物。

 その生物はゴリラの様でいてまた違うような姿勢で待機していて、不気味なほどに動きを見せない。

 

 

 長い様でいて短い様でもある沈黙の時間に耐えきれなくなったか、『完全なる世界』構成員中の一派が武器を振りかざして、真っ青で奇妙な化け物へと掛かって行く。

 

 

「『紅き翼』の連中だけでも厄介立ってのに、これ以上厄介を増やされてたまるか!」

「ご退場願うぜ化け物!!」

 

 

 その言葉を皮切りに、次々と呪文を唱えたり気を集中させて、化け物へとおどりかかって行く構成員たち。

 

 

 

『《ルルル…………ドルルルゥ》』

 

 

 と、化け物がゆっくり彼等の方を振り向いた――――刹那。

 

 

「へいっ?―――ぼ」

「びゃ」

「は? なに言……」

 

 

 

 断末魔を発する間もなく。

 呪文を唱えていた魔法使いも気を纏って突っ込んでいった兵士も、先程まで立っていたのが嘘かの如く何時の間にやら、『ブツ切り代にバラバラ』にされていた。

 同時に爆風が吹いて、飛行機が不時着した様に地面が深く抉れる。

 

 

「な、なにが……何がおこ」

「へひ!? ひやあぁぁあ―――が!」

「まま、またきt」

 

 

 最後まで言い切ることなど到底できず、一直線に青い光が走ったかと思うと穴だらけにされ。

 爆風が吹いてそれがあっという間に通り過ぎたかと思うと千切られ、反撃しようと全方位に一斉攻撃した瞬間全身ズタズタにされ。

 ……何が起こっているかも、到底理解できない。

 

 地面も抉られるわ穴が開くわで、同じ形を保っている時間が数秒あるかどうかだ。

 

 しかし理解できていないのは『完全なる世界』だけではなくナギ達『紅き翼』も同じだった。

 

 

「何が起こってんだよ! 見えねぇ、全く見えねえぞ!」

「青い光しか見えん!? 化け物は何処に行った!?」

「筋肉達磨見てぇな身体つきのくせに何つースピードで動きやがる!」

 

 

 一応、何かが動いている、青い光が本当に走っている事は認識している。

 が、あっちで十数人に大穴があいて飛んだかと思うと、また別方向で十数人が横真っ二つに千切られ、今度は彼等のすぐ傍でグチャリと潰される。

 

 移動した後に吹いている衝撃波による風も、青い光や残像も何かが通った後なのはわかるのだが、同時に起こったりタイミングが遅れたりと関連性なくバラバラに起こる。

 その為、もはや何が何だか分からない。

 

『シュルルルルオオォォオオオォォォォ―――――』

 

 

 血が噴き出し肉片が飛ぶ、あちらこちらで地獄絵図を作り出していた真っ青な化け物は、ふと集団から離れた位置で立ち止まると、空中にいくつもの青い光の球を作り出した。

 LEDやイルミネーション、アニメのエフェクトの様な透き通った感じは全くない。

 絵具の濃い青で、無理矢理“光”を表現した様な光球。

 その青色光球が同時に一回り大きくなった……その時。

 

「お前ら!! 早く伏せろっ!!」

「わ、わかっ―――うおおっ!?」

「何…………ぐおっ!?」

 

 ナギは何かを感じ取り、皆に切羽詰まった声を掛ける。

 ナギの言うとおり『紅き翼』全員が地面に伏せた瞬間、『恐怖』とも似た感触が彼等の体の傍を横切り―――――

 

 

「ぎゃっ!」

「ぐえおぉっ!!」

「いぎあぁっ!?」

「きゅ、急に人がうたれ―――」

「ひ!? また!?」

「何が起こってんだよおっ!?」

 

 残っていた殆どの『完全なる世界』構成員を“何か”が打ち抜いて穴をあけ、地面にいきなりクレータが刻まれる。

 直後に気の所為かと思う程素早く青い光がままたいて、銃とは違う強烈な発砲音が響き渡る。

 

 

 恐らくは、先程造り出した青色光球を撃ち放ったのであろうが、発砲音すら遅れるその速度は見える見えないの次元では無い。

 それこそ発射と着弾がほぼ同時(・・・・・)と言っても過言ではないぐらいに。

 

 もう状況など顧みていられないと逃げ出した残りの構成員も、近接攻撃か光の球かは分からないが、今までの構成員たちと同じ末路をたどったのは言うまでもない。

 

 残っていた最後の戦艦すら、穴だらけになり落下していく。

 

 この光景を見ていたナギ達も、当然心中穏やかではいられなかった。

 

 

「オイふざけんじゃねぇぞ!? どんだけ速ぇんだよあの球は!!」

「まさか軌跡すら見えないとは・・・!?」

「加えて威力も馬鹿にならん! あやつ、さっきと言い反則にも程ある!」

 

 

 エンジン部を稼働させているのかそれとも唸っているのか。

 化け物の方から頻りに聞こえる不気味な音は、さながら死神の足音のようで、『紅き翼』のメンバー達の余裕などとうに消えうせている。

 

 

 化け物から感じる―――『死の概念そのもの』にも似た、異様な圧力を受けて。

 

 

「姫さん、下がってろ……。こいつ、最強無敵の俺様でもヤべえかも知れねえ」

「……すまん」

 

 

 何時もならアリカ姫は妾も動けると突っ張る場面なのだが、化け物との圧倒的な力量差を感じたか、素直に戦闘職達に任せるべくひく。

 

 しかし、アリカ姫が背を向けナギ達が一歩踏み込んだ瞬間、又もナギは叫んだ。

 

 

「全員防御しろ! 早―――ぐはっ!?」

 

 

 ナギの命令直後に、なんとナギ本人が空高く跳ね飛ばされた。

 後から遅れて障壁が展開されるが、落下の衝撃を和らげることしかできない。

圧倒的スピードに一同は数瞬閉口してしまうものの、何とかアリカ姫を安全圏内へ逃がす事は出来た。

 

 

「ナギ!! ……く、おおおっ!!」

「このっ―――斬鉄閃!!」

 

 

 ガトウが無音拳で、詠春が斬撃を飛ばして化け物と応戦する。

 だが、見えない相手に当てる事など出来ず、当たったと思ってもそれは残像だったりと、彼等の攻撃は尽く回避されていた。

 

 

「くそっ! だから速過ぎるんだっての!!」

 

 

 愚痴りながらラカンは戦艦でも切るのかと言いたくなる程デカイ巨大剣を、アーティファクトの力で作り出す。

 

 

「高速移動など、させません!」

 

 

 咄嗟にアルビレオが止まっていた青い化け物に重力魔法を掛け、動けなくした。

 

 

「ナイスだぜアル! 喰らいなぁ…………斬艦剣だああぁぁぁっ!!」

 

 

 隕石でも落ちたかという程の衝撃と、爆弾でも炸裂したかといえる程の気の爆発が起き、青い化け物が作った者よりも十数倍大きいクレーターを、巨大剣を投げつけた威力により形作った。

 

 これなら少しは利いたか。そう思いながらも次の剣を作り出してラカンは構える。

 

 

「ぐおおおっ!? このやろ、いやどこにぐぇっ!?」

「重力魔法を掛けたのに、速度が変わらない……しまっ うあっ!」

 

 

 直後にラッシュ、次いでラカンが振り向いたと同時に回り込んでの強烈な一撃。今までどんな攻撃にも踏ん張って気合いで耐えてきたラカンが、それこそ有り得ない程転がって行く。

 

 余りにアッサリ重力魔法を抜けられ、驚愕したアルビレオの隙を着いたかの如く又一撃。

 否、障壁を破ったラッシュ音を含めれば、十数撃。

 

 

「くそっジャック、アル! ―――んなろうがぁっ!!」

「止めろナギ!むやみに突っ込むな!」

「あんな馬鹿速い奴に正面から突っ込むなど自殺行為じゃぞ!」

「ならどうしろってんだよ!?」

 

 

 その文句とも取れるナギの問いに、詠春が止まっている青い化け物から目を離さず返す。

 

 

「策を立てるしかない……うぐっ!? がはあっ!?」

 

『《ドルルゥ……シュルルルル》』

 

「な、詠春!!」

「嘘だろ“入り”も“抜き”も無しか!?」

 

 

 だが警戒していたにもかかわらず、気の防護膜も易々とラッシュで抜けられて後ろに飛ばされる。

 そばに立っていたナギとガトウも、ゼクトも全く反応できなかった。

 

 

「クソったれがあっ!!!」

 

 

 千の呪文の男と称えられ、最強無敵を自負するナギの腕はやはり伊達では無く、何時の間に唱えていたか瞬時に『雷の投擲』を幾数も作り出して次々投げつける。

 

 

「当たれ! 当たれってんだよおっ!!」

 

『《ドルル、ドルルル、シュルルルゥ》』

 

「この! オラオラオラ! オラあっ!!」

 

 

 嘲笑っているのか、当たりそうで当たらないという避け方を繰り返す青い化け物。

 ナギは仲間を軽くあしらわれた事もあって、段々と頭に血を登らせていく。

 

 

 

「当たれって言ってんだろうがあっ!! ―――!? 消えて」

「ナギ!! 横だ!!」

 

『《シュルルルゥゥウ……》』

 

「な、うぐああぁああぁっ!?」

 

『《ル――――ドルルゥ……》』

 

「ナギ―――う、がほっ!」

「―――!?」

 

 

 雨霰と降り注ぐ『雷の投擲』を余裕で抜けられ障壁を破られてナギが、殆ど反応できずに次いでガトウが。

 更に声すら出せずゼクトも吹き飛ばされ、空中に上げられた彼等は『ほぼ同時に叩き落されて』地面に激突する。

 

 幾ら大きな攻撃力を持とうとも、当たらなければ意味は無い。幾ら体捌きが良くとも、見切れなければ何も出来ない。

 

 

「……ク、ソ野郎め……っ!!」

 

 

 起き上がったナギの睨みつける先、そこには余裕のつもりか構えもせず直立不動で立っている青い化け物の姿がある。

 実質、ナギ達の攻撃は化け物を捉えらえられていないのだから、余裕を扱かれても仕方ない。

 

 見た所ダメージそのものは深く無い様子。

 しかし同じ攻撃を続けられれば何度と持たないのは明白だ。

 それは後から立ち上がってきたラカンやアルビレオ、詠春にゼクトにガトウも同じだったが、状況は変わらないだろう。

 

 

「一瞬で十数発以上ぶち込んで障壁を破る連打速度と言い、本体のスピードと言い……今まで戦ってきた奴らとは一線を画すな」

「光球もさっきから使っておらんしの」

「アレを使われたら、今度避けられる保証はねぇぞ」

 

 

 立ち止まった一瞬をついて全力の攻撃を叩き込む。皆の脳裏にその策が浮かぶが、実行するのは並大抵ではないと、今までの戦闘から全員よく理解している。

 

 誰かがおとりになって攻撃を防御しようとも、その後移動される事は目に見えている。ならば、全力の重力魔法をアルビレオが掛け、その隙に一斉攻撃を仕掛けるのみ。

 

 

 全員が頷き合い、確認し合った刹那・・・目の前から消えた青い化け物は、今度はすぐに襲っては来ず衝撃波による風圧や、移動の際に抉れたような軌跡を残し、時折青い光芒を引いてはナギ達を惑わしている。

 

 

『《ドルルゥ……!》』

 

 

 と、一瞬風切り音も光芒も消えたかと思うと、次いで竜巻の如くそれらがナギ達の周りを覆いはじめた。

 言わずもがな、青色の化け物がナギ達の周りの高速で駆け抜けているのだろう。

 

 今までと違って周りを回っている為攻撃が当たるかもしれない。しかし、当てられるかどうかは兎も角、向こうから何かしけかてくる可能性もある。

 

 

「立ち止まってても仕方ねぇ! 分身で少しでも惑わせてやる―――」

 

『《ルルルルルォォォオオオ!!》』

 

「ぜ?」

 

 

 ナギが何やら印を結んで自分そっくりの分身を数十と造り出したが、化け物の雄たけびが聞こえたと思うと、本体含めた二対を残して根こそぎ消え失せてしまった。

 

 それがはじまりだとばかりに、周りの光芒引く爆風から次々と化け物が飛び出して来る。

 

 一度に何匹も飛び出してきているように見えるそれは、先程までの戦闘を踏まえるなら、高速で何度も突進を繰り返しているだけ。

 しかし、余りの速度ゆえか四方八方から次々と、そして何匹も飛び出してきているような感覚に陥る。

 

 超スピードをほこる連打で障壁や防御を破られ、何度も突き飛ばされているにも拘らず周りの爆風は消えない。

 一体どれだけの速度を持って、青い化け物は行動しているのだろうか。

 

 

 

 立ち止まっていてもダメージは次々と積み重なり、追う劇を当てようにも姿が捉えられなくてはどうしようもなく、状況はさらに悪化していく。

 

 

「グおっ! ぐっ……くそっ、弄んでんのかこいつは!」

 

 

 ラカンが苛立ったように言葉を吐きだし、地面に向かって思いっきり拳を振りおろすが、地響きが起きただけで何も変わらなかった。

 ―――いや、その数秒後には変わった。

 

 

 いきなり立ち止まり、化け物が彼等の方を向き、直立不動の状態で又立っているのだ。

 

 その化け物は右腕を前に付きだすと、口の様な部分の中にある目と外側にある目を笑った様に歪ませ、

 

 

『《コイ、ヨ…………シュルフフフフ……》』

 

 

 馬鹿にしたように―――否、“本当に馬鹿にしている”らしい化け物が、挑発するように手招きをした。

 しかも、人の言葉で煽るというおまけつき。

 

 

「こんのやろぉおっ……! 上等だあ!! 全力でぶち込んでやらああぁぁっ!!」

 

 

 有りっ丈の魔力をつぎ込む為か魔法陣を書き始めたナギを支援する為、ラカンや詠春は気を纏って突っ込んでいき、ガトウとアルビレオにゼクトは遠距離支援をすべく構える。

 

 挑発したからか、青い化け物は素早く動かず態と彼等に合わせた様な速度で動いていた。

 舐められているのは腹が立つが、好機には違いないと詠瞬が剣を構える。

 

 

「神鳴流奥義、極大 雷鳴剣!!」

「ルァカァァン―――羅漢萬烈拳、から螺旋掌だああっ!!」

 

 

 『完全なる世界』にはなった剣技よりも更に大きく、更に威力を増した雷が炸裂する。再び踏み込んで、詠瞬は次の奥義を叩き込む。ラカンも気をより練り込んで、拳を幾つも繰り出して打ち込んでいく。

 

 

「まだだ!! 雷っ……光剣!!」

 

 

 雷鳴と共に爆発が起き、巨大な筈の青い化け物の姿が完璧に見えなくなった。

 

 

「ジジイ! 防壁頼むぜ!!」

「うむ!」

 

 

 ラカンの言葉を受けて、アルビレオやガトウと共に遠距離攻撃を浴びせていたゼクトはそれを一時中断し、ラカンと青い化け物の周りに防壁を張る。

 

 

「いくぜぇ―――零距離! ラカンインパクトオオオッ!!!」

 

 

 詠春以上の大爆発が掌底と同時に巻き起り、当たりの物を粉々に砕いてクレーターを刻んだ。

 それと同時に、信じられない出来事が起こる。

 

 手元から聞こえた妙な音に首を傾げ、目線を向けた詠春と、一旦下がったラカンは……思わず叫んでしまった。

 

 

「な! か、刀に罅がっ!?」

「ぐおっ、硬ってぇぇっ……!? 気で強化してんのに!」

 

 

 彼等は魔法や気を纏う事により、攻撃力も耐久性も半端では無く上げる事が出来る。

 ……出来る筈なのに、刀に大きく罅が入り、ラカンの拳からは血が流れ出ている。

 

 そんな状況なのだから、攻撃を受けた件の化け物は―――――

 

 

『《シュルフフフ……》』

 

 

 平然とした様子で立っていた。当然、彼等の攻撃など全くと言っていいほど利いていない。

 

 

「お前ら! 離れてろ!」

「デカイのをぶつけてやるかのぉ!!」

「いきますよ!」

 

 

 巨大な拳圧を幾重にも束ねた一撃が、三つの属性を混ぜた巨大な矢が、黒い渦を巻く球体がそれぞれ炸裂し、詠瞬やラカンの時にも負けない爆発が起こる。

 

 土煙が立ち込め、風によりそれがはれる。

 

 

『《ハッ》』

 

 

 だが今度も全く利いていない。

 

 ジッと見てみると、幾分か身体が掛けているのが見えるが、自己再生能力を持っているのか軽すぎるモノはすぐ治る。

 幾分かオマケして見て比較的大きいと思える傷も、徐々に塞がって行っている。

 

 

「まだだ、まだぶち込むぞお前ら!!」

「当たり前だ!!」

「うむ! 吠え面かかせてやるわ!」

「頼むから利いてくれよ!」

「終わらせてなるものですか……!」

 

 

 

 次々と飛び交う拳、蹴り、斬撃、一閃、魔法、衝撃波。

 それらを何度当てども、集中して当てども、巨大な一撃を見舞おうとも……身体欠けれど利いている様子は無い。

 

 

「いいぜお前ら! 次にでかいのをぶつけろ! 俺がしめる!!」

 

 

 完成したらしいナギが皆へ訴え、詠瞬が、ラカンが、ガトウが、アルビレオが、ゼクトが、頭一か所に集中して攻撃を次々に叩き込んだ。

 その様子は、最早核爆弾を連発していると言っても過言ではない程の威力と規模、そして迫力をまき散らす。

 

 

「『雷の暴風』!! も一発『雷の暴風』!! 『轟き渡る雷の神槍』!! オオラアアアッ!!」

 

 

 魔法陣による威力強化に加え、遅延呪文を駆使して次々と大技をぶち込んでいく。

 フィナーレとばかりに上に向けられた手からは、自然界の雷を超える程膨大な量の電撃が渦を巻き、ナギの怒りを体現しているかのように激しく爆ぜる。

 

 

「いいかげんくたばってろ!! ……これが『千の雷』――――ダアァァッ!!!」

 

 

 直撃した刹那、目が焼け耳が壊れると錯覚するほどの光と轟音。

 今まで破壊していたと地をも超える規模で辺り一帯を吹き飛ばし、遺跡すら巻き込むその技は雷系最大規模の魔法の威力を知らしめるに足る一撃であった。

 

 

「ハァ……どうだ……ハァ……化けモンが……ッ!」

 

 

 ダメージも重なって少々苦しそうにしながらも、ナギは笑みを浮かべる。今だ電撃を帯びる地面は煙を大量に上げ、辺りには砕かれた岩が積み上がり―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『《ルルル、シュルハハハ……!!》』

 

 

「う……そ……だろ」

 

 

 中央には馬鹿にしたように笑う、数か所が欠けただけ(・・・・・・・・)の青い化け物が、笑いながら立っていた。

 見て分かるほどには削れている。血らしき何かが、僅かに見える。

 だが致命傷どころか、軽傷ですらない。

 掠り傷に至るかどうか・・・影響を与えるには、余りに小さく、弱い。

 

「――――っ」

 

 もう何も言えなくなる『紅き翼』へ、真っ青な怪物は青い光球を形成する。

 

 

『《アスール、ラバラァ!!》』

 

 

 そして、ナギ達へダメ押しとばかりにうち放つ。

 

 避けようにも、射出から着弾がノータイムに近い弾丸を、心身ともにダメージを折ったナギ達出は避けられる筈も無く、全員に命中し皆吹き飛んでいく。

 

 

「ぐああっ!?」

「駄目だ、まともに動けん……!」

「まだ、まだ目的は達しとらんと言うに……っ」

「余りにも、強大な……」

「……ぐっ!」

 

『《ルル、ドルルルルゥ》』

 

 

 更に駄目押しだと打撃を、速度による斬撃を、そして銃撃を重ねに重ね、彼等を遂にはボロボロにしてしまった。

 

 そして、青い化け物が前かがみになり、地面に盛り込む程に体重を掛ける。来ると予測される最速の体当たりの犠牲となるのは果たして誰か・・・。

 

 

『《アスール、ピストラァ……》』

 

 

 嗤う様な声と同時に青黒い目が光る―――絶体絶命となった、正にその瞬間。

 

 

 

『《シュュルルルオオオォォッ!?》』

 

「あ……穴、か?」

 

 

 虚空に穴が開いたかと思うと、化け物を吸いこんでしまい、まるで今までの事が夢か幻かの如く消え去ってしまったのだ。

 

 

「……消えた、だと?」

 

 

 静寂に包まれる荒れ地の中で、思い出したようにラカンが呟く。

 

 

「何が、起きているのでしょうか」

「じゃが、一つはっきりしている事はある」

「ああ、助かったってとこか」

「……」

 

 

 自分達の攻撃は利かず、希望も見出せず、最後も何が何だか分からず消えて行った。そんな相手の事を思い返し、ナギは拳を握る。

 

 

「くそっ! 勝ち逃げじゃねぇかよっ!! ……何が、最強無敵だよっ……!!」

 

 

 悔しさから拳を叩きつけるも、虚空からは何の応えも返ってこず、岩が少しばかり砕けるのみであった。

 

 




 独器使いで無ければ、此処までの差が付いてしまいます。

 勿論これは最上級であるからこその実力差であり、それ以下の偽器兵や、人間である仁や紬と戦った場合は少し違ってきますが、独器使いや最上級偽器兵の防御力は・・・もうチートです。
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