「さて、今日はダンジョンに行くぞ」
「嫌です」
ゆんゆんがパーティに入ってしばらくたった今日は前回で金欠になり受けたクエストキールのダンジョンの隠し部屋の探索という依頼を受けた。
今回に関しては、一応この街で最強と言われている俺に依頼が舞い込んできたわけだ。
「んじゃ、三十分後に準備してここに集合だ」
「おい、私の話を聞いてもらおうか?」
当然の如く、反対するやつが一人いた。
まぁ、めぐみんの爆裂魔法なんてうったら俺達生き埋めだしな。いつかの魔王戦みたいに……。
だが、今回の目的はダンジョンの探索でも、宝でもない、
「安心しろ、今回はアクアさえいてくれりゃあどうにでもなる」
「?どういうことよ、それ?」
「あそこのダンジョンはアンデッド系と下級悪魔が生息してるんだよ」
「なるほど、アクアの専売特許だな」
俺の言葉にダクネスが納得する。
「でも、どうしてそんなこと知ってたんですか?」
「一応難易度未知数のクエストだ。リサーチくらいするさ」
ゆんゆんの質問に簡単な嘘を返す。
「ワンモアこのすば!」カズマ
「しっかし、わくはでるわ。きりがないなぁ」
「なんというか……ここまで大量のアンデット相手にして呑気にできるところを見せられると、カズマは相変わらず無茶苦茶だと思わされますね……」
「めぐみん……人をまるで人外のように言うのはやめてくれ結構傷つく……」
前回は弱さのせいで傷ついてたけど逆にここまで言われるとな…、これでもデリケートな心の持ち主なんで。
攻撃してくる、悪魔、アンデッド共に浄化魔法、上級魔法を食らわせながら、一番奥の部屋に向かっていた。
「それにしても、本当にアンデッドが沢山いますね」
「まぁ、一番奥にリッチーがいるからな」
『!!?』
あっ、いっけね。口が滑った……。
「かっ、カズマ、それはどういうことだ!?」
「……いやだって、こんなにアンデッドがいるんだぜ?となればダンジョンの主が上級アンデッドの可能性が一番高い。そんで、吸血鬼とかだったら蝙蝠なんかの眷属がいないのはおかしい、そうなると選択肢はもうリッチーしかいない」
「なっ、なるほど」
俺はいかにもって感じの理屈を並べて、納得させる。
「で、でも、だったら早くギルドに戻って報告したほうが…」
「その必要はないだろう」
「どうしてですか?」
「考えてもみろ、ここの主が人間と敵対するような奴ならこの近くにあるアクセルの街なんてとっくに地獄絵図だ」
俺の言葉を聞いて、あの辺一体を収めているダスティネス家の人間であるダクネスの顔が青ざめる。
「ところでゆんゆん、このダンジョンの名前は何だった?」
「えっと、キールのダンジョンですよね?」
「じゃあ、そのキールってのは誰だ?」
「確か、昔国最高と謳われたアークウィザードの名前、ですよね?」
そうゆんゆんが答えたとき、めぐみんが何かを察した顔になった。
さすが、こういうときは本当に勘がいい。
「リッチーになるためには魔法使いとして最高の次元まで自分を高める必要がある。そしてこのダンジョンを作ったのは国最高と言われたウィザード、こいつはただの偶然か?」
「なるほど、つまりカズマはこう言いたいんですね?魔道士キールはリッチーとなって生きていると?」
「正解だよ」
めぐみんが俺の言いたいことを的確に指摘してくれた。
「しかし、何故だ?最強と言われたアークウィザードが何故リッチーに?」
「んなもん、一つしか理由がないだろ?お前は、キールの英雄譚を聞いてなかったのか?」
「あぁ、そういえばここにくる前にカズマが話してた気がするわね」
そう、俺はここに入る前キールについての話をした。
かつての大魔道士キール、彼はある偉業を成し遂げ国王から何でも一つ褒美を得ることを許された。
彼が選んだのは、国王の妾の若い女性だった。彼女はご機嫌取りのために嫁がされた娘だったが城ではいつも虐げられていたそうだ。
その申し出に対し、国王は怒りキールを処刑しようとした、勿論キールはそれに反抗し、たった一人で国との全面戦争をおこした。
しかし、その後の彼を知るものはいない。
「では、キールがリッチーになったのは……」
「『愛する者を守るため』……」
そう言って、俺は隠し部屋に繋がる壁に触れた。
「そうだろう?大魔道士キール」
「ハッハッハ、参ったね。そこまで、バレているとは……」
壁が消え、現れたのは一つの悠長に喋る骸骨と、物言わなくなった、女性者のドレスを着込んだ白骨がベッドに横たわっていた。
「それが、例のお嬢様か?」
「あぁ、そうだよ、鎖骨のラインが美しいだろう?」
キールは俺が話したことを自身の体験談として改めて、四人に話した。前の俺ならただカッコイイとだけしか考えなかっただろうが、今の俺には彼の気持ちがよくわかる気がした。
誰かのために自身の身を投げ打つ、その精神が……。
鎖骨に関しては…悪いけどさっぱりわからん…。
キールは当然、自身の浄化をアクアに頼んだ。
早く、お嬢様のもとへ行きたいのだろう。
アクアが床に魔法陣を書いていると。
「少年……」
「ん?俺のことか?」
「あぁ、君の目は昔の私とよく似ている」
キールがそんなことを言う。
「大事なものを守ることに誇りを持っているものの目だ」
「……そんな大したもんじゃないよ。俺はただ」
アクア達を見ながら呟くようにキールに返す。
「あいつらに笑っていてほしいだけ、こいつは、いや、これが俺の望みだからな」
「フフフ、君とはもっと早くあってみたかったよ……。だが、もし生まれ変われたら酒の席でも付き合ってくれないか?」
「あぁ、構わない」
「準備できたわよ〜!」
叶えられるかもわからない約束をすると、アクアが魔法陣を書き終えたことを告げる。
……どうやら、お別れのようだ。
「ワンモアこのすば」キール
「神の理を捨て、自らリッチーになったアークウィザード、キール。女神アクアの名においてあなたの罪を許します」
……前も思ったが、あれは一体誰だろう?
「カズマ、何故だかアクアが本物の女神様に見えるのですが……」
「あぁ……、私の目にもそうみえる」
「私もです……」
……もう話しておいていいかもしれないな。
「まぁ、本物の女神だからな」
『!!?』
当然の如く、驚愕の表情で固まる三人。
「嘘ついて悪かったが、あいつは間違いなく、水の女神アクアだよ」
「なっ!?なんで、こんなところに女神様がっ!」
「まぁ、色々あってな、でも態度はいつもどおりにしたほうがいいぞ、あいつの場合、女神様なんて呼び方したら調子に乗るか、名前を呼んでもらえず拗ねるかのどっちかになるだろうからな」
『あ〜……。』
三人は納得の表情になる。
ゆんゆんもこの数日でアクアの性格を理解してきたようだ。
「目が覚めると、そこにはエリスという不自然に胸の膨らんだ女神がいるでしょう。もし再びお嬢様と会いたいのなら、それが男女の仲でなくどんな形でもいいというのなら、彼女に頼みなさい『もう一度お嬢様にあいたい』と。彼女はきっとその願いを叶えてくれるわ」
「感謝します……」
どうやらもう終わりのようだ。
「『セイクリッド・ターンアンデッド』」
アクアがそう唱えると同時にキールとお嬢様の遺体は光の粒子となって消えた。
俺は彼の冥福を祈るように静かに手を合わせた。
「ワンモアこのすば」アダルトカズマ
「それにしても、なんでカズマは私達まで今回の依頼につれていったのですか?あれなら、カズマとアクアだけで十分だったと思うのですが?」
キールを浄化したあと、またアンデッド共に追いかけ回されるのは困るので、『テレポート』でアクセルの街に帰ってきた俺達はキールから貰った財宝を売ってできた金で祝杯を上げているとめぐみんがそんなことを聞いてきた。
実を言うとその理由が俺が今回この依頼を受けた最大の理由だった。
「……知っておいてほしかったんだよ、リッチーになってまで愛する者を守ろうとした誇り高いウィザードのことを一人でも多くに」
口で話しただけでは、いつかは記憶から消えてしまうかもしれない。だが、目で見たものはそう簡単に消えない、俺はあの人の生き様を皆に知っていてほしかったのだ。俺に関しては誰一人覚えてる人がいないからな……。
あの人のことについてはきっちり知っておいてほしかったからな……。
俺はそんなことを考え、誰もいない席にコップをおき、そこに酒をつぐ、そして、自分のコップを軽くぶつけ、一気に飲み干した。
はい、このままだとストックなくなるのでこんどは十件来たら投稿しま〜す。