「よしっ、来たな」
今日俺達はギルドから正確にはセナの依頼だが、それでリザードランナーの討伐に来ていた。リザードランナーは王様と姫様を倒せば散り散りになるので俺とゆんゆんが木の上から弓と魔法で同時に狙い撃ちにすることになった。アクア達は前回同様全員への補助魔法、足止めだがめぐみんだけは二体が倒れてもこちらに来たら爆裂魔法でぶっ放してもらうことになっている。
この依頼は俺が命を落とした依頼の一つだから、気を引き締めていこうと思う。
今回はゆんゆんもいるしアクアにもしっかり注意をして余計なことをしないよう言い聞かせてある(この依頼を成功させたら高い酒を買ってやると言ってあるので慎重になっている)。
「んじゃ、行くぞゆんゆん」
「はいっ!」
俺は弓を構え、ゆんゆんはワンドを構え呪文を詠唱する。
「ンッ!『狙撃』ッ!」
「『カーズドライトニング』!」
俺の弓とゆんゆんの黒雷が二体のリザードランナーを狙うが、
「あっ!?」
「やべぇ……」
ゆんゆんが狙っていた姫様ランナーへの攻撃が外れてしまい、こっちに突っ込んでくる。
「きゃあっ!?」
「ゆんゆんっ!?ってうわっ!」
ゆんゆんが魔法を外したことで焦ったのか木の上でバランスを崩して木から落ちてしまう。そして、それに驚いた俺も同じく落ちてしまう。
くっ、せめてゆんゆんだけでも……
「『ウィンドフォール』!」
「え?」
ゆんゆんの周りに風が吹き、落下速度が減速する。
俺もせめて首から落ちないようにして落ちる。
「いっつぅ……」
足から落ちたことにより右足に鈍い痛みが走る。これは捻挫でもしたか……。
「カズマさん、危ないっ!」
「なっ!?」
ゆんゆんの声で視線を足から上に上げると、二体のリザードランナーが俺の目の前まで走ってきていた。このままでは轢かれる!
ガシッ
「大丈夫か、カズマ!?」
そう思った瞬間俺の前にダクネスが現れて二体のリザードランナーを受け止めた。
「ナイスだ、ダクネス!」
俺は左足だけで駆け出し、腰の短刀で姫様の首をかっきり、その短剣をそのまま矢として弓に装填して、
「『狙撃』!」
王様の脳点に向かってはなった。
そして、それを見たほかのリザードランナーが散り散りになって走っていった。
「ふぅ、危なかったけどなんとかなったな……」
「あの状況からの機転は大したものだぞ」
「さすが、カズマね」
「……今回出番なかったんですけど」
「まぁまぁ、あとでちゃんと爆裂散歩に付き合ってやるからそう拗ねんなって」
そう言って今回爆裂魔法を打てなかっためぐみんの頭をポンポンと撫でる。
「拗ねてませんって!それより子供じゃないんですから頭をなでないでくださいよ!」
そんないつもの感じのノリで依頼を完遂させ。パーティのメンバーが労いの言葉をかけてくれる中ゆんゆんだけが俯いて暗い顔をしていた。
これはリーダーとしてちゃんとフォローしないといけねぇかな……。
「ワンモアこのすば!」ゆんゆん
「やっぱりここでの昼寝はいいもんだな……」
リザードランナーの討伐をギルドに報告した後、アクアに足の治療をしてもらい、すっかりいつもどおりに動けるようになった。さすが、女神の名は伊達じゃないってところか。
それで俺は今、屋敷の庭にて昼寝中だ。夏や冬ならゴメンだが、今は春日向ぼっこにはちょうどいい時期だ。
ここの屋敷にいた女の子の墓の隣で最近の冒険話でも話しながら寝転がる、最近仕事ばっかだったからこうやってのんびりできる時間がなかったからなぁ……。
「あれ、カズマさん?」
「ん?ゆんゆんか?」
俺は閉じていた目を開けて、俺を見下ろしている少女を見る。
「こんなところで何してるんですか?」
「ここでの日向ぼっこはなかなか気持ちいいんだよ、お前もどうだ?」
「じゃ、じゃあ、失礼します……」
そう言ってゆんゆんは俺の隣に腰掛けた。
「……あのカズマさん、今日はすいませんでした」
やっぱり気にしてたか……。
「問題ねぇよ、足の方はアクアに直してもらったし」
「でも、私がミスをして焦って木から落ちたりしなければ……」
「はぁ、一回のミスでそんなに落ち込んでたらこれから先やってけないぞ?」
「うぅ……」
「俺なんか失敗した数なんて数え切れねぇよ」
その言葉を聞いてゆんゆんはキョトンとした。
「めぐみん達に聞いたんですけどカズマさんって昔すごく弱かったって言ってたってその話本当なんですか?」
「そりゃあもう、最弱職の冒険者で成長値も低い、最底辺の冒険者だったからなぁ。おまけに性格もひん曲がってたよ、仲間囮にするなんざ毎度のことだったからな」
「えぇ……」
ゆんゆんは明らかに引いた表情をしている。
「幻滅したか?」
「いっ、いえ、随分イメージが違うなぁって……」
「最近俺もそう感じ始めたよ、随分変わったなぁって……」
「あの、カズマさん」
「どうした?」
「どうやったら、人って変われますか?」
え?
いきなり、そんな重い質問されても困ってしまうんですが。
その俺の気持ちを表情から察したのかゆんゆんが慌てて口を開く
「すっ、すいません、急にこんなこと聞いてしまって……」
「いや、別にいいんだけどさなんで急に?」
「……私って昔から人付き合いが苦手で友達もめぐみんくらいしかできなかったんです……」
……知ってる、ウィズの店で使った仲良くなれる水晶に写った一人誕生会を見たときは正直泣きたくなった。
「そうだなぁ……、人が変わるきっかけなんてものは大きく分けて二つしかないんだよ」
「?」
「一つは自分の成功から何かを学んだとき、もう一つは自分の失敗から何かを学んだとき」
「カズマさんはどっちですか?」
「さぁ、どっちだろうな……」
俺は笑いながらそういう。まっ、俺の場合は両方なんだけどな。一つの世界を通して成功や失敗を通したからには180度とまではいかないが、ほぼ対局にいるってのは変わりないけどな。
「要するに、変わりたいと思うんならどんなことにも挑戦することだな、それが成功しようと失敗しようとそこから学べることはあるはずだぜ?」
ゆんゆんにそう言うと彼女の顔はまた暗くなった。
「カズマさんは怖くないんですか?」
「何がだ?」
「失敗することですよ、街の皆が言ってましたよカズマさんは魔王軍の幹部や機動要塞デストロイヤーの討伐を成功させた英雄だって、でも、怖くなかったんですか?」
「失敗して死ぬことが、か?」
「はい……」
こんなことを言っといてなんだが、世の中には失敗できないことは山のようにある。命をベットすること……。それもその一つだ。
まぁ、昔の俺なら怖くて仕方なかったかもしれないそれこそまともに動けなくなるほどに……。
だけど、今は違う……。
俺は起き上がってゆんゆんを見据える。
「怖くないって言ったら嘘になるけどさ、それより怖いものがあるからそんなもの大したもんじゃない」
「死ぬより怖いこと?」
空に右の手のひらをを空に掲げてそれをゆっくりと閉じる。
「自分の本心を隠して大事なものを掴みそこねたら俺の心は死ぬ……それが何より恐ろしいことなんだ」
「……………。」
ゆんゆんは俺の言葉に押し黙ってしまう。この年の女の子には少しヘビーな話だったか?
「まぁ、ようするに……。」
俺は飛び起きるように立ち上がり、ゆんゆんを見下ろしながらいう。
「明日生きるために今逃げ出すよりも、今日を全力で生きるために戦う、そっちのほうがカッコいいだろ?」
笑いながらそう言うと、ゆんゆんは一瞬ポカンとしたあと直ぐに口元に笑みを浮かべた。
「ふふっ、そうですね。明日より今日を全力で生きる、私も頑張ってみます!」
よかった、俺にもこの子に元気を与えることができたようだ。
「さ〜て、小腹が空いたし三時のおやつでも作るかぁ〜」
「あっ、私も手伝います!」
「よ〜っし、ホットケーキでも焼くかぁ。アクアたちも呼んでくるか?」
「はい!」
彼女はとてもいい笑顔で俺に微笑み返した。
「っ!」
「?どうかしたんですか?」
「いや、なんでもないよ……」
いかんいかん、つい見惚れてしまった。
ただでさえ、三人もの女性に惚れてるっつうのに。どんだけ気の多い男なんだよ。まぁ、しゃあないかゆんゆんだって絶世の美少女と言われても納得する女の子だしな。
そうした内面を表情に出さず、俺はゆんゆんを連れ添って屋敷に戻っていった。
しっかし、本当に俺はいつからこんなキザったらしいセリフを言えるようになったのやら……。
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