空立つ”飛”の独器と男   作:阿久間嬉嬉

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 九十話到達しました! ……コリャ、マジで百話行くかもしれないですね……

 さて今回は、少しばかりご都合主義が入るかもしれません。人によって捉え方は違うのでこれをご都合主義とは呼ばない人もいるかもしれませんが、一応と言う事で注意を入れさせてもらいました。


 それでは本編をどうぞ。


一筋の光、そして彼への援助

 

 登校地獄の呪いを受け、既に十数年も学業を繰り返し、麻帆良学園から出る事は出来ぬ筈の、伝説の賞金首・エヴァンジェリン。

 ……そんな彼女が麻帆良学園を出るどころか、魔法世界にまできていたとなれば、驚愕するのも無理はない。

 

 意外な人物の突然に次ぐ突然の来訪で、ネギと小太郎は勿論、千雨にカモも固まり、仁もそれなりに驚いているのか眼を見開いている。

 

 

「エヴァンジェリン! ……さん!? な、なんでここに!?」

 

 

 

 修行中に何かあったのか、途中で言いなおした小太郎の発言には答えず、しかし目線は向けたままで先程から浮かべていた不敵な笑みを、分かりやすい程より一層強めた。

 

 

 

「ラカンは存在そのものが反則級な阿呆だ。チートバカの相手するなど無謀な事はせず、今回ばかりは逃げだしたらどうだ? 状況が状況だ、私も別に軽蔑もせんし何も言わないぞ?」

 

 

 

 不敵さを苦笑へと変えて、エヴァンジェリンはネギを見る。実際のそう思っているのだろう……ラカンの強さを知る今となっては、本心から言っているという事を感じ取るのは容易い事だった。

 

 己の力量、積み重ねてきた実績と鍛錬、全てが劣るネギと小太郎では、エヴァンジェリンの行ったように勝つ事など不可能。挑む事も単なる蛮勇としか思えない。

 

 委縮し逃げ出しても仕方ない実力差、それを踏まえた上でネギと小太郎は互いの顔を見合わせ……頷いてから向き直る。

 

 

 

「いえ……この勝負、逃げる訳にはきません」

「そなや。何があろうと逃げられん」

「……ほう?」

 

 

 

 エヴァンジェリンは二人の返答を受け面白そうに片眉を上げる。二人が頷いてから此方を向くまでにそこまで間が無かったことから、葛藤などはせず元から挑む気だった事は明白だ。

 

 

 

「夏美ねーちゃん達の事があるからな、自分らが怖いっちゅうだけで逃げだせるわけあるかい。それに……」

 

 

 

 小太郎はそこで一つ間をおいて、強気に笑って見せる。

 

 

 

「ラカンのオッサンはな、小細工も含みも無しで真っ向からネギと『戦おう』言うたんや。これはネギをガキ扱いせず、一人の男として認めた……っちゅうこと以外にないわ」

「もし本人が本当に何も考えておらず、勝てる可能性等―――それこそ砂漠から砂粒代のダイヤを見つけ出すような確率、だとしてもか?」

 

 

 

 再びエヴァンジェリンに問われ、その言葉に今度はネギが答える。しかと前を見据えて拳を握り、ラカンと言う強大な影と、エヴァンジェリンの挑む様な目線に臆することなく。

 

 

 

「だとしても……父さんの親友が、戦友が、僕を一人の男として見てくれたんです。なら……全力でぶつかりますよ! 男同士の勝負、逃げ出すなんて有り得ないですから!」

「フ……そうか」

 

 

 

 ネギの口から放たれた言葉に、どこか満足したような笑みをエヴァンジェリンは見せる。覚悟は元から決まっていたか―――そう仁は考えて腕を組み……

 

 

 

「―――」

「――――――」

「――――」

 

(……誰か来たな)

 

 

 

 

 

 背後から聞こえた声と、感じた気配に少しだけ顔を向ける。

 

 ネコミミの付いた幼女数名と、彼女達に囲まれた褐色肌の角付き女性、何処かで見た事あると考えながら、仁は自身の記憶の中に、姿と一致する名前を探す。

 

 ネギ達はまだ気付いておらず、漏れ聞こえる会話からここにいるエヴァンジェリンは、『闇の魔法』を体得する時に現れたらしい幻影の様なものだと理解できた。

 

 

 これ以上は深く関係していても余り仕方が無いかもしれないと、仁は会話を聞きながす為に少しばかり定位置から下がる。 

 

 

 それから数秒後、褐色女性と幼女の集団がネギ達の居る場所へと到着した。

 

 

 

「お主がネギか。うむ、似ておるが奴と違ってめんこいの」

「あ、あなたは……?」

 

 

 

 女性の喋り方と声の質で、仁はこの角付きに見覚えがある事……どころか数時間前にあっている事を思い出す。頭の中にある姿と名前を一致させ、彼は彼女を見ながら思い浮かべた。

 

 

 

(……思い出した、“デオドラント”か)

 

 

 

 ……正解は“テオドラ”である。誰が薬剤の名称を思い浮かべると予想できるだろうか、と言うか相変わらず名前を覚えているのか、覚えていないのかが不思議なほど分からない。

 

 

 

「ネギくぅーん!! あいたかったぁーっ!」

「ゆーなさん! まきうぶっ!」

 

 

 

 なんな阿呆な勘違いを仁がしている時、ネギ達の居る場所ではやってきた幼女達の内二人が変装を解いたのか中学生ほどの背丈に戻り、桃色の髪を持った仁にとっても見覚えのある少女がネギに勢いよく抱きつく。

 

 

(……マリエ、だったか?)

 

 

 此方も間違え、正しくは“まき絵”だ。もうどうにもならない名前間違えはさて置き―――まき絵の横にいるもう一人の、黒髪サイドテールの少女が興奮した様子でネギに詰め寄った。

 

 

 

「さっきの音凄かったねネギ君! まさかアレも魔法だったりは、しないよね!?」

「アレも魔法じゃぞ。名を『千の雷』、電撃系最大級の呪文にして……ネギ、お主の父君“千の呪文の男”が最も得意とする、古代語魔法でもあったな」

 

 

 

 邪魔だったかローブを脱ぎ捨て、テオドラが何やら巻物を手に先に走って行った幼女たちの跡をたどるように、ゆっくり歩いてくる。

 

 ローブが脱げ露わになったスタイルの良い体と露出度の高い服装に、居場所が遠いので仁の方からは聞こえないが、カモが興奮した様子で何かを言った。恐らく鼻息も荒いかもしれない。

 

 一度風呂場で捕まったのに懲りない奴だと、仁は呆れた目線を送る。

 

 

 

「父君って事は、ネギ君やぱりそうなんだね!?」

「へ?」

「うんうん! そうだったんだよ!!」

「や、だから何が?」

 

 

 

 突如として感動の涙を流し始めるまき絵と祐奈に若干引きながら、ネギは含まれた意図の分からない言葉に聞き返す。

 未だ感動の涙をしこたま流してから、まき絵が鼻を啜ってから今度は表情を喜色満面に変えた。

 

 

 

「大戦を潜りぬけ世界を救った英雄、ナギ・スプリングフィールドさんの息子だって事だよ!」

「本当にあの超有名人の息子なんだよね!? よね!」

「お、お二人とも父さんの事を知っているんですね……」

「お店でさんざん聞かされたしさ! 覚え無い方が無理っしょ!」

「調べてみたら、本当に偉大な人だったし!」

 

 

 

 きゃいきゃいキャアキャア騒ぐ少女達を半ば無視に近い形で通り過ぎ、仁はテオドラの元へ歩いて行く。テオドラも彼に気が付いたか、声を掛けてきた。

 

 

 

「おお仁、お主もおったのか。魔力も気も無い手練はやはり察知しにくいの」

「……何故ここに来たんですか、デオドラン―――」

「テオドラじゃ、ジャックに聞いたが本当に名前を覚えんのじゃなあ……まあ、それよりも何故ここに来たかだったか。それはな、鍛える為じゃよ、彼等をな」

「……アナタ一人で?」

「まさか」

 

 

 

 テオドラはそう言うと、少し間をおいてから夜空を見上げる。すると、街から離れたからか良く見える星達の間に、それらを切り裂く様な勢いで人工的な光が此方に近付いてくるのが見えた。

 

 見えてからあっという間に岩場へ到着し、魚にも似たフォルムの単車らしき飛行物体が姿を現す。

 

 

 

「はーっはっはっはあ!! お前がネギかぁ!! マジでガキじゃねぇか―――よっとおっ!!」

「な!? 今度は何でい!?」

「つーか暑苦しいなこのおっさん!?」

 

(ディベートさん、か)

 

 

 ……もう突っ込むのは止めにして、現れたのは同じくラカンと闘技場に行った際に出会った人物一人、メガロメセンブリア元老院議員のリカードだった。

 

 彼は岩の上に降り立つと、どこぞの海の男の如く片足を岩に掛けて拳を握り高らかに言い放つ。

 

 

 

「俺の名をよおく聞いておけ! 俺はリカード! 政治屋リカードだ!!」

「喋り方まで暑いですね……」

「彼の暑苦しさは元からなのよ、御免なさいね」

「うおっ? 今度は誰や!?」

 

(確か……セラスさん、だな)

 

 

 

 何時の間にやら背後から現れたのはセラス……仁も今度は名前を間違えなかったようだ。

 

 箒をもっていることからそれで飛んできたのだろう。小太郎達が声を出すまで近付いてきていた事に気が付かない事から、彼女の認識阻害魔法の練度が窺える。

 アリアドネー騎士団総長として恥じないどころか、相応しい実力だ。

 

 彼等を目の前にして、祐奈は高らかに今までの驚きに勝るとも劣らない驚愕の声を上げる。

 

 

 

「ヘラス帝国第三皇女のテオドラ様に、メガロメセンブリア元老院議員に、アリアドネー騎士団総長!? 各国の代表者達がこの場に揃っちゃった!?」

 

 

 

 ミーハーとも取れるその騒ぎ様に眉をしかめる仁だが、別に言う事も無かったかしかめた眉をすぐ元に戻した。

 

 岩からまた跳び下りたリカードと、離れた場所に着地していたセラスも、テオドラと同様にネギの傍へ寄る。

 

 

 

「始めましてネギ君。あなたのお父さんである“千の呪文の男”、ナギさん達には、とてもお世話になったのよ」

「ネギの馬鹿もラカンのアホも腐れ縁の飲み仲間でな! お前の事も聞いてたぜ!! ……で、本気なんだよな?」

「……本、気?」

「ああ、あの生ける伝説、チートも超えた理不尽なバクキャラ、千の刃のジャック・ラカン。正直言って勝ち目なんざ無いに等しいアイツに、堂々勝負を挑むってのはよ?」

 

 

 

 肩に手を置かれ言われたセリフは、字面のみ見れば弱気に見えるかもしれない。しかし、リカードの顔は何かを期待するような表情で、弱気にはとても見えない。

 

 改めて言われた事でネギは詰まったが、悩みの色は一斉見せずに堂々と言った。

 

 

 

「ハイ!」

「はっはっは!! そうか! いい返事だぜ坊主!!」

 

 

 

 その迷い無い肯定の一言を聞き、方から手を放してリカードは大きな声で笑う。次いでテオドラも二カッと、セラスも静かに口角を上げ、リカードと並んだ。

 

 

 

「覚悟は確かめさせてもらったぜネギ。そんじゃ、何故ここに俺達が居るかを教えてやるよ。それはな……俺達が稽古付けてやるためだ!」

「えっ!?」

「体術の事なら任せときな、昔はこれでも白兵戦の鬼教官と呼ばれてたんだぜ!! 特にそっちに犬っコロ! お前は俺が重点的に見てやるぜ!!」

「ぬおっ!?」

 

 

 堂々と宣言したリカードにセラスとテオドラも続く。

 

 

 

「私の得意分野は攻撃魔法よ。見た所『千の雷』はまだ未完成。だけれども私に任せておきなさい、基礎強化と共に『千の雷』を完成させられるよう指導するわ」

「妾は得意分野など無いが、知識は豊富でな。色々とサポートしてやれるぞ。それと―――」

 

 

 

 言いながら、ゴトッと言う重たげな音を立てて、麻帆良のエヴァンジェリンの別荘にもあった、魔法球が姿を現した。中には、大きな島が一つと取り囲む様な岩礁が浮かんでいる。

 

 

 

「流石に三日ではどうしようもないのでな、このダイオラマ魔球にて三日間を三十日間に延ばす。コレで重点的に特訓できるぞ」

「おお……っ!」

 

 

 感動と驚愕入り混じる表情で立ち尽くすネギの目の前に、幻の身であるエヴァンジェリンがひらりと降り立ち、表情を変えぬままに淡々と言った。

 

 

 

「何を感動しているか。いくら糸口を見つけようとも事態は少しも改善などされてはいない。これぐらいで浮かれるなよ、最終的に壁を乗り越える事が出来無ければ、過酷な鍛錬を積もうとも全て無に帰すのだからな」

「は、はいっ!!」

「おうよ!!」

「よし! ならさっそく打倒ラカンへ向けて特訓開始だぜ!!」

 

 

 

 我先にと―――何故か少女達まで―――ダイオラマ魔球へ入って行き、最後にテオドラが入って行こうとした時、入る気が無かったのか遠くで佇んでいる仁を見つけて、何かを取り出しながら歩いてくる。

 

 何をしているのかと、仁もテオドラへ向けて歩みを進めた。

 

 

 

「仁よ、ジャックからコレを受け取っておる。何でも念の為に贈られた物らしいが、妾はおろかジャックも良く分からないらしくての。詳しくは手紙を読んでほしいとの事じゃ」

「……分かりました」

 

 

 

 それだけ言うと、テオドラもダイオラマ魔法球の中へと消えて行った。仁は渡された大きめの箱をしげしげと眺め、中を上げると真っ黒な球体と田神らしき折りたたまれた便箋が入っていた。

 

 まずは手紙を読むことが先決だと、箱を浮遊させて固定し手紙を広げて読む。

 

 

 そして……その内容に眉を、目を潜めた。

 

 

 

「……知ってたのぁ驚かねーが、あんたは預言者かよ……なぁクウネルさんよ」

 

 

 その手紙の送り主は、図書館島地下に居を構える元『紅き翼』のメンバー、旧アルビレオ・イマことクウネル・サンダースだった。

 

 手紙には、読みやすく綺麗で丁寧な文字でこう書かれていた。

 

 

『この手紙を受け取ったという事は、恐らく大きな事件に巻き込まれたのでしょう。もしもの時の為に、あなたが修行できるようにと特殊な魔法球を添付しておきます。どのような魔法球かは、そしてどのような修行をする為かは、あなたならば言わずとも分かるでしょう。キティのモノには少し劣りますが、もし使わざるを得ないならば遠慮なくどうぞ。ちなみに中に入る為の呪文は、キティのモノと同じですよ……ではこれで。 “クウネル・サンダース” 』

 

 

 ……と。

 

 

「……[禁ジ手]……か」

 

 

 実を言うと仁は、計画が分からないからと言って何もせず歯噛みしているだけでは駄目だろうと、禁ジ手の修行を続ける事を視野に入れていた。

 

 だが現状から分かるように、下手に修行しようとすれば軍隊が駆けつけてくるし、かといって偽器兵関連の緊急事態に対応出来なくなるので、修行するという目的だけで魔法世界の辺境へと飛ぶ訳にもいかない。

 

 進むも引くも出来ぬ状況に陥っている時のこの救済の手は、仁にとっては非常にありがたいものであった。

 

 仁は手紙をしまうと箱を置き、エヴァンジェリンが口にしていた呪文と同じものを発する。

 

 

「えー……Convocavit hac terra, et ad terram meam perniciem」

 

 

 

 瞬間、球体は鈍い光を発し、どうなっているのやら箱から突起付きの脚立の様な物が飛び出して、地面に深く突き刺さり固定される。

 

 光を遮るように仁が球体へと手をかざすと、次に気が付いた時には仁の姿は岩礁の上から『は』消えていた。

 

 

 

 

 球体内部へと転送させられた仁がまず最初に見た物は、黒紫色に染まった不気味な空。そしてある程度は形を保っている和風の廃墟と枯山水、遠くにそれぞれ見える竹林に松林であった。

 テレビの、画面のみ抜き出した物体があるのは、恐らく外を確認するための道具だろう。

 

 エヴァンジェリンの時よりも球体内部の装いが和風なのは、もしかするとクウネルの趣味なのかもしれない。

 

 

(……なーにせよ、今はコレ一本に集中するのみだ……ようやく『存在する奇跡』に気が付きかけてーよ、ってところだからな………)

 

 

 

 雲の様な青い淀みが風も無いのに流れていくのを僅かに視線を上げて見やり、目を閉じた。

 

 

 そして力を解放し一気に引き出して……全て引きだす事の出来た当初よりも強くなった力を肌で感じて、希望を確かなものとして掴む為の特訓を開始する。

 

 

 

「オオォ……オオオォォッ―――!!」

 

 

 

 辺りのモノを複雑怪奇な軌道で無作為に飛ばさせながら、『死』はそこにあり迫っているのだと嫌でも実感させる圧力を放ちながら……群青色に染まる大きな力の塊を出現させて。




 仁にも一筋の光が差し込みました……はたして彼は[禁ジ手]を会得できるのか?


 ……それと先に言っておきますが、原作でもぶっちぎりで燃える場面であるネギ&小太郎VSラカン&カゲタロウ戦は、コロシアム外から見た様な状況説明になり、つまるところ大幅カットとなる可能性もありますので(仁には殆ど関係ないので……)、まだ少し先ですがご注意ください。
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