「よぉぉし、お前らぁぁぁ!!後二時間でデストロイヤーがここまでくる。魔法使いたちはクリエイト・アースで土をありったけ作ってくれ、前衛職たちはいつでも出撃できるよう準備しておけ!!」
『おおおぉおぉぉぉお!!』
俺の指示を受けて皆が雄たけびを上げる。
作戦内容はギルドですでに伝えてから全員でテレポート下からみんな作戦内容は頭に叩き込んでいる筈だ。
「サトウさん」
俺もほかの魔法使いたちと一緒にクリエイト・アースで土を作っていると戦いを見届けるために一緒についてきた『テレポート』でついてきたルナさんが初老の男性を連れて俺のところにやってきた。
「こちらこの村の村長のデロアさんです」
「はじめまして、デロアです。」
「初めまして、アクセルの冒険者で今回の作戦の立案者であるサトウカズマです。」
俺は頭を下げ、デロアさんに挨拶をする。
「この度は我々の村を守るためにわざわざ来ていただきありがとうございます。」
「いえ、ここで何もしなくてもどのみちアレはアクセルの街にやってきますだったら、今ここで倒して、被害を最小限にするのが得策なだけです」
「……ありがとう」
最後にもう一回礼を受け取り俺は仲間たちのもとに向かう。
「ワンモアこのすば」 アダルトカズマ
「ダクネス」
「……カズマか」
俺は前回の世界のように村の外で最前線に立っているダクネスのもとに向かった。
「お前というやつは本当に規格外だな。まさか、あのデストロイヤーを自ら討伐しようと言い出すとは」
ダクネスは呆れたように言う。
「どっちみちあれは俺たちの街に来るんだ。だったらここで倒したほうが貴族様たちの出費が収まるってもんだ」
「---カズマ、お前やはり知っていたんだな」
「まぁな、王族の懐刀、ダスティネス家令嬢、ダスティネス・フォード・ララティーナ様?」
俺は茶化すように言ってやった。
「フフ、お前は自分のことは秘密だらけのくせに私たちはお前に全く秘密がつくれないのだな」
「ま、そういうこったな。それより、こんなところにいたら危ないぞって、引くわけないか、領民より先に騎士が逃げるわけにはいかないだっけか?
「そんなことまで、知っているとはな……。」
「じゃあ、俺はめぐみん達のところに行かなきゃいけないからそろそろ行くよ」
俺はそういって、ダクネスに背を向けた。
だが、俺は歩き出す前に一言。顔の見えないダクネスに言い放った。
「そうそう、言い忘れてた。」
「ん、どうした?」
「お前が領民を守る騎士でいようというのなら、俺はお前を守る盾でいよう」
ほんと、いつから俺はこんな恥ずかしいセリフを言えるようになったのか。
「ワンモアこのすば!」 ダクネス
「ウィズ、めぐみん」
「「カズマ(さん)」」
「もうすぐデストロイヤーが来るけど緊張とかはないか?」
前回はめぐみんが俺の叱咤激励のおかげで成功したが、今回俺は前線に立ってなきゃいけないからそれはできない。
「私は問題ありませんよ」
「私も大丈夫です」
ウィズがともかくとしてめぐみんまではっきり言うとは、俺は少し驚いた。
「どうしたのです?何を驚いてるんですか?」
「いや、普通十三歳の娘がこんな最前線にいてビビらないとはなと思って」
「私を子ども扱いしないでください!!それに、心配はありませんよ」
「? どういうことだ。」
「だって、これはカズマの考えた作戦です。今まで一度だって失敗したことのないカズマの作戦です。失敗を疑う要素なんてないでしょう?」
---まさかここまで信頼されてるとはな。
だけどな、
「めぐみん、それは違うぞ」
「?」
「俺は過去に何度も失敗した。だからこそ、ここ一番で失敗できないんだ。」
「カズマ……。」
「人生の先輩から一言だ。失敗を恐れるな、その失敗をぬぐってくれる仲間がいることを忘れるな。俺たちがお前の背中にいることをどうか忘れないでほしい。」
「カズマ、わかりました。でも、カズマも私が後ろにいることを忘れないでくださいね!」
「あぁ、わかったよ」
俺はそう返事をして最後の仲間のもとへ向かう。
「ワンモアこのすば!」 めぐみん ウィズ
「アクア、準備できてるか?」
「えぇ、もっちろんよっ!」
全く、こういう時のこいつは本当に頼もしい。そうだよな考えてみたら俺はいつもこいつに支えられてたんだよな。こいつとの出会いがすべての始まりだったんだよな
…………。
「なぁ」
「なによ?」
「ーーーお前は俺のことを恨んでるか?」
俺は、今まで恐れて聞けなかったことをアクアに聞いていた。
「あんた、いきなり何言ってるのよ?」
「いやさ、ずっと思ってたんだよ。いつもへらへら笑ってるお前だけど心の中じゃこんな世界に無理やり連れてきた俺のことを恨んでるんじゃないかってさ」
前の世界でアクアがいなくなる前日の夜あいつが泣きそうな、寂しそうな顔で「帰りたい」と言っていた光景がフラッシュバックのようによみがえる。
「いい機会だ、恨み言があるならここで全部言って……。」
バシッ!!
乾いた音が俺の頬から響いた。
一瞬俺には何が起こったのかわからなかった。だが、俺の頬から伝わる鈍い痛みからアクアに頬を叩かれたのだと分かった。俺はたたかれた反動でその場にへたり込む。
「……ふざけんじゃないわよ」
「アクア」
「ふざけたこと言ってんじゃないわよっ!!」
尻もちをついた俺をアクアは胸ぐらをつかんで強引に立ち上がらせる。
「私があんたのことを恨んでる?そんなの当り前じゃない!!」
「!」
「楽してた天界からいきなりこんな苦労生活に落とされれば誰だって恨むに決まってるじゃない!!」
アクアの口から出た初めての本音。それは俺の心に思っていた以上にダメージを与える。
……そりゃそうだよな、こいつが俺のことを恨んでないわけがない。
「悪かったな、必ず魔王を倒してお前を天界に……」
「でもね!」
俺の言葉はアクアが重ねてきた言葉によって遮られた。
「今はそれ以上に感謝してる。」
感謝?こいつが、俺に?
「あんたがいたから私はこの世界でめぐみんやダクネス、大切な人たちと出会えた!!もちろんあんただってその一人!!」
「アクア……」
「だから、あんたがそんなこと言わないでよ……」
これがこいつの本音?俺がこいつにとって大事な存在?
「……私のほうもいい機会だから言わせてもらうわ。もう二度と同じことは言わないから耳の穴かっぽじってよく聞きなさい」
「私をこの素晴らしい世界に連れてきてくれてありがとう。」
俺はこの言葉を生涯忘れることはないだろう。この言葉に俺は救われたんだ。
「ワンモアこのすば!」 アダルトカズマ
「……来たな」
とうとう起動要塞デストロイヤーが視認できるほど近くに来ていた。
「皆!!準備はいいか!?」
『おぉおおおぉぉぉぉ!!』
皆準備はいいみたいだな。
「始めるぞ、『クリエイト・アース・ゴーレム』!!」
俺は魔法使いたちが『クリエイト・アース』で作った土を使い魔王戦で使ったゴーレムよりはるかに大きなゴーレムを二体作り出す。
「いっけぇぇえぇぇぇ!!」
ゴーレムたちはデストロイヤーの足へと突っ込んでいく。当然こんなゴーレムごときで荒が止められるとは思ってない。この村にはアクセルの街のように遠くの敵を見渡せるような高いところはない。だから、荒はできる限り近くに来させないといけない。ゴーレムたちはただの時間稼ぎだ。
そして、これだけ近づけば射程範囲だ。
「アクアァァァァァ!!!」
「セイクリッドォォォオォ!!」
アクアが錫杖を掲げると空中に五つの魔法陣が現れる。
「『ブレイク・スペル』!!」 五つの魔法陣から閃光が放たれる。
そして、閃光とデストロイヤーの結界が衝突する。
『砕けろぉぉぉぉぉ!!』
パリィィィィィィィン
乾いた音とともに結界は砕け去る。
「めぐみん、ウィズ!!同時発射だ!!」
「「黒より黒く、闇より暗き漆黒に我が真紅の混淆を望みたもう、覚醒のとき来たれり無謬の境界に落ちし理、無行の歪みとなりて現出せよ!!」」
「うてぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「「『エクスプロ―――――ジョン』!!」」
ドゴー――――ン!!
爆音が周囲一帯に響く。
二人の爆裂魔法はエクスプロージョンの上部と足を破壊する。
「やったか!!」
「まだだ!!」
『被害甚大につき、自爆システムが作動します。乗組員は直ちに避難してください」
デストロイヤーから無機質な声が響く。
俺はそんなものは無視して、フック付きの矢でデストロイヤーの壁に引っ掛ける。
「前衛職、突撃だぁぁあぁ!!」
『おぉぉぉぉぉおおおぉぉおぉ!!』
先陣を切る俺に続きが冒険者たちが次々とデストロイヤーの壁を上っていき、潜入する。
中には当然、前回同様大量の警備用ゴーレム。俺と一緒に潜入したダクネスを見つけるなり襲い掛かってきた。
「邪魔だ!!」
俺はそのゴーレムをベルディアから奪った剣で一太刀で切り捨てる。
「俺に続けぇぇぇぇぇぇえ!!」
『うぉぉぉぉぉおおぉぉ!!』
『ワンモアこのすば!!』 冒険者一同
すべてのゴーレムを切り伏せ、ようやく目的の制御室にたどり着いた。そこには当然ながら白骨化したデストロイヤーの開発者(馬鹿)と暴走したコロナタイト。
俺はそのコロナタイトに素早く手をかざし、魔法を発動する。
「『テレポート』!!」
転移先はベルディアの城。あそこならだれにも迷惑は掛からない。
コロナタイトは跡形もなく俺たちの前から消えた。
あとは、
「ダスト、この死体をもって脱出してくれるか?」
「よし来た!」
あの死体はアクセルの街に持って帰って日記と一緒に史上最強の馬鹿の墓として一生さらし者にしてくれる。
「ワンモアこのすば!」 デストロイヤー開発者(馬鹿)
コロナタイトがなくなったことにより、内部にこもった熱があふれて、デストロイヤーの壁が赤くなっていく。
「カズマさん、このままでは熱があふれてこの村が火の海に!」
「ど、どうするんだ、カズマ!!」
いつの間にか近くに来ていたウィズとダクネスが俺に焦って聞いてくる。その後ろにはアクアとアクアに背負われているめぐみんがいる。
「何慌ててんだ、もう一度爆裂魔法で熱ごとぶっ放せばいい」
「あんた何言ってんのよ!!めぐみんもウィズももうそんな魔力……。」
「そうですよ、もう……」
俺は親指で自分をさす。
「忘れてないか?最強の最弱職を」
俺はデストロイヤーから少し離れた場所でめぐみんから借りた杖を掲げて、あの魔法の詠唱をする。
「黒より黒く、闇より暗き漆黒に我が真紅の混淆を望みたもう、覚醒のとき来たれり無謬の境界に落ちし理、無行の歪みとなりて現出せよ!!」
これで、本当に終わりだ!
「『エクスプローーーージョン』!!」
聞きなれた轟音とともにデストロイヤーは木っ端みじんに消え去った。
「ワンモアこのすば!」 アクア めぐみん ダクネス
デストロイヤーの討伐に成功した成功した俺たちはデロアさんを始めとした村の人々に散々礼を言われた後俺のテレポートで全員でアクセルの街に戻った。
「いやぁ、終わったな!!」
「まさか、俺たちがデストロイヤーを倒すことになるとはな!」
「俺たち伝説になったんじゃね?」
冒険者たちは自身らの活躍を誇らしげに話している。
ドサッ!
『!!!!!!?』
皆の視線が何かが倒れた場所に向かう。
その先には、地に付した俺の姿が。
『カ、カズマァァァァァ!!』
倒れた俺にみんなが向かってくる。
「ど、どうしたんだ!!カズマ!!」
いち早く俺のもとにたどり着いたダクネスが俺を抱き上げる。
そんなダクネスに俺は弱弱しく告げる。
「わ、わりぃ、魔力切れだ……」
『…………。』
皆は俺の発言を聞いて脱力する。
「な、なんだよおどろかすなよ」
「まぁ、考えてみたらあんなデカいゴーレムを使った後に爆裂魔法なんか打ったらこうなって当然か」
「それもそうだ、ハハハハハハハ!!」
『ハハハハハハハハハ!』
誰かの笑いをひきりにみんなが大きく笑う。
人がぶっ倒れてるのにこいつらは……。
「まったく、仕様のない英雄様だ。」
そういって、ダクネスは俺のことを背負う。
「わりぃな、お前を守るとか言っといて背負わせちまって……」
「なにをいってる」
その時のダクネスの顔はかつての世界でも見たことがあった。
「お前は十分私を守ってくれた」
パーティに戻ってきたときのウソ一つない笑顔だ。
「ルナさん、このザマなんで報酬は明日にでも……」
「はい、今日はゆっくり休んでください」
俺はダクネスに背負われたまま、ルナさんに頭を下げパーティメンバーとウィズと一緒にギルドを出た。
「ウィズ、悪いな報酬は明日にでも、とりあえず、今日はこれで何かうまいもんでも食ってくれ」
「ありがとうございます、ありがとうございます!」
ウィズは俺から受け取った三万エリスを受け取り。激しく頭を下げてきた。
「よ、ようやく帰ってこれましね」
「あぁ、まさかここまでキツイ一日になるとはな」
「ホント、カズマがもっとしっかり報告してくれたらもっと楽だったかもね」
「以後、気を付けます……」
やっと、愛しの我が家にたどり着いた俺たちはようやく脱力できた。
しかし、今日は俺にとって大事な日だった。
「アクア」
「ん?」
「めぐみん」
「なんです?」
「ダクネス」
「なんだ?」
俺は誠心誠意の感謝を込めて。
「ありがとう」