あの世界に1人くらいはこういう人間がいるんじゃないかなって話です。
オリキャラしか出てこない予定です。

1 / 1
ヒモ兼餌、やってます。

右眼に映る光景は赤一色。

目の前の真っ赤なものは、視界を犯すように迫ってくる。

 

そのまま右眼はぺろり、ぺろりと湿った生暖かいものに撫でられる。しばらくすると慈しむようなものから一転、顔の一部を抉りとろうという勢いでそれは襲いかかり、暴力的なまでの熱が眼を焼くと共に視界の右側が完全に真っ暗になる。ぷちゅりと音がした。

眼球だったものと共に顔の内側をゆっくりと、丹念に舐め回され、そこから溢れていくものを吸われる。

執拗に。愛おしそうに。名残惜しそうに。

眼窩を満遍なく舌に撫でられる感覚が、痛みと共に全身をなぞる。

 

半分の視界に映る血塗れのベッド、月明かりに映る赤い眼の女、転がった二本の腕、鉄と汗と唾液が混じり合った匂い、ぴちゃり、じゅるりと何かが啜られる音、傷口から発する痛みが、この異常な空間をこれでもかと言う程に演出している。

永遠と思える程の間、俺は世界一情熱的なディープキスをしていた。

 

 

 

満足したのか、ようやく俺の右目があった所から口を離した女はとても幸せそうな顔をして元眼球と血の混じったものを口の中で転がしている。

自慢の料理を出したコックや、作物を丹精込めて育てた百姓なら、自分の作ったものを美人にここまで美味しそうに食べて貰えるのはさぞ嬉しいことなのだろうが、提供しているのは食料自給率100パーセントの自らの身体なので、そこまでの感慨はない。なんだったら顔半分と両腕があった所からくる痛み、血を流したことからくる寒気で気分は寧ろマイナスだ。というかヤるだけヤって一人で満足してんじゃねえ。殺す気か。

 

「——あぁ——実に美味い…………分かっている。そんな目で見るな。忘れてなどいない」

 

嘘つけ。どう見ても完全に自分の世界に入っていただろうが。こっちはお前の特殊なプレイの所為で、噛み付きづらいにも程がある体勢のままお預けを食らっているのだ。おかげさまでずっと喉が渇いて渇いて仕方ない。

 

「ふふ、そう拗ねるな。どこを齧ってもいいんだぞ?」

 

そう言った女は自らの白い首筋をこちらに晒し、しな垂れかかる。

 

俺が理性を保つ理由など、まるで無い。

 

その首を噛みちぎり、そこから溢れる血を舐める。一瞬の苦悶には目もくれない。

傷口に吸い付く。一滴も零さぬように。

無くなった眼と、腕のあった部分が燃える様に熱い。

いのちが満ちる感覚が、俺の全身を駆け巡っていた。

 

 

 

「満足したか?」

 

その言葉でふと我に返る。

カーテン越しの朝日で明るくなった視界は広くなり、無かった筈の腕が生えていた。

 

「ごめん。食い過ぎた」

「お互い様だ。次から眼球を食べるのはほどほどにする」

「やめるとは言わねえんだな…………」

 

そう遠くない未来にまた眼球を潰される未来が決定しげんなりする。

どうせ食うなら普通に肉を食いやがれ。

 

「眼球がこんなに美味しいと知らなかったんだ。次が無いなど耐えられない」

 

彼女はたまにでいいからと、懇願しながら擦り寄ってくる。

近い。どことは言わないけど当たってる。その上目遣いを止めろ。卑怯だ。

 

「次は予めお前の血をコップかなんかに入れて手の届くところに置いてくれ。それが条件だ」

 

そう言うと彼女は、先程の表情とは打って変わり、花が咲いたような笑顔で抱きしめてくる。

 

「ありがとう。大好きだよ。翔」

「椿様に喜んでもらえて何よりだよ」

 

まあ俺が椿の飼いビトとやらである以上、余程のことでもない限り断りはしないけどな。

 

 

 

 

 

俺が飼いビトなんてものを、何故やっているかということを説明する前に、まず俺の身体について。

前提として俺は喰種じゃない。人間が蜥蜴の様に腕やら眼やら生やせられるものかと言われそうだが、限りなく喰種に近い人間だと考えて貰えればいい。取り敢えず人間の飯を美味しく食べられるのは確かだ。

詳しくは俺も分からないが、俺のRc細胞とやらは普通の人間より多いが、赫包が無いためにある一定量以上溜め込むことができない。だが元々血液にある分を超えるとその分が肉体の再生やらに使われるという仕組み、らしい。とりあえず人間を食った程度のRc細胞では切った爪が結構な長さに伸びる程度だ。

そんな身体の所為でこれまでクソッタレの様な人生を歩んできた俺は、捜査官をぶっ殺して奪ったクインケで人・喰種を問わない殺し屋もどきをやっていたのだが、ある依頼の殺害対象だった椿に半殺しにされ、なんだかんだで今に至るというわけだ。

詳しい話は、別の機会に語ろう。

 

間違いなく言えることは、俺は椿を恨んではないし、寧ろ感謝しているということだ。

 

「ふふ、お前が我を忘れて私の血を啜る姿は新鮮だったな。可愛かったぞ」

「目玉喰わせる話はやっぱ無しな」

 

 

 

この後めっちゃ泣きつかれた。




続くかは不明

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。