空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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最初は、ネギ&小太郎VS仁&カゲタロウも考えていました……が、それだと無意味に長くなるし、勝とうが負けようがネギ達の元に賞金ははいるし、と言うか勝てる可能性が独器の防御性能の所為で低くなるしで余り面白くない為、原作通りのラカン戦にしました。


 それでは、本編をどうぞ。


思わぬ来客

 

 ラカンの促しから、約十数分後。

 

 

 説明の最中に一旦元の青年姿に戻った仁は、隠すことなく事件の全てを話した。それだけでなく、この事件は……全てではないが、まず自分に任せてほしいという事。

 何か起きてもまずは防衛を優先して欲しいという事も伝える。

 

 話が終わってから、眉をしかめた表情のままセラスが呟き、それにリカードやテオドラも続いた。

 

 

 

「俄かに信じがたいけれど……」

「しかし目の前で見せてもらったからのぉ、魔力無しでモノを浮かせるという芸当を」

「現状、それ以外納得できる情報はねえし、彼の容姿は探し人の写真と一致するからなぁ」

「何より俺も見たって言ったろ? こんな事件で嘘をつく旨味なんざ無いってのは分かるってると思うがよ」

「それでも常識を丸ごとひっくり返す様な内容だったぜ。お前並みにチートじゃねぇかよ、独器使いってのは」

「攻撃は余り利かず、利いても殺しようが無い……本当に反則ね、敵対したくないわ」

 

 

 

 否定できる要素も度重なる事件や仁が証拠を見せた事で、全て潰れている。否定する必要は無いのかもしれないが、言うならば念のためというモノだ。

 

 

 

「わかった、仁の兄ちゃんが言った通りその……なんだったか」

「偽器兵よ。私達も調査を進めつつ、偽器兵が現れたのなら防御の方に手を回すわ……でも、これを(おおやけ)にする訳にはいかないわね」

「そうじゃな、知るのは一部の人間でよい。悪用は出来んのじゃろう仁?」

 

 

 

 テオドラからの質問に、仁は肯定の意を示した。

 

 

 

「はい。前に悪用していた人物も偶然みたいなもので曖昧でしたし、この世界では悪用する前に叩きのめされるのがオチかと」

「なら一部の人間に話してもよかろうな。根本からは解決しておらんが、何が起こっておったかは分かっただけ良しじゃ」

「振り回されるだけってのが一番辛いからな」

「うむ。して、大量虐殺計画の件はどうするかのぉ……」

「嫌な言い方になるけれど、如何も出来ないわ。留めることはできるでしょうけど、黒幕を止められるのは仁君だけ。しかも今から妨害しようにも、そこまで情報が無いのでは具体的な方法だって立案不可能ですもの」

「そうじゃな……不安じゃが、今は防御体制強化と魔法のランクを上げる事以外にやれる事は無いの」

 

 

 頷くテオドラにリカードは同意し、次の意見にはセラスが首を振ってどうにもならないと対応。

 今度はテオドラがそれに頷き、それを見たリカードは溜息を吐いて肩に手をやり首を回し、そのまま苦笑した。

 

 

 

「ったくよぉ、やっぱ元老院議員なんて向いて無いぜ。今回の事件といい何時もの案件といい、毎回肩が凝って仕方ねえ」

「あら、意外と優秀だと私は聞いているけれど?」

「優秀なのと向いているかってのは違うだろ。あー、イテテ……」

 

 

 

 スーツの上からも筋肉質な体だと確認できるリカードは、本人の言うとおり元老院議員よりも軍隊の教官の方があっているのかもしれない。

 

 

 

「妾とてそうじゃ。本当なら他の者に任せる所を……ジャック、お主が居るというからわざわざ出向いたというのに」

「しるかい」

 

 

 

 ブーたれるという言葉が似合う表情のあと、ラカンは何処からかジョッキを取り出し、皆の前にかざした。

 

 

 

「まあアレだ、個人個人の事情やどうにもならない問題は今は置いといて、一先ず試合を肴に酒を飲もうぜ!」

「うむ! そうじゃな!」

「仁の兄ちゃん、今出て行ったら面倒だからよ、しばらくはここに居てくれや」

「……あぁよ、ラカンのオッサン」

 

 

 

 そこから、録画されていた様々な選手の試合が空中に映し出され、瞬殺だった試合から中々に拮抗した試合も含め、次々と映し出されていく。

 

 幾つかの試合の後、大人化したネギ達の試合が映ったのを見て、リカードがグラスから口を放して楽しそうに笑う。

 

 

 

「そうだコイツだコイツ! 最近ナギの下手なモノマネとかで話題になってるイロモノ拳闘士は!」

「イロモノじゃが、中々の腕前を持っておるからのぉ、優勝もあり得るかもしれぬな」

「でも……見れば見る程ナギにそっくりね。本当に関係が無いのかしら」

「ああそいつな、ナギの実息子だぜ。そりゃ似てるに決まってんだろ、息子なんだからよ」

 

「ほう、息子―――」

「なるほど息子―――」

 

「「ってなぬううううぅっ!?」」

 

「……二人とも、驚くのが遅いわよ……?」

 

 

 

 余りにアッサリとネタばらしされたが故に、テオドラとリカードは驚愕するのが遅れた。

 二人にツッコンだセラスもそれなりに驚いている。

 

 

 

「あ~? なんだ知らなかったのかよ?」

「いや、だってアイツの息子は十歳そこらだって前に―――あ、年齢詐称薬があったか!」

「それも『闇の福音』直伝の変装術! そら見抜けないよなぁ」

「つまらなくなったのぉ……ナギの息子なら強くて当たり前、優勝など決まったも同然じゃ」

「あら? その言い方は公平を欠くわよテオドラ? 彼だって父親に追いつこうと努力をした結果があの強さかもしれないのに、それを才能が全てみたいな言い方をしたら、ね」

「ハハッ、そうだな」

 

 

 笑いながら残った酒を一気にあおり、次いでラカンは不敵な笑みを顔に浮かべて、テオドラ達の方を見た。

 

 

「それによぉ……優勝決定ってのもまだ分からねぇぜ?」

「何故そう言える? ジャック」

「確かにこのままじゃあ面白くならないかもしれない……そう考えてな、『エントリー』してきたのよ、さっき」

「まさか……!?」

 

(別の部屋に入ったのはこーいう事か……)

 

 

 

 ラカンの思わぬ発表に、テオドラは信じられないといった表情で固まる。

 

 リカードはやっちゃったよコイツといった感じで大口を開けている。

 

 セラスはやれやれとばかりに頭を押さえている。

 

 そんな彼等を見ながら楽しそうに笑うラカンを、仁は口をあけて驚いた跡に、又面倒くさい事が増えたと言わんばかりのじつに“いや~な”顔をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「む・り・だああああああああああああっ!!??」」

 

 

 

 時刻は夜更け、場所は灯台近くのテラス。

 

 

 そこでは、頭を押さえながらパックロッカーの如く頭を振りまくる幼女……年齢詐称薬を飲んだ千雨と、御馴染の白毛並みエロオコジョ・カモ、そして元の姿に戻ったネギと小太郎、そして子供姿のままの仁が居た。

 

 

 彼等がこんな行為に励んでいる理由、それはラカンがまだパートナーを得ていなかった選手を探し、その選手・カゲタロウと共に参戦してしまった事にある。

 

 仁はコロシアムから出る前のテオドラ達と会話していた部屋で既に聞いていたが、その時でも口をあけてしまうほど驚いたのに、優勝まで余裕だと思っていた矢先に脈絡無しに現れたのを見たネギ達の驚きは、それを余裕でぶっちぎるだろう。

 

 元々ナギ・スプリングフィールド杯へは、この世界に来て奴隷とされてしまった和泉亜子、村上夏美、大河内アキラの三人を介抱する為の莫大な資金を得る為に参加したのだから、それが達成出来なくなるかもしれないとくれば、カモと千雨の行動も頷ける所はある。

 その上フェイトとの敵対の件や、紬と偽器兵の脅威と問題づくめであり、問題が解決しないどころか更なる問題を呼びそうな行動をラカンが取ったのだから。

 

 

 駄目押しに、この試合は師匠であるラカンが弟子であるネギの成長を確かめる為のモノでもあるのだが、もしラカンが優勝してしまったらネギ達には一銭もやらないという本人言質のオマケつき。そらヘッドバンギングしてしまっても仕方が無いであろう。

 

 

 

「あああもう! ただでさえ問題山積みだってのに、あのオッサン余計知っちゃかめっちゃかにしやがってえ!?」

「あんちくしょおおおっ!? こんにゃろおおおっ!!」

 

 

 

 しかも、パートナー追加は一人のみで勝ち上がって来ていた場合何時でもオーケーだが、パートナーの変更ができるのは魔法でも完治に時間のかかる重傷を負った場合のみで、しかもそれが真実かどうか調べられるので仮病ならぬ仮傷は使えない。その為、ネギか小太郎のどちらかと仁が交代するのも不可能。

 

 最初はカモや千雨も「勝てる可能性がメンバー内では一番高い仁に代わってもらおう!」という案を出していたが、ネギ達から上記の参加者のみに伝えられていた詳しいルールを聞き、無理だったと断念した次第である。

 

 何より、異質な力である[独器]を公に出してしまうと、今とは比べ物にならないほど混乱するのは明白だ。

 

 

 

「いきなり参戦なんざ、なーに考えとるんかなあのオッサン」

「何も考えてるわきゃねえだろ! 馬鹿なんだから! ……本当にどうすんだよ、計画が全部おじゃんになったぞ!?」

「やっぱり……優勝は無理、なんでしょうか」

「あったりまえだ!」

 

 

 

 昔なら無理ですよ、と言って早々に諦めていたネギが無理なのか? と聞いた事に千雨は成長を感じるも、いま議論すべきはそこでは無いとネギの方へ勢いよく体を向ける。

 

 

 

「先生だってあのオッサンの桁外れで馬鹿げた強さは何度も見てるだろ!? あんな化け物に勝つんならそれこそこっちも、[独器使い]の仁の兄ちゃんやら最上級の[偽器兵]位の反則を持って来ないとどうしようもないっての!」

 

 

 

 改めてはっきり言われたネギは眉をしかめ、小太郎はうげぇ……といった表情になる。

 

 そんな彼等に、あらかじめ用意していたらしい本を仁が浮遊させてダンボールの上に置き、その置かれた本を叩きながらカモが話しかける。

 

 

 

「実を言うと、あの後何とか攻略法とか弱点がねえかって、仁の旦那と一緒に図書館までいって本を見たり借りてきたんだがよ」

「おお! それで!?」

「……いや、そのな……」

「あーまいい話はねー。それを踏まえて聞け」

 

 

 

 仁はそう言うと、呆れと面倒臭さを表情にも声色にも、隠しもせず『いい話では無い』調べ物の内容を口にする。

 

 

 

「火力がでけー分、魔法使いの(ほー)が戦果が大きいのが、魔法世界の常識らしい……が、“リョカン”のオッサンにそーいった常識は(つー)じねー」

「“ラカン” のオッサンな? ……コホン……いいか? あのオッサンが大戦中に沈めた戦艦の数は、大小合わせて何と『137』隻! これは、千の呪文の男(サウザンドマスター)とも呼ばれる兄貴の親父さんを超える戦果らしいぜ」

「……そりゃグレート=ブリッジとかで帝国の戦線が傾く訳や」

「生身で戦艦を沈めたと言う事実も無視できませんよ……!?」

「……面倒せー程の化け物ぶりだろ?」

 

(仁の兄ちゃんだけには言われたか無いだろがな)

 

 

 

 そこでカモは本をもう一度ぱらぱらとめくり、頭痛がすると頭を押さえてから煙草に火を付けて加える。

 

 

 

「大戦中の逸話にも事欠かないが……なかでも驚愕もんなのが一つある」

「それは?」

「お前らは帝国の守護聖獣、古龍・龍樹は見たよな?」

「おう、あの樹で造られたみたいな幻想ここに極まれるの怪獣だろ?」

「何だかすっごく強いらしいよね、あの龍」

「そう言われるのも当たり前だ。何せ古龍は吸血鬼の真祖と同格とも謳われる、いわば最強種! つまり龍樹はエヴァンジェリンと同じくらい強えってことなんだが……」

 

 

 

 カモは最早、驚きを通り越して軽くうすら笑いを浮かべた様な表情になり、冷や汗をかきながら言った。

 

 

 

「なんかさ、その怪獣と昔引き分けた事があって、それ以来友達だとか何とか……らしいぜ」

「「「なにいいいっ!?」」」

 

 

 

 古龍・龍樹は全長約百mもある怪物であり、そんな巨大生物とあろうことか“生身”で引き分けるなど告げられれば、ネギ達が驚愕の大声を上げても仕方が無い事だろう。

 

 

 

「どうやって引き分けるんやあんなデッカイのと!?」

「そうだよどうやって引き分けるのさ!」

「まあ、あのオッサンでかい剣は持ってたけどよ、仁の旦那みたいに陸地をグバッと持ち上げられる訳じゃねえし、コレは流石に大げさで――――」

「いーや残念だが、現実はそうとも言えないぜ。つうか、大地をグバッと持ち上げるぐらいならやりそうなもんだが……」

 

 

 

 カモの肯定的に取ろうとする言葉を遮ったのは千雨。彼女は苦々しい顔をしてそうとも言えないという根拠を説明し出した。

 

 

 

「あのオッサンはよ、フェイトの部下と戦った時に理論上脱出不可能な筈の閉鎖空間から、気合い一発で抜けだしやがったんだ。後で調べたら重力魔法にも近い類のモノが発動していたとか茶々丸は言ってたが、だからってそれが気合い一発で出来ていいもんじゃねえ事はよく分かる筈だぜ」

「もう何でもアリやなあのオッサン」

 

 

 

 その後、戦闘力の数値が如何だの表の位置が如何だの、自称や手加減に八百長が如何だのとあれこれ言い合い、カモが本格的に壊れ出して暴れ出したのを、仁は地面を板状にくり抜いて押さえつける。

 

 無駄に動いて憤るカモをしり目に何やら考えているネギは、静かに振り向いて口を開いた。

 

 

 

「ちょっといいかな……見せたいものがあるんだ」

 

 

 

 ネギはそう言うと見せたいものが何かは明らかにしないまま、三人と一匹を連れだって空を飛び、浮遊岩が幾つも存在する岩礁エリアへやってきた。

 

 オスティアからは少し離れているので、屋台も街灯も無く舗装された地面もない、四人と一匹以外全く人気のない場所。

 ある上下幅百メートルはある岩の近くに立つと、ネギは確認するように辺りを見渡して呟いた。

 

 

 

「ちょっと見てて欲しいんだ、僕の新呪文をね」

「あの雷の槍―――やないわな」

「うん、どちらかというと、僕の今出せる最強の魔法ってとこかな」

「……なーほど、バカでけー魔法だから軍隊にヤイノヤイノ言われねー様にここへ……」

「その通りです」

 

 

 

 肯定して頷くとネギは親指を噛んで血管を破り、血を流して地面に垂らす。屈み地面に魔法陣を描き出しながら、魔法を発動する為に呪文を紡ぎ始めた。

 

 

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル―――契約に従い我に従え高殿の王!! 来たれ巨神を滅ぼす燃ゆる立つ雷霆!!」

 

 

 

 ソノで言ったん呪文を止めて、照射地点である岩に掌を向ける。岩の周りに幾つも魔法陣が現れて、狙いを固定するかのように回転を止めた。

 

 ネギは再び呪文を紡ぐ。

 

 

 

「百重千重と重なりて走れよ雷……『千の雷(キーリプル・アストラペー)』!!!」

 

 

 

 一瞬で辺りを大量の金色の光が覆い、直後雷を幾重にも重ねた様な轟音と、現代の化学兵器の乱発にも負けない破壊音が鳴り響く。

 嵐の様な余波がネギ達の方へ吹き荒れてくるのを感じ取った仁が、足場の岩石を壁の様に持ち上げて即席の盾を作った。

 

 

 

「ぬ、ぐおおっ、なっなんつー音に力……トンでもねえ魔法だな」

「コレが『千の雷』か。映画と実物じゃあやっぱり違うんやな」

 

 

 

 仁が防護目的で掲げていた岩を元に戻すと、そこにはとんでもない光景が広がっていた。

 

 

 

「ぬおおっ!? い、岩が溶けてやがる!」

「こりゃまた凄まじい火力……正しく人間兵器や」

 

 

 

 百mはあった岩の殆どが消し飛び、残っている部分も断面の部分が解けて溶岩の様に流れ出していたのだ。魔法使いはもともと『砲台』の様な物なので、その役割を十分以上に担える本物の魔法使いの力がどれほどのモノか、この『千の雷』の威力が物語っているだろう。

 

 

 

「でも、まだ未完成なんだ。準備も長いし威力も規模もまだまだなんだよ」

「うっそおっ! マジか!!」

 

 

 

 更に未完成でこれと言う事実。これをさらに成長させたらどうなるか……絶望の中に一筋の光、ラカンに勝つ為の勝機を見つけたとばかりに、カモは拳を―――丸っこいので拳には見えないが―――握って熱く叫ぶ。

 

 

 

「いける! いけるぜっ! 如何なる魔法使いでも沈められそうなこの威力……完成しちまえばいくら無敵のラカンだろうとコテンパンのギッタギタにぃ―――」

 

「いやいや、こんな長い呪文大人しく喰らってくれる筈ないて。それにこれ以上の破壊力を誇るナギさんの『千の雷』を正面から喰らって気合いでしのいでたし、色々足りんネギのモンを一発ニ発当てたところで死なへんてあのオッサン」

 

「……るせ―なコラ」

「何言っとんねん……事実や、事実」

「わかってんだよ! 人が気にしない様にしようとしてたのを!」

「んなもん知らんわ」

 

 

 

 又もテラスの時の様な着陸地点のない会話へ発展しようとした時、千雨が何故こんなものを見せたのかと考えて、やがてネギの言いたい事に気が付いた様に顔を上げる。

 

 

 

「そうか! これは直接ぶつけるんじゃあ無く、先生が覚えたあの『闇の魔法』を!」

「……そう、『千の雷』を攻撃には使わず、『闇の魔法』・『術式兵装』でのパワーアップに使うんです。本来対大多数用の広域魔法ですし、魔力そのものの計算でも『雷の暴風』の十倍以上。装填すれば、あるいは勝てるかも……」

 

 

 

 大規模魔法を放った後だからか汗を流し眉をしかめて言うネギに、少しだけ逡巡した後カモが歓喜の声をあげた。

 

 

 

「そりゃいい! 五・六倍の出力アップなら戦えるかもしれねえよ先生!」

「え、そ、そうかな!?」

「まああっちゃんが対フェイト用にと考えてたんや、マジで行ける可能性もあるで!」

「そ、そうだよね!」

「ナイスアイデアだぜ兄貴! 気分も上がってきたし、このポジティブ調子で特訓をしていきゃあ!」

 

 

 

 

 

 

「無理だろ」

 

 

 

 

 

「おっさんにかてぇぇん!? って、なんだ! 兄貴のグッドアイデアにケチを付ける奴ぁ……って、仁の旦那?」

 

 

 

 唐突に割り込んだ声にカモが反論するも、その言葉は途中で止められた。

 声の主は今までずっと黙っていた仁で、彼が何やら重い雰囲気を湛え、歩いて此方に近寄ってきていたからだ。

 

 ネギの前まで歩くと、仁はネギの目を見たまま口を開く。

 

 

 

「玉ネギよ……お前、自分でその策を信じ切れていねーだろ」

「……っ!?」

 

 

 ズバリ言い当てられたらしいネギは顔をしかめるも、仁は言葉を止める事は無い。

 

 

 

「離れてても分かー程に “自信が無い” ってぇ感情が顔にハッキリ浮かんでいた。アレか自分で勝てると思いきれないから、賛同を得て安心を得ようってか? そんなん本番ならどうしよーもねーだろ」

「うっ……」

 

 

 声を詰まらせ唸るしかないネギ。と、仁が二度口を開こうとした……刹那。

 

 

 

 

「ははは、その男にもろに言い当てられるとはな! 自分だけでは信じ切れないから仲間の賛同を得て、偽りでもよいから勝てるという暗示を心身に掛けようとする……卑屈だなぼーや! 実に卑屈だ!」

 

 

 

 

 この場にいる全員が聞き覚えのあるその声に振り向き、見た先に居たのは―――

 

 

 

「な!?」

「お、おい……!?」

「なんでや!?」

「……!」

「あ、あなたは……

 

 

 

 師匠(マスター)!!」

 

 

「……だが、そう言った暗く卑屈な行動も、また嫌いでは無いがな」

 

 

 不敵に笑うローブ一枚を羽織っただけの、そして呪いにより魔法世界には来れない筈の、エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェル……ネギの魔法の師匠その人だったのだ。

 

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