「確か、これくらいの時間帯だったはずなんだが……。」
俺たちはダクネスをパーティに加えてから毎日のようにクエストを受けていた。それも俺だけが一人で倒すわけではなくそれぞれがそれぞれの役目を担っているという感じでちゃんとパーティとして機能している。さすがに俺もいくらかの報酬はもらっている。と言ってもそれはほとんど貯金に回している。なぜって?懐かしの我が家を購入するために決まっているじゃないか。前の世界ではアクアが面倒くさがって墓場に結界を作ったのが回り回ってとんだマッチポンプみたいになってしまったが、今回はまっとうに買ってみせる。
そのためにはクエストを受けているだけではいくらか足りない。たまにルナさんに頼まれてソロで塩づけクエストを受けているがあれを足しても少し足りない。となれば商売で稼ぐ方法しかないわけだが、そのためにはあっておかなきゃいけないやつがいる。
直接店に行けばいいが後でアクアが「ゾンビメーカー」の依頼を受けたいとか言ったら困るので夜中、アクセルの町の共同墓地に俺は一人で来ていた。
「おっ、来たか」
ようやくお目当ての人物がやってきたようだ。
その人物はローブを被っているため顔は見えあないがこの墓地にこの時間帯に来る人物なんて一人しかいない。
「待ってたぜ、ウィズ」
「!!!」
俺が、彼女の背後から潜伏で現れ。声をかけた。
「あ、あなたは誰ですか?」
ウィズは明らかに俺を警戒している。当然か初対面の人間にいきなり名指しで声をかける人間なんて警戒しない人間なんていないだろう。いや、人間じゃないんだが。
「ああ、そう警戒しないでくれ。俺は別にあんたを浄化しに来たプリーストってわけじゃない」
「浄化って、どういうことですか?」
「だって、お前リッチーだろ。おまけに魔王軍幹部だし」
「な、なんでそこまで知ってるんですか!?お願いしますどうか見逃してください!!」
だめだ、完全におびえられてる。ファーストコンタクトミスったか?
「いやだから、俺は別にお前を浄化しに来たわけじゃない。お前が人を傷つけたことがないこともリッチーになった経歴も知ってる。ついでに言うと、幹部らしいことは魔王城の結界の維持以外してないってことも知ってる。いくらリッチーとはいえ善良なアクセル市民を問答無用で浄化なんてしないよ。今日は話があってきたんだ。」
「……話ですか?」
ウィズは少し警戒を解いてくれたらしい。
「ワンモアこのすば!」 アダルトカズマ ウィズ
「つまり、あなたの作ったものを私の魔道具店で扱ってほしいと?」
「ああ、そうなんだ。」
俺は一通り話すと、クエストの報酬で作ったライターを見せる。
「これ、一応試作品を持ってきてるんだが」
俺はそのライターをウィズの前で使ってみせる。
「随分小さいですね、簡単に火がつけられるとは初級魔法である『ディンダー』にスキルポイントを割り振りたくないという人も結構いますので需要もあるでしょうね。でもなんで直接店に来るのではなくここで待ってたんです?」
「ああ、実は夜な夜なお前の魔力に反応したゾンビどものせいでゾンビメーカーが現れたってことで討伐依頼が出てるんだが、うちのパーティにはアンデットを目の敵にする狂暴アークプリーストいるんだ。あいつがそのクエストのこと知ったらマジでお前のこと消しに来る」
「ひぃぃぃ!!」
しまった、驚かしすぎたか。
「まあ、そんなわけでここの浄化は俺が引き受けようと思ってな」
「え?でもあなたはプリーストではないんですよね?」
「ああ、でも一応浄化魔法は使えるぞ『セイクリッド・ターンアンデット』」
俺は最上位の浄化魔法を使い墓地に霊たちを浄化した。
「ほらな、できただ、ろ……。」
振り返ると薄くなったウィズが……。どうやら俺の魔法に巻き込まれたようだ。
「ウィズぅぅぅ!!」
「ワンモアこのすば!」アダルトカズマ
「川の向こうから慌てて私を追い返そうとする昔のパーティメンバーが見えました」
「マジごめん」
俺は消えかかっていたウィズに慌てて『ドレイン・タッチ』で俺の生気を与えて何とか消えないようにした。
「いえ、それよりアークプリーストの浄化魔法に私と同じリッチーのスキルである『ドレイン・タッチ』が使えるなんて。」
「俺は冒険者でな、おまけにレベルが高すぎるせいでほとんど上級職に引けを取らないんだ。」
「そうなんですね」
「んじゃ、俺はそろそろ帰るよ。話は明日店に行ってするよ」
「わかりました、お待ちしています」
俺たちはそういって、その場所を離れた。
「ワンモアこのすば!」アクアめぐみんダクネス
「アクア、頼むから会って即浄化みたいなことは勘弁してくれよ」
「不本意だけどカズマの顔に免じてそれだけはやめてあげるわ」
俺の顔に免じてか前の世界では絶対に言われなかった言葉だ。
今日はパーティメンバーにウィズのことをところどころ端折って話し、みんなでウィズの魔道具店に向かっていた。
「お~い、ウィズ。来たぞ」
「あ、カズマさん。いらっしゃいま、ひぃぃいぃ!!」
「アクア、そんな殺気を向けないでやってくれこいつは悪いアンデットじゃない」
「はぁ!?何言ってんのカズマ、アンデットなんて腐ったミカンと同じよ!!」
だめだこりゃ。仕方ない。
「ウィズ、お前がリッチーになった経緯をこいつらに話してもいいか?」
「え、いいですけど」
「ワンモアこのすば!」 アクア
「なるほど、そういう経緯があったのか」
「確かに悪いアンデットではないようですね」
「その悪魔ぶっ飛ばしていいかしら?」
いや、アクアバニルにはまだ使い道があるから勘弁してくれ。
「というかなんでカズマがそんなことを知っているんですか?」
さて、どう言い訳をしようか。
「実は俺はさ高ステータスのせいか俺とかかわった人間の過去と未来の一部が時々見えるんだ。」
俺がそういうとめぐみんが目を輝かせた。ダクネスは少し動揺した。
「カズマにはそんな力も持っていたんですね!!」
「な、なぁ、カズマ。その能力とやらは私のことも見えるのか?」
どうすっか、言うか?いや、みんなにはバレない程度にいうか。
「安心しろよ、お前がどんな立場の人間だろうと俺にとってはただの仲間だ。」
「……ありがとう」
全く、つってもこいつが貴族令嬢だなんて誰が信じるんだか。
「それで、カズマはなんで商売をしようとしてんですか?」
「ああ、実は今まで受けたクエストの報酬のいくらかを貯金をしてたんだが。もう少しで屋敷が買える金額に届くんだよ」
「カズマ、そういうことですか。報酬もらっても大して物を買わないと思ったらそういうことですか!!」
「お前というやつはまた一人でそんなことをしてたのか!!なんで、言ってくれなかったんだ!!」
めぐみんとダクネスが俺につかみかかってきた。
「いや、悪かったよ。黙ってたのはもともと一人でも稼げる金額だったから大丈夫だと思ってたんだよ!!」
「それで、その屋敷の金額は?」
「五千万エリス」
「「「はぁぁぁぁ!!」」」
ちょ、君たちうるさい。
「五千万って、他のお金どこから集めたんですか!?」
「ん?ルナさんに時々塩漬けクエストを頼まれてなその報酬で」
俺の言葉にダクネスやめぐみんが完全に呆れ始めた。
「そんなことまでやってたのか……。」
「仕方ありません、こうなればカズマの商売を全面的に協力しましょう。」
「そうだな」「そうね」
その後、アクアの宴会芸やダクネスやめぐみんがギルドでの商売許可をもらい、最近名の売れたパーティメンバーということで注目を集め、とんでもない量のライターが売れ、売り上げの一部をもらったウィズが涙ながらに礼を言ってきた。