俺は慣れたアクセルの街を歩き目的の場所にたどり着いた。
アクセルの街の冒険者ギルド、魔王討伐の為にしばらく離れてたせいで、酷く懐かしく感じる。
考えてみるとここから、全部始まったんだよな。アクアと初めてクエストを受けてジャイアントトードに泣かされ、パーティを募集してめぐみんとダクネスに出会って、そこから面倒事に毎日のように巻き込まれた日々。今思い出すと、どれも鮮明にまぶたの裏に映る。
大変だったけど楽しい日々だった。
いかん、涙腺が緩く……。
「ちょ、どうしたの急に泣き出したりして!」
「すまん、ちょっと思うところがあってな……。」
思わず涙が流れていたらしい。慌ててジャージの裾で目元を拭う。
しっかりしろ、これからあの頃よりも楽しい日々を作ればいい。
「それじゃ、いくぞ」
そう言って、俺はギルドの扉を開く。
開いた先は俺の見慣れた光景、一度は会ったことのある冒険者たち。でも、こっちの世界じゃ初対面なんだよな。
俺は冒険者登録をするため、人が並んでいない受付に行こうとしたが、大事なことをすっかり忘れていたことに気づいた。
「いっけね、登録料のこと忘れてた……。」
「はあ、あんた何やってんのよ!お金もなしにどうやって冒険者登録するのよ!」
こんのアマ〜〜。
しかし、どうする?近くでバイトでもするか?
顎に手を当て、考えていると視線の先にいる人物を見て、いいことを思いついた。
俺は迷うことなくそいつに近づいて声をかける。
「なあ、ちょっといいか?」
「ん?どうした、妙な格好の坊主?」
俺が声をかけたのは前回の世界でも何かと俺に声をかけてきたモヒカン頭の巨漢機織り職人。
「実は、俺達冒険者になりたいんだが登録に必要な金がなくて困ってるんだ。今日中になにか依頼をこなして返すから貸してもらえないか?」
「ほお、お前みたいなやつが冒険者としてやっていけるのか?」
「俺を甘く見るなよ、俺は後に魔王を倒す男だ。アンタはそんな男に貸しを作ることになるんだぜ?」
俺は人差し指を突きつけ高らかに宣言する。
すると、男は頭を抑え笑い出す。
「ハッハッハ、魔王を倒すとは大きく出たな。命知らずな奴め!!いいだろう、未来の英雄に貸しを作れるなら2000エリスくらい安いもんだ」
そう言って、男は機嫌良さそうに俺に金を渡してくれた。やっぱりこいつにはこのノリで合わせれば話がスムーズに進むな。
俺はその金を持って早速、登録に行く。
「すみません、冒険者になりたいんですが?」
「はい、では登録料としてお一人1000エリスをいただきますが大丈夫ですか?」
俺はさっき借りた2000エリスを受付の人に渡す。すると、受付の人は俺の身に覚えのあるものを出してきた。
「それでは、このカードに手をおいてください」
出た。俺の心のトラウマの一つ、ステータスを測る冒険者カード。
俺はここで最弱職のレッテルを貼られたんだった。あのトラウマをまた味わうことになるのか……。
俺はいやいや、カードに触る。そして、カードに文字が浮かぶと指を離す。
「これでいいですか?」
「はい、大丈夫ですよ。サトウカズマさんですね。ステータスは!!!?なんですかこの異常に高いステータスは?」
ほら、また運と知力が高いだけのクソステータス……。え?今なんて言った?
「……全てのステータスが上級職に匹敵、いえそれより高いかもしれません。スキルは?アークウィザードの上級魔法にアークプリーストの浄化魔法や退魔魔法それに支援魔法、クルセイダーやソードマスターの近接戦闘系のスキルに、盗賊のスキルまで!!!あなたは一体何者ですか!?」
え、え、えぇぇぇぇ!?
俺は受付のお姉さんが言っていることが全く理解できなかった。
「す、すみません。そのカード見せてもらえますか?」
「あ、すみません。興奮してしまって……。どうぞ。」
お姉さんは取り乱したことを謝罪して俺にカードを渡す。俺はカードを見る。
「な、なんじゃあこりゃぁぁぁあ!!!!」
そのステータスはかつての俺とは比べ物にもならないものだった。え?ナニコレ?マジでナニコレ?え?魔力なんてめぐみんの倍はあるよ?耐久力だってダクネスよりはるかに多いよ?
流石にこれはありえないだろ。故障か?でも、このスキルは俺が魔王を倒すために必死になって集めたスキル……。
ん?魔王?
「ああああああ!!!」
「ちょ、どうしたのカズマ!?」
「どうかされましたかっ!?」
「す、すみません、なんでもないです……。」
そうだよ、魔王だよ。これって魔王を倒したことで手に入れた経験値か!カードを変えたせいで倒した相手は記録されていないがあの貧弱ステータスからここまでなるにはそれ以外ありえない。
「あの、凄腕の冒険者だったりしますか?ひょっとしてカードを紛失したんですか。じゃなきゃそんなステータスになるわけ」
「あっ、すみません。そうなんです、ハハハ、なくしたっていうのが照れくさくて」
俺は笑いながら誤魔化しお姉さんの言葉を流す。
「では、職業の選択をお願いします」
「職業……。」
俺は冒険者カードの職業欄を見る、そこには前回と違い様々な職業がある。中にはソードマスターやアークプリースト、アークウィザードという上級職もある。
だが、俺の職業はもう決まっている。
「……冒険者で、お願いします」
「え、冒険者ですか?最弱職と言われる冒険者ですよ?」
「はい」
俺は驚くお姉さんにはっきりと返す。
俺にとってこの職業は、言うなれば俺の今まで歩んだ道そのものだ。これを捨てたくはない。
「……わかりました。」
お姉さんは俺の表情からなにかあると思ったのだろうか?納得はしてなさそうだったが了承してくれた。
「さ、次はアクアだ」
「わかったわ」
どうやら、俺達の話を聞いてなかったようだ。転生した直後にこんなステータスだったら説明めんどくさいから助かったぜ。
「えーと、アクアさんですね。あなたもすごいですね!知力と運のステータスが平均より低いですが他は全部平均以上ですね!」
「へぇ〜、まぁ私女神だし、当然よね!!」
「は、はあ…。」
お姉さんはアクアの女神宣言に渋顔になっている。完全に痛い子だと思われてるなぁ……。
「職業はエレメンタルマスターやアークプリーストと上級職の適性がありますが、どれにします?」
「そうね、女神だし浄化の力のあるアークプリーストにするわ」
「わかりました。それではアクアさん、カズマさん、ギルトへようこそ!今後のご活躍にギルド一同期待しております!」
前回と違い受付のお姉さんに洗礼を受ける。ヤバイ、ちょっと泣きそう。
さて、早速依頼にいくか。俺が行く依頼はすでに決めている。俺は受付のお姉さんにそのまま依頼を受注する。
「すみません、ジャイアントトードの討伐って受けられますか?」
俺は宿敵の討伐依頼を受けることにした。