もういちどこの世界に祝福を!   作:クロウド、

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今回はエリス様回です。


この女神と舞踏会を!

「それで?俺を呼び出した理由は?」

 俺は今日、クリスにこの間屋敷に来たとき話せなかったことをギルドで話したいとダクネス越しに伝えられそのクリスの前に来ていた。

「それがさぁ〜、最近ここの領主が行方不明になったじゃん?その領主ろくな噂がなかったんだけど神器を隠し持ってるっていう情報もあって今度その屋敷に忍び込むから手伝いを頼もうと思って」

 なるほどね……。

 念のために回収しといて正解だったな。

 

ゴソコソ……

 

 ポケットをあさり、あの豚の屋敷からくすねたものを取り出す。

「ひょっとして、これのことか?」

「えっ!?それって!」

 俺がポケットから出したそれを見てクリスは驚きの声を上げる。

 あの豚の前に現れる前に隠れて回収しておいた2つの神器を。一つはアイリスの持っていた身体を入れ替える神器、そしてもう一個はランダムでモンスターを召喚する神器、あのマスクウェルって悪魔はこいつで呼び出されたんだろう。

 正規の方法で呼び出してないからその正体に気づかなかった、マヌケな話だな……。まぁ、同情する気なんざサラサラないけどな。

「ほらっ」

「おっとっと……」

 俺はそれをクリスになげ渡す。

「なんで、君がこれを……」

「さぁ、なんでだろうな?」

 俺はそれだけ告げてその場をあとにしようとしたが、

「ちょっと待って!」

「なんだよ?」

「なんだよ、じゃないでしょ!なんで君がこれを持ってるの!?」

「言っただろう、これはたとえ女神だろうと閻魔にだろうと教えるわけにはいかないって」

 俺は真剣な表情でそう返した。

 互いににらみ合い、沈黙が降りる。

「はぁ、わかったよ。でも、変わりにもう一仕事手伝ってもらうよ?」

 もう一仕事って、

「神器の回収か?」

「うん、夜迎えにいくからここの前に来て」

 俺に拒否権は……なさそうだな。

「わかった、わかった、ただしこれ以上の追求はなしな?」

「わかったよ」

 そう言って俺達は一度その場で別れた。

 

「ワンモアこのすば!」クリス

 

「遅いなぁ……」

 言われた通りの時間に来てみるが、クリスはなかなか姿を見せなかった。

 早くき過ぎたのか?

「おっ、お待たせしました」

「やっときた……か?」

「あの、変じゃありませんか?」

 やってきたクリスの姿はどちらかというとエリス様に近い外見で、おまけに今まで修道服のようなものではなく、舞踏会などで着ていくような服だった。

 どうしよう、すげぇ似合ってる。

「あの、どうかしましたか?」

「……いや、なんでもない。ってか、どうしたんだよその格好?」

「えっと、実は今日のターゲットは……」

 クリス(エリス)曰く、今日のターゲットの神器はある貴族が所有しているらしいのだが、その神器は今夜のダンスパーティの景品になるらしい。そして、ダンスといえばパートナーというわけで……。

「俺に白羽の矢がたったと?」

「はい、今回の貴族は悪徳貴族というわけではありませんし、正規の方法で手に入れたいので……」

「それはいいんですけど、なんでエリス様?」

「貴族のダンスパーティなので、盗賊のときよりも女神の状態のほうがいいと思いまして……」

 まぁ、確かにそうかもな……。

「つうか、俺がパートナー!?俺ダンスなんてやった経験ないですよ!」

「大丈夫です、カズマさんのステータスならなんとかなります!」

 いや、そんなこと言われましても困るんですけど……。

「取り敢えず、これに着替えてきてください」

 そう言ってエリス様は風呂敷を取り出す。中身を見てみると、そこには黒い礼服が入っていた。

「ドレスコードってやつですか……」

「はい、待っていますから早く着替えてきてください」

「はぁ、似合う気はしないですけどわかりました」

 

「ワンモアこのすば!」アダルトカズマ

 

「あの……、場違い感半端ないんですけど?」

 俺達は件の屋敷の前に来ていた。そこには当然の如く、何人もの貴族のカップルがいる。

「大丈夫ですよ、ここの貴族の方は心が広いことで有名ですから」

「いや、俺こういうところあんまなれてないんですけど……」

 前の世界では見ているだけだったからいいようなものの今回踊るのは俺自身、割と緊張するなぁ……。

「はぁ、取り敢えず……」

「え?」

「参りましょうか、お嬢様?」

「ふぇっ!?」

 俺はエリス様の手をとって、屋敷の中へと歩いていく。

 女性をエスコートするのは男の嗜みだからな……。

 

「わっ、ワンモアこのすばぁ……」エリス(テレ)

 

「競技は自由ダンス制か……」

「そうみたいですね……」

 今回の舞踏会での優劣を決める方法は制限時間内に踊ったペアの中で最も美しく、踊れたものに景品を与えるというものだった。

 制限時間は一時間……。

「初心者である俺達はもう少し様子を見て、踊り方を知ったほうが良さそうですね」

「そうですね」

 そう言っている間に曲が流れ始めて数人の組が踊り始める。俺達はその動きを食い入るように見て、動きを覚える。中々、複雑だな……。

「申し訳ありません、そこの方」

「えっ?私ですか?」

「はい、良ければ私と踊っていただけますか?」

 いつの間にやら近づいていきた、髪と目の色から貴族なのだろうという男がエリス様にダンスを申し込んできた。ここでのダンスは自由制、確かに自分のパートナーと踊る必要性はない、何よりエリス様の容姿だ、引く手数多だろう……。

 ほら、言ったそばから人の波がよってきた。

 エリス様はなれないことにアワアワしている。あのエリス様も可愛いけど、流石に可愛そうだし助けるか。

 などと、考えているとクリスの前に見るからに傲慢そうな肥え太った貴族が表れて、その手を無理矢理とろうとする。

 

パシッ

 

「なっ!?」

 俺はその手が届く前にクリスの前に表れてその手を掴む。

「カズマさん!」

「なんだ貴様は!?」

「この女性のパートナーですよ」

 相手は貴族出来るだけ丁寧な答えを返す。

「貴様が?見た目からして平民であろう。貴様のような下賤な輩にその女は似つかわしくない私に譲れ」

「フッ、フフフフ……」

「何がおかしい!?」

 俺は笑みを隠しきれず口を抑えたがそれでも笑い声がこぼれてしまったようだ。

「いえ、その言い方ではまるで自分には相応しいと言っているようなので……」

「そう言っている!」

「はぁ、呆れた人ですね……」

「なんだと!?」

 俺は思ったことを率直に言ってやった。

「確かにこの方は私には相応しくありません、ですが、女性の気持ちを考えず物のように扱うような人間は論外です。要するに……あなたにはには一生届かない花だということなので、とっとと失せてください」

「きっ、貴様ぁ!!」

 豚貴族二号が激昂して殴りかかってくるが、俺は片手でその拳を掴む。こんな鈍い拳なんざきくわきゃないだろう。

 さて、感情に任せて言っちまったけどどうしたもんかねぇ……。などと考えているとその場に一人の初老の男性が現れる。

「これはなんの騒ぎかね?」

「アルクレス様っ!?」

 アルクレス?確かこの舞踏会の主催者の貴族の人か。

「ちっ、違うのですアルクレス様!この者が私に無礼を!」

「ほう、私の目には他人のパートナーを無理矢理連れて行こうとして返り討ちにあったように見えたが?」

「グッ……」

 何だ見てたのか、この人もいい趣味してる。

「貴様のような貴族の面汚しはこの場にいる資格はない!早く出ていけ!」

「くっ!」

 アルクレス様の一喝によって豚貴族二号は悔しそうにその場を走っていった。

「申し訳なかったな……。」

 アルクレス様が俺達に謝罪をいれる。

「しかし、あんな貴族ばかりではないことを知ってもらいたい」

「いえ、わかっています。こちらこそ、騒ぎを起こしてしまい申し訳ありませんでした」

「そう言ってもらえると助かる。しかし、君は大した男だな。貴族から女性を守るために前に出るとはまるで物語に出てくる騎士のようだったぞ」

「光栄です」

「君達の踊りには期待しているよ」

 そう言ってアルクレス様はその場をあとにした。

 

『ワンモアこのすば!』アダルトカズマ エリス

 

「さて、そろそろ行きましょうか?」

「はい」

 俺はエリス様の手をとって前に出る。時間的にはこれが最後の曲、失敗するわけにはいかない。

 

♪〜〜♪〜〜♪〜〜

 

 曲が流れ始め、俺達は含むペアが踊りだす。

 俺はというと高ステータスに物を言わせて、さっきまで踊っていたペア達の動きを真似る。

 エリス様もその動きについてきている。

 そのおかげか余裕ができたのか、エリス様が俺に話しかけてくる。

「あの、カズマさん……」

「なんでしょう?」

「さっきは助けてくれてありがとうございました」

「いえいえ、女性を守るのは男の役目ですから」

 そう言った、まま俺たちは最後まで踊りきった。

 

「ワンモアこのすば!」エリス

 

「……なんとかなるもんですね」

「はい、目当ての神器も回収できましたしね」

 結果的に言って舞踏会の優勝は俺達になった。

 はぁ、でも精神的に疲れたわ……。

 まぁ、でも……、悪いことばかりじゃなかったな。

「いいものが見れたしな」

「なんですか、それ?」

 俺の呟きにエリス様が反応する。

「いつもは活発か、清楚なエリス様のドレス姿……」

「えっ!?」

 エリス様が顔を真っ赤にさせる。

 いっけね、つい口が滑っちゃった……。

「まぁ、あれですよ。やっぱり、女性はああいう服がよく似合う」

 女性ならやっぱりああいうキラびやかな姿が一番らしい。

「そっ、そうですかね?」

「そうですよ」

 それも、エリス様みたいな人にはな……。

「それじゃ、俺は帰りますから」

「はっ、はい、今日はありがとうございました」

 そう言って、俺達はその場で別れた。

 

 そのとき、エリス様の口元に笑みが浮かんでいたのを俺は気づかなかった。




次はウィズに行ってみようかなと思います。

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