空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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『両面の鬼と奥ノ手』 
京都と式神


「……京都?」

「そうじゃ、京都へ行ってくれんかの?」

 

仁は、珍しく普通に地面に立ち学園長と話をしていた。……ちなみにこの会話の前に、前回の戦闘の事でかな~り怒られたが。

 

「実はネギ君に関西呪術協会あての親書を渡したんじゃが、何分関東と関西は仲が悪くてのぉ……妨害もあるかもしれんから、ネギ君一人では心許無い。だからもしもの時の為にお主が居てくれると助かるんじゃが……どうじゃ?」

 

仁は少し考えた後、

 

「じゃ、それもお願いの内に入ってるってーことでいいんだな」

「そういうことじゃの。……何か悪いの」

「別にいい。俺も興味がなけりゃ、こーな事はここに来る前に断ってっから」

「来る前に!? 聞きもせずか!?」

「というか、こんなとこにすら来ねぇ」

「…………その理由は?」

「めんどーせぇ」

「ほらの! やっぱりの! お主はそれしかないんか!」

 

いつも通りの口喧嘩を終え、学園長は真剣な声で送った。

 

「……ネギ君とこのかをたのむぞ、仁よ」

「……あぁよ。爺さん」

 

 

 

 

そして現在。仁は電車に乗っていた。流石に飛んではいかないらしい。少しイライラしているような顔で、眠ろうと頑張っていた。何故眠れないかというと

 

(青ネギの奴、何とかしろよ…うるせぇ……)

 

前々々方の車両からキャァキャアと、まるで悲鳴のように女子中学生が騒ぐ声が聞こえるからだ。実は今日から五日間、本校女子中等部の生徒は修学旅行なのだ。ネギたちのクラスは、京都・奈良を回ることとなっている。

 

(ほんとに教師か? 青ネギ……白ネギだったか?)

 

どっちもはずれである。と、明らかに今までとは違う本物の悲鳴が聞こえてきた。

 

「きゃぁー!? 何これぇ!?」

「蛙! かーえーるーぅ!」

 

(…さっそくかよ、めんどーせぇ……)

 

どうやら蛙が何故か大量発生したらしく、ここまでゲコゲコゲコゲコと……、

 

「や、待て、どんだけいるんだ?」

 

いくら仁が乗っている車両に人が居ないとはいえ、ここまで聞こえてくるのはさすがに可笑しい。それほど大量に出てきているのだろう。聞こえてくる声だけでも、てんやわんやになってしまっているのが分かる。

 

やがて、蛙を全部捕まえたらしく、拍手が聞こえてきた。

 

(…これで終わりか?)

 

「あーーーっ!!?」

 

(んなわけないよな…)

 

こんどは、ネギの驚愕する声が聞こえてくる。もしかしたら親書を奪われたのかもしれない。開けっ放しの扉から、ネギがこちらに来るのが見えた。何やら手紙を加えた鳥を追っている。

そして、玩具のような杖を出し呪文を唱えようとして―――

 

「お弁当―――きゃあ!?」

「すす、すいませんー!?」

 

売り子の女性が押すワゴンに引っかかって転んでしまった。一見すると偶然に起きたように見えたが、仁はそう思ってはいなかった。

 

(普通に押してりゃー、引っかかるこたぁまずねー軌道だった……狙いやがったか、あの売り子)

 

どうやら、あの売り子の女性こそが関西呪術協会の者らしい。さっそく妨害をしてきたようだ。

仁は、簡易版の”蹴圧”で撃ち落とそうかとも思ったが、学園長から陰ながら協力しろということを思い出し、車両の後ろにいる気配に託した。

 

 

 

 

そして数分後。カモと会話をしながら、親書を片手にネギは戻ってきた。

仁が居るというのに、構わず会話をしている。

 

「大丈夫かな~? 親書渡せるかなぁ?」

「俺っちも大丈夫とは言いがてぇが、まずは桜咲刹那をどうにかしねぇといけないっすよ、兄貴」

「でも、刹那さんは僕の生徒だし……」

「だからそんなこと言って―――」

 

と、そこでようやく仁の姿に気づく。

 

「…あっ」

「あ」

「……(遅…)」

 

ネギは慌てて弁解しようと矢継ぎ早にしゃべりだした。

 

「あ、あのこれはですね! 腹話術というかなんというか! そう! マジックショーですよ!」

「……兄貴」

「ほほほらすごいでしょう!? ……あれ?」

 

なんと、仁は寝ていた。ネギの必死の弁解を聞かずにグースカと寝ていた。実際は、ネギが話し始めた直前から寝ていたのだが。

 

「…兄貴、今のうちに忘却の魔法かけ解こうぜ」

「そ、そうだね」

 

ネギは、杖を振り忘却の魔法をかけた。そして一安心したという顔で元の車両へと戻って行った。

 

 

「……利かねえっての、白ネギ」

 

…………本当は寝おらず、魔法すら効いていないということも知らずに―――

 

「…やっぱあれか、青ネギか?」

 

そこはどうでもいいだろう。間違っているんだから。

 

 

 

 

所変わって京都の上空。やっぱり仁は、逆さま状態でネギたちの後をつけていた。

………が、

 

(…くだーね…全部、ガキのいたずらかよ…)

 

今までにあった妨害は、蛙パニックに式神の鳥、蛙の入った落とし穴や酒にすりかえられた滝等、確かに妨害にしてはくだらない内容だった。

仁がくだーね、と言ってしまうのも仕方ないかもしれない。

そのうえ、ネギの対処の仕方があまりにも遅く情けない。これでは、敵になめられるのは目に見えている。

 

(この調子だと、今夜かもな…めんどーせぇ…)

 

仁はいつも通り嫌そうな顔をし、ネギたちが宿に入ったのを見ると、その場を文字通り立ち去った。……逆さまのまま。

 

 

 

・夕方すぐの夜・

 

修学旅行の夜だというのにかなり静かな”ホテル嵐山”で、ネギとカモは昼間の事で話をしていた。

 

「あの刹那って奴の仕業に違いねぇっすよ兄貴! やっぱりさ!」

「確かに怪しいとも追うけどさぁ……う~ん…」

 

確かに自分の事をじ~とみていた刹那は怪しいが、それだけでは足りないと考えるネギ。

そこに、

 

「あ! いたいたネギ! とりあえず酔ったみんなは寝かせたけど……どうなってるのよこれ?」

 

明日菜がやってきた。昼間の妨害の件が気になるらしい。

 

「そ、それは……」

「話しちまえって兄貴。パートナーにぐらいさ」

「……そうだね。アスナさん、実は―――」

 

そしてネギは、関西呪術協会に自分たちが狙われていることを明日菜に話した。

 

「道理で、あんな蛙やお酒なんて変だと思ったのよ……にしてもまた魔法の厄介事か」

「すいません……アスナさん」

「なぁ、姐さん。桜咲刹那ってのがスパイらしいんだ。何か知らないか!?」

「桜咲さんが? ……そうね、このかと幼馴染だっていうのは聞いたことあるけど…でも、喋ってるのは見たことないなぁ」

 

するとネギは何かを思い出し、名簿を取り出した。そこには―――

 

「あっ! 見て、名簿に京都って書いてあるよ!」

「やっぱりだ! あいつは関西の刺客だったんだな!」

「そうかなぁ~?」

 

と、話し合っていたネギたちのもとにしずな先生がやってきた。

 

「ネギ先生、教職員はお風呂を早めに済ませてください」

「あ、あっはい!」

「ウチの班も、もうすぐか……続きは夜にしよ、ネギ」

「はい、分かりました」

「OKっす!」

 

 

 

 

場所は変わり、露天風呂。

 

「……」

 

仁は無言で風呂につかっていた。護衛を頼まれたのに風呂に入るなんて、何処までマイペースなのだろうか? もっとも、この男はマイペースなのかどうかも分からないが。

 

「……」

 

無言でいること自体は普通だが、浸かっている場所が妙だった。仁が入っているのは広い露天風呂の岩の陰の端っこなのだ。何故そんな所にいるかというと、

 

「風が流れてて気持ちいいね、カモ君」

「おうよ。これで桜咲刹那の事がなけりゃなあ」

 

ネギたちが露天風呂に入っているからだ。当然心の中は、

 

(…めんどーせぇ…)

 

この感情一つであった。しばらくネギたちと仁は風呂に浸かっていたが、ガラガラと扉があく音がし、誰かが入ってきた。

 

「男性職員の方かなぁ?」

 

ネギが降りむくと、そこには今まさに話の内容に出ていた人物・桜咲刹那がいた。

 

(わわっ! なんで? 男湯じゃないのここ!?)

 

どうやら、入口は違えど中は同じ……つまり混浴だったようだ。仁はネギたちが何故か桜咲に見とれているを見てため息をつく。先ほどまで警戒していた人物に見とれる奴があるか、ということなのだろう。

 

(変態だったってーのか、スプーンフィート)

 

違った、というかまた名前を間違えている。彼の今の言い方では銀の匙に距離の単位となってしまう。

 

「誰だっ!?」

 

だが、御ふざけもそこまで。

ついに見つかったようだ。風呂場が(一人を除いて)一気に慌ただしくなる。

 

「斬岩剣!!」

 

桜咲が刀を横一戦し、刀の軌道上にあった岩は技の名のごとく真っ二つになった。岩が湯に落ち、大きな音を立てる。

 

ネギも負けてはいない。咄嗟に魔法の始動キーを口にし、そして

 

風花・武装解除(フランス・エクサルマティオー)!」

 

桜咲の持っている剣を武装解除で弾き飛ばした。しかし、桜咲は動じず素早く懐に潜り込み、ネギの首と“男の急所”をつかんだ。

どうやら彼女のほうが、一枚上手だったようだ。

 

「何者だ、言え。言わねば捻り潰す」

「あふっ……」

「……アレ? ネギ先生?」

「あわ、あわわわわあぁ……」

 

不審者の正体がネギだと分かり、桜咲は慌ててつかんでいた手を離す。

 

「あ、あのすいません! ネギ先生! ……先生?」

 

ネギは、怯えすぎていて声らしい声も出ず、ただあわあわと口を動かすのみ。

その視線が自分の左手に言っているのをみると、桜咲は彼が何に怯えているのかが分かり、顔を真っ赤にして弁解する。

 

「し、仕事上急所を狙うのは…その、セオリーなので……ご、ごめんなさい!」

 

 

 

そのやり取りを、仁は気配を消して聞き流して―――――いや、聞き流すんだったら気配を消さなくてもいい気がする。

 

「ひゃあぁぁあ!?」

「この悲鳴は!?」

「っ! お嬢様!!」

 

と、突然脱衣所のほうから悲鳴が起き、ネギと桜咲は走っていく。

 

そして数分と経たぬうちに、小さな『ぬいぐるみのような猿』たちが黒髪ロングの少女を連れて風呂場のほうへと戻ってきた。

 

(なんでや……)

 

てっきり、妖怪のような物でも出たのかと思った仁、呆れる。そしてため息のまま”蹴圧”を放ち、猿たちを消し飛ばした。

 

(……ずらかるか…)

 

そして手早く体をふき、陰に隠してあったパーカー等の服を着るとそのまま飛んでいった。

……どうやら旅館を通さず、監視カメラを掻い潜って無断で風呂に入っていたらしい。勿論犯罪なのである。

 

 

そして幸いにも、

 

(ちっ……誰や、邪魔した奴は…)

 

この騒ぎを起こした張本人にすら気づかれなかったようである。

 

 

 

 

一方のネギたちは、強烈な風切り音と共に猿たちが吹っ飛び消えたのをみて驚いていたが、すぐにある人物が浮かび上がる。

 

「まさか……砲撃の人?」

「こ、こっちにも来てたんすか……」

「もしかして……砲撃の奴も何か京都に目的があってきたのかな…」

 

三人がうなずき、唸って考える中、

 

「あの~どういうことですか?」

「何があったん? さっき」

 

話についていけないこのかと桜咲に、慌てて説明し出すネギたちあった。

 

 

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