「ふぁぁぁ~~。」
俺は屋敷の自室、そのベッドの上で目を覚ます。
まだ重い瞼を覚ますために洗面台で顔を洗う。そして、自分の頬を両手でたたき、気合を入れる。
「よしっ、今日もがんばるぞ!!」
おまけに今日は決戦だからな。
「ワンモアこのすば!」アダルトカズマ
この二度目の世界における俺、サトウカズマの朝は早い。朝六時に起床し、朝食の下ごしらえ、筋トレ、剣の素振りと朝の日課を片付ける。この屋敷に住み始めてからこの朝の日課は毎日欠かさずやっている。理由は一つ。俺は高いステータスにものを言わせて強く見せているだけだ。それを完全に使いこなせてるわけじゃない。俺には過ぎた力だ、まずはその力を受け止められる器を作らなければいけないからな。
自分で言うのもなんだが、昔の俺に見習わせたいぜ。
筋トレを終わらせ朝食を完成させる前に一度シャワーでかいた汗を流す。
そして、朝食を仕上げ皿に盛り付ける。今日の朝食はトースト、コーンスープ、ポテトサラダ、ハムエッグという献立だ。こちらの世界でも料理スキルを持つ俺が主に台所に立っているんだが最近ではすっかり趣味になってしまい栄養にも気を使い始めた。
と、そろそろ二人が起きるころか。
おっ、言ったそばから。
「おはようございます、カズマ」
「カズマ、おはよう」
さらに料理を盛りつけ終わったところで寝間着姿のめぐみんとダクネスが起きてきた。二人はいつもこれくらいに起きてきてくれるのに、
「おはよう、めぐみん、ダクネス。アクアはまた寝坊か?」
「そうみたいだな」
「しょうがないですね、私が起こしてきます」
そういって、めぐみんはアクアを起こしに台所を出て行った。
ん?
ダクネスがなぜか俺のことを見ている。
「どうした?」
「いや、よく似合ってるなと思って……。」
ダクネスが俺のエプロン姿を見ていった。
「そうか?見慣れてきただけじゃないか?」
「そうかもしれんが、こうしてみるとただの年相応の少年に見えるな。とても魔王軍の幹部を一人で倒した男にはとても見えん」
ベルディアを倒してから早二週間。たまにクエストを受けるだけで、うちのパーティは基本そのほかは自由行動で平和な生活を送っていたからな。
----昨日までは。
「おいおい、強く見えないのは結構気にしてるんだから言わないでくれよ」
「そうか?それはすまなかったな」
そういって、俺たちはお互いに笑いあう。
「二人とも、アクアを起こしてきましたよ」
「ふぁぁ、まだ眠い。ご飯食べたら寝ていい?」
「悪いなアクア、今日はみんなでギルドに行かなきゃいけない。」
「えぇ~、なにしにいくのよ?」
「もうすぐわかるさ」
取り合えず今は平和に朝食をとろう。
「わんもあこのすば~~」 アクア(眠)
カラン、カラン。
「ウィズ~、いる、……か?」
ギルドに行く前に用事のあるウィズの魔法具店によった俺は絶句した。
「ヒッグ……ヒッグ……。あぁ、いらっしゃ…ヒグッ…ませ」
カウンターで顔を伏せたウィズが涙を流していたからだ。
「えっと、ウィズ何があったのか聞いていいですか?」
なんて言っていいのかわからない俺に代わって、めぐみんが泣いている理由を聞く。
「そ、それが……。」
ウィズの話を聞くところによるとライターを売ったお金で新しい魔道具を仕入れようとしたらしいんだが、店のおじさんたちに進められたものを全て買っていたら食費まで使い切ってしまったらしい。おまけに最近ライターが飛ぶように売れたせいでみんないくつか持ってるからしばらく誰も買いに来ないという状況に涙を流していたらしい。
「それで、いったいどんな魔道具を買ったんだ?」
「これです……。」
ウィズが取り出したのは腕輪型のマジックアイテム。あれ?これって確か……。
「これは、盗賊職に必須の『スティール』が使えるようになる魔道具です」
「ほぉ、なんだ結構売れそうな魔道具じゃないか」
何も知らないダクネスがそんなことを言っている。
「ダクネス、そんなうまいものがそうそうあるわけがないだろ」
「む?どういうことだ?」
俺は頭を押さえながらダクネスに説明してやる。
「その魔道具は確かに『スティール』が使えるようになる。だがな、盗賊職にしか装備できないうえに消費魔力がとんでもないんだ」
「そ、それはつまり……。」
「ーーーただのガラクタね」
「うわぁぁぁあぁん!!」
あーあ、アクアの言葉にウィズがガチ泣きしちまった。
「うぃ、ウィズ実は今日は頼みがあってな……。」
「頼み、ですか?」
「あ、ああ、報酬は弾む……。」
「どんな頼みですか!!私ができる限りなら何でもします!!このままだとしばらく固形物が食べられないんです!!」
お、おお、なんて迫力だ。これがあのいつもは温厚なウィズ。金の魔力とは末恐ろしい……。
「ちょ、ちょっと、待ってくれ……。そろそろ」
『緊急クエスト!緊急クエスト!!冒険者の方々は直ちに冒険者ギルドに集まってください!!』
来たか。
「みんなギルドに行くぞ!!」
「ワンモアこのすばぁ」 ウィズ(泣)
「ルナさん、集まりましたか?」
「サトウさん!ええ、今招集できる冒険者はすべて……。」
「そうですか」
俺は顔なじみの受付嬢ルナさんに集合状態を確認した後冒険者全員の見える場所に移動する。
「みんな、今日の招集は俺の提案だ。突然みんなをよびだしてすまない」
まずは突然呼び出したことを謝罪し、頭を下げる。
「それはいいけどよ、何の用事か早く教えてくれよ」
冒険者を代表し、顔見知りのチンピラ冒険者ダストが問う。
「みんなも知ってるかもしれないが、今この街に起動要塞デストロイヤーが接近している。俺は昨日クエストとしてデストロイヤーの進行方向を調査していたんだが、調査の結果、アレの速度と方向からこのままいけば100%この街に来ることが分かった。おそらく後に二週間もないだろう。」
『!!!!!!!?』
俺の言葉に冒険者たちが一斉にざわめく。
「だが、俺は別にみんなで逃げようとか考えてるわけじゃない。」
「? じゃあ、どうしようというのです?相手はあのデストロイヤーですよ?」
隣にいためぐみんがみんなの意見を代弁する。
「俺に、デストロイヤーを確実に落とす策がある。」
『!!!!!!!!?』
再びざわめくギルド内。
「本当なんですか?」
「ああ、だがこの作戦にはアクア、」
「え?」
「めぐみん」
「はい?」
「ウィズ」
「私ですか?」
「そしてみんなの協力が必要になってくる。」
「でもよぉ、本当にそんな……。」
「そうだよ、相手はあのデストロイヤー……。」
反論を唱えようとした冒険者たちはいっせいに押し黙った。いや黙らずにはいられなかった。
---俺がみんなの前で土下座をしたのだ。
「ちょ、カズマいきなり何を!!」
「馬鹿なことを言ってるのは分かってる!!だが、このままいけば荒はこの街に来るだけではなくそれまでにいくつの町を蹂躙する。そんなことになったら、いったい何人が苦しむことになるだろう。」
かつて、更地になってしまった村を治すためダクネスが自分を担保にした。あいつの屋敷に潜入した時、あの時のあいつの顔を俺はおそらく死ぬまで忘れられないだろう。
「だから頼む!!どうか、どうか、俺に力を貸してほしい……。」
俺は小さくなる声を絞り出し皆に懇願した。
『……………。』
静まり返るギルド。
「あーあ、しゃねぇなぁ」
その静寂を破ったのはまさかのダストだった。
ダストは俺の近くまで来るとその肩に手を置いた。
「顔を上げてくれ、カズマ」
「ダスト、お前……。」
「俺はやるぜ……。」
「ダスト……。」
「お前は前に俺たちのためにベルディアに突っ込んでいってくれたしな」
まさか、ダストの口からこんな言葉が聞けるなんてこいつは金にがめついだけのただのチンピラだとばかり。
「お前らぁ!!カズマが俺達に何をしてくれたのか忘れたのかよ!!こいつはあのベルディアに俺たちを守るために一人で戦ったような奴だぞ。そんな奴に助けを請われてお前ら何も感じねぇのか!?お前らがそんな薄情者だったなんて知らなかったぜ。あー、なさけねぇ」
あっ、でも最後の挑発はダストっぽい。
「なんだと、このチンピラが!!」「いいぜ、俺はやってやる。デストロイヤーでもなんでもかかってこいや!!」
「俺もだ!!」
「私も!!」
ダストが挑発をしたのをひきりにみんなが討伐参加の声を挙げる。
「カズマ」
まだ、床に手をついている俺にダストが上から語り掛けてくる。
「ほら、大将としてみんなの士気を高めてくれ」
ダスト、お前ってやつは。かっこよすぎるだろ。
ダストが差し伸べてくれた手を握り立ち上がる。
「よっしゃぁ、お前らデストロイヤーだか何だか知らねぇがあんな旧世代のガラクタこっちからデストロイしてスクラップにしてやろうぜぇぇぇ!!アレの討伐報酬はとんでもないぞぉぉおぉ!!」
『おおおおぉぉぉおぉおおぉぉ!!』
皆の声がギルドどころか町中に響いた気がした。