俺は部屋にて一人、先日クソ領主を地獄に叩き落としたときのことを考えていた。
何故だろう……。
なぜ、俺はアルダープ相手にあそこまで非情になれたのだろう……。
仲間を傷つけた、いや、傷つけようとしたそれに対しては怒って当然のことだった。だが、あのときの俺はバニルの言うとおりまさしく悪魔に相応しい出で立ちだっただろう。
何故あそこまで俺の心は黒く染まったのだろう。
考えてみればこの世界に来てから俺はおかしかった。
ニートでなくなったことを抜いても、ベルディアとの戦い、デストロイヤーとの戦い、いや、その他も全てのことがある一つのことに繋がる。
キールに言った自分の言葉を思い出す。
『あいつらに笑っていてほしいだけ』
そう、全てはあいつらに幸せでいてほしいが為……。
何故だ?
確かにあいつらは俺にとって大事な仲間であることには変わりない、だが、前回の俺はここまでのことをしなかった。
力が手に入ったからか?
いや、違う……。
理由はわからない、だけど、そんなくだらない理由ではないことだけはわかる。力なんてものは手段でしかない。問題はその手段をなんのために使ったのかだ。
いや、それも違うな……。
本当はもう気づいているはずだ……。
『私はカズマのことすきですよ?』
紅魔の里に向かう途中、めぐみんの言葉が頭をよぎる。
『やはり、私はお前が好きだ』
結婚騒ぎの果てにようやく帰ってきたダクネスが告げてくれた言葉が耳の奥で響く。
『ねぇ、カズマ!どうしてかしら!いつもと同じピンチな筈なのに私とっても楽しいの!』
家出したアクアと魔王城で再開して背中合わせに戦ったときの高揚感を思い出す。
「はぁ〜〜〜〜……。」
俺はとても、とても長いため息を吐き、頭を抑える。
「ったく、こんな簡単なことに気づかないとは……。」
精神年齢がもうすぐ二十歳になるっていのに俺の心はいつまでも女々しいなぁ。
そう、俺は……、
「あいつらに、惚れてたんだなぁ……」
「ワンモアこのすば……」アダルトカズマ(哀愁)
「最低だ……。」
俺自身、自分ができた人間だと思ったことはない。だが、まさかここまでのろくでなしとは……。
一度に複数の女性に惚れるとかどんだけ救いようのないやつなんだよ……。
「もう死のうかな?……そうだな、俺みたいなろくでなしは死んだほうがいいかもしれない……。よし死のう!」
部屋の窓を開き、そこから身を乗り出す。そして一気に地面に向かって、ダイ……。
「カズマ〜、クリスが用事があるって……。」
「…………。」
「…………。」
……ブ、しようとしたところで部屋にアクアが入ってきてお互い顔を見合わせ無言になる。
「……何をしてるのかしら?」
「……………空を飛んでみたくて」
「皆!今すぐ来て!カズマが自殺を図っているわよっ!!」
テンパって返した答えを一瞬で嘘だと判断したアクアが叫び、その声を聞いて階下にいた俺の仲間達がドタバタと部屋にやってきて、仲間を攻撃できない俺は用事で来たというクリスのバインドによってがんじがらめにされ、リビングに運ばれた。
『ワンモアこのすば!』アクア めくみみん ダクネス クリス ゆんゆん
「それで?何であんなことをしようとしたのかしら?」
縄で縛られ、リビングの床に正座させられた俺はみんなに取り囲まれ尋問を受けていた。
「いやだから、空を飛んでみたくて……」
「嘘おっしゃい!あのときの顔はこのままどこまでも落ちてやるって顔だったわよっ!」
適当に返した答えを未だに引っ張ってみたが、アクアに速攻で論破されてしまった。
「……カズマ、悩みがあるなら話してください」
「そうだぞ、私達は仲間じゃないか」
「そうですよ」
「アタシも友達として相談に乗るよ?」
めぐみん、ダクネス、ゆんゆん、クリスが優しい視線と言葉をかけてくれる。
「……俺のだめさ加減に自分で嫌気がさしたんだよ」
「カズマがダメ?どんな、冗談ですか、魔王軍幹部や大物賞金首なんてものを沢山倒してるカズマの何処が駄目なんですか?」
……ほんっっっと、この世界の俺は随分信頼されちまったもんだな。
もういっそのこと、吐いちまったほうが楽になるかもしれないな……。
「じゃあ、聞くけどよ?俺が複数の女性に好意を持ってるつったらどう思うよ?」
『…………。』
暫しの沈黙。
呆れているのだろうか?それとも軽蔑だろうか?
まぁ、今の俺の発言からしてどう思われても仕方ないとは思うが……
「それがどうかしたの?」
は?
何言ってんだ、この駄目神は?
「そうですよ、それがどうしたんですか?」
めぐみんまで……。
「いやだって、不純だろ?」
俺がそう言うと、アクアが「あ〜」と呟いたあと納得したように話した。
「あのね、カズマ。あんたがいたところでは、結婚は一夫一妻制だったでしょうけど、この世界では一夫多妻もそれほど珍しくないのよ?」
は?
どういうことだ?
前回の世界じゃ間違いなくこの世界も一夫一妻制だったはずだぞ!?
「……マジなのか?」
俺は恐る恐る、他の四人の顔を見る。
四人は揃って首を縦に振る。
………どうなってんだ?
「それで、それで?あんたの好きな女性とやらはどんな人なのかしら?」
「それは私も気になります」
「私もだな」
「わっ、私もっ!」
「う〜ん、私もあるかな〜」
……何なんだろうな……。
この世界は、まるで俺に後悔するなと言っているようだよ……。
「そのうち話してやるよ、俺の心が決まったらな」
『えぇ〜〜!』
多分、この世界は誰かが俺のために作ってくれた世界なのかもしれない。天が俺にくれた最後のチャンスなのかもしれない、答えてやれなかったアイツらの思いに答えるチャンス……。
俺は決して無駄にする気はない……。
「ねぇねぇ、誰なのよぉ?」
「ここまで話して、締めを話さないのはズルいですよ?」
「そうだぞ、男らしくビシッといってみろ!」
「わっ、私はカズマさんが嫌なら言ってもらわなくても……」
「ほらほら、はいちゃいなよ!」
だけど……、もう少しこのままでもいいかもな?
こんなただの日常を、なんでもない生活で楽しい幸せを味わっても。