「それじゃあ、どこ行きましょうか?」
隣に立っているウィズが俺に向かって聞いてくる。俺達は今、アクセルの街の商店街の中でも特に賑わう場所にやってきていた。
「そうだな、その前にひとつ聞きたいんだが」
「なんですか?」
「なんで俺達、デートみたいなことしてんの?」
俺はずっと聞きたかった質問をウィズに問い掛けた。
こうなった経緯は約三十分前に遡る。
「ワンモアこのすば!」 ウィズ
俺は月に一度のライターの在庫の確認のためにウィズの店に向かっていた。店の前まで来て扉に手をかけると、
「『バニル式殺人光線』!」
「きゃああああああああ!!」
中から、殺人光線の光とウィズの絶叫が響いてきた。
はぁ、またかよ……。
「ウィズー、バニルー、邪魔するぞ」
「ムッ、小僧か。いいところに来たな」
こいつの言ういいところに来たなっていうのは物凄く嫌な予感しかしないのだが。取り敢えず、倒れて黒焦げになっているウィズにドレインタッチで生命力を与える。
「すいません、助かりました」
「いや、別にいいんたが今度はどんなビックリ商品を仕入れて怒られたんだ?」
「なんでわかったんですか?」
いやだってなぁ……。この光景、ぶっちゃけ前の世界から見慣れちゃってるし。
「今回その穀潰し店主が仕入れてきたのはこれだ」
そう言ったバニルが赤い液体の入った容器を俺に見せてきた。見たことない色の魔法薬だな。
「こいつの効果は?」
「飲んだものの魔力を一時的に倍以上に引き上げるというものだ」
ほほう、それはそれは便利なアイテムで。まぁ、ウィスが仕入れたものがそれだけなわけないけどさ。
「で、副作用は?」
「うむ、飲んだものは引き上げられた魔力に耐えきれずボンッとなる可能性があるというものだ」
「んな危険なものよく、仕入れられたな」
ボンッて、流石にボンッはないわ。
「それで、お前の言ってたいいところに来たってのはどういう事なんだ?言っとくがそんなもの買うつもりは一切ないぞ?」
「そんなことではない、小僧お前はそこの役立たず店主と昼過ぎまででかけてもらいたい」
は?いきなり何いってんだこいつ?
「お前から買い取った知的財産権を今日取引のために使うことになっているのだ。だが、その商才なし店主がいたのでは商談ができん」
「ヒドイですよバニルさん!」
「いや、これは全面的にバニルに賛成だわ」
「カズマさんまでっ!!?」
しまった、ウィズがぐずってしまった。まぁ、事実だから仕方ないんだが。
「さあさあ!我輩はこれから大事な商談だ、出てった出てった!」
バニルに追い出される形で店を出た俺達は仕方なく商店街に向かった。
「ワンモアこのすばっ!」バニル
さてさて、仕方なくウィズとデートをする羽目になってしまった俺は商店街をのんびりと見て回っていた。
興味のある店があったら言ってくれとは言ったが。
「あっ!見てくださいカズマさん!美味しそうな焼き鳥ですよ!」
「あっちにはコロッケもあります!」
「向こうにはたい焼きが!」
なんでかウィズが反応するのは食べ物ばかり、それはちょっと女性としてどうなのか言いたくなる。
「なぁ、もうちょっと食べ物以外にも目を向けないか?」
「すみません、いつも金欠なせいであまり贅沢な食事をしたことがないので」
俺は無言で目元を抑える。悲惨だ、相変わらず悲惨すぎるぞ、貧乏店主。
今の俺にできるのは、
「……好きなだけ食え。払いは全部俺が持とう」
「え?いいんですか?」
「勿論だとも」
今日だけは贅沢させてやってもバチは当たるまいて。
「ワンモアこのすば」アダルトカズマ
「ふう」
「満足したか?」
「はい、とても」
ある程度の食べ歩きを終え丁度いいところにあった喫茶店で一息ついていた。ティーカップに注がれた紅茶を口に入れる。なんだかんだでデートみたいな要素全く無かったな。
「ここの紅茶上手いな」
「えぇ、私も始めてきましたがとても美味しいですね」
「なんだ、ウィズもここに来たの初めてだったのか?」
この店で休もうと言い出したのはウィズだ。てっきり来たことがあるものとばかり。
「意外だな、ウィズもこの街に住んで長いだろうからてっきり来たことがあるのかと思ったんだが」
「フフフ、私だってこの街のこと全部わかってるわけじゃないんですよ?お店も忙しいですし」
「いつも閑古鳥が鳴いてるのにか?」
「ヒドイですよカズマさん!」
「悪い悪い」
俺の言葉にむくれるウィズ。元がいいからやっぱりどんな表情になっても綺麗なもんだな。
そういや、ウィズがこの街で店を構えてるのって昔組んでたパーティメンバーと初めて出会った街だからなんだよな。
「ウィズってさ、リッチーになったこと後悔とかしてないのか?」
思わず口にしていた言葉に俺は慌てて口を閉じる。これはあまりにもデリカシーのない質問だ。
だが、対するウィズは気にした様子もなく答えてくれた。
「そうですね、全くなかったと言えば嘘になりますね」
「なかったってことはもう」
「はい、もう全くありませんよ。自分で決めた道ですから、それに慣れてみるとリッチーも悪くはないですから」
そう言って笑うウィズはどこか儚げに見えた。やっぱり何処か寂しいところがあるのだろうか?自分と同じ時間を生きてくれるものがいないというのは。
「そういうカズマさんはリッチーに対してどういう印象がありますか?」
「俺?俺は別にリッチーがどうのとか俺にはどうでもいいんだよなぁ」
「? どういうことですか?」
俺の答えにウィズは疑問符を浮かべて問い返す。
「だってそうだろ? 身体がリッチーであろうとなんだろうと人間の心を持ってるならそれは人間と同じなんじゃないのか?まあ、俺の知ってるリッチーが恋人の為に国に喧嘩を売ったり、仲間の呪いを解くためにリッチーになるようなお人好しだから言えるんだろうけど」
「確かに、そうかもしれませんね」
ウィズは俺の回答に笑みを浮かべる。
どうやら、傷つけずに済んだようだ。それに安心したティーカップを傾けながらつい口が滑った。
「そもそも俺は自称究極の男女平等主義者だぜ?ウィズがリッチーであろうがなかろうが俺の眼から見たら、ウィズはどこか抜けてる美人店主ってだけだぜ?」
「えっ?」
紅茶を口に入れてハッとする。しまった、普通に考えたら今のセリフって思いっきり口説き文句じゃないのか!?
おそるおそる、ウィズの方を見てみると、
「えっ、あの…その…」
ほらあああああああああああああ!!!
顔真っ赤にしてもじもじしちゃってんじゃないかぁ〜!畜生、可愛いなぁ!もぉーーー!!!
そのままなんとなくぎこちない気分で魔法店に戻り、その時のバニルのニヤニヤ顔に猛烈にぶん殴りたくなったのは言うまでもない。
ん?ちょっと待てよ……。
「おい、お前まさか……」
こいつがあらかじめさっきみたいなやり取りをすることを知っていたとしたら……俺達が羞恥の悪感情を出して帰ってくると知っていたら。
「フハハハハハ!!今更気づいたかラブコメ小僧よ!お前と貧乏店主の羞恥の悪感情、実に美味であるっ!」
ビキッ!
あんれ〜、おかしぃなぁ……。俺の額に何やら血管が浮かび上がるような音が聞こえたなぁ〜。
………一瞬、ほんの一瞬まじでアクアと協力してこいつをこの世から消滅させたいと思った。
久しぶりすぎて無茶がある気がしますが次から頑張ります。いやぁ、仮面ライダーにはまったり、バイトを始めたり忙しくて投稿が遅れて申し訳ありませんでした。